チーズ

登録日:2018/07/19 Thu 23:30:17
更新日:2020/02/21 Fri 14:33:39
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●目次

チーズとは、主に牛やヤギなどの家畜化された哺乳類の乳を主原料とした食品。

◆【概要】

家畜から搾乳した乳を凝固・脱水させて作る、固体状の加工食品である。
凝固の過程で分離した固体の部分を凝乳(カード)、液体成分は乳精(ホエイ)と呼び、この内のカードを加工して製造する。


◆製法

チーズの主成分は乳に多量に含まれる乳タンパクの一種、カゼインである。
乳の水分中にはこのカゼインや脂肪の粒がコロイド*1として不均質に浮遊しているため白く濁って見える*2。このように水分とコロイド質が分離せずに混ざりあった状態のものを「コロイド溶液」と呼ぶ。
この乳に乳酸菌を加えて乳酸発酵させる、もしくは凝固剤*3を加えると溶液は酸性となり、さらにここにレンネット(凝乳酵素)を加えることで乳は加水分解され、カゼイン分子は鎖状に連結しながら分離沈殿する。*4
こうして取り出されたカゼインタンパクの塊がカードである。
このカードを二次発酵を経ずにそのまま食用としたものがカッテージチーズ等に代表されるフレッシュチーズとなる。

カードの塊を適当な大きさにカットし、さらに水抜きして型や布袋等に詰め込み、必要に応じて加塩・調味等を行った後冷暗所に保管して熟成を行う。
熟成工程の中でカードに含まれた乳酸菌によって更に発酵が進み、乳糖は乳酸に、たんぱく質はアミノ酸に、脂肪分は脂肪酸へと分解されて複雑で芳醇な味わいが醸成される。
さらに一部のチーズはこの後さらにカビ付け等の工程を経る。
熟成が終わったら保存性を高めるための処理(パッケージングや燻製など)を経てようやく出荷となる。


◆種類

チーズと一口に言ってもその土地、その国、その文化により形態も製法も多種多様だが、大雑把にナチュラルチーズプロセスチーズの二種類に別れる。
さらにナチュラルチーズはその製法や完成後の性質で幾つにも分類できる。以下の項目の段落分けに注目されたい。
一部の保存向けナチュラル(自然製法)チーズがプロセス(処理済み)チーズを上回る保存性を持つことは珍しくないのだ。
手間はかかるが。

プロセスチーズ

スライスチーズなどの我々日本人が普段目にするチーズの殆どはこのプロセスチーズである。
プロセスチーズとはナチュラルチーズを加熱溶解し、分離しないように乳化剤を添加して成型したもの。
ナチュラルチーズはまだ含まれている菌類や酵素が生きているため劣化が早いのだが、プロセスチーズは加熱の過程で酵素が不活性化し菌の活動も停止するため保存が効く。
また数種のチーズを混ぜ合わせる事でナチュラルチーズとはまた異なった食味を生み出す事ができ、また用途に応じて最適の風味を持ったチーズに加工することもできる。
ナッツや果物を加えたり、使いやすいような形に成型し直せるのも利点の一つ。
一方ナチュラルチーズの時点ではあった独特の風味は損なわれてしまい、良く言えば癖の無い、悪く言えば特徴に欠ける味になりがち。
また一旦加熱して凝固したチーズは再度加熱しても溶けにくくなる。
これはスモークチーズなどにに加工する際高温に晒されても溶けにくい利点でもあるが、ナチュラルチーズの長所である加熱した時のとろけるような食感が得られないという短所でもある。
この性質をプロセスチーズで再現するのは困難を極めたが、1987年に雪印乳業が半加熱状態で成型する事で世界で初めて再現に成功。
これこそが世に名高きとろけるチーズである。
いずれにせよ、血まみれのおじさんの忠告を振り切ってまで買いに行く価値はないのでそのような事態になったら諦めること。

