バビルサ

登録日:2011/10/15 (土) 03:27:22
更新日:2024/03/08 Fri 17:36:19
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この間 進化のTVを観た。
ある所にメチャクチャな進化をとげた動物がいっぱいいる島がある。そこにこんなのがいた。
そいつのキバはしなりすぎ どんどんどんどんのびていく。
やがて自分の頭に突き刺さる。ヤツの寿命だ。



バビルサとは哺乳網鯨偶蹄目猪豚亜目イノシシ科バビルサ属に分類される、鹿のような猪っぽい珍獣の総称である。


◆名称
和名バビルサ/英名バビルサ(Babiroussa/Babirusa)。漢字表記では鹿猪となる。
これは彼らが棲息するインドネシアの言葉で“Babi”が豚を、“rusa”が鹿を指すことに起因し、意訳すれば“鹿っぽい豚”となることに由来する。
じゃあ鹿豚にしろよと。


彼らは名前こそ鹿猪だが、生物学的には鹿×猪のハイブリッドではない。
見た目(後述)からこの名前がついたのだろうが、胴体だけを見るとほぼ豚である。まあ猪なのだが。


◆分布/分類/生態
バビルサはインドネシアのスラウェシ島とその周辺島に棲む固有種。
かつては一属一種3亜種という風に振り分けられていたが、近年の研究で彼ら3亜種は骨格的な観点からそれぞれは別の進化を遂げたものと判明。
これを受け分類は一属三種に変更された。


まず旧学名がバビルサバビルサバビルサだったヘアリーバビルサ。
3種の内で最も身体が小さく、名前通り体毛が比較的濃い(他2種は薄く少ない)。金色の毛が生えることからゴールデンバビルサと呼ばれることもある。

次に牙が最も長大になるセレベスバビルサ。
体長80~100cm、体重100kg。寿命は約10~20年。目が怖い。
一般的にはバビルサといえば本種を指すことになる。現地の動物園で飼われているのもこの種であり、当項目でも後述するのは主に本種についてである。

最後に、身体が最も大きなトギアンバビルサ。トギアン諸島に棲むことからこの名がついた。
身体とは反比例するかのように牙が短い。


野生のバビルサは非常に警戒心が強く、少しでも人間の気配やニオイを感じ取るとすぐに茂みに逃げ込んでしまう。
さらに活動時間帯まで変えてしまうので、現地の人でも見かけるのは稀だという。そのせいもあって彼らに関する資料はあまり多くない。


そして上記3種は共通して絶滅危惧種に指定されている。
原因はやっぱり人間。伐採・密猟・開発などにより現生数は数千頭くらいとなっている模様。
おまけにバビルサが普通の猪(多産)と逆で、年に一匹程度しか子供を産まないのもこれに拍車をかけている。
一応、1931年より国法で保護されてはいるが、効果は……。

ちなみに産まれた子には瓜模様がないため、厳密には「ウリ坊」と呼べなかったりする。


食性は雑食。主食として知られているのはイイギリ科のパンギノキの果実。
これは高枝に成る10?~30cm程の果実で、熟れると地面に落ち、ネギのようなニオイを発する。バビルサはそれを嗅ぎ付けて食すのだ。
ただしこの果実、高い栄養価と共に種子に強力な青酸化合物(毒)を含んでいる。
過熱などで毒抜きをせず食べるのは危険なのだが、バビルサは解毒効果のある特殊な泥水を飲むことでこれを中和しているらしい。
そして雑食なので昆虫やネズミなども食う。稀に産まれたての同族も。生きるためだからね、仕方ないね。


◆牙
さて。あえてここまで触れてこなかったのだが、バビルサが珍獣と呼ばれる所以はその“牙”にある。
下の画像、これがバビルサ(♂)の顔なのだが……。

※TARINGA! Animales curiosos (Parte 1)より

うん。何かおかしい。
口からはみ出た牙は分かる。が、明らかに間の2本はありえんところから生えてきている。
ぱっと見“角”にみえるこれ、その実れっきとした牙なのである。


こうなったのはイノシシ科の進化に原因があると言える。
この科に分類される動物は、共通する特徴の一つに“犬歯の発達”がある。
これは上下共にいえることなのだが、とりわけ上顎犬歯、人間でいうところの八重歯はより発達するのだ。しかも上向きにU字に反るように。
現生する猪だとイボイノシシではっきり見られ、アニメならライオンキングのプンバァやもののけ姫の乙事主、ゲームならモンハンのブルファンゴなどでも確認できる。


