DDD(小説)

登録日:2010/01/02(土) 02:04:22
更新日:2025/03/01 Sat 07:43:18
所要時間:約 7 分で読めます




地下室の悪魔は語る。

架空の触覚は、同じ空想の怪物を許容する。

素晴らしいよ石杖所在。

君の左腕は、理想的な───。





DDDとは講談社から出版されている小説である。

著者は奈須きのこ、イラストはこやまひろかずが担当している。
奈須が武内崇以外のイラストレーターと組むのは今作が初めてである。

当初は全三巻で2007年内完結を目指していたが、全四巻と訂正され二巻発売以降は全く音沙汰がない。
某雑誌のインタビューで2009年内に完結させる予定と発言したらしいが、結局それが実現することはなかった。
しかし、奈須にはよくあることなのでファンはあまり気にしていない。

DDDとはDecoration Disorder Disconnectionの略であり、直訳すると「装飾、障害、切断」となる。
決して某大王とは関係ない。切断はしていた

一部に同作者の作品である空の境界及び月姫Fateシリーズとの関係を匂わせるような文章、キャラクターも存在するが、そちらとは全く関係のない時空間との事。


【あらすじ】

感染者の精神を歪め、肉体すらも変貌させる奇病「アゴニスト異常症」、俗に言う「悪魔憑き」が蔓延る世界。
左腕の無い青年、石杖所在と漆黒の義手義足を纏う迦遼海江が繰り広げる奇妙な「悪魔払い」の物語。



【主な登場人物】

石杖所在

主人公。
通称「アリカ」。
飄々としており掴み所のない皮肉屋だが、基本的に事なかれ主義で強いものには従順。
ある事件で左腕を失ってから、白髪・夜を迎えるたび昼間の記憶を忘れる・脅威を感じなくなる、といった「後遺症」が現れた。
カイエの面倒をみる仕事をしており、有事の際はカイエの義手を借りて「悪魔払い」を行う(本人は乗り気ではない)。
高校時代は「支倉の至宝」として名を馳せた天才バッターだった。

何故かどんな義手も体に合わず、嵌めると激しい不快感に襲われるが、カイエの義手だけはしっかり嵌まる。
カイエ曰く「紛失したが繋がっている」「感覚だけが生きている」とのこと。
本人も「初めから無いようなものだった」と語っているが…?

◆迦遼海江

通称「カイエ」。
アリカの雇い主。
可憐な顔立ちと絹のような黒髪と一見美少女だが、こんな可愛い子が女の子な訳がなかった。
外見は14・15歳くらいだが実際は不明。
四肢がなく、正体不明の漆黒の義肢でそれを補っている。
普段は無邪気だが、悪魔憑きを「偽物の悪魔」と呼び、冷酷な目を向ける。他人の心の傷を暴くのが好き。

悪魔憑き関連の事件が起きた時はアリカに義手を貸し、事件解決を促す。本人曰く「地下室の悪魔」。
アリカを「本物の悪魔使い」として好いている。

◆戸馬的

通称「マトさん」
アリカの監察官。
公安特務の監察医兼監察官であり階級は警部補。
かなりの美人であるが、性格は弱者をいたぶるのが好きな真性のドS。
悪魔憑き関連の事件を担当している。
A異常症ではないが、人間離れした戦闘力を有しており、並の悪魔憑きならあっという間に蜂の巣にされてしまう。
アリカのことをショザイと呼ぶ。

貫井未早

通称「ツラヌイ」
アリカの高校時代の二つ下の後輩。
裏表のないとても明るい性格をしており、お調子者で正義感が強い。
反面、欲望に忠実な現代っ子。
アリカ曰く「お天気宇宙人」「マキシマム善人」。
別名「歩くバッドフラグ」。
アリカに熱烈なアプローチを仕掛けるが、全く相手にされていない。
そしてキリスとは壊滅的に仲が悪い。

◆霧栖弥一郎

通称「キリス」
アリカの高校時代の一つ下の後輩。で、あるのだがふけ顔であり、年下には見えない。
地元の不良達の顔役であり、暴力団とも繋がっている。
ある事件を機にアリカと再会し、現在は同居している。
高校時代は「支倉の天才スラッガー」として名を馳せていた。

日守秋星

不死身の吸血鬼と呼ばれる最も有名な悪魔憑き。
大量殺人犯として指名手配されている。
年中真っ黒のロングコートを着用しており、鏡面のサングラス・魚のような乱杭歯・煤けたような長髪・日本人離れした容姿など特徴が多い。
性格はノリが軽く、馴れ馴れしくマイペースで他人の事情お構い無しに行動する。
しかし、非情で残忍で殺しを楽しむ一面もある。

悪魔憑きとしての新部は全身で成人男性の3〜5倍の身体能力を持つ。
偶然アリカに出会ってからはアリカを気に入り、「アリカ先生」と呼ぶ。

石杖火鉈

アリカの四つ下の妹。A異常症。
アリカの左腕を食した張本人で、その後アリカを殺害しようとしたところをマトさんによって「何かの間違いでミキサーに落ち、何かの間違いでそれでも生きていた人体」にされ、オリガ記念病院に収容された。