ナチュラルチーズ

プロセスチーズに加工する前のチーズはナチュラルチーズと呼ばれる。
ナチュラルチーズはその加工の方法や材料、硬さなどによって以下の7種類に大別される。
基準の異なる複数の観点で分けられているので複数の種別に同時に該当するチーズも無論存在する。

○フレッシュチーズ

乳から取り出したカードを全く発酵させないかごく短期間発酵させ食用としたもの。
アミノ酸や乳酸の含有量が少ないためミルク本来の味わいが全面に出ている。

○白カビチーズ

文字通り白カビを使用して発酵熟成を行うチーズ。
チーズの表面に白カビに覆われた表皮が形成され、内側にクリーム状の部分がある。
まろやかで癖の少ない味わいだが、よく熟成の進んだ高級品は強烈なアンモニア臭を放つ。

○シェーブルチーズ

シェーブルとはフランス語で山羊の事であり、その名の通り山羊や羊の乳を使用して作られるチーズ。
山羊の乳は牛乳と成分の組成が異なりレンネットで凝固しづらいため牛乳由来のチーズとは性質が異なる。
むしろ成分組成的には人間の母乳に近いそうで、乳糖不耐などにより牛乳を受け付けない人にも比較的安全。
山羊乳は水分が少なくたんぱく質含有量が多く、多量の脂肪酸を含むため独特の酸味を感じる。あと獣くさい
保存性を高めるために塩漬けにされる物もあり、一部のチーズは非常に塩辛い。
熟成の段階によって性質が変わり、若いチーズはフレッシュチーズに似て癖が少なく食べやすい。熟成が進むとセミハードチーズに近づき、独特の癖のある味わいになる。
因みに山羊は世界で最古の酪農家畜だと考えられており、従って原初のチーズも山羊乳のチーズだったと推定されている。

○ウォッシュチーズ

表面に塩水やブランデー等を吹き掛けながら熟成を重ねるチーズ。
厳密な湿度温度管理と塩水等の処理によって特定の菌類のみが選択的に増殖してゆき、表面から次第に内部に食い込むように発酵が進む。
熟成に使用されるのは主にリネンス菌などの枯草菌類。
枯草菌は高温やアルコール、塩水に晒されるなどの環境ストレスを受けると芽胞という物を形成する。この芽胞の状態では環境ストレスに対して高い耐性を示すため、塩水や酒を吹き掛けられた他の雑菌類は死滅するが芽胞を形成した枯草菌だけは生き残り繁殖することが可能となるのだ。
高い水分含有量を保ったまま発酵が進むため完成品は非常に柔らかいクリーム状になり、また黄褐色ないし橙色の外皮が形成され凄まじい悪臭を放つ。
その匂いはまるで強烈なたくあんのようなくさやのような臭い。閉鎖空間で開封しようものなら顰蹙を買うこと間違いなし。
しかしそのインパクトのある匂いに反してクリーム状にとろけた内側は癖も少なく濃厚な味わいで非常に美味。赤ワインとの相性が良好。

なお以上に挙げた4種のチーズを纏めて「軟質チーズ」と呼ぶこともある。

○青カビチーズ(ブルーチーズ)

青カビを用いて発酵熟成を行うチーズ。
刺激的な特有の匂いと刺すような鋭い塩味と渋み、辛みが特徴。チーズの中でもウォッシュチーズと並んで特に好みが分かれる。
同じカビ類を用いる白カビチーズと異なりこちらはチーズ内部にカビを発生させる。
味が濃いためそのまま食べるより料理の味付けに利用されることが多い。
ものによっては温めてオイルと合わせればそれだけでパスタソースに出来るほど濃厚な旨味が取り出せる。
そのまま食べる場合はクルミ等のナッツ類とハチミツ、果物を添えるとGood。

○半硬質チーズ

水分含有量を38~46%程度とした若干硬めのチーズ。
軟質チーズに比して長い期間熟成されるため、微生物の働きにより脱水され水分が少なくなり、長期保存に向く。
元々チーズは保存食として作られ始めた物であり、半硬質チーズはその保存食としての原型を残した非常に古い時代のチーズではないかと考えられている。

