色対策カード(MtG)

登録日:2011/08/05 Fri 15:42:38
更新日:2025/04/02 Wed 15:55:52
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色対策カードとは、TCG『Magic the Gathering』に登場する特定の色(=属性)に対して強力な効果を発揮するカード群のことである。



概要

その名の通り、特定の色を対策するために存在するカード群。
フレーバー的には「自身と大きく異なる性質、思想を持つものを排斥する」といったもの。

そういったフレーバーのため、色対策カードの多くは自身の色の対抗色または敵対色*1に相当する色を効果の対象としている。
とはいえ友好色と対抗色の概念が崩れている特殊なブロック*2では友好色に対する色対策カードも存在する。
また最近では「草木は炎に弱い」というイメージから友好色である緑を対象とする赤の色対策カードが登場していたりもする。


ゲームのデザイン的な面でいえば、これらの色対策カードの実装はMtGの黎明期に行われた「多色化の奨励」の一環である。
特定の色に対して極端に強いカードを用意することで
  • 土地事故が起きにくいが、できる事の幅が狭く色対策カードで壊滅する危険性がある単色デッキ
  • 色対策カードの影響を軽減でき、できる事も多いが土地事故のリスクが付きまとう多色デッキ
という形で住み分けさせるという意図があったのだ。
ただし、この目論見自体は成功したかと言われると若干微妙なところがある。



色対策の歴史


色対策カードがどれくらいその色を対策できるのかというと、2014年くらいまでに登場したものは冗談抜きで

それ1枚で単色デッキを相手に勝利が確定する

という、誇張抜きで「出せば勝ち」な程に強烈な効果を発揮していた。
色対策というよりも「その色絶対殺すマン」という表現が合うかもしれない。

その色が調整をすり抜けて大暴れした際に安全弁となるように設計されているため、
特定の色に対してのみ絶大な効果を発揮するという特性上、自分の色のやれる行動の範囲を超えた行動さえも許容されていたのも特徴。
例えば赤は本来エンチャントに触れないが、《赤霊破》は青であるならばエンチャントを含む全てのパーマネントを破壊できるし、
その逆で青は本来「破壊」を苦手としているが、《青霊破》は赤であるならば全てのパーマネントを破壊できる、といった具合。


例えば「ゼンディカー・ブロック」時代に赤を激烈に苦しめた色対策カードに《コーの火歩き》というカードがある。

Kor Firewalker / コーの火歩き (白)(白)
クリーチャー — コー(Kor) 兵士(Soldier)
プロテクション(赤)
プレイヤー1人が赤の呪文を唱えるたび、あなたは1点のライフを得てもよい
2/2

当時の赤のデッキは「20点を削りきるため速度を徹底的に高める」という思想で組まれていたため、事あるごとにライフを回復されるのは非常に厄介。
しかもプロテクション(赤)によって赤のクリーチャーとの戦闘では死なない無敵のブロッカーにもなる。
加えて赤はクリーチャーへの対処手段を「ダメージ」か「クリーチャーを対象に取る手段」に依存しているので、赤単では全く対処できない*3
1枚出されただけで敗北の文字が脳裏をよぎり、2枚出されたら投了。こんなカードがたったの2マナ。しかも4枚フル投入が可能
これが往時の色対策カードの強さである。というかこれでも20世紀時代の色対策に比べるとめちゃくちゃマシになってる方。
当時のプロが公式サイトの記事で「出されて投了なんてダサすぎる…」なんて書いていたが、本当に間違いでも何でもない。

一方で、赤を一切使わない相手からすれば単なる2マナ2/2のバニラにすぎない。ニッサファンクラブこと《ニッサに選ばれし者》(2マナ2/3)*4以下である。
そのためこのカードはあくまで「対赤のプロフェッショナル」という役周りに過ぎない。こういったカードは主にサイドボードからの採用が多くなる。

なのでプレイヤー側にとっての《コーの火歩き》への対策は
「赤使用中は白と当たらないように祈る」「赤使用中に出されない事を全力で祈る」「赤のカードを使う事を諦める
というものだった*5
環境の中に赤が増えれば火歩きが増える。火歩きが増えれば赤が減る。
この様な「メタゲームの変遷」の役割を担う水位調節用の安全弁が色対策カードだったのである。
さらにこの時期の有用な色対策は
「刺さる相手には出されるだけで投了が視野に入るほど激烈に刺さる」一方で「刺さらない相手には一切刺さらない完全な無駄牌と化す」
という非常に極端な性質を持っていた。
そのため使われる側は多色化、特に黒や白をタッチして色の弱点を補うという方法も取れた*6

また色対策カードにもそれぞれの色の動きを反映することが多いため、色対策として十分なものと不十分なものが混在する。
つまりバランスの不均衡をもたらすということも起きてしまう。
たとえば《コーの火歩き》の時代の場合、赤が持っていた対白のカードは《焼却》だった。

Combust / 焼却 (1)(赤)
インスタント
この呪文は打ち消されない。
白か青のクリーチャー1体を対象とする。焼却はそれに5点のダメージを与える。このダメージは軽減できない。

このカード自体はそこそこ強かったのだが、
「軽減できないダメージを与えるといっても、対象を取るのでプロテクション(赤)を抜けられない」「そもそも環境にタフネス6以上のカードが多い」
ということでさっぱり採用されなかったカードである。
もちろんプロテクション(赤)を持つ《コーの火歩き》にはまったく対処できない。
そもそも白はエンチャントやプロテクションが得意な色のため、白の色対策カードや致命的なカードを赤で対処ができないなんてことは多い。
一方で赤は何につけてもダメージばかりなので白には決定打を与えられないこともしばしばあり、この極端な相性差もあってプロプレイヤーからの赤の評価は低いことが多かった。


