ベルチャー/Charbelcher(MtG)

登録日:2012/07/19(木) 01:01:26
更新日:2025/03/15 Sat 01:09:51
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「おまえらに足りない物、それは、マナ、サーチ、コンボ、メタ読み、手札、ドロー、狡猾さ!そしてなによりも─!速さが足りない!

ベルチャー】とは、TCG『Magic the Gathering』におけるコンボデッキの一つである。
デッキ名の由来はキーカードである《ゴブリンの放火砲》(英語版:《Goblin Charbelcher》)から。

禁止カードなどを含まないで考えた場合、コンボデッキの速度としては最速
これより安定性があって早いコンボは、それこそ思考実験フォーマットであるType0みたいなのにしか存在しない。
また一般的にデッキの20枚前後を占める土地が僅か1枚しか採用されなかったり、サイドボードが島15枚だったりするいう突っ走ったデッキでもある。



<キーカード>
ゴブリンの放火砲/Goblin Charbelcher (4)
アーティファクト
(3),(T):クリーチャー1体かプレイヤー1人を対象とする。あなたのライブラリーを、土地カードが公開されるまで上から1枚ずつ公開する。ゴブリンの放火砲はこれにより公開された土地でないカードの数に等しい点数のダメージをそれに与える。もし公開されたカードが山(Mountain)である場合、ゴブリンの放火砲は代わりに2倍のダメージを与える。公開されたカードを、望む順番であなたのライブラリーの一番下に置く。

このデッキのフィニッシャーであり中核を担う4マナのアーティファクト。
3マナとタップの起動で土地が出るまで自分のライブラリーをめくり、その枚数分のダメージをプレイヤーかクリーチャーに与える。
さらにそのめくれた土地が山タイプを持つのであればダメージが2倍になる。

普通に使おうとすると土地はデッキの3分の1くらいを占めているため、与えられるダメージにはかなりムラがある。
下手をすると初っ端から土地で「3マナ無駄遣いしただけ」ということも起こりうる。
「クリーチャーを狙ったら21枚もめくれた」「対戦相手を狙ったらライフが半端に残った」なんてこともしばしば。

しかし上手くめくれれば一撃で相手を倒せるダメージが出せるのも事実。
そこで、これによる20点以上のダメージを安定して出るようにして勝とうというデッキが組まれた。
これが「土地1枚、サイドボードなし、デッキの全てがコンボパーツ」という狂気のデッキ【ベルチャー】である。



<デッキの動き>
  • レガシー/ヴィンテージ
猿人の指導霊/Simian Spirit Guide (2)(赤)
クリーチャー ― 類人猿(Ape) スピリット(Spirit)
あなたの手札にある猿人の指導霊を追放する:あなたのマナ・プールに(赤)を加える。
2/2

土地譲渡/Land Grant (1)(緑)
ソーサリー
あなたの手札に土地カードが1枚も無い場合、あなたは、土地譲渡のマナ・コストを支払うのではなく、あなたの手札を公開することを選んでもよい。
あなたのライブラリーから、森(Forest)カードを1枚探す。そのカードを公開し、あなたの手札に加える。その後あなたのライブラリーを切り直す。

巣穴からの総出/Empty the Warrens (3)(赤)
ソーサリー
赤の1/1のゴブリン(Goblin)・クリーチャー・トークンを2体戦場に出す。
ストーム(あなたがこの呪文を唱えたとき、このターンにそれより前に唱えた呪文1つにつきそれを1回コピーする。)

《猿人の指導霊》や《炎の儀式》などのマナ加速から高速で7マナを捻り出し、《ゴブリンの放火砲》を場に出して起動。それだけ。
その前に《土地譲渡》によりデッキ内のたった1枚だけの土地を回収できれば更に良し。
この場合デッキ内の土地は0枚となっているため、《ゴブリンの放火砲》はデッキの残り枚数分のダメージを叩き出す必殺兵器と化す。
土地が残っている場合でもまず山タイプを持つものを採用するため、10枚めくれれば20点ダメージで勝利となる。