○硬質チーズ

半硬質チーズよりもさらに水分含有量を減らしたチーズ。
水分含有量32~38%の物が硬質チーズと呼ばれ、それより更に少ない32%未満の物は超硬質チーズと呼ばれ、別枠で区別されることもある。
水分が少なく、また強い力でプレスして脱水するため密度が高く非常に重い。固い・重い・割れないので、このまま鈍器として利用可能なレベルに達している。
熟成が進むとリンドと呼ばれる硬い外皮が形成され、これがチーズの内側を保護する。リンドが形成されないタイプのものもあるため、その場合はワックスや蝋などを塗るかフィルムで覆ってリンドの代わりとする。
リンドは硬く食感が悪いため、食べる際は削るかナイフで削ぎ落とす。
塩気が強いため、ブルーチーズ同様そのまま食べるよりは削ったり粉砕したりしてサラダにかけたり料理の味付けに使うのが一般的。

▽フレーバーチーズ

完成後のチーズは更に保存性を高めたり風味を付け加えたりするためにハーブやスパイスを添加するなどの加工が行われる場合がある。
代表的なのはスモークチーズで、これは燻煙による風味を付与するだけでなく加熱殺菌しつつ水分を飛ばして保存性を高めるための加工。

◆歴史

人類がいつからチーズと付き合ってきたのかは定かではなく、その出自と歴史には不明な点が多い。

人類の家畜の歴史は古く、家畜としてヒツジ・ヤギ・ブタが飼育されるようになったのは今から約1万年前、紀元前8000年頃、ウシが飼われ始めたのは紀元前6000年頃だと推定されている。
当初、原始農業における家畜の役割は肉用であり、酪農が始まるのは暫く時代が下ってからだと考えられていたが、
先史時代の土器から採取された成分を鑑定した結果、原始農業の時代の時点で、西南アジアでは既に酪農が行われていたことが判明。
その歴史は紀元前7000年頃にまで遡ることが出来るという。

人類と乳製品の関わりも当然古く、チーズは世界最古の加工食品の一つだと考えられている。
紀元前3000年頃には既にエジプト地域やシュメール文明で大規模な酪農が行われており、紀元前2000年頃の物と見られるエジプトの壁画にはチーズの製法が記載されているのが確認されている。また紀元前13世紀頃の人物であるPtahmes*5の墓からは羊、山羊、アフリカスイギュウなどの乳を混合して作ったとみられる3200年物のチーズが実際に出土している。*6
紀元前18世紀頃のハンムラビ王時代のバビロニアの粘土板には市場で流通するチーズとチーズ税に関する記述も残されている。
旧約聖書、コーランと言った世界的な宗教の聖典やギリシャ文明の叙事詩等にもチーズや乳製品に言及した箇所は多々あり、遥か古代からチーズは身近な食品として愛されてきた事が分かる。

チーズがどこで発祥したかについて、従来有力な説として考えられていたのが、
「羊などの反芻動物の胃を水筒代わりに使っていた西アジアの住民が、放置された乳が胃に残っていた消化酵素のレンネットによってカードとホエイに分離するのを発見し、これを保存食として研究したのが起源ではないか」という物だ。
こうして西アジアで生まれたチーズの原型がインド・チベットといった南アジア、モンゴルを中心とする東アジア、そしてギリシャ・イタリアを玄関口とするヨーロッパ一帯へと広がっていった、というのである。

