バラの花とジョー(十二の真珠)

登録日:2014/12/24(水) 17:02:00
更新日:2025/06/25 Wed 23:06:35
所要時間:約 4 分で読めます





ジョーが好きなのは
綺麗なバラの花

バラの花の陰で
ジョーはいつも眠った


『バラの花とジョー』は、「アンパンマン」の作者として知られるやなせたかし氏が書いた短編メルヘン作品。
1頭の犬と、1輪のバラの花を題材にした、ある恋の物語である。

元はやなせ氏が手がけた詩であり、それを改めて1つの小説に書き直した作品。
メルヘン短編集「十二の真珠」や単行本に収録されている他、彼と関係が深いサンリオの短編アニメ映画としても公開されている。


◆あらすじ

ジョーは子犬の頃から、バラの花の下で遊ぶのが大好きだった。
春になると咲くバラの良い香りと、輝くほど綺麗なその色合いを、毎年楽しみにしていた。

ジョーは、バラの花が大好きだった。
「君の傍にいると、僕の心の中が幸せになる」

そしてバラの花も、ジョーと同じ気持ちだった。
「貴方の黒い丸いダンゴ鼻や、もしゃもしゃの毛並みがたまらなく好きよ」

ジョーは、大好きなバラの花を守るため、彼女を食べようとするカラスと戦った。
僕がついている、絶対に負けない。そう彼は言った。

だが、その次の日、ジョーの身に悲劇が襲った。
カラスたちの逆襲に遭い、バラの花の色を二度と見ることが出来なくなってしまったのだ……。


◆主な登場キャラクター

・バラの花
美しい花と良い香りを漂わせるバラ。
ジョーとは相思相愛の仲で、毎年春になると自らの姿を彼に見せていた。

普通のバラの花に顔がついたスタイルの他、頭に大きなバラの花を咲かせた美女と言う擬人化イラストも描かれている。


・ジョー
丸いダンゴ鼻と、もしゃもしゃの茶色の毛並みを持つ犬。某チーズとはまた違った外見。


いつもひとりぼっちだが、小さい頃から春に咲くバラの花と会うのが大好きだった。
彼女を守るためなら、襲い掛かるカラスも目ではない彼であったが、その次の日、仲間を引き連れて復讐に訪れたカラスとの激闘の末、二度と目が開かなくなってしまった。

だが、それでもジョーは愛するバラの花に言った。
「僕には見える。柔らかいビロードのような花びらも、その上を零れ落ちる露も。
 目が見えていた時よりも、ずっとはっきり君が見える」 






↓以下、ネタバレが含まれています。閲覧の際にはご注意下さい。↓












◆結末

目が見えなくなってから月日が経ち、ジョーは年老いた。前のように早く走る事も出来なかった。
そんな時、彼は野犬を捕獲しようとする人たちに追われた。必死に逃げた彼だったが、とうとう崖に追い詰められ、足を踏み外して落ちてしまったのである。

何とかジョーは一命を取り留めたが、全身に激痛が走り、手足もバラバラになりそうだった。
それでも彼は最後の力を振り絞り、バラの花の下へと向かった。美しく咲いているであろう、最愛の存在の元に。

そして、バラの花の場所に着いたジョーは、ぐったりと倒れこんだ。

「どうしたの、ジョー?」
「なんでもないさ」

彼は言った。今年も君は、綺麗に咲いているんだろうね、と。

バラの花は答えた。緑色の中で、火が燃えているように咲いている、と。

「いいなぁ……僕は、それが見える」

幸せそうに笑いながら言ったその『嘘』が、ジョーの最期の言葉となった――。






――そして、工場の煤煙で黒ずみ、惨めな姿を晒し続けていたバラの花も、自らがついた『嘘』の言葉を最期に、ジョーと共に短い命を終えた。



追記・修正お願いします。

この項目が面白かったなら……\ポチッと/

最終更新:2025年06月25日 23:06