キャリー(スティーヴン・キング)

登録日:2012/04/20(金) 00:22:28
更新日:2025/03/24 Mon 02:54:17
所要時間:約 4 分で読めます





アメリカの小説家、スティーブン・キングのデビュー作となった長編小説。
1976年にはブライアン・デ・パルマ監督で映画化され、そちらも評価が高い。


アメリカのハイスクールでいじめられていた少女が超能力に目覚めてしまう悲劇を描いている。




≪あらすじ≫

メイン州の高校に通う地味で陰気な少女、キャリー・ホワイトはクラス中の女子からいじめを受けていた。
ある日の体育の授業の後、彼女はシャワー中に17歳にして初潮を迎えパニックに陥ってしまう。
クラスメートたちにからかわれ騒動を起こし、家に帰っても待ち受けていたのはカトリックに狂信的な母親からの「性への目覚め」という罵倒だった。
しかし、それは同時にキャリーに「念動力=テレキネシス」を目覚めさせる発端となる。

一方、いじめグループの一人のスーは今までの態度を改め、キャリーを励ますために自分の彼氏のトミーに彼女を高校卒業記念のプロムに誘うよう頼む。
トミーからの突然の誘いに戸惑いながらも感激するキャリー。

しかし、キャリーをいじめた事でプロムの出場停止処分を食らったリーダー格のクリスは彼女を妬み、彼氏のビリーを使って陰湿な嫌がらせを企てる。
そして迎えたプロムの日。心躍らせ会場にやって来たキャリーを、思わぬ出来事が待ち受ける。
トミーとキャリーがプロムのベストカップルに選ばれたのだ。
だが、それこそがクリスの罠。彼女の頭上には豚の血の入ったバケツがあった。

その夜、惨劇の舞台が幕を開けた……



≪登場人物≫

★キャリー・ホワイト
(演:シシー・スペイセク)
主人公。
地味でチョコレートが好きな事から肥満気味な容姿で加えて気が弱く、根も暗いためクラス中のいじめの標的。
情緒不安定な母親からも抑圧され、萎縮しきっている。実は唯一、まともな叔父夫妻が親族がいて幼い彼女にクリスマスプレゼントとしてベロアのドレスを贈った事があるが母親によって燃やされて以来、絶縁状態である。
実は幼い頃から念動力の力を開花させていた。それとは別にテレパスも使用できる。
彼女のテレパスについてだが、他人の精神や心に入り込み考えを見透かせる非常に強力なもの。また自分の思念波を周囲に強制的に知らせる事も出来る。しかし通常時においては1人にしか作用しないし万能でも無いので、クリスの企みをこの力で見抜く事までは出来なかった。
トミーにプロムに誘われ、初めて「普通の生活」を送れると希望を抱いていたが……
映画版のシシー・スペイセクの演技力は流石ではあるが実は彼女自身は高校でクイーンビーでもあった。ミス・ホームカミングに選ばれた事もある。
裏話としてデパルマ監督に「私はキャリー以外は絶対にやらない!」と駄々を捏ねて役を勝ち取ったのは有名な話。
それに裏付けされたプロ根性も筋金入りのもので、何度もリテイクが入り若い俳優達がバテて滅入っている時も豚の血を何杯となく浴びても絶対に音を上げる事も泣き言すらも漏らさなかったと言う。なお当時のシシー・スペクセイはこれでもすでに撮影当時には結婚しており人妻でもあった。

★マーガレット・ホワイト
(演:パイパー・ローリー)
キャリーの母親。実は少女時代に母親の再婚相手の男にレイプの末に妊娠し流産している。原作小説を注意深く読めば解るが彼女が妊娠したのは夫ラルフ・ホワイトとの「結婚前」であり「妊娠したのは夫との行為直後」。
この時点で注意深く読めば「夫とは違う第三者」がいた事が解る。
本心では愛する夫にも実の母親にも見捨てられ、(ただし夫だけは見捨てた訳では本心から彼女を愛していた)
みじめでどうしようもなく、やり切れない想いを内に抱えており、
狂信的なまでにカトリック教に入れ込んでいるのは全てはトラウマからの逃避の為である。

娘が「女」として目覚めることを極端に恐れており、生理や恋人といった兆候があれば虐待をも辞さない。
全ては娘が女として目覚め自分が捨てられる事を怖れたため、それと娘と自分が重なって見えるため、
男という悪魔から、もとい義父のような「悪魔みたいな男達から自分と娘を守るため」。