ところが、2012年にポーランドの遺跡から、推定7500年前、紀元前5500年頃の物と見られる土器に付着した山羊のチーズの痕跡が発見された。この土器は分離した乳を濾してカードとホエイに分けるのに使われていたと考えられている。
この紀元前5500年という結果は現状発見されているあらゆるチーズの痕跡の中でもぶっちぎりで最古のものであり、西アジアに先駆けて更にポーランド一帯を含むヨーロッパでチーズが製造されていた可能性を示唆するものだった。
この発見だけでポーランド一帯がチーズ発祥の地であるとするのは性急だが、従来の北アフリカや中東、西アジアに起源を求める説に一石を投じた世紀の大発見だと言えよう。
現在でもチーズが具体的にどこで誰によって発明されたのかは分かっていない。


日本で本格的にチーズが普及し始めるのは明治期になってからである。
まだ中国との関係も深かった平安時代頃までは牛乳を煮詰めた「酪」やそれを加工した「蘇」や「醍醐」*7と呼ばれる、おそらくカッテージチーズやバターのようなものが食べられており盛んに牛が飼育されていた。
しかし中世頃に武士が台頭してくると乗馬に必要なが家畜として重要視されたために牛の飼育頭数は減少し、また仏教の影響から動物食が控えられるようになり結局日本では乳製品を消費する文化そのものが定着しなかった。
その後明治期になって樺太や北海道で酪農が盛んに行われるようになると洋食文化の広まりと共に乳製品の消費量も次第に増えて行き、第二次世界大戦後の食文化の変遷とともにチーズは日本人の間に急速に広まっていったのである。

◆いろいろなチーズ

◇プロセスチーズ

  • コルビージャックチーズ
モントレージャックチーズとコルビーチーズを混ぜ合わせたチーズ。
アナトー色素によりオレンジ色に染まったコルビーチーズが混ざるため特徴的なまだら模様になる。
アメリカで非常にポピュラーなチーズ。

  • とろけるチーズ
先述の通り雪印乳業の技術により誕生したチーズ。


とりあえず何チーズかわからないんでここにおいてみたけど、解説いる?

いらねえだろ。

♪Just you know why...♪

◇ナチュラルチーズ

●フレッシュチーズ

  • モッツァレラチーズ
イタリア原産のフレッシュチーズ。
本来は水牛の乳で作るが、牛乳で代用した廉価版も多く流通している。
これは水牛の乳は産出量が少なく大変貴重であり、またフレッシュチーズ故に非常に足が早く長距離輸送に向かないため。事実輸送技術が発達する近代まで本場のイタリア人にとってすら原産地に赴かなければ味わえない幻のチーズだった。
カードの状態のチーズに湯を加えて練り延ばし、拳大にちぎって丸めたあと塩水に漬け込んで作られる。
独特の弾力があり、水牛の乳で作られたものは濃厚なミルクの風味を感じる。
インサラータ・カプレーゼやピッツァ・マルゲリータなどイタリア料理には欠かせない逸品。
今日でも水牛の乳で作った本場のモッツァレラ・ディ・ブッファラ ズィ・サルバトーレは最高級の逸品としてその名を知られる。

  • さけるチーズ
今やお馴染みとなった定番のチーズだが、その正体は繊維状に成型加工されたモッツァレラチーズである。
前記の通りモッツァレラチーズはカードに湯を加えて練り延ばして作るが、普通のモッツァレラチーズは塊状に丸めるのに対し、さけるチーズは飴のように引き延ばしながら練って行く。
固まる前の飴のように引き延ばしては折り畳み、折り畳んでは引き延ばしを幾度も繰り返してチーズを細く長く引き延ばしてゆき、最終的に適当な長さにカットして完成。
一見棒状に見えるが実は繊維状になるまで細く長く延ばされ続けたチーズの束なのである。裂けるのはそのため。

  • カッテージチーズ
原料となる乳に凝固剤を加えて分離させ、布に包んで濾して脱水しただけの非常に単純なチーズ。
上述したように酢やレモン汁も凝固剤として立派に作用するので、やろうと思えば家庭でも作れる。
水分が多く(約80%)、そのままサラダのトッピングにしたりカレーライスなどの各種料理の素材とする。
製法が豆乳から豆腐を作る工程と共通しているため「牛乳豆腐」とも呼ばれる。

