ファルケンラスの貴種/Falkenrath Aristocrat

登録日:2013/02/28 Thu 16:39:09
更新日:2024/12/16 Mon 16:36:01
所要時間:約 5 分で読めます




マジック:ザ・ギャザリングに登場するカード。
の多色クリーチャ-。イニストラードブロックの小型エキスパンション・闇の隆盛に収録され、レアリティは神話レア。

テキスト

ファルケンラスの貴種/Falkenrath Aristocrat (2)(黒)(赤)
クリーチャー — 吸血鬼(Vampire)
飛行、速攻
クリーチャーを1体生け贄に捧げる:ファルケンラスの貴はターン終了時まで破壊不能を得る。
その生け贄に捧げられたクリーチャーが人間(Human)だった場合、ファルケンラスの貴の上に+1/+1カウンターを1個置く。
4/1

概要

イニストラードブロックは部族がテーマとして強く押し出されたブロックであり、黒赤は吸血鬼の色として割り当てられた。
多色の神話レア吸血鬼としては、前エキスパンション・イニストラードの《オリヴィア・ヴォルダーレン》に続いてこのファルケンラスの貴が2枚目となる。


性能

4マナ4/1速攻という極めて攻撃的な性質を持ち、飛行を持っていることがその前傾姿勢をサポートしている。
まともに回った吸血鬼デッキならファルケンラスの貴が出た4ターン目に10点前後のクロックを叩きだすことができる。

タフネスが1とチャンプブロックで殺されてしまう心もとなさなのだが、そこで除去耐性も兼ねる起動型能力の出番となる。
クリーチャーを1体失うものの、吸血鬼デッキは横に並べるのが得意なので生け贄要員には困らない。
さらに人間をサクればパンプアップもできると、あくまで前のめりな姿勢は崩さない。
中盤に引いて腐った《流城の貴族》をサクってもよし。
さらにアヴァシンの帰還で登場した、終了ステップ開始時に生け贄に捧げる人間トークンを3体出す《屋根職人の反乱》との相性は最高クラス。
同じくアヴァシンの帰還で収録された《血の芸術家》ともシナジーを形成しており、どうかするとファルケンラスの貴が殴ったターンに終わったりする。

活躍

神話レアとして登場したファルケンラスの貴だが、収録されたエキスパンション闇の隆盛は
  • 通常時-1/-1修正だが陰鬱達成で-13/-13修正を与える《悲劇的な過ち》
  • たった1枚で4匹もの飛行トークンを生み出す《未練ある魂》
等のまるでファルケンラスの貴の対策かと思いたくなるようなカード群が収録された時でもあった。

さらに登場当時主流であった追放・布告・バウンスといった除去への耐性もないため、ファルケンラスの貴はほとんど見向きもされない神話レアであった。
収録されたのが「2千円越えのカードが存在しないエキスパンション」闇の隆盛であったせいで「弱いカード」という印象が余計についたのかもしれない。

しかしアヴァシンの帰還で上記のような相方達を手に入れ、さらにゾンビビートダウンの青黒型から黒赤型への移行が見られるようになる。
それにつれてファルケンラスの貴のコストパフォーマンスの良さが見直され、徐々に評価があがってきた。
実際「除去耐性を持った、4ターン目に4点で殴れる飛行生物」という言い方をすると、どこかの聖人の霊を彷彿させる。

さらにラヴニカへの回帰ブロックの第1エキスパンション・ラヴニカへの回帰では、まさにこの吸血鬼カラーである黒赤がサポートされたことから人気も値段も急上昇。
ファルケンラスの貴は当初「ソリンくじ」とまで言われていた闇の隆盛出身でありながら、イニストラードの君主、ソリンはおろか、押しも押されもせぬトップレアであった《高原の狩りの達人》まで押しのける勢いとなっている。

その後ギルド門侵犯で相性の良いカードが更に登場した結果、ファルケンラスの貴をキーにするデッキ、The Aristocratsが登場。直後のプロツアーに持ち込まれた結果がまさかの優勝。
これはファルケンラスの貴がクリーチャーを生け贄にする能力に着目しており、様々な生け贄・死亡関連シナジーが盛り込まれたデッキとなっている。
スタンダード退場後も、何かしらの生け贄エンジンを用意したデッキは「アリストクラッツ」という名称を与えられるほどである。

総じて登場初期の評価を見事に覆し、MtG史にも名を残した名カードの一枚と言えるだろう。










…さて、みなさん。
以上の文章を読んでて、やたらに強調されている部分にお気づきいただけただろうか。
そう、

ファルケンラスの貴

↑この部分である。



このカードの名前はファルケンラスの貴である。

もう一度言おう。

このカードの名前はファルケンラスの貴である。


なぜここまで強調するのか?

もしカードの日本語版の実物や画像を見ることができるなら、是非ご覧頂きたい。

そこには堂々と書かれているハズである。


ファルケンラスの貴
と。


誤訳

カードとしての活躍もさることながらこのカードの名前が誤訳されたことが非常に話題に上る一枚でもある。
一応「Aristocrat」を「貴族」と訳すのはそう問題ではない。
だが問題なのは、前エキスパンションのイニストラードで《ファルケンラスの貴》という名前のカードが登場していたという点だ。
ちなみにそちらの英名はFalkenrath Noble
「Noble」を「貴族」と訳すのも定例訳である。
しかしいくらなんでも、直前直後のエキスパンションで同名に訳してしまうというのはどうなのか。

この致命的誤訳により貴の方が「貴族B」などと呼ばれるなどネタとして先行してしまい、正当な評価を受けられずに一時期埋もれてしまっていた…
という見方もできるかもしれない。
ぶっちゃけあのタルモゴイフだって、最初は「プレインズウォーカーって何?」という雑談のネタ扱いしかされてなかったのだ。
何がどう作用するかわからないのもマジックである。
なお公式ハンドブックでこの誤訳の訂正が行われたのだが、よりにもよって《ファルケンラスの貴》と誤訳の訂正で誤植されるというオチが付いた。貴族C

後にモダンマスターズ2017で再録された際はちゃんと《ファルケンラスの貴》となり、約5年の時を経て正しい名前で印刷されることとなった。ちなみに何の因果か《ファルケンラスの貴》の方も同時収録されている。

余談

ファルケンラスの貴とファルケンラスの貴はともに吸血鬼で、片や生け贄エンジン、片やクリーチャー死亡時1点ドレインなので相性自体は良かったりする。
まぁ実際の相方は上述の通りファルケンラスの貴より軽くて同じ能力を持つ《血の芸術家》が採用されてはいたのだが。

ファルケンラスの貴が登場したイニストラードブロックは誤訳・誤植が非常によく目立ったブロックである。
その中には笑い話になるちょっとしたミスから、このファルケンラスの貴のような明らかな問題と言えるもの、さらにはサーチカードの1種で「あなたのライブラリーから」の一言が抜けてしまっているというゲーム性にまで影響を与えてしまうものまで含まれている。

…翻訳班には是非頑張って頂きたいものである。




追記・修正はエキスパンション1つを丸々完璧に翻訳してからお願いします。

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最終更新:2024年12月16日 16:36