サイドボードという概念が極めて基本的なMTGでは、極端な対策カードも「対策の対策」をどうするかという駆け引きを生むため許容されることが多い。
しかしそういったカードで完封される体験は楽しいものではなく、特に新規プレイヤーを引き込む上では大きな障壁となりうる。
たとえば対戦相手が友人しかいない学校環境などで、「○○は赤のデッキを使うから、メインから《コーの火歩き》を入れよう」なんてことをしたら、……まぁどうなるかはお察しください*7
実際色対策カードが、環境からデッキとカジュアル環境でのそのデッキの愛好家を消し去ってしまう事は依然としてある
現代でも《夏の帳》サイクルや《神秘の論争》といった極端な色対策カードが環境をゆがめた話は好まれる。

これではよろしくないということで、近年の色対策カードは
  • 2色に作用するが、他の色には効果が無い
  • 1色に作用し、他の色にも最低限の効果はある
といったデザインに落ち着き、「特定の色を完封こそしないが対処としては有効」といったところになりつつある。
ポケモンで言えば「水タイプが草タイプ対策に持っている氷技」のような、いわばサブウェポンといったところ。
2色対策カードの代表例は「基本セット2011(M11)」のサイクルとそれらのリメイクである「基本セット2020(M20)」のサイクルである。


その後の時代で色対策カードが大きく注目を浴びたのはやはりオーコの秋となった「エルドレインの王権(ELD)」期のスタンダードだろう。
端的に言えば「緑とオーコがクソ強い」環境であったのがこの時期。
その「強い緑のカード」の中には色対策カードである《夏の帳》が存在し、それによって青・黒を中心としたデッキは押さえつけられていた。
とはいえ初期は採用はほとんどサイドボードであり、まだ色対策カードとしては普通の使われ方だった

そのような中で《霊気の疾風》《神秘の論争》《害悪な掌握》といった低コストで緑やオーコ対策になる色対策カードが注目を浴びはじめる。
そしてサイドボードはおろかだんだんとメインから採用されだしたのである。
更に【オーコ(フード)】デッキも同型対策でこれらを投入し、それどころか色を足してまで自らも《害悪な掌握》を追加採用して同型を対策し始める。
これら色対策カードの採用枚数はどんどん増えていき、メインから採用はザラ、メインに5枚以上サイドボードに更に投入もあるという事態となった。
挙句の果てに【フード】デッキが同型対策の対策としてサイドボードに入れていた《夏の帳》をメイン投入し始める事態に発展。
最終的にミラーマッチでメインから多種の色対策カードを投げ合うという下環境でもあまり見ない異様な光景が誕生してしまった。
これだけ対策されまくってなおメタゲームの中心で活躍したのだから《王冠泥棒、オーコ》は異常という他ない。

最終的に《王冠泥棒、オーコ》や他の緑関連のカードが多く禁止送りとなり、この異常なまでの対策合戦は終着した。
しかしその禁止カードの中に色対策カードである《夏の帳》も含まれていたのは色対策カードを語る上で外せない点だろう。
ともあれこの禁止により奈良公園と揶揄された【フード】デッキの暴虐は去り、対策だった色対策カードの採用も減少。
採用されるとしてもサイドボードという真っ当な(?)採用に留まっていった。


ぶっちゃけ色対策の評価というのは、
  • 競技色の強い環境の最前線でプレイする人
  • あくまでカジュアルに楽しむ人
  • 競技色環境の記事を読むのが好きでプレイ自体は身内とのEDH程度にとどまっているカジュアル勢
あたりで完全に異なっており、後述するようにプロプレイヤーでも激しく嫌う人はまったく珍しくない。
「これもマジックの醍醐味」と認めるか、「クソ要素なのだから弱体化は当然だ」と憤るかはあなた次第。
ぶっちゃけ愛好家でも嫌いな人は多いし、引退勢でもサイドボードの相性差を好む人もいる。結構やぶへびな話題である。
大事なのは相手の意見を認め合うことだろう。

代表的な色対策カード


それでは、敵対色の説明と共に一部のカードを紹介してゆく。
参考に色の寓意も同時に掲載する。


性質:聖善・秩序
敵対:黒(邪悪) (混沌)

秩序と純潔を尊ぶ白とあって対策カードも大抵が苛烈。
プロテクションやエンチャントによる対処も得意。
黒や赤は「対象に取る除去に依存している」「エンチャントに触れることができない」ため、その時点で激烈に刺さるカードも多い。

Karma / 因果応報 (2)(白)(白)
エンチャント
各プレイヤーのアップキープの開始時に、因果応報はそのプレイヤーに、そのプレイヤーがコントロールする沼(Swamp)の数に等しい点数のダメージを与える
「リミテッド・エディション(1ED)」から存在する黒対策のエンチャント。
黒をライフで追い詰めて殺す。単色なら出されて数ターンでライフが枯渇する。
黒にはライフをコストとするカードが多いことも追い風となって効果は抜群。
しかも前述の通り黒は基本的に置物に触れないので壊される心配も無い。
ただしやや重い事や【白単ウィニー】と相性が悪い事から採用されない場合もあった。

Warmth / 暖気 (1)(白)
エンチャント
いずれかの対戦相手が赤の呪文を唱えるたび、あなたは2点のライフを得る。
「テンペスト(TMP)」で登場した赤対策のエンチャント。
赤は火力で押すデッキが代表的だが、このカードが1ターン目に《モックス・ダイアモンド》などから出されると一気にパワーダウンする。
赤側も対策カードが無いわけではないのだが、それでも凶悪な1枚だった。【赤単】なら2枚貼られたら投了するプレイヤーも少なくなかった。
軽量呪文を次々と唱える【スライ】系のデッキには悪夢そのものだが、赤の大型クリーチャーで押してくるタイプのデッキには若干効果が薄い。

