コルト M1911(コルトガバメント)

登録日:2011/04/25(月) 20:46:27
更新日:2025/07/12 Sat 19:31:36
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風穴開けるわよっ!!


性能

全長:216mm
重量:1077g
口径:.45ACP
装弾数:7+1
発射形式:シングルアクション
愛称:M1911(nineteen eleven)、Caliber.45



概要

M1911はコルト社製自動拳銃。.45APC弾とともに大口径主義のアメリカを象徴する銃の一つである。
米軍初採用時のモデル名は「Automatic Pistol,Caliber.45,M1911」(自動拳銃.45口径1911年製)。

日本では「コルトガバメント」が一般的だが、「Colt Government Model」(コルト社製政府採用モデル)に由来するので日本のみの愛称。

銃大国アメリカではその普及率とロングセラーぶりと、アメリカンポリスの諸事情*1もあり、向こうの通報が911と掛けて『Emergency?(緊急事態?)Use 1911(1911を使おう)』という標語まで造られた。


歴史

コルト社は.45ACP弾の開発とほぼ同時期にブローニング設計のM1900を改良したM1905を開発。
安全装置などの追加を経て、ルガーP08やサベージM1907と競合しつつ1911年まで改良*2が加えられ、これをM1911として採用した。

第一次世界大戦では供給が間に合わず全軍配備には至らなかった*3が、高い威力と信頼性から評判は上々で、現場の要望を取り入れM1911A1に発展させた。
コルト社やスプリングフィールド造兵廠では間に合わずレミントンUMCやノースアメリカン・アームズ社でも製造されたという。

戦間期にはM1911をA1に更新、増産して全軍配備を完了。第二次大戦では米兵の腰にほぼほぼ装備されているのが見受けられる。
戦中の生産記録は以下の通り。*4

レミントンランド(タイプライター) 90万丁
イサカ(散弾銃) 約40万丁
コルト 約40万丁
ユニオンスイッチ&シグナル(信号機) 5万丁
シンガーMFG.CO(ミシン) 500丁
累計 190万

これだけの数があったため、戦後はアメリカ軍は新規発注はせず部品の交換で維持していた*5

上記の通り、長年の改善によりシンプルで信頼性が高く、そしてバランスの取れた完成度の高い銃となっている。

民間でも人気が高く、護身用・競技用として広く使われている。
1986年にパテントが失効してからはアメリカ国内に限らず、カスタムガンが発売されている。
単純なクローン以外にも、最新のトレンドを反映するべく創意工夫を凝らした物もあり、バリエーションは星の数ほどある。
M1911と関係ない拳銃だとしても、アメリカ市場向けに銃を作る場合「M1911に近い操作系にする」「.45ACPを使用する」などといった方針を重視する企業もある。

1985年にベレッタ92FS(M9)にその座を譲るまで半世紀以上制式拳銃の座を堅持した。
9mmが主流となった後でも/45口径を信頼している特殊部隊や警察官は多く、MEUやM45A1などとして軍での採用、使用例は続いている。

自衛隊の前身である保安隊でも11.4mm拳銃として制式採用され1982年に9mm拳銃が採用されるまで使用されており
戦後すぐの日本警察にも米軍の余り物のこれが大量に供与されたため昔の警官は比較的馴染みがある。ルパンの銭形警部が愛用しているのも納得できる。



構造

ティルトバレル式ショートリコイルを採用。現代の自動拳銃のスタンダードな作動方式となっており、踏襲する拳銃も多い。
AFPBこそ大戦中には装備されていないが、グリップセーフティなど二重の安全装置を備えている。*6

シングルアクションではあるが、上記安全装置とサムセーフティーによる手動安全装置により薬室に弾を入れての携行(コック&ロック)も十分実用可能。
小さな排莢口やトリガーガードなど設計の古さを残しながらも今なお現代自動拳銃のお手本とも言える。

現代銃と比較してはさすがに以下の点は欠点である。
  • ダブルアクション式の銃では当たり前なデコック機能などにがなく、より安全な携行ができない
  • シングルカラムの大口径拳銃であり、あまり多弾数を発射できない



主な銃

あくまで一部。

コルト社製

  • ディフェンダー(全長171mm)
  • ダブルイーグル(DAモデル)
  • ソーコム・プロト(M1911A2、ソーコム向けだがMK23に敗れる)
  • デルタエリート(10mm口径モデル)
  • .380ガバメント(.38スーパー弾を使うモデル)
  • MEU(海兵遠征隊向け改修品)
  • M45/M45A1

他社製

  • S&W 945
  • S&W SW1911
  • AMTハードボーラー(ターミネーターのT-800が使用)
  • AMTオートマグ(長銃身)
  • STi2011シリーズ(ダブルカラムマガジン化)
  • LARグリズリー・ウィンマグ(マグナム弾に対応)
  • SIGSAUER P238(.380ガバメントの再設計)
  • SIGSAUER GSR(SIGが製造しているM1911のクローン)
  • インベルモデル911

同時期の似た銃

コルト/FN/ブローニング社のM1911前後の銃を参考にしており、実質的に腹違いの兄弟といえなくもない。


フィクション


トリビアの泉で.50BMGの前座として日本刀に弾を一刀両断された。*7

有名かつ現用の銃では珍しくシングルアクションであるため、邦画やアニメではハンマーが起きていない(弾が出ない)まま構えてしまうという描写ミスがしばしば見られた。



余談

ノーマルモデルはグリップのパネルが角ばっているため3枚の角材を持っているような感覚となる。
親指が短いとサムセーフティー以外の操作がしづらく感じるだろう。片手で使用する場合は反動相殺も兼ねて銃の軸と腕の軸がそろうようにきちんと深めに握ろう。
あとガバメントモデル標準のアイアンサイトはかなり見づらいので、もしモデル違いが撃てるならスプリングフィールド製などサイトピクチャーの良好なクローンを選んだほうが良いかもしれない。



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最終更新:2025年07月12日 19:31

*1 銃社会ゆえに発砲事件も少なくなく、またアメリカの陸地面積に反して警察署の数が少ないので、通報から現場到着までかなり間があり、その間は被害者自ら自力で対応しなければならない。

*2 M1907、M1909、M1910など多数のモデルが存在する

*3 間に合わないのでM1917リボルバーなど.45ACP弾対応リボルバーなども開発されていた

*4 特にシンガーMFG.CO製のものは少ないので、コレクターの間で恐ろしい値段で取引されている

*5 それで済む程度には大量に在庫があり、長年の使用にも耐えたということでもある。

*6 M45A1等改修されたM1911にはAFPBが組み込まれている。民生用にもシリーズ80と呼ばれる後期生産型からAFPBが追加されたのだが、トリガープルが重くなることを嫌って機能のキャンセルしているユーザーもいる。

*7 銃弾はほとんどが鉛と外皮の銅なので致し方なし。日本刀以外にもコンバットナイフなどきちんとした刃物でも同様の結果にはなりうる…が.50BMGでは数発が限界であったので多少結果が異なる可能性がある。