登録日:2011/07/03(日) 10:00:40
更新日:2025/09/04 Thu 20:11:02
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性能
全長:230mm
銃身長:120mm
重量:890g
使用弾薬:
8mm南部弾(8x21mm)
装弾数:8+1発
銃口初速:325m/s
動作方式:プロップアップ式ショートリコイル
概要
日本の南部銃製造所で吉田智準大尉の設計により開発され1925年(大正14年)に採用された
自動拳銃。
南部麒次郎が以前に開発した南部式自動拳銃(1904年、通称パパ南部)をベースに、構造の簡略化/耐久性強化と基本システムやデザインが変更された。
三八式歩兵銃と並んで旧日本軍を代表する存在である。
南部麒次郎と銃製造所について
南部麒次郎(1869~1949)は1897年に砲兵科士官から東京砲兵工廠に配属となり、そこで所長 有坂成章の部下として三十年式歩兵銃の開発に携わっている。
1902年までには所長を継ぎ、南部大型自動拳銃を完成させたがコストの面から見送られることとなる。
日露戦争、第一次世界大戦ののち海外視察を行い、大戦時に進歩した欧州銃に関する知見をもとに改良し本銃の開発などに活かした。
1922年には工廠の最高責任者である提理(かつ陸軍中将勲二等)となったが1925年までには退役し、南部銃製造所を設立。
財閥との交渉力やバイタリティに秀で、銃器設計や数学の知見を活かし経営に精を出したという。
戦後、下記の再興を見ることなく49年に逝去。
南部銃製造所は36年には昭和製作所、大成工業と合併し中央工業となった。
中央工業では九四式拳銃、一〇〇式機関短銃の開発やその他銃器の製造を請け負っていた。
終戦時に実質的な閉鎖となったものの、52年に保安隊や米軍向けに新中央工業として再興。
新中央工業ではニューナンブの名前でM60リボルバーの製造やM57A/B自動拳銃、M66
短機関銃の試作を行っていた。
75年にはミネベアミツミに吸収され、そちらでM360J SAKURAや9mmけん銃、9mm機関けん銃などを製造している。
構造
外見、機構は
マウザーC96に近く、拳銃開発で先行していた欧州製品を参考にした跡が窺える。
ハンマーはストライカー式で通常のものより単純な構造で命中精度も高い。
引鉄(トリガー)のキレも良いそうだが、現代のストライカー式自動拳銃に比べて暴発に対する安全対策がない為ぶつけたり、落としたりした衝撃で暴発はあり得る。
用心鉄(トリガーガード)は初期型ではただの円形で手袋をすると指が入らない(現場で手袋を二枚重ねにしていたなど開発時に想定されていなかったことをした、というのもある)。
昭和13年以降に製造された物は改良され大きくなっている。
その他にも何度か改良が施されており、旧型でも工場に持っていけば改良してくれるのだが、改造費は自己負担だったので殆ど実施されなかった。
安全装置は銃左側面についており180度回転し、レバーを前側に倒せば解除、射手方向に倒せば作動する。右手で触れないので不便と言えば不便。
弾倉の固定が甘く射撃中の振動で
「ぽろり」することも。改良したものの、弾倉を抜くには更に力がいるようになった。
自動スライドストップ機能もマガジンフォロワーが直接ボルトを止める形式のためより弾倉が抜きにくい。
弾倉を引き抜くとボルトも前進してしまう為、弾倉を交換したら改めてボルトを引いて初弾を装填しなくてはいけないので単なる撃ち切りインジケーターとなっている。
8mm南部弾はほぼ同時に採用されたものであり、マズルエネルギーは333Jと後の9x18mmマカロフ弾並みで7.65mmパラベラム弾に比べても少し劣る程度。
しかしボトルネックの形状を踏襲したせいで発射時の圧力を封じ込めるために閉鎖機構が必要となってしまっている。
機構・性能ともに当時の自動式拳銃としては一般的(必要最低限?)なもので、南部麒次郎も回想録で「この拳銃には特に誇張すべきことはない」と述べている。
後述の運用上、戦争終結時まで生産が継続され28万丁生産されたと言われる。
トリガーガードが狭い物は初期型、広くなった物を後期型と呼ぶ。資料によってはさらに「末期型」という分類もある。
末期型は「遊底の作りが雑」「グリップの作りが雑」ということらしい。同じく終戦時まで製造された九九式短小銃に連なるものがある。
派生としては満州にて試作されていた改良/簡易化版の北支一九式拳銃がある。
逆に派生元の別バリエーションとして南部式小型自動拳銃(通称ベビー南部)があり弾も7x19.8mmの7mm南部弾を用いる。
運用
本銃は制式拳銃という枠組みであったため、将校が持つ軍装拳銃とはことなり憲兵、車両や航空機の搭乗員、機関銃手などが持つ銃として支給された。
そのため軍装拳銃統一を目的としていた九四式拳銃などは後継ではなく用途も異なる。
敗戦後は武装解除により連合国側へ押収されたが、治安維持の為に返還を要請した。その為1946年から一部が警察への支給品として返還され、1948年まで使われた。
東南アジアや中国大陸では独立戦争や国共内戦で他の銃火器と共に使用され、朝鮮戦争では朝鮮人民軍の将校用拳銃として使用されていた。
フィクション
旧軍を題材にした作品なら登場する場合がある。時代も古く性能も光るものがないのでメディアへの露出は多くない銃である。
- 映画『ローレライ』
- 紺碧の艦隊
- 旭日の艦隊
- バイオハザード ガンサバイバー
- ゴジラ(第一作)
巡視船の海上保安官が装備
アニメ第2期の第2話で土方兵曹が使用。
24話で牧史郎が使用。
「Nambu」という名称で登場。
余談
スタームルガーの処女作Mk1(1950年)はベビー南部の複製経験をもとにデザインしたとされる。内部的にはかなり異なるものの、フレーム部の形状は確かにかなり似通っており握り心地も近い。
追記・修正よろしくお願いします。
- ダブルカアラムマガジンを採用するプランもあったが、「サイドアームにそこまで装弾数は必要ない」という理由でボツったそうな。当時の日本人の体格では、握りづらさばっかり目立ったのかも。 -- 名無しさん (2014-04-22 21:22:12)
- 宇宙戦艦ヤマトの14年式コスモガンの元ネタ兼デザインベースでもある。戦士の銃コスモドラグーンといい、今なら別の意味で無理だよなもろなデザイン。 -- 名無しさん (2021-02-11 00:14:16)
- 節々の表現が絶望的にキモイな・・・ -- 名無しさん (2025-08-26 11:31:27)
最終更新:2025年09月04日 20:11