Q.E.D. 証明終了

登録日:2011/03/31 Thu 06:17:41
更新日:2025/04/04 Fri 11:05:32
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我々は

斯くの如くして先の命題を

そうせよと初めの折に請われし侭に

証明せり


『Q.E.D. 証明終了』は加藤元浩による推理漫画作品。

【概要】

MIT(マサチューセッツ工科大学)を卒業して日本の高校に編入してきた天才少年の燈馬想と、その相棒を務める快活で無敵の武力を持つ女子高生・水原可奈が様々な事件を解決していく推理漫画。
他の少年推理漫画である『金田一少年の事件簿』や『名探偵コナン』と比べると掲載誌の都合上マイナー気味だが高い評価を受けている。

そんな掲載誌はマガジン系列の月刊誌だが、かなり渡り鳥的な連載をしており、1997年に『マガジンGREAT』に読み切り漫画として掲載。
翌1998年から短期連載の形としてスタートしたが、そのまま連載作品として定着した。
その後は『GREAT』と『マガジンZ』とが統合された『マガジンイーノ』に誌面を移し、さらに『マガジン+』『マガジンR』と渡っていくが、いずれも休刊が相次ぐことになった。現在は講談社のWeb媒体での掲載に落ち着いている。
『イーノ』までは以前と変わらず隔月発行だったが、『+』からはついに事実上の季刊化となるも、単行本描きおろしの数が増量したため*1、読者には(作者にも?)支障はあんまり無かった。
単行本は50巻まで刊行され、事件数が99に達したことで無印は一区切りがつき、『R』での連載を期に燈馬と可奈が3年生へと進級して『Q.E.D. iff -証明終了-』へと改題。
『iff』も2025年2月11日に事件数60、単行本30巻(予定)で終了。
燈馬と可奈の進学先となるアメリカに拠点を移した大学編として『Q.E.D.UNIV.-証明終了-』が2025年3月4日からスタートした。

雑誌を講読する人には親切な仕様として、基本的に1話で完結するスタイルをとっている*2
電子媒体での連載に移ってからも1話当たりのページ数は変わらないが、それをさらに分割して週刊か隔週で少しずつ配信するようになっている。
そのためコミックスも主要人物2人を基本覚えておけば読める。
ただその1話が約100ページにもなるので、しっかり読もうとすると結構疲れる。単行本1巻につき僅か2話しか収録されない。
無印の「魔女の手の中で」は3話を費やして語られた大長編エピソードである。

作者は親雑誌である『月刊少年マガジン』で同世界観の作品『C.M.B. 森羅博物館の事件目録』を平行して連載していた。
月の執筆量は合わせて約100ページと、総仕事量は何気に週刊漫画作家にも迫るほど。
というか『C.M.B.』 の連載前後にも『ロケットマン』、『空のグリフターズ ~一兆円の詐欺師たち~』、『ないない堂~タヌキ和尚の禍事帖~』といった漫画を並行連載しているので今も昔も執筆量はそう変わっていない
さらに並行してパースのハウツー本を自費出版したり、『捕まえたもん勝ち!』シリーズといった推理小説も書き進めているというとんでもないマルチっぷりである。
流石にキャラクターの描き方が記号的になるなど作画省略の傾向は早くから見え、初期と現在の絵柄を比較すると全然違ったりもしているが。

『Q.E.D.』とは、与えられた命題を証明するときの結び文句の一種で、「よって命題は証明された」の略。
作中では必ず何かしらの形でこの言葉が現れ、以降は謎の解明に移る流れになる。
そのまま回答を見るのも良し、一旦読み返して自分の推理を展開するのもまた楽しいかも知れない。

主人公が理系の天才という性質上、プレミアム懸賞問題やら難解な話題が出てくる。一応噛み砕いて説明してくれるが、無理に理解しなくてもいい。

サザエさん時空を採用しているため、作中で何度もクリスマスが訪れて栗ヨーカンパーティー*3が開かれている。

一応、シリーズごとに進学はしており、
  • 無印・・・高校1~2年
  • iff・・・高校3年
  • UNIV.・・・大学生
となっている。
また、20年以上の連載に渡る経験を高校3年間に集約した結果、可奈のスキルツリーがとんでもなく伸びる事態となった。