具体的な手順は以下の通り

手順1.0マナで使えるカードから1マナを生み出す。例:《水蓮の花びら》《猿人の指導霊》《土地譲渡》から引っ張ってきた《Taiga》など
手順2.その1マナからさらにマナを増やせるカードを唱える。例:《ほくちの壁》《炎の儀式》など
手順3.7マナになったら《ゴブリンの放火砲》を唱え(4マナ)、すぐに起動する(3マナ)。

一点に特化したその速度は恐ろしく、あの【ドラゴンストーム】をも凌ぐ。
TCGではご法度である先攻1ターンキルも可能、というよりも日常
そうでなくとも3ターン目までには勝負を決められるといえばそのスピードが理解できるだろうか。
さらに機先を制するべく、《予期の力線》を使って対戦相手が無防備になった瞬間にさっさと動く「空中戦モード」まで搭載していることもある。
初手が理想的だった場合、上記の動きが相手の先手で行われて自分のターンが回ってくる前に勝つ「0ターンキル」まで起こりうる。

相手のライフを直接狙う高速即死ギミックであるため、相手の動きをほとんど無視できるのも強み。
MTGのデッキの中で最も対話を行わないデッキを決めるとするならばかなり上位に来るだろう。
少なくとも「デモコンタッサ」が来る以前なら1位の座も堅かった。
自分の初手を見てマリガンかキープかを決めて、コンボを強引に押し通す。
やることといえば本当にそれだけであり、この性質から対戦相手には「交通事故」と呼ばれることも。

無論そこに特化している分、《ゴブリンの放火砲》が止められると相当キツイ。
そういった場合の追加の勝ち手段として、マナ加速呪文と相性の良い《巣穴からの総出》が採用されることも多い。
こちらは1ターンキルこそ不可能だが、1ターン目に1/1のゴブリンが10~12体並ぶことになる。専用の対策カードがなければそのまま物量で押し切れる。
というより《ゴブリンの放火砲》一本だと「引けない/対策されると負ける」ため、サイドボーディングありの試合ではまず勝てなくなってしまう。
そのため最近では《ゴブリンの放火砲》用の対策では対処できない別の勝ち筋を準備することがほとんどである。


ヴィンテージでもレガシーのものに各種「Mox」や《太陽の指輪》などを突っ込んで単純にグレードアップしたタイプが主。
ただし入れる土地を《トレイリアのアカデミー》にして、軽量マナアーティファクトから【ベルチャー】をぶっ放すというタイプも結果を残している。
このタイプは青が使えるので《Ancestral Recall》や《Timetwister》などでのドローや《意志の力》による相手のカウンターや妨害の無効化ができる。
さらに《求道者、テゼレット》《通電式キー》と《Time Vault》による無限ターンコンボも搭載できるためサブプランも充実している。
2019/9/8のヴィンテージ・チャレンジでは見事に優勝を飾った。

変わり樹の共生/Turntimber Symbiosis (4)(緑)(緑)(緑)
ソーサリー
あなたのライブラリーの一番上からカードを7枚見る。あなたはその中からクリーチャー・カード1枚を戦場に出してもよい。そのカードの点数で見たマナ・コストが3以下であったなら、それは+1/+1カウンターが追加で3個置かれた状態で戦場に出る。残りをあなたのライブラリーの一番下に無作為の順番で置く。

うねる森、変わり樹/Turntimber, Serpentine Wood
土地
うねる森、変わり樹が戦場に出るに際し、あなたは3点のライフを支払ってもよい。そうしないなら、これはタップ状態で戦場に出る。
(T):(緑)を加える。

「ゼンディカーの夜明け(ZNR)」にて土地モードを持つ両面カードを手に入れたことで、同じ様なコンボデッキである【The Spy】と共に強化。
「ライブラリーの中では土地として扱われない土地」を積んで動きを安定化させつつ、火力を維持することもできるようになった。
これによって《土地譲渡》型が下火となり、赤ではなく黒を軸にした型が活発になってきた。
マナ加速も《暗黒の儀式》などが十分存在するし、黒になったことで万能サーチである《鏡に願いを》などが使えるのが利点。


