スーパーFMシャーシ

登録日:2012/10/13(土) 02:49:06
更新日:2023/07/06 Thu 23:50:28
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どうしたんだよぉ、ブロッケンG〜!!

こんなシャーシ使ってるから遅いんだぁぁぁぁぁ!!



スーパーFMシャーシとは、ミニ四駆の最重要パーツであるシャーシの一種。
第二次ミニ四駆ブーム全盛期直前に誕生し、今なおコンスタントに生産が行われているシャーシでもある。

このシャーシの最大の特徴はやはりモーターがフロントに付いている事であろう。
基本的にミニ四駆のシャーシはモーターがリヤ側に付いており、
2017年にFM-Aシャーシが発表されるまで、フロントにモーターが付いているのは
このシャーシか前身となったFMシャーシのたった2種類しか
実に21年間もの間存在していなかった。

X系シャーシやARシャーシを改造してフロントモーターにする改造もあり、
割とメジャーな手段なのだが、それなりに精度が出せなければ遅くなるだけなので
手軽にフロントモーターで遊びたい、というならこのシャーシか
前身のFMシャーシに頼るしかなかったのである。


初採用されたマシンは、爆走兄弟レッツ&ゴー!!に登場して
相手のマシンを踏み潰して破壊する、というミニ四駆にあるまじき攻撃方法と
当時の「ボディは軽ければ軽い方が良い」という常識を嘲笑うかのような重厚なボディが話題となったブロッケンG。
またアニメではスピンコブラもこのシャーシとされている。
ほぼ同時にスーパーミニ四駆のストラトベクターにも採用され、
更には映画『爆走兄弟レッツ&ゴー!!』で新登場したライバルマシンであるガンブラスターXTOにも採用された。



だが、現在のレース事情でこのシャーシを好んで使うユーザーは少ない。
それは、もう誕生から20年以上経ち、古くなったからではない。
それ以前から存在するスーパー1シャーシは、フロントの脆さを補えるユーザーからは今でも愛用される名シャーシだし、
ほぼ同時期に誕生したスーパーTZシャーシもストレート重視のコースなら選択肢に挙げても良い優良シャーシである。


このシャーシが使われない理由、それは


とにかく出来が悪い

とにかく出来が悪い

とにかく出来が悪い


という根本的かつ致命的な理由からである。

基本的にスーパー1以降のシャーシはモノによって程度の差はあれど、
大抵のシャーシはそれなりの知識さえ持っていれば割と簡単にスピードアップが望める程度の品質は保たれている。
だがこのスーパーFMだけはそうはいかない。

まず、採用されているギヤ自体が曲者。
スーパー1以降のシャーシに使われているクラウンギヤはピンククラウンと呼ばれるその名の通りピンク色のギヤなのだが、
このギヤは強度こそ低い(割と頻繁に破損する)が非常に馴染みやすく、初心者でも割と簡単に慣らしが行える。

しかしこのスーパーFMに採用されているのはオレンジクラウン
素材が硬いため破損する心配があまりないのはいいのだが、その素材の硬さ故に慣らしを行いにくいのだ。
要するにミニ四駆において基本的な、そしてものすごく大事な慣らし行為そのものに無駄なハードルを設置してしまっているのと同義である。


「じゃぁ何とかして慣らせば問題ないじゃん」と言う事なかれ。

なぜこのシャーシは慣らせば良いというものではないのか。
それはギヤ周りの精度がスーパー1以降のシャーシの中でも最悪と言われているのだ。
要は無改造だといくら慣らしてやってもギヤ周りがガタガタで
スピードロスが酷すぎて(周りのシャーシと比較すると)使い物にならないのである。
その為、まともにスピードを出そうとしたらクリヤランスや抵抗抜きと言った上級者向けの改造は絶対必須であると言っても良い。

同じオレンジクラウン採用でも、スーパーXシャーシは各部が最適化され登場以来最強クラスのシャーシと呼ばれ続け、
2009年にはスーパーXXとして更に性能を増してリメイクされた優良シャーシである
(オレンジクラウンはX系シャーシの数少ないネックとされているが、駆動系の出来がとても優秀)。
そしてSFMシャーシの事実上の後継機であるFM-Aもオレンジクラウン採用であるが
駆動に関しては文句なしとまで評されるほどの高性能機である為、
オレンジクラウン採用『だからダメ』というのはもはや言い訳レベルである…