Circle of Protection: Red / 赤の防御円 (1)(白)
エンチャント
(1):このターン、あなたが選んだ赤の発生源1つが次にあなたに与えるすべてのダメージを軽減する。
「リミテッド・エディション(1ED)」出身であり、各色版が存在する「防御円」サイクルエンチャントの1枚。
これと《黒の防御円》がいわゆる対抗色の色対策にあたり、サイクル内でもよく使われた。
赤の永遠の天敵とも言える存在であり、2000年代のMTGの定番の話題。先述の「スターライト・マナバーン」でもネタにされたのはそういう理由。

Crimson Acolyte / 真紅の見習い僧 (1)(白)
クリーチャー — 人間(Human) クレリック(Cleric)
プロテクション(赤)
(白):クリーチャー1体を対象とする。それはターン終了時までプロテクション(赤)を得る。

1/1
「インベイジョン(INV)」で登場した赤対策のクリーチャー。
自分と味方を赤から守れる。しかし赤くない相手には2マナ1/1バニラと悲惨な性能になってしまう。
だが同弾にはあの《火炎舌のカヴー》を筆頭に強力な赤のカードがずらりと存在した。
当時のプロは「インベイジョン・ブロック」構築の環境が真っ赤に染まっていることを読み取り、こいつに着目。
赤以外の相手には役立たずになることを承知でメインデッキから4枚採用するという恐るべき戦略によってプロツアー東京01で優勝を成し遂げた。
それが白青で組まれた赤ガンメタデッキ【ソリューション】である。詳細についてはメタゲームの項へGOだ。

Kor Firewalker / コーの火歩き (白)(白)
クリーチャー — コー(Kor) 兵士(Soldier)
プロテクション(赤)
プレイヤー1人が赤の呪文を唱えるたび、あなたは1点のライフを得てもよい。
2/2
既に取上げた「ワールドウェイク(WWK)」で登場した赤対策のクリーチャー。
出されるだけで赤がビタ止まりする。
当時の赤は《稲妻》の再録でお祭り騒ぎ、「ミラージュの再来」と呼ばれたほどに【赤単】が大流行した時期だったが、その安全弁として登場した。
この時期の赤は本当に理不尽なレベルで強かったのだが、それがまったく勝てなかった理由がひとえにこのカードにある。
その後《四肢切断》を得て《精神を刻む者、ジェイス》と《石鍛冶の神秘家》が禁止されると、【赤単】はこれまでのうさ晴らしとばかりにスタンダード最後の3ヶ月で大暴れ。
そのせいでメインからこれを4枚投入するデッキが登場するなど、メタゲームにも大きな影響を与えた。

Celestial Purge / 天界の粛清 (1)(白)
インスタント
黒か赤のパーマネント1つを対象とし、それを追放する。
「コンフラックス(CON)」で登場した黒・赤対策のインスタント。「基本セット(M10)」など基本セットの色対策サイクルとしても数度再録されている。
2マナで黒や赤のカードなら何でも追放できる。
黒には放置すると面倒なカードが山程あるし、赤には《血染めの月》とか単に破壊しても帰ってくるフェニックスとかもあるので環境次第では刺さる。


性質:思考・技術
敵対:(衝動) (自然)

青の対策カードは直接処理するというより時間稼ぎ的な役割を持つものが多い。しかしこの時間稼ぎがやたら強い。
そもそも青はできることが極めて多いため、対策カードをものともせずに戦術を遂行できてしまうこともしばしばある。

Chill / 寒け (1)(青)
エンチャント
赤の呪文は、それを唱えるためのコストが(2)多くなる。
「テンペスト(TMP)」で登場した赤対策のエンチャント。
このカードの名前に「うげっ?!」となる人も多いのではないだろうか。それほど有名な赤対策カードである。
序盤の立ち上がりが遅い【コントロール】が多い青にとって、天敵とも言える赤の【低マナビートダウン】【スライ】から身を守る重要なカードだった。
現在でも「赤が詰むカード」として有名。1枚貼られるだけでほぼ敗色濃厚、2枚貼られたら投了である。
ただし通るかどうかは別として《赤霊破》のような対処手段があるだけまだ有情。通るかどうかは別として。
そんなもんがなかったスタンダード時代は、まぁ……

Blue Elemental Blast / 青霊破 (青)
インスタント
以下から1つを選ぶ。
  • 赤の呪文1つを対象とし、それを打ち消す。
  • 赤のパーマネント1つを対象とし、それを破壊する。
「リミテッド・エディション(1ED)」出身の赤対策のインスタント。下記の《赤霊破》と対を成す。
こちらも著名な赤対策カード。青の代表的な打消し呪文より対象が絞られる分、たった1マナで赤のカードを一通り封じられるのは便利。
昔は【ゴブリン】を除けば《稲妻》か《赤霊破》くらいと撃つ対象が少なかったが、最近では赤のカードも強くなってきたため評価が上がってきている。
いざとなれば《意志の力》のコストにもできるのも優秀で、対多色デッキが相手の時も無駄にならない。
レガシー以下の環境では定番の1枚。
亜種に《水流破》というカードがある。機能自体はあまり変わらないが細かい違いがあり、プレイヤーの趣味で選ばれる。

Hibernation / 冬眠 (2)(青)
インスタント
すべての緑のパーマネントを、オーナーの手札に戻す。
「ウルザズ・サーガ(USG)」で登場した緑対策のインスタント。
緑が主力とするクリーチャーがこれ1枚で全て手札に戻されてしまう。特に緑お得意のトークンには除去として働くため威力絶大。
初出の頃には軽量クリーチャーを序盤に一気に並べる【ストンピィ】が流行していたため、青いデッキのサイドボードによく入っていた。
「第8版(8ED)」で再録されているのでモダンでも使用可能。対緑を想定したサイドボードによく入っている。

