マウザーC96

登録日:2011/07/03 Sun 10:20:53
更新日:2025/09/25 Thu 08:40:04
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性能

全長:308mm(ストック込630mm)
重量:1100g(ストック込1750g)
使用弾:7.63x25mm.30モーゼル弾
銃口初速:430m/s
装弾数:10/20(+1)
動作方式:ロッキングラグ式ショートリコイル



概要

1896年にモーゼル社のフェーデルレ兄弟が開発した自動拳銃
特徴的なグリップにより「ブルーム・ハンドル(箒の柄)」というあだ名がついている。

ボーチャードC93に次ぐ最初期の自動拳銃*1
1896年というと明治29年、日清戦争が終わった翌年である。

マウザー社が正式な型式名を付けなかったこともあり、現在目にする型式名はコレクターや販売店が便宜上に付けたもので、混乱する原因となっている。
ポピュラーな「C96*2」は民間販売用の名称であり、軍には「M96」として販売されていた。軍用としてはほぼ使用されなかったもののモーゼル・ミリタリーと呼ばれる場合もある。
マイナーチェンジ版を区別する為「M+発売年」で呼ばれる事も多い。

Mauserと綴るのでドイツ語に近い発音はマウザー。しかし、日本では明治頃の呼びであるマウゼルが訛ったとされるモーゼルが一般的か。



構造

当時コルト社がグリップ内に弾倉を収めるスタイルの特許を取っており、それを回避するためにトリガーガード前方にダブルカラムの固定弾倉を装備している。
10発の弾薬をクリップでまとめて排莢口から押しこむ形で装弾する。ボルトキャッチはなくマガジンフォロアーを直にひっかけてボルトを止めるスタイルのため単発ずつの装填はかなり難しい。
弾倉のレイアウトの都合重心が前にあり、射撃競技銃に近い。ホルスターストックをグリップ下部に取り付ければカービンとして使用出来る。

木製グリップ以外はスチール製。
フレーム内に機関部、トリガー部分のユニットを入れるスタイルで外部にピンが露出していない。ネジはグリップで使用している一本だけ。
しかしながら部品はすべて切削加工で作られており、肉抜加工と合わせて製造には手間とコストがかかる。

距離を調整できるタンジェントサイトを装備しているモデルが多い。7.63mm弾なら50~800m、9mm弾なら50~500m。

値段は前述の手間もあって他の自動拳銃の2倍は掛かったが、特殊なデザインからステータスシンボルでもあった。
当時は着脱式マガジンより固定式マガジンの方が信頼性が高かったこともあって、20世紀前半においては有名な自動拳銃と言える。



運用

主力と呼べる量を採用したのは中国のみで、他は民生品である場合が多い。
ロシア帝国/ソ連ではトカレフ TT-33の採用まで様々な拳銃が使用されていたが、本銃大多数を占めていた。弾もトカレフ弾のベースとなるなど少なからず影響を与えている。
ドイツではP08/P38の間を埋めたり降下猟兵の武装として用いられたりしている。
イギリスでは一次大戦前に輸入され、若き日のチャーチルやアラビアのロレンスが愛用した。
中国では軍にて制式採用された。その後トンプソン短機関銃の自国生産に合わせ.45ACP弾に対応した一七式拳銃が開発されている。
日本では鹵獲した上記中国軍の拳銃を1940年にモ式大型拳銃として準制式としており、鹵獲した本銃を戦利品として持ち帰った例が多い*3。1930年の濱口雄幸首相銃撃などでも使用されている。



バリエーションの一部

  • モーゼルミリタリー9mm(M1916)
ルガーP08の供給不足を補うため15万丁発注。弾薬の誤用を防ぐためグリップに赤色で「9」と刻印されているので「レッド9」と呼ばれた。

  • マウザー・ライエンフォイヤー
「Reihenfeuer」は「連射」の意味。型式名はM713だが社内での名称はM1931。
着脱式の10/20連弾倉式。
しかしフルオート射撃時の振動でセレクターが勝手に切り替わる等の致命的な欠陥により短期間で生産中止。

  • マウザー・シュネルフォイヤー
「Schnellfeuer」は「速射」の意味。M712又はM1932と呼ばれる。
ライエンフォイヤーの欠陥を完全に改めたモデル。



フィクション




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最終更新:2025年09月25日 08:40

*1 そして初のダブルカラムマガジンを採用した拳銃

*2 CはConstruction(設計)を指す

*3 中国戦線にいた将校らが戦後も秘匿し続けた例が多々ある