2009年にはNHKでテレビドラマ化された。


【作風】

ジャンルとしてミステリーを謳いつつ、本作では殺人事件に出くわすのはせいぜい半分くらいの割合。
かつその殺人事件にしても本作では「結論として自殺だった」というオチである事も比較的多い。
一部には犯人、もしくは登場人物達による「心の問題」で起こされる、「事実の捻じ曲げ」によって事件が難解化する場面も見られる。
(例1:初恋の人が人を殺したのを見てしまった。→(いや、今回の事は別の人間がやったんだ)と見なかった事にし、犯人をかばう。【ただし、あくまで別人が行ったと思っているので、証拠隠滅は行っていない。】)
(例2:俺の占いは絶対に当たる!間違った事がないからだ!→間違った際のクレームを聞かず、忘れていたため。都合の良い事しか覚えていない。)
etc…。
しかし、そのいずれもが理路整然としたロジックで解決されるさまはお見事。

そして、人命に関わらない程度の犯罪や事件と呼べないような小さな謎を扱ったりするのが残りの半分(参考→日常の謎)。コンゲーム(騙し合い)なども割とあり、こちらも面白い。
扱う事件も多岐にわたり、場合によっては詐欺師と戦ったり、バイト先のトラブルを解決したりする。

犯人の動機は『名探偵コナン』に近く、殺人が少ない事もあってか復讐より名声や金によるものが多め。

様々な理系知識の紹介とそれを絡めた事件も多く、そういった面でも楽しめる。
ちなみに兄弟作品の『C.M.B.』では逆に歴史や地学等の話が多い。

『iff』に入ってからは、可奈の能力があまりにマルチとなりすぎ、燈馬と可奈の2人だけで話を回せるようになったからか、準レギュラーの出番が大幅に減少した。
日本での事件の多くに関わり、可奈の親としてメインを張る回もある水原警部は変わらないが、ロキやエバといった燈馬のアメリカの友人達はもうほぼ出るだけの扱いである。
彼らはまだ出番があるだけ良い方で、燈馬の妹である優は主要メンバーが全員集合する終盤以外の出番は燈馬が過去を回想する「自転車泥棒」のみ。アランに至っては終盤以外ではほぼイメージ図での出演である*4

その他『iff』に入ってからの特色としては、燈馬と可奈のキャラクターはそのままで、本編とは異なる世界線の近未来パラレルワールドでの話があったりする。
そちらでは現在軸では出来ないAI裁判官や自我を持ったAIといったSF的題材による事件が起き、特殊設定ミステリのような趣きで楽しむことができる。


主人公を筆頭に変人が多いものの、折々深い言葉が飛び出すことも本作を印象付ける要因なのかも。
以下に1例として主人公の言葉を挙げておく。


「君はなぜMITを出た後…日本の高校に入ったのかね?」

「お花見で見る、桜みたいなものです」

「形のない全体があって、そしてそれ全部があるだけで楽しくなるような…」

「今は形のない、そういう物に触れていたいんです」

【登場人物】

主人公

主人公の少年。
15歳でMIT(マサチューセッツ工科大学)を主席卒業した後、日本の高校に入学し直した経歴を持つ。
感情の機微に疎いこととその経歴から周囲に避けられていたが、可奈と知り合うことで日々を騒がしく過ごすことに。
知識は広範に渡り、先攻していた理数系だけでなく法、歴史、古典文学や生物、その他雑学にも及ぶ。わけが分からん。