  • リコッタ
カードを分離し終えた後に残った乳精を煮詰め、含まれるたんぱく質を取り出したもの。
リコッタチーズとも呼ばれ、フレッシュチーズの一種として扱われることも多いが、厳密にはチーズの定義から外れる。
おぼろ豆腐のようななめらかな舌触りと優しい甘みが特徴で、そのまま食したり料理のトッピングにしたりする他カンノーリやチーズケーキといったデザート類の材料とする。

  • クリームチーズ
クリームと牛乳の混合液を乳酸発酵させて作るチーズ。
他のチーズに比べて乳脂肪分の割合が大きいためクリーム譲りのこってりした濃厚な味わいが特徴で、様々な料理の材料に用いられる。

●白カビチーズ

  • カマンベールチーズ
代表的な白カビチーズ。
スーパーマーケット等でも乳製品コーナーでほぼ確実に売られているほど日本でもポピュラーなチーズ。
だが実はフランスのノルマンディ地方カマンベール村で作られたカマンベール・ド・ノルマンディこそが元祖カマンベールチーズであり、AOC*8により本来はノルマンディ地方で作られたこのチーズのみがカマンベールチーズを名乗ることが許される。そうして作られた特級品は信じられないほどクリーミーで上品な味わいとなり、「チーズの女王」の通称で呼ばれる。
が、AOCによって保護されるのが遅かったため、その頃には既に同様の作り方をしたチーズ全般を指す通称となっていたので名称保護制度は事実上形骸化している。

  • ブリーチーズ
フランスのブリー地方の名産品。
カマンベールよりもさらに古い1000年以上もの歴史を誇る伝統あるチーズ。一説ではこのチーズの製法がカマンベール村に伝わりカマンベールチーズの原型になったとされる。
モー村で作られたブリー・ド・モーが最上級品とされ、カール大帝やルイ16世、タレーランなど名だたるビッグネーム達も大変に愛好した珠玉の逸品である。
中でもルイ16世の愛好ぶりは非常に有名で、フランス革命の際逃走に失敗したのは部下にこのチーズを調達させようと馬車を止めたためという伝説まである。

●シェーブルチーズ

  • サント・モール・ド・トゥレーヌ
フランスのサント・モール・ド・トゥレーヌ村及びその周辺地域でのみ製造されるチーズ。
独特の円筒状の形が特徴的で、木炭の粉をまぶすため表面が灰色になる。木炭の粉をまぶす理由には諸説あるが、独特の臭みと酸味を和らげるため、微生物の増殖を助け熟成を促すためといった見解がある。
型崩れを防ぐために中心には藁が通されており、ここにブランドの刻印などが施される。

  • ヴァランセ
こちらもフランス産のシェーブルチーズの銘品。
フランスのベリー地方で作られ、名前は同地の古称であるヴァランセに因む。
上の部分が平らな台形の四角錐という特徴的な形で知られる。
これは元々完全なピラミッド型だったが、エジプト遠征に失敗したナポレオンが腹いせに切り落とした結果今の形が定着したという何ともしょうもない理由があるんだとか。
シェーブルチーズの中では比較的マイルドな味わいで、白ワインや果物と相性が良い。

イタリア・サルデーニャ原産のチーズ。
ペコリーノ・サルドと呼ばれるチーズをベースに製造される。
詳細は項目参照

  • ハルーミ
キプロス名物のチーズ。
非熟成のフレッシュチーズでありながら水分含有量を減らした半硬質チーズでもあり同時に羊乳と山羊乳を混合して作るシェーブルチーズでもあるという難儀な立場のチーズである。
カードの状態から熟成させずに濃い塩水に漬け込むため塩辛い。
またモッツァレラチーズのように特有の弾力があり、噛み締めると「キュッキュッ」という音を立てる。
融点が高く溶けにくい性質を持つため、グリルやフライにしてチーズ自体を味わう食べ方が主流。
防腐剤としてミントの葉が添加されることが多い。