Tidebinder Mage / 潮縛りの魔道士 (青)(青)
クリーチャー — マーフォーク(Merfolk) ウィザード(Wizard)
潮縛りの魔道士が戦場に出たとき、対戦相手1人がコントロールする赤か緑のクリーチャー1体を対象とし、それをタップする。そのクリーチャーは、あなたが潮縛りの魔道士をコントロールし続けているかぎり、それのコントローラーのアンタップ・ステップにアンタップしない。
2/2
「基本セット2014(M14)」で登場した赤・緑対策のクリーチャー。
赤や緑のクリーチャー1体をタップ状態にして封じ込めてしまう。
2マナという軽さでありながら2/2と当時の青としては優秀。さらに部族がマーフォーク。
それでいて完封できるほどではなく他のデッキで用いるには厳しいという、新時代の色対策カードのスタンダードとも言える1枚。
スタンダードでは【青単信心】でメインから採用されていたが、これは前環境が多色環境だったことに加えて青の信心を2点も稼いでくれる点が大きい。
当然封じ込められる側の赤と緑はたまったもんじゃない。
一時期はレガシーの【マーフォーク】でも積極的に採用されていた。

Flashfreeze / 瞬間凍結 (1)(青)
インスタント
赤か緑の呪文1つを対象とし、それを打ち消す。
「コールドスナップ(CSP)」で登場した赤・緑対策のインスタント。
赤と緑に限定された代わりに青1つが不特定マナになった《対抗呪文》、あるいは確定で打ち消せる代わりに赤と緑に限定された《マナ漏出》。
他のカウンターを差し置いて使われることはあまりないが、赤や緑の強い環境だとサイドに刺さっていたことがあったようである。
赤や緑が含まれてさえいれば多色呪文であっても打ち消せるので、多色環境でも見られた。

Aether Gust / 霊気の疾風 (1)(青)
インスタント
赤か緑の、呪文1つかパーマネント1つを対象とする。それのオーナーはそれを自分のライブラリーの一番上か一番下に置く。
「基本セット2020(M20)」で登場した赤・緑対策のインスタント
赤と緑に対する万能バウンスに加え呪文のバウンス(=疑似打消し)も可能であり、対策すべき相手が出る前でも出た後でも腐らないという代物。
トップかボトムかは相手が決められるので決定打には欠けるものの、2マナで脅威を先送りできることは非常に大きい。
「エルドレインの王権(ELD)」参入後のスタンダードは環境柄緑がやたら強く、バウンスする相手には困らなかった。
そのため色対策カードながら青絡みのデッキでメインから採用されていた。
特に《王冠泥棒、オーコ》は青かつ緑なので、【オーコ】デッキの同型対策としては下記の《害悪な掌握》よりも早期から注目を浴びていた。
また「呪文のバウンス」という性質が《夏の帳》の呪禁&打ち消されない効果を掻い潜れるため、そちらがメイン投入され出してからも採用され続けた。
特に環境最前線で戦っていた人のオーコミラーの話題では必ず出てくるカードであり、これらのカードと《成長のらせん》をめぐる独特な駆け引きでかなり神経をすり減らしたとのこと。


性質:邪悪・死滅
敵対:(聖善) (生命)

白もそうだが、対色である黒もまた対策カードはエグいものが多い。
緑に対しては極めてえげつなく、一方白には刺さってんのかないのか分からないというカードが結構多い。
緑側も最近は呪禁やハンデス対策などで対抗するようになっている。

Gloom / 憂鬱 (2)(黒)
エンチャント
白の呪文は、それを唱えるためのコストが(3)多くなる。
白のエンチャントの起動型能力は、それを起動するためのコストが(3)多くなる。
「リミテッド・エディション(1ED)」から存在する白対策のエンチャント。
黒版の《寒け》。だがこちらは3マナも増やす上にエンチャントの起動コストにまで影響する。《暗黒の儀式》から1ターン目に貼れるのが強み。
ちなみにエンチャントにも影響する理由は元々は上記の「防御円」サイクルの対策カードでもあったため。
最初期のカードにははっきりと「防御円を使うには3マナ多く払う」と書いてある。

Perish / 非業の死 (2)(黒)
ソーサリー
すべての緑のクリーチャーを破壊する。それらは再生できない。
「テンペスト(TMP)」で登場した緑対策のソーサリー。
緑限定《神の怒り》。
クリーチャーが主戦力の緑にとって最悪に近い1枚。これまた《暗黒の儀式》からプレイできてしまう。
あまりの威力に存在が疑問視されたこともある。
一時期はレガシーでもサイドボードの定番であり、《タルモゴイフ》やエルフなどがよく非業の死を遂げていた。そして出てくる《鉤爪の統率者》

Dread of Night / 夜の戦慄 (黒)
エンチャント
白のクリーチャーは-1/-1の修整を受ける。
「テンペスト(TMP)」で登場した白対策のエンチャント。
シンプルな弱体化で、逆《十字軍》。そして1マナ。シンプルながらレガシーのサイドボードにも入りうる、というか割と定番なカード。
【白ウィニー】に激烈に刺さるというのは想像しやすいだろうが、タフネス1の白のクリーチャーが完全に否定されるため、
《スレイベンの守護者、サリア》《ルーンの母》あたりが完全な機能不全を起こし、しかも1マナなので確実にテンポを取ることができる。

