Rebecca Guay(MtG)

登録日:2012/03/31(土) 23:25:36
更新日:2024/03/18 Mon 16:43:28
所要時間:約 4 分で読めます




Rebecca Guay(レベッカ・ゲイ)はMagic the Gatheringの女性イラストレーターの1人。

▽目次

☆概要☆

まだ日本語版が発売される前、Force of Willがあまりに有名なアライアンスから参加している古参の絵師。

MtGの他に、同じくウィザーズ社のカードゲームでのイラストや、ファンタジーものの書籍の挿し絵なども手掛けている。



☆特徴☆

MtGにさほど詳しくない人にMtGのイラストのイメージを聞くと、大体はリアル系でゴッツい人物達、キモかっこいいクリーチャーなどを挙げる人が多い。
実際そういうカードが多いし、硬派でマッシブな雰囲気もMtGの魅力のひとつだろう。


…しかし彼女、Rebeccaはそれらとは一線を画す非常に淡く繊細儚げなイラストを描き上げる。

水彩のぼかしを多用した背景は、まるで絵本のように優しく、柔らかな筆致で描かれる人物達は幻想的ですらある。

アライアンスの《Kaysa》からはじまり、エルフフェアリー天使など、彼女が描く女性の美しさと愛らしさから非常に高い人気があり、MtG随一の萌え絵師との呼び声も高い。
絵師の名前まで気にしていないプレイヤーでも、なんとなくゆるふわガールみたいなイラストを見た記憶があるだろう。
それが多分彼女のイラストである。
何気にトーナメントで活躍するカードも多く、大会などに参加しているプレイヤーなら、Rebeccaのイラストを見た事が無いという事はまず無いだろう。





☆代表的なカード☆

《Kaysa》

緑のクリーチャーを強化するアライアンスの伝説のエルフ。
スペックはイマイチだが、凛々しさと美しさから現在も人気が高い。
黎明期の彼女の代表作と言える。


《星明かりの天使/Starlit Angel》

ポータルで登場した、白い雲から星空に昇る姿が神々しい天使。
性能では5マナ3/4飛行と、セラの天使悪斬の天使の下位互換。
何故か日本語版ではイラストレーターの名前が間違って表記されている。ちなみに間違って書かれているのは、土地のイラストの美しさでこちらも非常に人気が高いJohn Avon。


《ガイアの祝福/Gaea's Blessing》

ウェザーライトで登場し、後に時のらせんでも再録された、非常に優秀なライブラリー防御カード。
《ドルイドの誓い》と組んで見かけることが多かった他、マナが不要なライブラリー防御手段ということもあって、現在もサイドボードに一枚入れる人が多い。
ウィンドグレイス卿に憧れていた青さの残る青年、後のジャイアンことクロウヴァクスと、セラの次元で生まれた天使の1人、セレニアが過ごした短いながらも満ち足りた時を描いたこのイラストを、彼女の最高傑作に挙げる人も少なくない。
セレニアは全裸に蔦のようなものを巻いている姿なのに、エロスより幻想的な美しさに目を奪われるのがRebeccaの魔法か。
古参のプレイヤーは知ってるだろうが、セレニアはこんなに可愛いにもかかわらず、後に悪堕ち顔面凶器化する。


《非業の死/Perish》

黒いデッキのサイドボードには必ずと言っていいほど積まれていた一枚。3マナというお手軽コストで緑のクリーチャーを根こそぎ一掃する最終兵器。
緑のカードを多く手掛けた彼女がどういった経緯でこのカードの担当になったのかは永遠の謎だが*1、白いローブの巫女さんや白鳩が地に倒れ伏すイラストは絶望感にあふれるカード内容に沿ったものに
……あれ?死んでるの白のクリーチャーじゃね?
かつてのレガシーでは、対処が難しかった《タルモゴイフ》擁するZooや、数がやたら出てくるエルフを相手にサイドボードからよく用いられた。そして返しで出てくる《鉤爪の統率者》


