サタデーナイトスペシャル

登録日:2014/10/08 (水) 04:31:00
更新日:2023/09/27 Wed 11:56:40
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サタデーナイトスペシャルとは、アメリカやカナダで使われる低品質・低価格・粗製濫造な小型拳銃の俗称。ジャンクガンとも呼ばれる。


概要

チンピラだとかマフィアの末端のニュービーどもが土曜の夜に喧嘩(Not抗争)をおっ始めるときに、.25ACPだとか.32ACPなどの小口径な安物をよく使ったこと、
またそういうのを見せびらかしたがるアホどもや酔っぱらいの喧嘩→ぶっぱ→救急コースのコンボが流れるように決まり、かつ土曜日に集中していることが多かったため、
医者たちが「やれやれ、土曜の夜は大混雑だな…(ゲッソリ)」と皮肉ったことに由来するという。

正式な定義はこれといってないが、いくつかの州の銃規制によれば、銃身長3インチ未満の自動拳銃、あるいは全長6インチ未満のリボルバーを指すことが多いようだ。
また、安価で低品質のものに限定され、有名ブランドのものや高価なものは含まれない。
価格はモノによってまちまちだが、安ければ50ドル程度で買えるため、デリンジャーのように100ドル超えるようなものは小さくてもこうは呼ばれない。


特徴

大抵のものは日本じゃ聞くこと自体ほとんどないであろう中小・零細メーカーが作っている。
質・造りはというと、揃いもそろって良く言えば実用本位……と言いたいところだが、ほとんどが粗製濫造品の乱交パーティー。
精度も品質もお察しで、競技やオフィシャルな用途には間違っても使えないし使っちゃいけない。
ましてや趣味性やコレクターズアイテムとしての価値も皆無。……まぁ、弾を発射するだけの道具として見るならマストアイテムなんだろうけども。

使用される弾丸はどんなに大口径でも.44スペシャル程度で、基本的には9パラ未満に落ち着くことが多い。
こうすることで銃を小型化できるし、小口径弾は反動や衝撃が小さく、多少雑な造りでもどうにかなる。そうして材料費も設計費も削っているのだ。
同時に耐衝撃性をそこまで考えなくてもいいので、耐久性や精度で劣るが安価で大量生産に向く亜鉛のダイキャスト部品を使用するものも多い。
あらゆる意味で「安かろう、悪かろう」な品がほとんどのため、命中精度や威力といった基本性能ではブランドものには当然劣る。
材質や構造も長期運用という点をほとんど考慮してないので耐久性もお察しで、まともなメンテナンスなしで酷使または放置などすればジャムや暴発待ったなし。


そんなものが売れる理由

とまぁ、ユーザーの安全面や銃器としての信頼性を投げ捨ててるものが大半なのだが、それでも流通し続けているのにはそれなりのワケがある。

これは「安いこと」そのものが理由で、良くも悪くも銃、そしてそれを安易に使いたがるアホどもの脅威が身近なアメリカでは、低所得層の自衛用として需要があるからだ。
外野からすれば「真っ当なブランドのを使わんのはなぜに?」と思わなくもないが、デリンジャーでさえ100ドルはするのだ。
ましてやもっと強力なガバメントだのグロックだのともなると、ねぇ……
趣味で撃つわけでもなく特にこだわりもないものにそこまでのカネを出す余裕がないが、万が一のために持ってはおきたいという切実な事情がある。
あとは、カネがなくはないが護身やセキュリティへの出費を惜しむケチンボ……いわゆる小金持ちからの需要も一定以上あるという。

そして上記の理由はそのまま裏返すと、その自衛を強いるアホどもの使い捨ての武器としての需要が大きいということでもある。
曰く「100ドル強奪するのに何で500ドルもする銃を買えと?」だそうで。いやぁ、アメリカの銃社会はマッポーだなぁ。
と、冗談混じりに書いたが実際そんな高級な銃を買える金があれば犯罪に手を染める必要もないわけであり、一言で言えば貧困層の増加が背景にある。


存在の是非

「安価な銃が治安を悪化させる要因になっている」という批判は根強く、販売に規制をかけている地域もある。
これまで述べた通り犯罪者がこれらの銃を使っていることもあり、