Lifebane Zombie / 生命散らしのゾンビ (1)(黒)(黒)
クリーチャー — ゾンビ(Zombie) 戦士(Warrior)
威嚇(このクリーチャーはアーティファクト・クリーチャーかこれと共通の色を持つクリーチャー以外にはブロックされない。)
生命散らしのゾンビが戦場に出たとき、対戦相手1人を対象とする。そのプレイヤーは自分の手札を公開する。あなたはその中から緑か白のクリーチャー・カードを1枚選び、そのカードを追放する。
3/1
「基本セット2014(M14)」で登場した白・緑対策のクリーチャー。
出すだけで手札の緑か白のクリーチャーを追放し、その後はブロックが難しい3点クロックになるという無駄のない対策カード。
クリーチャーに大きく依存する緑にしてみれば、手札を見られてクリーチャーをハンデスされる時点でキツイ。
さらにハンデス対策を持つ《ロクソドンの強打者》のようなカードは誘発せず、あげくクリーチャー戦でも不利を被るという悪夢のようなカード。
当時隆盛を誇っていた緑系のデッキを衰退させた原因。

緑愛好家として知られる当時のプロのブライアン・キブラーがこのカードを激しく嫌っていたことで知られており、スタン落ちに際してこのカードを集めて燃やす動画を投稿し物議をかもした。
ゾンビが《火葬》されてる!
その後もキブラーは《生命散らしのゾンビ》が嫌いというキャラを通しているなど、一人のプロのキャラ付けにもつながった。
また、他のTCGにおいてたまに見られる「プレイヤーが運営を批判すると処罰の対象になる」という事件がある際に必ず引き合いに出される*8
ひとつ言えるのは、カードを燃やすのは大人げないかもしれないが、プロプレイヤーでさえ本当にそれくらい嫌う人がいるということ。

Deathmark / 死の印 (黒)
ソーサリー
緑か白のクリーチャー1体を対象とし、それを破壊する。
「コールドスナップ(CSP)」で登場した白・緑対策のソーサリー。
1マナで緑や白のクリーチャーならなんでも破壊できる。
緑お得意のファッティを狙い撃てるという利点はあるが、そういうのに限って呪禁を持っていたりするというジレンマ。
非常に軽いがかゆいところに手が届きづらく、さらに現在は「マジックを変えてしまった」とまで評される《致命的な一押し》があるので採用はかなり厳しい。

Noxious Grasp / 害悪な掌握 (1)(黒)
インスタント
緑か白の、クリーチャー1体かプレインズウォーカー1体を対象とし、それを破壊する。あなたは1点のライフを得る。
「基本セット2020(M20)」で登場した白・緑対策のインスタント。
1マナ増えた代わりにプレインズウォーカーも破壊できるようになった《死の印》のリメイク。
スタンダードでは《王冠泥棒、オーコ》《世界を揺るがす者、ニッサ》《ドミナリアの英雄、テフェリー》あたりを退治するために使用された。
中でも相手のクリーチャーを緑の大鹿に出来るオーコは、対策される側でありながら使う側としても相性が良い。
「【オーコ】ミラーで強いカード」という形で広まり、このカードを使うために黒を採用した【オーコ】デッキが登場することに。
ついでに【オーコ】デッキが同型対策に使っていた《霊気の疾風》に引っかからないという点も評価点だった。
そして《霊気の疾風》と合わせてメインから採用された結果、前述の通りスタンダードでメインから色対策カードを投げ合うという異常な時代になった。
環境末期にはこのカードがメインから4枚投入されていることに誰も疑問を抱かないほどには定番カードと化していた。
99%ぐらい《王冠泥棒、オーコ》のせいだし、《夏の帳》は単純にぶっ壊れだったがそれはそれ
ちなみに色対策ということを加味すると、単体での性能はぶっちゃけ「並」。
プロの間でも「性能がぶっ壊れていたのは緑と青で、黒はあくまでメタゲーム上の対策カードだった」という意見が多い。
そんなカードが4枚採用定番となる程に採用されたのはメタゲームの変遷を見る上で興味深い事例だろう。


性質:混沌・衝動
敵対:(秩序) (思考)

赤も色の寓意に違わず、激しい対策カードが多い。
しかしその一方で、
  • 「プロテクションや軽減が得意」「高タフネスやライフ回復で持久戦に持ち込みやすい」という白
  • 「打ち消しが得意」「取れる戦術が非常に幅広い」という青
に対しては空振りに終わることがかなり多く、色対策という面だけを見ると割を食いやすい。
ただし最近は色に対するプロテクションが印刷されなくなったため、対策カードも相対的に強くなった。
最近赤のカードに禁止カードが目立つのは、赤が「色対策で封じ込められやすく、こちらから対策するのが苦手」という性質を持っていたからだろう。つまり安全弁が弱いのだ。

Flashfires/ 野火 (3)(赤)
ソーサリー
すべての平地(Plains)を破壊する。
「リミテッド・エディション(1ED)」から存在する白対策のソーサリー。
相手が【白単】なら一方的な《ハルマゲドン》。決まるとそれだけで勝敗が決することも。
なお複数の基本土地タイプを持つデュアルランドにも影響する。デュアルランドの数少ない弱点である。

Boil / 沸騰 (3)(赤)
インスタント
すべての島(Island)を破壊する。
「テンペスト(TMP)」で登場した青対策のインスタント。
こちらは島を破壊するが、なんと《野火》と同マナにも関わらずインスタント。あえてキープしといて、一番効果が効くタイミングで放てる。
当然だが通ると青は終わる。そのため青系デッキはこのカードの存在を常に気を配らなければならなかった。
モダン以下の環境でもマナ基盤をフェッチランドとデュアルランド&ショックランドに依存しているデッキは多いため劇的に効く。
現在でもモダンのサイドボードで採用されることがある。
ちなみにソーサリーになった《沸き立つ海》もあるが、こちらは微妙な扱いである。