《予報/Predict》

オデッセイで収録されたインスタント。
教示者殺しとして機能したり、記憶の欠落からの2マナ2枚ドローなど、当時の青使いから一定の支持を集めたが、そんなことは重要ではなく、スカートに上半身がブラのカップだけの美女が、何やら花のようなものを片手に占いをしているように見えるイラストは、多くの紳士達を魅了した。
ただ《師範の占い独楽》が禁止されて以降のレガシーで、青白奇跡の基本パーツになりつつあるようである。


不可思議/Wonder

コイツが墓地にいると自軍のクリーチャー全てに飛行を与えるという意味不明生物。6/6ワームや2桁にパンプしたサイカトグが飛ぶ様は圧巻。
その能力のため、コイツ自身が場に出ることはない。犬やサイカトグの餌として捨てられる事も多く、そんな扱いのせいかどことなく悲し気な面持ち。


《苦花/Bitterblossom》

恐らく、Rebeccaがイラストを描いたカードでもっとも活躍した、毎ターン1ライフで1/1飛行のならず者フェアリーを生産するエンチャント。
ビートダウンでもコントロールでも強力であり、こちらも彼女が描いた《呪文づまりのスプライト/Spellstutter Sprite》と共に青黒フェアリーでトーナメントを席巻した。
あまりに強すぎて当時は冬の時代をもたらしてしまったが…。
黒や紫で彩られた花から、妖しくも美しいフェアリーが舞い出る様は、不気味さと妖艶さが同居した黒のカードらしい仕上がりになっていて、白や緑のRebeccaのカードとはまた違った良さが垣間見れる。
Rebecca女史は他にも当時のフェアリーデッキでよく見かけた《コショウ煙》《呪文づまりのスプライト》などのイラストも担当していた。まさに彼女のイラストが非常に目立ったデッキである。勘弁してくれ


《海のドレイク/Sea Drake》

ポータル・セカンドエイジの、海の上を飛ぶ小さなドラゴンが描かれたカード。
絵画的に描かれた波と空と月、そして遠くの陸地が情緒を誘う。人間のたぐいを描かないRebeccaのイラストの代表例。……と、おそらく最近始めた人の説明だとここで終わる。
実はこのカード、レガシーで需要があったので一時期高値がついていた。
3マナ4/3飛行で、デメリットとして「土地2枚を対象として手札に戻す」というETBがついているのだが、自分のコントロールする土地が1枚以下だった場合デメリットを踏み倒せるというのがミソ*2
当時は《金属モックス》と2マナランドを利用した高速デッキ「ストンピィ」がレガシーでブームになっており、特に赤の「ドラゴンストンピィ」が貧乏デッキ*3として結果を出し始めていた時期だった。
これの白版「エンジェルストンピィ」、黒版「デーモンストンピィ」などと並び、青版の「フェアリーストンピィ」なるものが開発されたのだが、その青ストンピィのメインアタッカーとしてに起用されたのだ。
《不可思議》《苦花》ほどではないが、こちらもなかなかの実績や話題性を残しているカードである。


《Persecute Artist》

ジョークエキスパンション「アン」シリーズの第2弾、「アンヒンジド」の黒のアンコモン。本を抱えた長い髪の女性がミノタウロスやらゴリマッチョの戦士やらに取り囲まれて不安そうにしている、というイラストがすでにヤバい。
《迫害/Persecute》のパロディで、アーティストを1人指定しそのアーティストが描画したカードを《迫害/Persecute》する(ただしRebecca Guayだけは指定できない)。