犯罪者が安い銃で武装する

怪我人・死人が増える

親が死んだり怪我で働けなかったりで貧困層が増える

犯罪に走る人が増える

以下ループ

という負のスパイラルが生まれるのは想像に難くない。
犯罪者でなくとも、持っている以上「つい」使ってしまう人だっている。
そうして銃を持つ人が増えて得するのは銃と弾薬を売っている企業であることも批判が加熱する一因だろう。
反対に
「身を守るための武装は米国民の権利であり、安価な銃を規制することは低所得層への人権侵害*1である」
「犯罪者はどのみち密造・密売で銃を手にする。ならば安価な自衛手段を用意すべきではないか?」
「むしろ銃の流通を把握できた方がコントロールしやすいのでは?」
といった声があるのも事実で、銃規制を巡る議論は絶え間なく続いている。


サタデーryの例

ブルドッグ

1973年にチャーターアームズ社が発売したダブルアクション・リボルバー。
全長18cmちょっとのコンパクトフレームから.44スペシャルをぶっぱできるという携行性と頼もしさが売り。
そのため、法執行機関関係者のバックアップ・ウェポンとして用いられることも。
装飾もクソもない実用一点張のシンプルな外見だが、当時としては珍しいアルミ合金などの軽量素材を多用し、
さらに各パーツの肉厚をギリギリまで絞り抜くことで、ここまでの軽量化と小型化を成し遂げた。
コンパクトなだけあって装弾数は5発と少ない。

日本国内ではほとんど完璧に無名だが、『ブレードランナー』のガジェット・デッカードブラスターのプロップベースに採用されたこともあって、
SFマニア、あるいは兼業のガンマニアからの知名度だけは高い。
なお、デッカードブラスターをモロパクリな外観の拳銃が獣戦機隊の制式拳銃として使われている模様。
いわゆるサタデーナイトスペシャルに分類される銃器の中で、ほぼ唯一実用可能なモデルと言っていい。
92年の発売元倒産から幾度か生産中止の憂き目にあっているが、メーカーを替えつつ未だに販売されてる長寿なヤツ。

RG14

ドイツはローム社製の.22LR弾を使用するダブルアクションリボルバー。RGはRöhm Gesellschaft(ローム社)の略。
シリンダーがフレームに固定されてるため、ダブルアクションなのに装填方式は旧式のシングルアクションのような煩雑なもの。
さらに面倒くさいのが排莢で、付属のエジェクターピンでシリンダーの銃口側から突っついてやらないと、空薬莢ひとつ落とせないのだ。
第二次大戦時のリベレーターじゃねぇんだぞ……あれは単発なうえに「銃弾発射装置」でしかなかったけども。
ぶっちゃけ再装填のことを考えてないようなもんだが、脅しや自衛のための威嚇にはこんなものでもいいのだろう。

ちなみに、レーガン大統領暗殺未遂事件で犯人が使ったのもこれ。

PSA-25

プレシジョン・スモールアームズ社製のFN M1906(ブローニング・ベビー)のコピー銃。
コピー元は当然サタデーryとは呼ばれないが、あいにくパテントが切れてしまっており、数社が安価なデッドコピーを作っているのだ。
パテント切れのデッドコピーはFNやコルトの古参拳銃にはよくあることだが、性能的には例によって本家を超えられるものではない。
品質は様々としか言いようがないが、オリジナルではリリースされなかったステンレスモデルを出すなど、独自色は多少ある。

MP-25

レイヴン・アームズ製の.25ACP弾を使用するポケットオート。
値段の割には仕上げ、品質共にまぁまぁといったところで、少なくとも粗悪な密造銃と違って護身用としては及第点。
市場評価もまずまずで、計200万挺を売り上げた影のベストセラー。
レイヴン社自体は91年に倒産したが、版権はフェニックス・アームズが引き継いだ。
デッドコピーも複数種発売されたが、やはり品質ではオリジナルに劣るようだ。


余談

本場銃社会のチンピラ御用達のブツではあるが、なぜかそういう連中がプレイアブルキャラのGTAシリーズには影も形も出ない。
どいつもこいつもガバメントだのグロックだのベレッタだの……お前らのようなチンピラがいるか。金持ちすぎんだろJK、何でチンピラやってるし。
まぁ、スポンサーの何やかんやとか、色々事情があるのだろう、たぶん。






追記・修正は酔っ払ったチンピラを挑発して懐から抜かせてから正当防衛でお願いします。

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最終更新:2023年09月27日 11:56

*1 ちなみに合衆国憲法には米国民の「武装権」が明記されており、これに違反するという解釈もある。