ギヤ周りをどうにか改造し、スピードを高めればいいんだろって?
そのまま走らせてみよう。すぐにフロントバンパーがへし折れる。

先に挙げた名シャーシであるスーパー1シャーシの最大の弱点はフロントバンパーの脆さにある。
この項目を読んでいる人も、過去にスーパー1シャーシのフロントバンパーが折れて涙目になった経験がある人も多いだろう。
スーパーTZシャーシが登場した際にも、その劇的なフロントバンパーの強度の改善は大いに話題になったほどである。

と、そのスーパーTZ登場のほんの少し前に出たばかりなのに、なぜかスーパー1並みにフロントバンパーが脆い
スーパー1登場から相当経ってからの発売なので、タミヤ側もフロントバンパーの脆弱性については重々承知していたハズなのに…

フロントバンパーが脆いのは百歩譲って良しとしても、だが今度はサイドガードが折れる。
このシャーシに最初から付けられている一体型のサイドガードは強度がフロント同様致命的に脆い

スーパー1のサイドガード(着脱式)はVセイバー以降強度の見直しが行われ、新型が設計されたことにより以前より格段に強度が増した。
いったい何のために一体型にしたのか、そしてなぜ強度不足を認識していながらこんなに脆いのかと問い詰めたくなるレベルである
(SFMは全体的にTYPE-5を前後ひっくり返したようなシャーシと言われるが、サイドガードもTYPE-5のものとよく似ている)。

加えて言えば、もはや必需品とも言われる、ギヤ比3.5:1の超速ギヤが
X系/S2シャーシ用の水色の物の使用がレギュレーション上禁止されており(なぜかTZは許されている)、
灰色のSFM用の物を使おうと思ってもスポット生産品のため入手し辛い事がある
灰色超速ギヤの方は人気が高くないので市場流通量も多く、買おうと思えばいつでも簡単に手に入るが、
ぶっちゃけ水色のX系/S2用のほうが精度がよく、TZユーザーからも見向きもされない為余っているという悲しい事情がある
(そもそも第三次ブームの現在、TZユーザーはかなり希少種という事情もある)。
だが、精度が悪いとは言え一応超速が使えるのはまだマシで、
近年のレースで手軽に速度を少しだけ抑える上で非常に重要な手段である
3.7:1のハイスピードEXギヤも使用不可(こちらもTZは使用が許されている)。
という事は、3.5:1の超速ではちょっと速度が速すぎる…という場合、
4:1のハイスピードギヤまで一気にギヤ比を落とすか、あるいは別の方法(モーター、ブレーキなど)での調節を強いられる。
この時点でぶっちゃけかなりのハンデと言っても過言ではない。

また、必須パーツであるGUPの2mm中空プロペラシャフトも何故か長年スポット生産品であったため
再販時期を逃すと非常に手に入りにくくなってしまっていた。
こちらは『普通に使うなら』SFMユーザーと希少種であるTYPE-5ユーザー以外には縁の無いパーツだが、
運の悪い事に、大会でも頻繁に行われている「中空ピン打ち」という改造に絶対必須な為
SFM・TYPE-5を使わないユーザーもこぞって掻っ攫って行く為に入手が困難となっていたのである。

というより、圧倒的に上記2つのシャーシを使わないユーザーが買ってる場合が多く、
時と場合によってはプレミア価格で取引されるくらいに相場が高騰していた。
(地方の模型店やホビーショップでは在庫が残っている場合もあるので、
全てのSFM関連GUPにおいて一概に同じとは言えないが大体どこも売り切れである)
2017年にようやく(本当にようやく)通常ラインナップ入りを果たしたが、それまでにSFMユーザーが舐め続けた苦汁は想像するに余りある。

