登録日:2011/03/15 Tue 15:43:16
更新日:2025/08/05 Tue 07:37:59
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Beretta modello 92
性能
全長:217mm
重量:975g
使用弾:9mmパラベラム弾
装弾数:15+1
作動方式:プロップアップ式ショートリコイル
概要
ベレッタ92とはイタリアのベレッタ社が1975年に開発した自動
拳銃である。
9番モデル(ベレッタ公式では90シリーズ)でダブルカラム(2)であることから92である…ので92年製ではない。
ベレッタ社公式サイトの製品カタログではBeretta 92 Series、92FSなどと表記されている。
1985年から2017年の失効までの間、M9として
アメリカ軍の制式拳銃に採用されていた。
開発から30年たった現在でも複数のモデルやバリエーション、後継型が作られ、世界中の警察や軍隊で広く使われている。
豊富な実戦経験と実績に裏付けされた実用性、信頼性の高さとデザインの美しさを兼ね備えている為、銃の出てくる洋画から邦画、ドラマ、
ゲーム、アニメには必ずと言っていいほど登場する知名度の高い銃である。
日本ではM92の俗称がある。「modello 92」やM9、前モデルのM1951からの連想と思われ、遊戯銃から広まったとされる。
歴史
本銃は1970年、同社のM1951の
後継機として開発を開始した。
M1951はそれ以前のM1934をもとに9mmパラベラム弾に対応し
ワルサーP38をもとにした独立ロッキングラグ式ショートリコイル作動を追加したものであった。
しかしシングルアクションでシングルカラムマガジン、クロスボルトセーフティという点でM1934から継承した操作系、安全装置の古くささは如何ともしがたかった。
そのため、ダブルアクション+デコック機能、ダブルカラムマガジンを追加。細かい点も直して1975年に最初期の92無印が製造された。
先行配備したイタリア警察からのフィードバックにより、スライド後端の現在の位置にデコッカー兼セーフティとAFPBを追加した92Sにアップデート。
そして1978年から始まったアメリカ軍によるXM9トライアルにて92Sの最終仕様にマガジンキャッチの改修やAFPBを追加した92SB(92S-1)を提出した。
その後3回のトライアルを経て表面処理や各部分の修正を行い92SB-Fから92Fへとアップグレード。
最後のダメ出しにスライド破断時の対策(後述)を追加した92FSとなり、晴れてM9として米軍に採用された。
採用後は米軍に321,260丁を納入、フランス軍とも92G110,000丁のライセンス契約を結んでいる。
トライアルの目的は「コルトM1911A1に替わる、NATO標準の
9mmパラベラム弾13発以上が発射できる拳銃の選抜」。
第1回トライアル(1978~80):このときは装弾数10発を基準としていた
- コルト:SPP(本トライアル用の試作拳銃で民間には販売されていない)及び比較用のM1911A1
- S&W:モデル459(M59の改修型)及び比較用のM15リボルバー
- スター:M28(スペイン製で1911クローンの派生)
- FN:ブローニングハイパワー及びそのダブルアクション版
- H&K:P9及びVP70
- ベレッタ:92S-1
空軍限定トライアルだが最優秀で合格(他の合格銃は6丁)。しかし陸軍によって全軍トライアルに拡大する為にいったん合格は白紙となる。
第2回トライアル(1982)
条件が無駄に厳しすぎたらしく全種脱落とだけ発表があった。詳細不明。
第3回トライアル(1983~84):装弾数13発に条件を変更
- ベレッタ:92SB-F
- SIG SAUER&Sohn:P226
- S&W:モデル459M→要件を満たせず却下
- H&K:P7→要件を満たせず却下
- ワルサー:P88→要件を満たせず却下
- コルト:SPP→自主取り下げ
- FN:BDA(ブローニングハイパワーのダブルアクション版)→自主取り下げ
- ステアー:GB→陸軍による却下
第4回XM10トライアル(1988 M9採用後):結局M9が勝利
最終的に基準を満たした92SB-FとP226とでの一騎打ちとなった。P226はより高い性能を示したが、92SB-Fのほうが安いということで選択された。
フランス(PAMAS G1)のほかにもブラジルのタウルス社や南ア、台湾にてライセンス生産され、特にタウルス社の独自モデルは有名。デッドコピーも含めると生産・採用国は数知れない。
現在ではM8000クーガーやその後継のPx4、最新のAPXが開発されているが、依然92の人気は衰えていない。
特徴
大きく切り開かれたスライド
これはベレッタ社が第一次大戦前(1910年頃)から採用しているデザインであり、イタリアの銃器デザインの一つの到達点とも言われている。
切り取ったことにより軽量化されスライド後退時の衝撃を和らげる効果がある。排莢口が大きくなり
ジャム予防にもつながった。
しかし大きく切り開いた為スライドの強度が不足し、92F時代に2年間で3件の事故が発生している。