  • モダン
小道の再交差/Recross the Paths (2)(緑)
ソーサリー
あなたのライブラリーの一番上のカードを、土地カードが公開されるまで公開し続ける。そのカードを戦場に出し、残りをあなたのライブラリーの一番下に望む順番で置く。対戦相手1人と激突を行う。あなたが勝った場合、小道の再交差をオーナーの手札に戻す。(激突を行う各プレイヤーは、自分のライブラリーの一番上のカードを公開し、そのカードを一番上か一番下に置く。自分のカードの点数で見たマナ・コストの方が大きいプレイヤーが勝つ。)

レガシーよりマナ加速カードが少ないモダンでも、上記の土地モードを持つ両面カードのおかげで実用性を増した。
一応それ以前も《隊商の夜番》のような土地サーチ呪文を多用して「デッキの中の土地を抜き去る」という素朴な型が使われていた。
そこから土地モード持ちの両面カードのおかげで無意味なギミックを入れる必要がなくなり、トーナメントレベルにまで昇華した。

注目のカードは《小道の再交差》。激突云々の部分は読み飛ばしてもらって構わない。
普通に使うとただのオマケ付き土地サーチだが、これを実質土地0枚のデッキで使うとライブラリーが全て公開される。
そのため「残りをあなたのライブラリーの一番下に望む順番で置く」が「ライブラリー全てを望む順番に並び替える」になる。
要はデッキを好きなように積み込むことが出来る
これにより《魂の再鍛》→《猿人の指導霊》×4→《アイレンクラッグの妙技》→《ゴブリンの放火砲》と積めば次のターンに終了となる。
完全に《ゴブリンの放火砲》発射準備用のカードとなるのだ。
打ち消しが怖ければ《夏の帳》を、サイド後に対策をされたなら《集合した中隊》から《タッサの神託者》《地底街の密告人》を引っ張ることも可能。

速度こそエターナル環境の【ベルチャー】には及ばないが、このコンボによる安定感と応用性が売り。
ただしその速度が遅めな関係で相手の動きはほど無視しにくいため、そちらよりは対話が必要となってくる。
普通に土地を置く&マナ加速を大量に使用するという観点から、メインから《血染めの月》などの妨害を採用して安定感をさらに高めた型が多い。

しかし【ベルチャー】を始めとするコンボデッキの台頭が危険視された結果、2021年2月にモダンで《猿人の指導霊》が禁止カードに指定
デッキそのものはまだ組めるのだが上記の積み込みコンボも消滅したため、弱体化を余儀なくされた。
高速の一途をたどるモダンにおいてコンボデッキのキルターンが伸びるという無視できない打撃を受けている。


朦朧への没入/Sink into Stupor (1)(青)(青)
インスタント
対戦相手がコントロールしていて土地でないパーマネントや対戦相手がコントロールしている呪文1つを対象とする。それをオーナーの手札に戻す。

催眠の泉/Soporific Springs
土地
催眠の泉が戦場に出るに際し、3点のライフを支払ってもよい。そうしないなら、これはタップ状態で戦場に出る。
(T):(青)を加える。

現実の設計者、タメシ/Tameshi, Reality Architect (2)(青)
伝説のクリーチャー — ムーンフォーク(Moonfolk) ウィザード(Wizard)
クリーチャーでない1つ以上のパーマネントが手札に戻されるたび、カード1枚を引く。この能力は、毎ターン1回しか誘発しない。
(X)(白),あなたがコントロールしている土地1つをオーナーの手札に戻す:あなたの墓地にありマナ総量がX以下でありアーティファクトやエンチャントであるカード1枚を対象とする。それを戦場に戻す。起動はソーサリーとしてのみ行う。
2/3

睡蓮の花/Lotus Bloom
アーティファクト
待機3 ― (0)(このカードをあなたの手札から唱えるのではなく、(0)を支払うとともにそれを時間(time)カウンターが3個置かれた状態で追放する。あなたのアップキープの開始時に、時間カウンターを1個取り除く。最後の1個を取り除いたとき、それをそのマナ・コストを支払うことなく唱える。)
(T),睡蓮の花を生け贄に捧げる:好きな色1色のマナ3点を加える。