…とルール上・販売都合上からもイジメのごとき扱いを受けている。

その上、低重心が基本中の基本であるミニ四駆にも関わらず
構造上かなり重心が高くなってしまっていたり
リアステーを付けるとギアケースが外れにくくなり
整備性が極端に悪かったり(一部ステーだとケースそのものを削る必要すらある)、
本体自体さえも強度が不足していて、そのままだと幾ら上記の問題点をクリアしても
結局コーナーでシャーシがねじれて大幅にスピードがダウンしてしまうため
井桁等の改造を駆使してその問題を解決せざるを得なかったりと、
もはや良い所を見つけるのが難しいレベルの問題児、それがこのスーパーFMシャーシなのである。

ブロッケンGの持ち主である近藤ゲンはパーツの付け過ぎで遅いとキレてパーツをブチブチと剥ぎ取っていた
が、一番の原因はこのシャーシにある…たぶん。


ちなみに先代のFMシャーシはなぜかこのシャーシと比べて出来が良く、
スーパーFMの最大の欠点とも言える駆動系の出来が少しの調整、
もしくは無調整で実戦投入できるほどの仕上がりである。
とは言えこちらは灰色超速すら使えず、使える中でもっとも最高速が出るギヤ比は
なんとハイスピードギヤの4:1と、これはこれでなかなか苦しいものがある上、
フロントバンパーの脆弱性はSFMと大して変わらない…というよりSFM以下かもしれない。
一応駆動性に関しては悪くないのでギヤ比の問題と旧型故のバンパー等の脆さを補う事さえできれば、
そこそこガチで戦える可能性はある。
しかし最近ではリヤモーターをフロントモーター化する技術が非常に発達しており、
特にARシャーシのFM化改造は2015年夏以降、大ブームを起こした程でもある。
その為、どうしてもフロントモーターに拘るユーザーは旧FMやSFMではなく
ARやXXを始めとする他のシャーシをFM化改造する方が圧倒的に多くなっていた
(何度も言うが、現在は方軸最新にしてかなり高性能なFM-Aが存在する為、
フロントモーターを作りたいなら初心者から上級者までFM-Aを選べば問題ない)。

タミヤ側もあまりの出来の悪さを認識していた為か、
  • ブロッケンG
  • ブロッケンG ブラックスペシャル
  • ガンブラスターXTO
  • ガンブラスター クスコスペシャル
  • ストラトベクター

のわずか5車種にしかこのシャーシは搭載されていない
(しかも2車種はバリエーション…)。
バニシングゲイザーのみのTZ-Xよりはマシ…と言いたいところだが、
実はTZ-Xはバニシングゲイザー、干支ミニ四駆2001(バニシゲのカラーバリエーション)、
マッドブル、バハキング、ビートマグナムGPA、ブーメラン10GPAに採用され、
おまけにサイクロンマグナム・ハリケーンソニックと言った主役マシンの
プライズ版(21st Century Edition)にまで採用されたりと
かなり優遇されているので、このSFMに比べればだいぶ恵まれている。


一応補足しておくと、
二次ブーム期はギヤ精度等に気を配るレーサーはほとんどおらず、
大会上位にもたまに(本当にたまに)このシャーシを使うレーサーは居た。
実際に1999年の夏のジャパンカップにおいて、
地区大会をこのシャーシで制覇したレーサーが決勝戦もこのシャーシで闘いに来ている。
だが近年の大会で、このシャーシで勝ち抜くのはもはや不可能に近い…

しかし、出来の悪い子ほど何とやらという言葉があるように、
このシャーシの持つ不思議な魅力に取りつかれたレーサーは一定数存在する。
彼らは自分の持つ知識・技術・経験の全てをこのシャーシにブチ込み、
ネタではなく全力でこのシャーシを速くしようと全霊を込める為、
傍から見てるとビックリするくらいのスピードを出してしまうレーサーもいたりする。
実際に2015スプリング東京大会2:オープンクラスにおいてスーパーFM使用者が優勝をもぎ取った。
更に言えば、2015ジャパンカップ大阪大会2:オープンクラスの優勝者もスーパーFMを使用して栄冠に輝いたし、
そのレーサーは同年のオータムカップ東京でのチャンピオン決定戦でも優勝している。
どのパーツでもそうだが、極めれば性能は激変してしまうという好例である。