Red Elemental Blast / 赤霊破 (赤)
インスタント
以下から1つを選ぶ。
  • 青の呪文1つを対象とし、それを打ち消す。
  • 青のパーマネント1つを対象とし、それを破壊する。
「リミテッド・エディション(1ED)」出身の青対策のインスタント。上記の《青霊破》と対を成す。
MTGの全ての色対策カードの中で、恐らく最も使用されているカード。たった1マナで青のカード全てに対処できる。
青が中心のエターナル環境では赤が入っているならまずこのカードがサイドボードに入っており、下手すればメインから積まれることも珍しくない。
このカードの存在もあり、リアニメイトをはじめとした踏み倒し系のデッキでは、踏み倒し先が青であることは弱点にもつながるほど。
亜種に《紅蓮破》というカードがあり機能自体はあまり変わらないが細かい違いがあるのは《青霊破》と同じ。

Combust / 焼却 (1)(赤)
インスタント
この呪文は打ち消されない。
白か青のクリーチャー1体を対象とする。焼却はそれに5点のダメージを与える。このダメージは軽減できない。
「基本セット2011(M11)」で登場した白・青対策のインスタント。
2マナでほぼ全ての白や青のクリーチャーを(対象に取れさえすれば)に焼ける。現在は下記の《丸焼き》あるがこちらはダメージが軽減されない。
ところで同時期のスタンダードにはライフ4点を支払えば1マナで支払える上にプロテクション(赤)を抜けることができる除去があったんです。

Fry / 丸焼き (1)(赤)
インスタント
この呪文は打ち消されない。
白か青の、クリーチャー1体かプレインズウォーカー1体を対象とする。丸焼きはそれに5点のダメージを与える。
「基本セット2020(M20)」で登場した白・青対策のインスタント。
2マナで5点。プレインズウォーカーも焼ける打ち消されない火力。上記の《焼却》の対象を広げて「軽減されない」を取り除いた相互互換。
とはいえ軽減されないというテキストが生きることがそもそもなかったので強化といっていい。
ライフこそ狙えないものの、赤の単体除去としての性能は随一。
スタンダードではもちろん、パイオニア以下の環境でも赤のサイドボードの定番枠を射止めている。
テフェリー、アショク、ナーセット、ジェイス……狙いたいプレインズウォーカーはいくらでもいる。
さらにその後登場した「護法」にも強い。護法は「追加コストを支払わなければ打ち消す」という能力なので、打ち消されないこのカードは護法コストを支払う必要がないのだ。

ただし当時のスタンダードでは危険なPWに絶妙に刺さらないため評価はやや微妙だった。
一番殺したかった《王冠泥棒、オーコ》は焼き切れず、《時を解す者、テフェリー》にも出た直後だと常在型能力で手出しできなかったのである。
このカードでオーコ対策が出来ていれば《夏の帳》の評価も変わっていたかもしれないが、逆にこのカードがオーコを殺しきれなかったから即座に禁止されたとも捉えられる。歴史に「たられば」はないのだ。


性質:自然・生命
敵対:(技術) 黒(死滅)

緑は友好色より敵対色と組み合わせたデッキが有名だが、勿論例外なく色対策カードは存在する。
昔の緑は割と不器用な色でもあったため、それを補うようにえげつないレベルの色対策が多かった。
しかし一時期は鳴かず飛ばず、かと思ったら突然禁止級を排出したりと時代によって性能の差が非常に激しい。

Choke / 窒息 (2)(緑)
エンチャント
島(Island)はそれのコントローラーのアンタップ・ステップにアンタップしない。
「テンペスト(TMP)」で登場した青対策のエンチャント。
土地をアンタップできなくさせる。
青にとっては絶対に通してはいけない1枚だが、《極楽鳥》などのマナクリから2ターン目と対策が限られる早期に出せてしまうため、かなり厄介な存在。

Compost / たい肥(1)(緑)
エンチャント
いずれかの領域から黒のカードが対戦相手の墓地に置かれるたび、あなたはカードを1枚引いてもよい。
「ウルザズ・デスティニー(UDS)」で登場した黒対策のエンチャント。
地味に見えるが【黒単】の場合出された瞬間にほぼ負けが決定するレベルのカード。とにかく黒いカードが墓地に落ちるたびにカードを引かれてしまう。
除去や手札破壊を使ってもじわじわアドバンテージを取られて最終的にこちらが息切れしてしまう。
特に手札破壊の場合は一枚で複数の手札を捨てさせないとアドバンテージが取れないという悲惨な状態に陥る。
その上マナクリから2ターンで出せる上に黒は置物に触れられないため壊せない。2枚出てきたらそこから勝てることはまずありえないと言っていい。ほぼ、なんて言葉さえ不適切になる。
【黒コン】が勢力を伸ばした時代に出て大活躍した。黒推しのセットである「トーメント(TOR)」の盛り上がりをたった1枚で完全に冷ましたすごいヤツ。
レガシーでも一時期は定番だった。
かなり古いカードなので、これを見て拒否反応を示す黒使いはよく訓練された黒使い。色対策の話題においては《寒け》《赤の防御円》ともどもド定番の、いわゆる「詰み」カード。

Scragnoth / スクラーグノス (4)(緑)
クリーチャー — ビースト(Beast)
この呪文は打ち消されない。
プロテクション(青)
3/4
「テンペスト(TMP)」で登場した青対策のクリーチャー。
青の主なクリーチャー対処は「打ち消すこと」「バウンスすること」なのだが、このカードはそのどちらをも許さない。
今となっては失笑もののスタッツだが、当時はこれでも脅威だった。
【青単パーミッション】はこのカードを対処するために様々な手段を講じていくことになる。
……裏を返せば《寒け》とか《たい肥》とか《非業の死》と違って「対策を講じることができるレベル」ってことでもあるんだけど。