  • フェタ
ギリシャ地域で伝統的に作られているチーズ。
こちらも濃い塩水に漬け込みながら保存されるため非常に塩辛い。
角切りにしてサラダのトッピングとする他、ハルーミ同様グリル*9にしたりパンに挟んだりして食べる。

●ウォッシュチーズ

  • ヴァシュラン・モン・ドール(ヴァシュラン・デュ・オー=ドゥー)
フランス・スイスで生産される高級チーズ。
ヴァシュラン・モン・ドールはスイス側での名称であり、フランス側では単にヴァシュランと呼ばれるかヴァシュラン・デュ・オー=ドゥーの名前で流通する。
ジュラ山脈の高地で放牧される牛の牛乳から作られたチーズのみがこの名を名乗る事が許される。
塩水を含んだ布で拭いて熟成を重ねたチーズにはオレンジ色の菌類が繁殖し、エピセアの樹皮で巻かれるため移り香も加わり非常に複雑な強い芳香を放つ。
中身はクリーム状にとろけており、ナイフで上面を剥ぎ取ったあとスプーンで中身をすくって食べる。

  • エポワス
フランスのブルゴーニュ地方エポワス村で作られたウォッシュチーズ。
塩水と酒*10で繰り返し表面を洗い続ける事で熟成を重ね、完成品は例によって強烈な臭いを放つ。
その一方で味は驚くほどマイルドかつ上品で、同ブルゴーニュ地方名産のブルゴーニュワインとの組み合わせが定番。
殊にシュヴレ=シャンベルタンで醸造される赤ワインとの組み合わせが最高とされ、このコンビはかのナポレオンも愛したと言われる。

●ブルーチーズ

  • ゴルゴンゾーラ
イタリアのロンバルディア州とピエモンテ州にまたがる一帯で製造されるチーズ。
チーズに疎い人でも高級イタリアンのメニュー等でその名を目にしたこともあるだろうイタリアを代表する高級チーズである。
フランスのロック・フォール、イギリスのスティルトンと並び立つ世界三大ブルーチーズの一角である。
その歴史は9世紀頃にまで遡るとされる伝統の一品。

  • ロックフォール
世界三大ブルーチーズの一角。
ブルーチーズとしては非常に珍しいシェーブルチーズ(羊乳チーズ)のブルーチーズである。
フランスのロックフォール=シュル=スールゾン村で作られ、同地のコンバルー山の洞窟にのみ生息する固有種の青カビを用いる。熟成も同じ洞窟を使用する。
ブリーすら超える数千年もの歴史を誇る大変由緒あるチーズで、一説によると同地の羊飼いが洞窟に置き忘れた弁当のチーズと大麦のパンに青カビが繁茂ているのを発見したのが始まりなのだとか。
AOCによって保護されており、厳密に材料や熟成の方法を守って作らなければロックフォールの名を名乗ることは許されない。

  • カンボゾーラ
表面は白いカビに覆われており一見すると白カビチーズのように見えるが、切り分けてみると芯の部分には青カビが繁殖している。
そう、カンボゾーラは青カビと白カビの両方を使って熟成される珍しいハイブリッドチーズなのだ。名前もカマンベールとゴルゴンゾーラのかばん語。
青カビチーズはパンチの強い塩味と特有の辛味が特徴の大分好みが別れるチーズなのだが、それが白カビチーズのマイルドな味わいで適度に和らぎ非常に食べやすい味になる。
1970年代と比較的最近になってからドイツで発明された。
ちなみに「ゴルゴンゾーラに名前が似ている」として訴訟沙汰になったことがある。

●半硬質チーズ

  • ゴーダチーズ
オランダのゴーダ村で作られたチーズ。
黄色味がかった円盤状の塊で、オランダのチーズ総生産量の60%を占める、エダムと並んだオランダの代表的なチーズ。
プロセスチーズの材料としてもポピュラーであり、スーパーマーケットでゴーダチーズそのものが売っていることも多い。