「妊娠したのは自分の罪」と言ったのは、キャリーの事ではなく義父との末に妊娠した事である。
夫との行為が義父のレイプが彼女のトラウマを呼び起こしたせいもあり、そのためにキャリーを殺そうとした。
娘を愛したいのに、縛り付ける事と虐待でしか愛を示せない哀れな母親である。

後に演じたパイパー・ローリーはあまりにぶっとんだ役で、撮影中何度も噴き出したと当時を語る。インタビューで当時を振り返り「私個人としては母親目線で見ると有り得ない話で笑ってしまうけど、この話はこの話で御伽噺としてはとても素敵な物語で今はとても良い思い出で私にとっても思い出深い作品の1つ」と語っている。

★スー・スネル
(演:エイミー・アーヴィング)
キャリーをいじめていたクラスメートの一人。高校における女生徒の中で最高位に立つ誇り高きクイーンビー。
後に罪悪感と自意識の高さから、自分の彼氏を使ってプロムに招待した。が、その罪悪感と自意識の高さからの善意が最悪の結果を招いてしまう。
この事はクリスからも後に思い切り皮肉られている。
一部始終を目撃し、その後の惨劇の生き証人となった。キャリー自身が死亡した後に

「タンポン入れろ、入れろ、入れろ!」(祟らない祟らない決して祟らない)
「もっと綺麗にしておけばいいのに。まるでいやらしいひきがえるみたいだわ」
「キャリーには本当に済まなかったと思っています。だからあの惨劇が始まるまでは楽しい夢の世界で遊んでいたと私は思いたいのです」

例え惨劇が起こらなかったとしてもトミーは本当の意味でキャリーを誘おうとしたわけではなく、所詮は一夜きりの幸せに過ぎなかったのだ。
上記のセリフを見れば解るように後悔しているのは罪悪感によるものであり、謝罪も彼女が死んだ後にのみ行っている。つまりはただの偽善者である。
死亡時にスーに向けてか母親に向けてか次のセリフを残している。
「何故、わたしをそっとしておいてくれないの?ママは生きていたかったのよ、なのに私が殺してしまった。ママ…ごめんなさい。どこにいるの」
なおリメイク版では彼女はトミーの子を妊娠しており、キャリーによるテレパスによれば「女の子」らしい。
裏話として当時は本当にウィリアム・カットと交際をしていたが撮影現場に良く来ていたスピルバーク監督に見初められ、そのまま結婚。
後にスピルバーグ夫人として有名になる。

★トミー・ロス
(演:ウィリアム・カット)
スーの彼氏で高校のアイドルにして最高位のジョックの称号を持つ。しかし当人は「そんな物は高校限定のもので下らない」と言っている。
この手のホラー映画のリア充男としては珍しい好漢であり、(リメイク版ではキャリーを生徒達の前で笑い物にした国語教師を「クソ野郎」と小声で罵っている)、彼女へのいじめには決して加担しようとしなかった。しかし彼のキャリーへの評価は「気の毒で可哀想な間抜けな女」とほぼ最低の評価。
内心では得体の知れない不気味な女とも感じていた。つまり、愛しさのカケラほども彼には無かった。
(良く希望的観測でトミーはスーを捨ててでもキャリーと結ばれる気だった、と書かれる事もあるがこれは大きな誤解であくまで同情と哀れみからのもの)
スーの頼みでキャリーを誘ったが、日に日に綺麗になる彼女に満更でもない風に装う。最終的に無理矢理キャリーをプロムのひな壇に連れて行った。
プロムの惨劇では豚の血が残ったバケツが頭が当たってほぼこの時点で頭に致命傷を負うも辛うじて生きている状態だった。しかし誰一人としてキャリーの心配はしなかったのだった。そのまま焼死してしまった。

★クリス・ハーゲンセン
演:ナンシー・アレン
いじめグループのリーダー。父親が弁護士でわがままし放題のお嬢様風の女生徒。父親が言うほどには家に余裕が無いのも知っているが自身はそれなりに高い買い物もする浪費癖もある。こう見えて一応クリスチャン一家で当人もクリスチャンと言う意識は一応は、ある。
実はその一方で町一番の不良と淫らな関係を持つ独自の歪んだ考え方を持ったフェミニズムを持つ女性でもある。障害者いじめも率先して行っていた。なお彼女自身はクイーンビーではない。なお高校を卒業したらしたでビリーと別れる気でいた。
クリスがキャリーを破滅させようと考えた切っ掛けは、最初の登校日に昼食時に跪いて祈った事で奇異の目で見られた。そして映画版によるとキャリーの母マーガレットが自宅にまで押し掛けて寄付を要求したのが一因なのとマーガレットの余計な一言『娘と自分以外の人達はみな地獄に落ちる』と言うのを聞き付けて曲解したのが全ての元凶だったようだ。
彼女自身『ナプキンをあいつの口に押し込んで黙らせてやるべきだった』と強く恨んでいるのが解る。
そしてキャリーが『自分と母親以外は地獄に落ちると言い触らして歩いて回っている』とクリスが学校で言い触らした事が原因でいじめが始まった事が示唆されている。