「そこまで勝ててるならダメシャーシじゃないじゃん!」と思う事なかれ。
それはあくまで「スーパーFMを使っても勝てるほどの技術があるレーサー」だから勝てている訳であって、
初級者~中級者が迂闊に手を出そうとしても、上記にあるデメリットの連続に心が折れるだけである。
と言うかスーパーFMで勝てる人は、S1以降のシャーシであれば大体何を使わせても速くセッティングできる。
確かにこのシャーシで速い、という事はそれだけで一つのステータスではあるが、
他の出来のいい片軸シャーシ(S2やVSやARなど)でしっかりと基礎を磨いた上で、
茨の道であることを覚悟した上で手を出す事を薦める。

AR、S2、MAといった高性能と評されるシャーシを使ってスーパーFMにぶっちぎられたら
相当な技術差がある証拠なので、素直に負けを認めて精進し直そう。
ミニ四駆は本当に思いを込めて作れば速くなるのである。


ちなみに、地味にカラーバリエーションに恵まれている。
以下がその種類。

  • ダークグリーン
キットの大半に採用されているカラーにして、最も基本となるSFMにして
最もダメなSFM(と言われている)。
と言うのも、元から強度が低いSFMの中でもトップクラスに強度が低い為、
破損のしやすさが尋常ではないのである。何でよりによって通常キットにコレを…


  • ブラック
ブロッケンGブラックスペシャルにのみ採用されているカラー。
現在通常生産されているSFMの中では一番マシと言われている為、
SFM入門に最適…かもしれない。通常生産されてるSFMってコレとダークグリーンしかないけど。


  • ホワイト
GUPとして発売。あまり出回らなかったが、2012年に再版される。
当初はあちこちでダダ余りで投げ売りすらされているような状態であったが、
昨今のSFMブームによりかなり高騰し、同期の白S1、白TZを差し置いてプレミアが付いている有様。
性能も中々によい為、SFMでガチで戦う人にも結構な人気がある。
2015年春、ゲーセンプライズ限定のブロッケンギガント21stに再録決定したが
これはAパーツが黄色のため、白色のAパーツは未だに希少種。

  • カーボン
限定GUPにして最も硬いSFM。
他のシャーシでも人気の高いカーボン製と言うだけあり、『最強のSFM』と断言する人も多い。
SFM使いにとってはまさに垂涎の一品。
限定GUPだけあって相場もかなり高騰していたが、2016年1月に再販が決定。
尚一部ユーザーは「2mm中空ペラシャも一緒に売れよ!」とキレたとか。
2019年3月、ガンブラスターXTOフィリピンスペシャルに再録決定したが、こちらはAパーツが白色になっている。

  • スモーク
限定GUP…ではあるが、ただでさえ強度の低いSFMに強度の低いクリヤー素材なんか使ったものだから
「1回のコースアウトで死ぬ」とまで断言されている程に脆弱なモデルと化してしまった。
が、素材の関係上、どうやらペラシャの滑りがトップクラスに良いと言われ、
『一発勝負用と割り切ればカーボンより上』と評する人もいるとかいないとか。
まぁ観賞用にするのがベターかと思われるが…

  • ZMC仕様
セガサターンゲーム「爆走兄弟レッツ&ゴー!!スーパーファクトリー」の予約特典。
シャーシ底面にカーボンパターンがプリントアウトされている。それだけ。
ZMC仕様と銘打たれてはいるが、ぶっちゃけ柄違いだけで、性能はブラックと同じらしい。
ただ、その販売方法上かなりの希少種であるとされ、現在ではほぼコレクターズアイテム化している。

  • オレンジ
2010年の1月に、浅草大会でのお楽しみ抽選会で配布された激レアカラー。
入手は非常に困難だったが、2015年にゲーセンプライズのブロッケンギガント21stで再録された。
その為か不明だが、このブロッケンギガント21stはあっという間に全国のゲームセンターから消え去り、
異例の再生産が掛かるほどの人気を博した。
期間限定品(2ヶ月位)のため、現在は再び絶版、高騰の兆しを見せている。

その他、赤、ライトブルーなどがあるが、
ライトブルーは2012年のサマートライアルの入賞賞品、
赤は本来のオレンジ同様に浅草での抽選会配布と、どちらもかなりの希少度を誇る。



追記・修正はこのシャーシで公式大会優勝してからお願いします。

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最終更新:2023年07月06日 23:50