つまり彼らイノシシ科に限って言えば、上顎犬歯が上向きに反り返るのは普通のこと。
で、その中でもバビルサは上顎犬歯が内→外と生え伸びるのではなく、最初から上(逆)向きに生えて肉を突き破って伸びちゃってるワケである。


先の3種のバビルサ(♂)がこんな感じなのだが、セレベスバビルサ(画像の種)だけはこの牙が異常に伸びる。しかもこの牙、必ず自分の頭側に反ってくるのだ。
その様子から「最終的には頭に刺さって死ぬ」という噂が広まり、自分の死を見つめる動物という如何ともし難い呼び名がついた。
ちなみに実際に死因となったかは不明だが、現地の動物園では本当に牙が刺さり頭骨を貫いちゃった個体がいる。
周りのバビルサ(♂)は多分トラウマになったことだろう。鹿猪だが。


「つかそんなに危ないもんなら折っちゃえばいいじゃん。馬鹿なの?死ぬの?」
こう思った方、いませんか?
彼らは馬鹿ではなく鹿猪です。そしてもしも貴方がバビルサ(♂)で、上記の発想を実行した場合


もれなく一生童貞で生涯を終えます。


   *   *
 *   + マジです
  E) ∧_∧ (ヨ
+ u (*´∀`) u
  Y   Y  *

実はバビルサ(♀)はオスの上顎犬歯の逞しさで交尾相手を決定する、面食いならぬ牙食いなのだ。
なので牙さえ立派ならどんなに老いたジジイでも傷だらけの若輩者でも交尾ができ、争いなどで牙が折れたオスは相手どころか見向きもされないのである。
しかも一度折れたら生え変わることもないという悲劇。


武器としても使われない(使うのは下牙)上顎犬歯は、オスの大事なしんぼるだった。


◆余談
○かつてユダヤ教では“バビルサはカーシェールなのか否か”という論争があった。
カーシェールとはユダヤ教の戒律:ハラーハーにおける適正(「相応しい状態」)のことを言う。

そして食べ物(生物)に対してカーシェールを用いると、意味が“清らかな食べ物”となる(対義にあたる不浄な生き物”ならば食べられず、生贄にもできない)。

バビルサの場合、いくつかある不浄の概念の中でも“蹄が分かれているが、反芻しない動物”かどうかが争論のポイントとなった。
※これに該当するのが豚でバビルサも同じかと思われたが、彼らには胃が3室あったので反芻するのでは?ということに。

しかし後にバビルサが反芻をしない動物と判明したので、晴れてユダヤ教では不浄な生き物として扱われることとなった。よかったねバビルサ。ショッギョ・ムッジョ。


○バビルサに似た境遇の生物で有名なのものにイッカク(小型クジラ)がいる。
彼らのオスの場合は2本しかない歯の内、左上顎切歯(前歯)が一本、ドリルのように捻れて伸びる。
これは超高度な感覚器(アンテナ)であり、外気の気圧や温度変化を知るために用いられる。

またバビルサ同様、長さで雌を魅了する。
ちなみに雄は牙を長さを競うために用い、突いたりはしない。これは中が空洞で脆い上に、折れたら新たに生えることもないからだ。


○バビルサのように犬歯(八重歯)がチャームポイントというのは日本人も同じ感覚である。
しかし欧米諸国の人々はこれを矯正していない=蔑視の対象にするほど嫌忌している模様。理由は古くからの宗教的観点で吸血鬼を想わせるかららしい。

しかし日本文化が世界に波及している今、もしかしたら……。



欧米人ヲタA「小悪魔マジたまんねww レミリアたんにちゅっちゅされたいおww」

欧米人ヲタB「いや、フランちゃんの方がイイだろ常識的に考えてww」

欧米人ヲタC「はいはいロリババア姉妹乙w 忍こそ愛しさと切なさと心細さを兼ね備えた至高のロリだからw」

欧米人ヲタD「朗報だ>>C、当該項目を最後まで読むと幸せになれるぞ!」

欧米人ヲタE「さすが>>D! おれたちにできない事を平然とやってのけるッ そこにシビれる! あこがれるゥ!」



こんな風になっているかもしれない。ヲタ観は宗教観を超える。はっきりわかんだね。


追記・修正おねがいします。


「俺達は国も同じの似た者同士だ。どうだ?一緒に暮らさないか?」

鹿猪「ヨダレ垂らしながら言うな」

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最終更新:2024年03月08日 17:36
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