ベレッタ社は調査により製造には問題点はない点を確認。NATOの規定を大きく超える強装弾を用いた為発生したものと断定された為、破断事故時にスライド後端が飛ばないように抑える機構を追加している。
後々クーガーにて通常型のスライドに回帰したことで.45ACP弾などにも対応できるようになっていることからも、本スライドデザインの限界が見て取れるかもしれない。
9mmパラベラム弾とダブルカラムマガジン
これ自体はブローニングハイパワーから続く普通なことだが、M1911A1からだとかなりの違いといえる。
分厚くこそなっているものの、1911と違いグリッププレートの隙間などが比較的滑らかに処理されているのですんなり構えられるだろう。
複数の安全措置
手動安全装置と兼用のデコッカーと92SBからのAFPBは当然として、各操作部位にも事故を防ぐ方面でのデザインが見て取れる。
シングルアクションの場合でも比較的遊びが大きめな2ステージトリガー、スライドのデコッカーがグリップから遠いなど。
当時としては左利きにも配慮している
スライドストップこそ固定なものの(これは最新の銃でもあまり変わらない)、デコッカーは左右どちらからでも操作可能。
マガジンキャッチボタンも向きを左右に変えられ、排莢方向は真上方向など、
左利きにも優しい作りになっている。
ダイハードシリーズのジョン・マクレーンのように左利きの人も多く使用している。
バリエーション
92FS(M9)以前のモデルは歴史を参照。
92系統
DAOモデル
スライドの安全装置がデコッカーとしてのみ作用するモデル。フランス軍仕様。
ステンレスモデル
通常モデルが行っている破損時対策だけでなく破損しないように強化を施したスライドを装備したモデル
M9にアンダーレールを追加したバージョン
A1にマグウェル、グリップ形状の直線化とチェッカリングの変更、デフォルトでのサプレッサー対応、トリチウム式3ドットアイアンサイトへ変更するなどをしたモデル
A3にMOS対応、フロントセレーションの追加、92Xのアップデートをフィードバックしたモデル
2006年発表の引っ掛かりの少ない形状にリデザインされたモデル。現在は廃盤となり、M9A1と合体し92A1となった。
最新モデル。M9A3相当のグリップ形状へ改良、トリガーシステムの刷新など。
.40S&W対応モデル。
9x21mmIMI弾対応モデル。
93R
性能
全長:240mm(ストック装着時570mm)
銃身長:156mm
重量:1170g
装弾数:20+1
発射速度:1100発/分
発射形式:セミオート・3点バースト
概要
M1951Rの後継機種として1979年より製造された対テロ用機関拳銃。「R」はイタリア語でRaffica(バースト)を指している。
70年代凶悪化して行くテロや誘拐犯に抵抗する為、要人警護では高い制圧力を持つ
突撃銃や
短機関銃が必要とされていた。
しかし、要人は議員など対外への威圧感を出さないように要請することがあり、ナガモノ自体を避ける傾向があった。
そこで服の下に隠せるサイズでありながら高い制圧力を持った銃が必要となり、開発が始められた。
ベースは92初期型であり、以下の変更を加えている。
- 銃身の延長と穴をあける形でコンペンセイターを追加
- 折りたためるフォアグリップの追加 トリガーガードが92より前方に拡張されていて親指も通せる
- 取り外し可能なフォールディングストックの追加
- M1951Rのフルオートから3点バースト機構へ変更し集弾性と継戦能力を向上
- 装弾数の増加
- スライド形状の変更
銃身上部の穴でモデルの識別が可能。
1stモデルでは上方に長方形の穴が6個、2ndモデルでは銃身の周囲に3つの菱形の穴が開いている。
2ndモデルではフラッシュハイダーの役割を重視したデザインとされている。
機関拳銃はすべからく民間市場では正規には流通しておらす、公的機関からの需要があったときのみ生産・供給されているとのこと。
イタリア軍とカラビニエリ(軍警察)、ドイツの
GSG-9に配備されている。
しかし、どこからともなく闇市場に流出し出回っていると言われる。
エアガンの93Rは現在、
東京マルイ(電動ハンドガン)やKSC(ガスブローバック)がリリースしている。
KSCのものはちゃんと3点バーストを再現しており、素早いサイクルとリコイルも相まって、なかなかの迫力がある。
余談
多くのゲームに登場しているが、92FSやM9A1のコンパチと認識されており外観が正確に再現されていない場合が多かった。現在ではゲームハードの性能向上、ネットの発達などにより考証の正確さが増し別モデルとして正確に再現されるようになってきている。
90シリーズの登場作品
92系統
92FSがクラリックガンのベースなっている
92FS Inoxの海外コピー品が
レヴィが使用の「ソード・カトラス」のベースとなっている。タウルス社製ではない。
マーク(演:チョウ・ユンファ)が92FSを使用。劇中ではFN ブローニングハイパワーと併せて、
二丁拳銃で使用する。
ジョン・マクレーンが92FSを使用したが、4ではSIG社のP226に。
初代では「M92FS」、
3と
初代リメイクではカスタムを施したゲームオリジナルモデル「
サムライエッジ」が登場。バリー・バートン用の初代モデルのみ96Fをモデルとしている。
ちなみにディレクターズ・カット版と
2のオマケゲームでは「