悪魔憑きとしての新部は全身であり、能力は『人型の動物としての圧倒的な性能』。
その身体能力は想像を絶し、殺されると即座に再生・成長し、その殺害方法に耐性を獲得して同じ方法では殺せなくなる。どこのバーサーカーだ
敗北から二年を経て、兄からしても判別できないほどに、曰く「生物学的に」成長している。

◆久織巻菜

久織伸也の姉。A異常症。
相手の事を徹底的に観察し、姿形は別人のまま雰囲気や行動をそっくり真似て相手になりきることが出来る。他人の生き方の真似をしないと生きていけない性質で、作中では弟の伸也やアリカを模倣した。
伸也を社会的に抹殺しようとしたが、些細なミスで失敗し、悪魔憑きであると判明して入院させられた。

新部は顔の皮膚神経、筋肉繊維の変化。自分の意思により任意に表情を作り、筋肉の動かし方さえ分かれば他人の仕草もそのまま模倣できる。裏を返せば模倣のための観察や分析は本人のスペックによるものである。

◆久織伸也

久織巻菜の弟。姉に嵌められ、両親殺害及び姉への暴行の犯人とされる。後にその事件は事故死扱いになったが、事件の後遺症で精神病院に入院。

◆鋳車和観

A異常症。2年前のコアラ丘高等学校の元野球部部員で、天才と言われたピッチャー。勝負球のシンカー使いとして注目されていたが、同じ部内の瀬倉弓夜を筆頭とした彼を妬む連中によって利き腕を破壊され野球の道を絶たれた。
悪魔憑きとなった後は、新部を用いた2段階に曲がるシンカーを使い、SVSに参加しているバッターとなった人間を殺す通り魔として都市伝説となっていた。
霧栖との野球勝負に負け、アリカに悪魔払いされた後に自首している。石杖所在の「初めてのお使い」相手。

能力は血液の爆発。ボールに血液を付着させタイミングよく爆発させることにより通常では有り得ない変化を起こす。
しかし、新部が血であることの反動ゆえ使うたびに右腕がボロボロになっていく副作用があった。

◆ドクターロマン

オリガ記念病院の医者の一人。苗字は貫井。
聞いている方が恥ずかしくなるようなロマン溢れることを平気でしゃべるため、皆から「ドクターロマン」と呼ばれる。
通称は「ドク」。


【用語解説】


◆支倉

C県北部に位置する地方都市。
本作の舞台となる。

◆悪魔憑き

正式名称はアゴニスト異常症。またはレセプタクラッシュとも呼ばれる奇病。脳の受容体を狂わせる。
患者は精神を病み、激しい感情により神経伝達物質を異常に分泌させ、結果、その原因を解決するため「新部」と呼ばれる新たな身体機能が形成される。
症状(新部)は様々で「もとからある性能が上下する」みたいな簡単なモノから「新たな内臓が生まれる」のような重症の病状、果ては「時を止める」のような異能まで様々。

カイエに言わせると「発症者が心を病むのではなく、弱っている人間だから発症する」とのこと。
世間に知られていない病ということもあり、登場人物同士でも、「感染症」「精神疾患」「電波感染」など認識は割れている。

◆オリガ記念病院

N県郊外にある悪魔憑きの治療を専門とする病院。病院とはあるが正面玄関がコンクリートで埋められている、銃器を持った警備員が常在しているなど実態は刑務所や牢獄に近い。
「保護」された悪魔憑きはここに収容され、完治するまで退院できない。

A〜D棟に分かれており、症状が軽い順にAから割り振られている。D棟は重度の悪魔憑きの収容施設で人外魔境と評される。
実はE棟があり、たった1人入院している。

◆SVS

支倉で最近流行っている賭博野球。
ピッチャーとバッターの1:1の勝負。
打てればバッターの勝ち。三振すればピッチャーの勝ち。
公式と非公式があり、公式の選手は専用の携帯電話を持っており、バッターは金色、ピッチャーは銀色の携帯電話を所持。
敗者は勝者に自分の携帯を渡していき、最終的に全ての携帯電話を奪った側の勝利となる。

◆憎悪(仮名)

黒い盲目の犬。
普段はカイエの義手となっているか、真っ黒な犬として地下室にいる。
アリカに義手としても借り出される。
人間の憎悪に反応して行動する。
カイエのために悪魔憑きの新部を咀嚼するが、ほうっておくと悪魔憑き本体ごと咀嚼してしまう。

カイエは他に「悲哀」「歓喜」などを所有している。




───さあ憎悪(仮名)ちゃん。待たせたね、ゴハンの時間だよ。

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  • 絶賛延期中
  • 同時期に刊行されたのは刀語←←いまや3作品目のセカンドシーズン終了
  • 其は、恒温の最高速。不滅を誇る灼熱の揺り籠(フォウマルハウト)
  • 大王は関係ない
  • 2004年
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最終更新:2025年03月01日 07:43