その後「モダンホライゾン3(MH3)」で土地モードを持つ両面カードが増えると、【青単ベルチャー】なる新しいタイプが登場。
青単にしたことで打ち消しバウンスを多く採用できるのが強み。
これらを用いてコンボパーツが揃うまでは対戦相手を妨害し、コンボ始動後は相手からの妨害を弾いていく。
その分青だけではマナ加速手段に乏しいため、《現実の設計者、タメシ》の起動型能力で《睡蓮の花》を使い回すギミックを搭載している。

ナドゥ】禁止後のモダン環境で【エネルギー系ビートダウン】が隆盛を極めたことで、それに強いコンボデッキのひとつとして注目を集めている。



<デッキの欠点>
コンボデッキであるため、言うまでも無くカウンターに弱い。
また《真髄の針》などで起動型能力を封じられる、プレイヤーを対象にできなくなる、ダメージを軽減されるなどにも弱い。
《神聖の力線》を初手で出された瞬間にプランの一つが崩壊する。
またキーカードがソーサリータイミングであることから《オアリムの詠唱》などにも対応できない。
その上相手への妨害手段も持たないことから、同じようなコンボデッキ対決でも引き勝負になる。

なにより単純に初手運やドロー運の要素がとても強いため、安定した動きを期待するのは不可能。
先攻ワンキル可能であるにもかかわらず構成パーツに規制が掛からないのはその不安定さと弱点に起因する。

また上述の性質からサブプランがあったとしても一発芸しかできないことも多い。
特にレガシーでのメイン戦はデッキ相性と初手で勝敗が決まるといってまったく過言ではない。

それらへの対抗策は、対策されるまでにコンボを決めること。殺られる前に殺ればいい。
一芸特化なため安定した成績は残せていないが、だからこそ愛好者も多い。



<余談>
サイドデッキが0枚だったり島15枚だったりするのは、デッキの構成が余りにも特異なコンボに特化しているため。
特定デッキの対策カードなど入れるとメインのコンボが回らなくなるのだ。そもそもサイドチェンジなど行わないことも多い。
基本土地15枚などを入れるのは一応相手への牽制としての意味合いが強い。

ただしそういったサイドデッキはネタに近く、実際にはそこまで使わないにしろ置物破壊などを入れる場合が多い。
というより《燃え立つ願い》が使える環境の場合、コンボ補助用のパーツをそろえておくことの方が圧倒的に多い(ウィッシュボード)。
逆に土地の少ないデッキのサイドデッキがこれのパーツ一式というパターンもある(変形サイドボード)。
1戦目は別の動きをして、2戦目では【ベルチャー】となって急襲をかけるのだ。本当に奇襲性が抜群に高い
【ベルチャー】はメインデッキより、むしろサイドボードこそ重要なデッキであるとも言える。


レガシー環境では一応貧乏デッキにあたる。
マナアーティファクトに超高額カード《ライオンの瞳のダイアモンド》が3~4枚入ったりするが、それ以外の呪文は大抵安い。
高額化の根源であるデュアランなどの土地が森と山を兼ねる《Taiga》1枚だけで良い点もデッキ価格の安さに拍車をかけている。
マナ加速に黒のカードを使いたいなら追加で《Bayou》も必要になるが。


《ゴブリンの放火砲》はニッチ極まりないカードではあるのだが、たびたびイラスト違い版が再録されている。
初出の「ミラディン(MRD)」版はシンプルにカッコイイ砲台。ゴブリン要素が薄め。
「エターナルマスターズ(EMA)」版では《Black Lotus》が打ち上げられており、気分はさながらヴィンテージ。
ゴブリンにこれらの価値は難しすぎるようである。
面白いのが「兄弟戦争(BRO)」で収録された旧枠版のイラスト違い版。これはイラストが「そのアーティファクトの設計図」になっている。
砲台の横にゴブリンが描かれ、上にはニワトリ、キノコ、頭蓋骨、ティーポットなど様々なイラスト描かれている。
そして別の枠で本来大砲で打ち出す砲弾や爆弾、薬品などに×印がつけられている
ゴブリンにこれらの扱いは難しすぎるようである。



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最終更新:2025年03月15日 01:09