ワン・オブ・サウザンド」としてデザインが変わり、クリティカルヒットが出ればゾンビの頭を一発で吹き飛ばせる。
KAC仕様。レーザー&スライドロック機構搭載の簡易麻酔銃で、米軍の横流し品を改装したものであるためM9表記。
遠山キンジが92FSをベースにしたフルオート&3点バーストの違法改造仕様 通称「キンジモデル」を使用。93Rをイメージしている。
10巻の裁判の際に証人の警官が92Fを使用したことが判明。
主人公ジョナサンが92Fを愛用。
CoD4と
MW2に「M9」名義で登場。
どちらもキャンペーンではアメリカ軍兵士がサイドアームとして所持している。
MW2ではハンドガンを所持していないときにラストスタンド状態になると、強制的にこのM9を装備する。
一部のシリーズに「92FS-9mm」名義で登場。
大抵終盤で入手できるハンドガンで弾薬数と精度が優れている。
92初期型がPRB-92として実装。ブラジルBOPEをモデルとしたCAPITAO、CAVEIRA(特別モデル「ルイソン」)のほか、モロッコGIGRをモデルとしたNOMADとタイ王国警察をモデルとしたARUNIも使用する。
92FSが主人公ツヴァイの初期装備の一つとして登場する。作品の性質上、細部まで造り込まれた3Dモデルを堪能できる。
使い込むと中盤にスライド破断を起こしてしまい、P226を代車ならぬ代銃として渡されるイベントが発生する(その後92FSも復帰)。
また93Rも脇役の得物として登場している。ルートによっては端役で終わるが。
93R
カナン(幼少時代)が訓練時に使用。
金武誠、真奈美が使用。
アヤの初期装備。
マシンピストルとして3点バーストのみで登場。
ストックが付けられている。
93Rという名前で登場。3点バーストおよびセミオートで使用できる。
一部のシリーズで「Raffica」または「Raffica Pistol」名義で登場。
主に使用するのは敵勢力。
鬼州組会津白虎会の長である影虎が愛用。
主人公ロボコップの専用拳銃オート9は93Rをベースに機能を拡張した大型拳銃となっている。見た目は全く別物なれど、映画のヒットもあってかこの事実も広く知れ渡っている。
因みに、先見性のあるユーモアとブラックジョークを含む未来描写やSF設定と共に登場してくる銃器が凝っていることでも知られる同作だけに、オート9もバレルの延長やら諸々で実際に作れることをデザイナーが想定して生み出している。
追記修正よろしくお願いします。
- 和田慎二の「少女鮫」の主人公、涼子が愛用してたのがベレッタだったんだけど、これだったっけな…。思い出せん。 -- 名無しさん (2013-10-03 10:20:35)
- >現在はスライド破損事故に対応したブリガディアスライド(スライドに補強突起)に変更したM92FSが現行モデルである。 -- 名無しさん (2013-11-03 23:56:51)
- ↑ミスりました。FSはただのマイナーアップデート版でブリガディアスライド装備はElite他のみでは? -- 名無しさん (2013-11-04 00:00:17)
- FN-Five-seveNと並ぶ好きなデザインのハンドガン イタリアってデザイン良いなぁ -- 名無しさん (2013-11-04 14:41:57)
- ジョン・ウー作品だと二挺拳銃・弾数無限がお約束。 -- 名無しさん (2013-12-30 17:59:29)
- ↑×3それで正解。なお、現在はブリガディアスライド仕様は生産終了した模様 -- 名無しさん (2014-03-13 00:56:54)
- 「オートマ拳銃と言えばコレ」と言っていいほど有名な拳銃だけど、日本の警察や自衛隊は使用してないのかな。 -- 名無しさん (2015-05-31 17:40:37)
- ↑警察特殊部隊の一部で使われているようだ。 -- 名無しさん (2015-05-31 18:16:41)
- MEDIAGUN DATABASE パスワードに(ヒント「ベレッタM92拳銃の米軍採用名」) -- 名無しさん (2016-10-10 13:24:35)
- マニュアルセーフティのある安心感があっていい -- 名無しさん (2017-02-19 03:17:52)
- 2020年時点では近代化改修モデルの92X、射撃競技用の92XPerformance、記念用限定モデルの92Fusionがある。 -- 名無しさん (2020-08-23 15:47:08)
- ピエトロベレッタ社 -- 名無しさん (2025-07-24 09:33:52)
- こちら情報量などの面からベレッタ社に統合し ピエトロベレッタ社(銃器会社)にリネームしようと思います。7/30めどとしていますので何かあればコメントをお願いいたします。 -- 名無しさん (2025-07-24 09:35:44)
- 簡易的な説明と本項目のリンクを貼るだけで充分かと思いますので、統合には反対です。 -- 名無しさん (2025-07-29 17:42:46)
- すいません、反対のコメントがある点を見逃してしまっていました。統合後の記事となりますがこちらでダメそうなら93Rの記述を削ります。 -- 名無しさん (2025-08-01 23:36:12)
最終更新:2025年08月05日 07:37