  • チェダーチーズ
イングランドのサマセット州チェダーで作り出されたチーズ。ナッツのようなコクと特有の渋みが特徴。
今や世界中で生産されるチーズで、こちらもプロセスチーズの材料としてその名を目にすることも多い。

  • エメンタールチーズ
スイスのベルン北東部エメン峡谷付近で作られる特産のチーズ。
チーズフォンデュに使用されるチーズ、あるいは創作に出てくる三角形の穴の空いたチーズと言われれば大体の人は理解できるだろう。*11
ナッツのような香ばしい芳香と重厚な味わいを兼ね備え、「チーズの王様」と呼ばれる。
チーズ内部には大小様々な空洞がありこれが切り開いたときに特徴的な穴となって見えるのだが、実はこの穴ができる理由はよく分かっていない。
発酵の際に発生する炭酸ガスが原因ではないかという説が有力だったが、実は製造の際に混入した牧草のカスの塊が原因という説が近年浮上しており、
実際に牧草が混入しづらい環境で作ったところ穴が小さくなったそうな。


●硬質チーズ

  • パルミジャーノ・レッジャーノ
イタリアのエミリア・ロマーニャ地方で作られる硬質チーズの筆頭である高級チーズ。
搾乳から一晩置き、遊離した脂肪分を取り除いた脱脂乳とその朝搾乳したばかりの乳とを混合したものから作られる。前日絞った乳を使うので仕込みに丸1日を要し、一日たった一個しか作ることが出来ず、長い時間を掛けて脱水・熟成を重ねるため完成までには18ヶ月~36ヶ月もの時間を要し、長いものに至っては5年もの歳月をかける。
さらにそのなかでも限られた最上級の物だけがGOC*12による認定を受けてパルミジャーノ・レッジャーノを名乗ることが許される。名実ともに硬質チーズの頂点であり、故にイタリアチーズの王様と称えられる。
食べるとジャリジャリとした粒が口に残るが、これは熟成に熟成を重ね、極限まで旨味が凝縮された結果ついに結晶化するに至ったアミノ酸の塊である。
イタリア料理の命ともいえるチーズであり、「台所の夫」の異名で呼ばれている。
因みに誤解されがちだが、よく目にするパルメザンチーズはパルミジャーノ・レッジャーノではない。
パルミジャーノ・レッジャーノは先述の通り一日一個しか作れない物を年単位で熟成させ、厳しい審査を乗り越えてようやく世に出回るような代物であり、とても庶民がおいそれと手を出せるモノではない。*13
パルメザンチーズはその安価な代用品として作り出された物なので、風味も味わいも本物には大分劣るのである。
本物が食べたい人は是非イタリア料理店に足を運ぼう。パルミジャーノ・レッジャーノ自体を味わうならバルサミコと合わせて塩味を抑えるのが吉。

  • ミモレット
???「干からびたチーズ一切れと缶ビールしか出さなかった。俺もさじ投げたな。あれは『変人以上』だ」
2005年に某元首相の発言と共に日本で急激に知名度が上がった高級チーズ。
干からびたボール状の一抱えもある塊で、内部はアナトー色素により鮮やかな橙色に染まる。
表面にはクレーターのように無数の穴が空いているが、実はこの穴はダニの巣穴である。
このチーズはチーズダニと呼ばれるダニの力で熟成させる世にも珍しいチーズなのだ。*14
このチーズも1年以上もの熟成を経るため生産量は少なく非常に高価。特に18ヶ月以上熟成したブツはからすみにも例えられる芳醇で濃厚な味わいが楽しめる。