オンスロートブロック第2追加セット「スカージ」発売の頃、
「オンスロートブロックのアートディレクションを担当したディレクターが、Rebeccaに迫害(彼女が担当したイラストを収録しない決定)をした」という憶測込みの情報が流れた。
MtGプレイヤーの怒りはすさまじく、公式からすみやかに否定の声明が出たにもかかわらずアートディレクターは更迭されてしまった*4
実際にはこの「迫害」は一部の暴徒化したファンが煽ったことによる誇張だったらしく、前述の通り公式が否定の声明を出した*5
スカージ以降*6は、水彩画で強調(デフォルメ)を伴う女性的でアートタッチなRebeccaの画風は異端になりつつあった。
ここで画風が合わないことから不採用が決定されたというニュースが、いつの間にか「俺たちのRebecca Guay女史が解雇された」と伝言ゲーム的に伝わったようである。
解雇反対の運動に対し、本人から感謝のメッセージが出てしまったことなども、この「Rebecca解雇反対騒動」を後押ししたようだ。この辺の情報が結構錯綜している。

ただし確実にひとつ言えるのは、スカージ以降イラストを提供しなくなったのはRebecca Guayだけに限らないということ。
たとえばPhil Foglio氏*7のイラストを見れば、現代マジックにそぐわないことが一目で分かるだろう。
つまりこういう問題が複雑に絡み合っている。この問題は調べてみると色々闇が深まってくるのでこの辺で。

最近ではWylie Beckert氏をはじめ独特な画風のイラストレーターも多く、さらにこういった諸問題を解決できるように「絵違いの特別版カード」などでこれまでのMTGと違った印象を持たせるカードを多く出している。
また、実際に女性問題で苦情が出た人気絵師が解雇された挙句「こいつのイラストはもう使いません。イラストも全部差し替えます」と緊急声明が出される*8など、本当の意味でPersecute Artistが行われた事例もある。もちろんこれは自業自得であり、同情の余地は一切ないのだが。
ともあれ「当時のジョークが現実に追いつかれつつある」という意味では、MTGという文化も随分円熟したものだと言えないだろうか。


他にも《サプラーツォの入り江》《チャネル(FtV版以降)》《花の神》など、様々なカードで彼女のイラストが採用されている。画風が結構印象に残りやすいので、調べてみると彼女だったということも多い。
土地絵師として有名なJohn Avonとともに、マスクス~インベイジョンという日本MTGの黄金期をプレイしていた人にはたいへん印象深い絵師である。



追記・修正はゆるふわ森ガールに出会った日にお願いします。

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最終更新:2024年03月18日 16:43

*1 裏を返せば緑のカードを多く手掛けているからこそ、それらが非業の死を迎えていくイラストをうまく描けたとも言える

*2 ポータル系のカードはルールを複雑にしすぎないように、従来のMTGと異なる処理が行われるカードが多かった。通常環境でポータルが解禁されるや否や、こういったテキスト不備の穴を突いたデッキが盛んに研究された。

*3 当時の話。現在同じデッキを組もうとするとめちゃくちゃ高くつく。

*4 2003年頃にMtGのアートディレクターを担当していたJeremy Cranfordは2006年にWotCを退職している。

*5 ただしアメリカの文化として、そもそも謝罪を徹底的に嫌って「実はこういう意図だったんだ」と非を認めることなく態度を翻すというものがある。つまりRebeccaを解雇するつもりだったが反対意見が多かったのでやっぱやめた、と捉えることもできる。……ただそんなことを言い始めたら本当に何を信じればいいか分からなくなってしまうということもお忘れなきよう。この辺の文化は「アメリカ初の陰謀論が妙に多いこと」などにもつながってくる。

*6 スカージ直後の「第8版」「ミラディン」からは枠を刷新し、これまでの絵師が比較的自由な画風で描いていたものからハードな世界観への統一が図られた。

*7 ダブルマスターズ2022で《混沌のねじれ》のイラストを提供したことで、オールドプレイヤーにたいへん話題になった人。コミカルな画風や女キャラの妙な色気などが特徴の、90年代のMTGを代表する絵師の一人。現代のMTGでは絶対に見ることができない画風には昔からファンが多い。

*8 余談となるが、これでエイプリルフール用に配られるカードに補欠として抜擢されたのが《悪鬼の血脈、ティボルト》である。プレインズウォーカーで唯一白枠として印刷されるという快挙を成し遂げた。