『彼女を殺さないで殺すつもりなんかなかったビリー私は見たくないやめてアクセルペダル私はハンドルを見るああ神さま私の心臓が心臓が心臓が』

クリスは騒動後に逃亡し酒場ザ・キャヴァリアーで2人で盛り上がって事を終えた後に、ビリーと共に車で町に戻ろうとした際に死に掛かったキャリーと駐車場にて遭遇しビリーはキャリーを轢き殺そうとするも念動力により反撃を受け2人諸共、車中にて爆死。
その死の間際にキャリーがテレパスでクリスから感じ取ったのがこれだが、キャリーを破滅させる意図はあっても殺すつもりまでは無かったのが解かる。つまり手を汚したくはないのだ。
しかし、殺すまでのつもりなど毛頭なかった。
スーが作中で語った通り『私達は子供でした。それぞれ全力を尽くそうと努力していた子供だったのです』

クリス自身、大人になり切れない女の子だが、彼女にも彼女なりの強固な主張があるのがはっきりと解るはずである。彼女にも彼女なりのではあるが言い分はあるのだ。
子供であるのはクリスもビリーも例外ではないのだ。やった事は悪い事だが彼女的には正しい行いのつもりで信じて全力で努力して行動した結果がこれである。
処罰を受けたグループの中で唯一プロムの出場停止処分となり、キャリーを逆恨みして、
公衆の面前でキャリーを豚の血まみれにするという最悪の仕返しを考えつく。

彼女自身は「完成した映画を見るまで、自分が演じたキャラクターがこれほどの悪人とは気づきませんでした」と語っている。
ナンシー・アレンは『キャリー』の撮影では辛酸を舐めた。デジャルダン役のベティ・バックリーに平手打ちされるシーンでは、デ・パルマが望んだようなリアクションができなかったため、最終的にナンシー・アレンは30回も平手打ちされる。
なおナンシー・アレンは、この映画が切っ掛けでデパルマ監督に惚れられて結婚している。元彼女のベティ・バックリーは監督の元彼女。
この話も有名な話の1つである。なおナンシー・アレンはロボ・コップでの主人公の相棒警官アン・ルイス役も演じていた。

★ビリー・ノーラン
演:ジョン・トラボルタ
クリスの彼氏の不良男。スケベ心たっぷりで粗暴な性格。本人はダブっているため、みんなより1つ年上なため兄貴風を吹かせたい節がある。
クリスの言うことならホイホイと聞く。当人はそんなつもり等なく自分の考えで行動しているつもりである。
学校でキャリーをもっとも率先していじめていた張本人の1人。彼女を自身の醜くなりかかった母親と重ねている節がある。
『醜くなりかかった母親のようなキャリーのような豚には豚の血を』と言う割りとヤバイ思想の持ち主。
演じたトラボルタは後に『サタデー・ナイト・フィーバー』で大ブレイクする。

★ミス・デジャルデン(映画版:ミス・コリンズ)
(演:ベティ・バックリー)
体育担当の女教師。
学校内で唯一と言ってもよいキャリーの味方のようなもので、彼女がいじめられていると聞いた時は教師として立場上、一応は怒りも示し、いじめグループを締め上げた。
だが、彼女自身もキャリーを見下しているフシがあり、スーとトミーの計画を知ったときは「釣り合わないんじゃない?」と反対していた。
ここも良く誤解され易い点だが、教師であるミス・デジャルダンもキャリーをつい笑ってしまった。直後に我に返ってはいるが、彼女が断じられるべき罪は「教師」としてではなく「本能的に女として女生徒達と張り合った事」にある。それが元凶となりクリスはキャリーへの復讐を思い付く。
キャリーからテレパスで心の中を見透かされた際に、「偽りの優しさ」と断じられた。

★ノーマ・ワトソン
演:P.J.ソールズ
原作ではモブの生徒の一人だったが、映画ではメインキャラ。
半笑いを絶やさず赤帽子を被っている、見ているだけで口に拳を突っ込みたくなる女。



≪こぼれ話≫

この作品は作者が女子大の清掃員のバイトをしている際、女子更衣室のナプキンの自販機を見て

「体育の後に初潮が起こったらみんなどうするか」

という考えからアイディアを膨らませたもの。






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