  • カチョカヴァッロ
ナポリ県ソレント地方で産み出されたチーズ。
原料のカードを革袋に詰め込み、口の部分を紐で括って天秤棒の左右に吊るすという特徴的な熟成過程を経るため、独特な瓢箪型になる。
硬質チーズだがモッツァレラチーズのようにカードの段階で練り上げてあるため、加熱するとトロトロにとろけて柔らかくなる。
加熱しても非加熱でも美味しく食べられるが、やはりフライパンなどでこんがり焼いて食べるのが最高。是非とも白ワインと合わせて頂こう。

▽食べ方

長い時間をかけて食料品として研究し尽くされてきたチーズは食べ方も多種多様である。

  • そのまま。
    • 王道を征く。どんなチーズでも大抵はこれでイケる。
      ただしブルーチーズやハルーミなどそのままだと塩辛すぎる物もあるので、その場合はドライフルーツやナッツ、クラッカーと合わせて食べたり、合間にワインを飲むなどして和らげると良い。
      ブルーチーズの項でも述べたクルミ・ハチミツとの組み合わせはフランスにおいて鉄板の組み合わせ。

  • 具材に。
    • サンドイッチやサラダの具材として。塩気の強めなセミハードチーズが輝く。

  • 熱する。
    • 旨い(確信)。こんがりカリカリに焦がして食べるか、トロトロに溶けた物を頂くか。ジャガイモやパンなど主食が欲しくなること請け合い。

  • 味付けに。
    • ブルーチーズソースのニョッキ、ペンネはイタリア料理の定番。砕いたグラナパダーノやパルミジャーノは鰹節のような扱い方で料理に華を添える。

  • デザート。
    • アイスクリームやケーキなどに加えれば適度な塩加減が逆に甘さを引き立たせてくれる。

▽余談

  • 凶器
先にも述べた通り、硬質チーズは非常に硬く重い。
例えばパルミジャーノ・レッジャーノなどは一抱えで数十キロにもなる重量物であり、おまけに鉈のような専用ナイフでカチ割るかノコギリで切り開いてようやくどうこうできるような硬さもあわせ持つ。
こんなものが速度を乗せて直撃したら人体なぞ木っ端微塵である。
事実どこぞのビッチはこいつが頭に直撃して死んだとか、硬すぎて砲弾にされてアルゼンチン海軍を追っ払ったとか物騒なエピソードがあったり。
現代でも2009年にドイツのスーパーマーケットでサラミとパルメザンチーズの塊で乱闘騒ぎがあり負傷者を出すという事件も起きている。熟成されたサラミは水分が少ないため非常に硬くこん棒じみた破壊力を有する。対するパルメザンチーズも一掴み1.8kgにもなる質量物*15かつ鋭角も有する凶器であるため当然の帰結だろう。

  • ネズミの好物か
実はネズミはチーズにはほとんど興味を示さない。
創作においてネズミがチーズを好むとされがちなのはエメンタールチーズ等に代表されるスイスチーズに空いている穴はネズミが齧ったに違いないというジョークが元だという説がある。

  • 豆腐
欧米人には豆腐を食べる習慣がなかったため、戦国時代から江戸時代にかけて来日したスペイン人やポルトガル人などの欧米人は当初豆腐をチーズの一種と誤認したという。
カッテージチーズの節でも述べたが豆腐の製法とカードの製法は基本的に共通しているため、ある意味豆腐は豆乳で作ったカッテージチーズだとも言える。一説によれば豆腐はモンゴルの遊牧民族が常食していたバターやチーズを参考に中国で発明されたともいう。
なお豆乳は牛乳と成分組成が異なりレンネットによる凝固が難しく、ナチュラルチーズ様の物を作り出すのは困難なのだとか。
一応牛乳より安価に供給できビーガン(菜食主義者の一種)や乳製品アレルギーの人でも食べられるため研究はされており、発酵過程を経ないで作り出されたチーズもどきが「アナログチーズ」の名前で実用化されている。

  • 太る
多量の乳を材料に使うので当然脂肪が多く高カロリー。旨いからって食べ過ぎるとメタボになっちゃうぞ!

追記・修正はワイン片手にチーズを食べながらお願いします。

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