Seedtime / 種蒔き時 (1)(緑)
インスタント
この呪文は、あなたのターンの間にのみ唱えられる。
このターン、対戦相手1人が青の呪文を唱えていたなら、あなたはこのターンの後に追加のターンを行う。
「ジャッジメント(JUD)」で登場した青対策のインスタント。非常に珍しい「緑の追加ターン呪文」。
自分ターンでだけ使えるインスタントという奇妙な存在だが、これは青が得意とする「対戦相手のエンドフェイズにインスタントを使う」ことへのメタ。
一見するとかなり理不尽に見えるカードだが、数ある色対策の中でも刺さる状況と刺さらない状況の差がものすごく激しい。
たとえば有用なインスタントを多用しないデッキが相手の時はまったく刺さらない。
時間のねじれ》の項にあるように、他に出来ることがないと《探検》でよくね? ともなりかねない。
もちろん打ち消しメタに使えないこともないのだが、対青という用途でも限定的なので使われる環境はかなり限られてくる。
青という色の柔軟性や、青対策の難しさがよく表れている1枚。

Autumn's Veil / 秋の帳 (緑)
インスタント
このターン、あなたがコントロールする呪文は青や黒の呪文によっては打ち消されず、このターン、あなたがコントロールするクリーチャーは青や黒の呪文の対象にならない。
「基本セット2011(M11)」で登場した青・黒対策のインスタント。
1マナでハンデス・打ち消し・除去を全部シャットアウトできる。
時代を考えると珍しい、通ると即死に近いレベルの効果があるが、細かいところに穴があったりする。
それでも色対策カードとしては優秀で、青の強い環境ではサイドボードに採用されていた。この時期は青黒のデッキが強かったので見かける機会は多かった。
ちなみにこれでも「通好みのカードで、使いこなせたらかっこいい」レベルだったりする。
それじゃよろしくないってんで出てきたのが下記の《夏の帳》である。加減しろ莫迦

夏の帳/Veil of Summer (緑)
インスタント
このターンに対戦相手が青か黒の呪文を唱えていたなら、カードを1枚引く。このターン、あなたがコントロールしている呪文は打ち消されない。ターン終了時まで、あなたとあなたがコントロールしているパーマネントは青からと黒からの呪禁を得る。(それらは、対戦相手がコントロールしている青や黒の呪文や能力の対象にならない。)
「基本セット2020(M20)」で登場した青・黒対策のインスタント。
「基本セット2011(M11)」の色対策サイクルのリメイクの1枚であり、緑の《秋の帳》に対応するものとして作られた。
色々強化したらとんでもないぶっ壊れになった
環境が《王冠泥棒、オーコ》に代表される緑一強だったこともあり緑系デッキがこれを乱発しオーコの秋を更に加速。
挙句の果てにはオーコが青絡みなため同系対策にもなった
登場当初から定番サイドボードだったが、対策の対策でメインにも投入され始めた。結果としてスタンダードは帳ゲーと化すことに。

あまりの問題児ぶりを発揮したためパイオニアのフォーマット施行直後に緑系を抑えるために禁止カードに。
続いてスタンダードでも当然のごとく禁止カードに指定された。
今の所禁止カードになったことがある色対策カードはこれだけである。
ヴィンテージや統率者戦でも定番の呪文であり、モダンでもたまに禁止論が出てくる。八十岡翔太曰く「1マナのクリコマ*9」。



対抗色以外の色対策カードの例

■対無色
「無色」という概念が補強されるに従って、無色に対する対策カードも登場している。
Ceremonious Rejection / 儀礼的拒否 (青)
インスタント
無色の呪文1つを対象とし、それを打ち消す。
「カラデシュ(KLD)」で登場した無色対策のインスタント。
無色に限定したら1マナ軽くなった《対抗呪文》。
エムラクールみたいなそもそも打ち消せない奴を除けば、1マナでエルドラージだろうがウギンだろうがカーンだろうが打ち消せる便利な奴。
色のついたアーティファクトは打ち消せないが、そのようなカードはそこまで多くないのでアーティファクト対策としても優秀。
登場から早速サイドボード要員としての活躍が目立っている。

■対同色
「同色」に対する色対策カードも存在している。
Mystical Dispute / 神秘の論争 (2)(青)
インスタント
この呪文が青の呪文を対象とするなら、これを唱えるためのコストは(2)少なくなる。
呪文1つを対象とする。それのコントローラーが(3)を支払わないかぎり、それを打ち消す。
「エルドレインの王権(ELD)」で登場した青対策のインスタント。同色対策カードサイクルの1枚。
青同士の打ち消し合戦に強いだけではなく、青以外の呪文に対しても及第点な打ち消し呪文として使える。
当時のスタンダードではオーコが青かったので後攻で対処できる貴重な手段であった。

■対友好色
冒頭で記した通り、対友好色の色対策カードもわずかながら存在する。
Burning Hands / バーニング・ハンズ (1)(赤)
インスタント
クリーチャーやプレインズウォーカーのうち1つを対象とする。バーニング・ハンズはそれに2点のダメージを与える。そのパーマネントが緑であるなら、代わりにバーニング・ハンズはそれに6点のダメージを与える。
「フォーゴトン・レルム探訪(AFR)」で登場した緑対策のインスタント。
同セットの色対策カードは通例と異なり、白黒の相剋と青赤緑の三すくみという形で収録されたている。
その結果世にも珍しい*10対友好色対策カードが生まれることになった。
イメージ的には「炎(赤)は木(緑)を燃やせる」なので、他のゲームだと「どうして今までできてなかったの?」と首を傾げられるレベルの話だったりする。
今後この手の友好色対策も、新しいフレーバーの拡張を兼ねて増えていくかもしれない。
カードとしては当時のスタンダードの緑は《長老ガーガロス》《星界の大蛇、コーマ》などタフネス6以下が多く、ちょうど焼き殺すことができた。

■対特定の色「以外」
中には「特定の色を持つ相手には弱くなる」という形で、その色を使わない相手に効力が増えるカードも存在する。
Quenchable Fire / 消しえる火 (3)(赤)
ソーサリー
プレイヤー1人かプレインズウォーカー1体を対象とする。消しえる火はそれに3点のダメージを与える。あなたの次のアップキープの開始時に、そのプレイヤーかそのプレインズウォーカーのコントローラーがそのステップより前に(青)を支払わないかぎり、これは、そのプレイヤーかプレインズウォーカーに追加で3点のダメージを与える。
「コンフラックス(CON)」で登場したソーサリー。
4マナでプレイヤーに6点のダメージを与えるという破格のカードだが、水をかける(≒青マナを支払う)と消されてしまうというもの。
単なるフレーバー重視のカードというわけでもなく、当時のスタンダードには青の含まれていないデッキがそこそこ存在した。
強力なデッキだけでも【ジャンドコントロール】【ナヤブリッツ】【バーン】をはじめ様々なデッキがいたため、それらへの同型対策に用いられた。
この手のカードは「特定の色には封じられてしまう」という印象になりやすく、実際環境によってはそうやって効かない事も多い。
だが「特定の色が少ない環境であれば十二分に活躍する」カードということもしばしばある。

他にも色対策カードは沢山存在するので、興味がある方は調べてみることをオススメする。


また厳密には対策カードという訳ではないが効果や能力などによって事実上色対策カードとして扱われている物もある。

その一例
  • 打ち消されない(事実上打ち消しの役割を担う青への対策。青以外のカードが打ち消しをできることはほとんどないため)
  • ハンデス対策(事実上の黒への対策。黒以外のカードが競技環境レベルのハンデスを行えることはほぼ皆無なため)
  • ライフの頻繁かつ恒久的な回復手段(事実上の赤への対策。赤は「速度はあるが息切れしやすい」というデザインのため)
  • ~渡り(特定の基本土地タイプを相手がコントロールしているとブロックされない)
  • 特定色に対して効果が上昇したり、追加効果があるカード



色対策カードに関しては「このえげつなさこそMTGの魅力である」と考える層から、上述のようにあまりの憎さに集めて燃やすプレイヤーが出てくるまで様々な考え方がある。
こういった極端なカードを如何にして生かすかもMTGの醍醐味であるが、広義で見れば特定分野特化のカードのため活躍できる状況は限られる。
調整を一歩間違えると特定のデッキを駆逐するジャンケンゲーを助長する危険な要素を潜在的に持っており、実際に上述の《夏の帳》がそれをやらかした。
そして多色環境では狙える範囲が理不尽に増えてしまったりなど、バランス調整がかなり難しいカードでもある。

先も述べたが、メタゲームの動きに加えてぶっちゃけプレイスタンス次第で評価が乱高下するため、その評論を出すのはかなり難しい。
「サイドボード戦がカジュアルでさえ主流のMTGでは、これも特徴のひとつだよ」ということで、この項目の〆の言葉に代えさせていただこう。


アニヲタは記事をうろつき、その内容の虚飾と無駄口に対して首を振った。
この項目を活気付けるには、追記一つで十分だ。

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最終更新:2025年04月02日 15:55

*1 MtGのカードの裏面に描かれた五色のマナのうち、隣り合っていない色。

*2 「オデッセイ・ブロック」「ミラディンの傷跡・ブロック」など

*3 一応対策カードは存在したが一時しのぎにすぎず、相手の方が圧倒的に有利なことには変わりないのでまったく現実的とは言えなかった。そもそも勝っている赤単のレシピを見ると火歩き対策を完全に諦めているなんてことも結構あったりした。

*4 当時のスタンダードで酷評されていたカード。詳細はニッサ・レヴェイン/Nissa Revane(MtG)の項目でどうぞ。

*5 「てんさいチンパンジー」こと増田勝仁氏は自身のデッキの解説記事において、「あんまりにも不利すぎる相手の対策はもうあきらめて当たらないように祈り、勝てる相手への勝率を上げていく」という構築論やサイドボードテクを語っている。メタゲームという言葉にも大きく関係してくるのだが、不利なデッキへの対策をあきらめるというテクは「競技環境では」現実的な選択肢である。

*6 実際には赤の強みである速度が落ちるという欠点の方が大きかったため現実的ではなかったが。

*7 これは「スターライト・マナバーン」という漫画でも「アンフェアな対人メタ」としてネタにされており、MTGに限らずTCGのあるあるネタだった。一時期SNSや匿名掲示板などでバズったり、カードショップなんかに貼ってあった、左上に「そんな本当の悪にも耐えてきた僕が…」とセリフがついているあの画像である。

*8 だいたい「MTGの大らかさを見習え」という文脈で出されるが、そもそもWotCの公式ツイッターが「オーコを禁止にしろ!」というリプライでの意見に対して鹿の画像でクソリプを返すような「プロレス」が好きな文化だということもお忘れなく。

*9 《謎めいた命令》という非常に強いカードのことで、ここでは「打ち消しと1枚ドローを行える4マナのカード」というニュアンス。「4マナのカードとほぼ同じことを1マナでできるカードなんだから強いよね」という意味。

*10 白の「防御円」サイクルやその派生形以外では「トーメント(TOR)」や「ミラディン包囲戦(MBS)」にあるくらい。ただしプロテクションや土地渡り程度ならそこそこある。