彼の両親はそろって世界中を飛び回っており、家に帰ってくることは滅多にない。加えて、独特すぎる思考にため、急に予定を変えることさえある。

兄弟作品であるC.M.Bでは彼のイトコである榊森羅が主役を務める。


想と同級生で、金髪ポニーテールが目印の女の子。
面白いこと好きの活発な性格で、想をあちこち引っ張りまわす。正義感も強く、何か頼まれたら基本断らない。
学校の成績は残念だが身体能力に優れ、とにかく強い丸腰のヒロインが狙撃体勢に入っているスナイパーとタイマンして余裕で勝つ推理漫画は本作ぐらいだろう。
部活は剣道部であり、あまりの強さに女武蔵とも評される。実戦ではもっぱら素手で戦ってるのでこれでも枷がある。



準レギュラー

警察関係者

  • 水原(みずはら)幸太郎(こうたろう)
可奈の父で、捜査一課の警部。娘とは似ても似つかぬ強面。
捜査に対しては落ち着いた考えを持ち、また想が居合わせた時にはその助言を受け入れる懐の深さがある。いかにも「探偵の力は借りん!」とか言いそうなキャラだが、全くそんなことはない。
また彼自身もかなりの切れ者であり、想の力を借りずに真相に至ることも多い。
なおフルネームが判明したのはかなり後。ずっと警部警部言われてたお人。
年末年始に家に招いたりなど、プライベートでも想のことは気に入っている様子。

  • 笹塚(ささづか)真人(まさと)
水原警部の部下。イケメンで性格も至って真っ当な良き刑事。
初期からちょくちょくモブとして登場しており、彼が事件の関係者になる「3羽の鳥」で初めて名前が明かされる。
陽垣芳枝という検察官と付き合っており、そっちの縁での燈馬に調査が依頼されたことも。

  • 七夕(たなばた)菊乃(きくの)
『iff』から登場。警視庁捜査一課の警部補で所謂キャリア組。
扱いはエリート官僚なのだが、デスクワークよりも現場での捜査を好むなど活動的な性格。
あだ名は名前を捩った「キック」だが、これも警察学校で武術指導の際に教官を蹴りで倒してしまったことに由来する。
主に警察関連でキャリア官僚が絡む事件で出番がある。

実は作者が並行して執筆している推理小説『捕まえたもん勝ち!』シリーズの主人公で作品出張キャラ。
『Q.E.D.』では全く触れられていないが、小説では学生時代にアイドルをやっていた異色の経歴の持ち主であることが語られている。
『C.M.B.』にも出張している。


燈馬の関係者

  • シド・グリーン/ロキ
MITでの想の親友にして理解者。金髪ロングの青年。
人をよくからかう陽気な人物で、その性格から周囲には悪戯好きの北欧の神「ロキ」の呼び名で通っている。
想と同じく数学を学んでいたが、想と出会うまでは自分と議論できるだけの友人に恵まれずに鬱屈とした思いを抱えていた。
それ故に燈馬が突然MITを辞めて日本の高校に転入した時には塞ぎ込んでいたそうだが、燈馬の思いを聞いて付き物が落ち、以降は互いに相談し合う仲になる。
初期こそ人を食ったような言動が多い問題児として描かれていたが、割と早い段階から常識人化しており「ロキの異名ってなんだったっけ?」となりがち。

  • エバ・スークタ
インド生まれの情報工学者。褐色肌で眼鏡をかけている。
同じくMITに所属してロキの相棒として過ごしていた。
穏やかで心優しい性格で、ロキを普段から気遣っている。
ロキに対する思いが暴走して一度騒動を起こしてしまったが、それ以降は和解して友人関係を続けている。

  • 燈馬(とうま)(ゆう)
想の妹。兄と違い、ごく普通に年齢相応の女の子。
両親が世界中を巡って仕事をしている都合で、現在アメリカに1人暮らし。
兄妹仲は良好ながらも想の人間性を理解できず、可奈の仲介でようやくそれが氷解することになる。想のことは名前で呼ぶ。
言葉を聞き取る能力に優れ、多くの言語を使いこなす。
その為かふと聴こえた言葉から次の言葉を連想し続け、ボーっとする癖もあったり。下手をすると記憶がすっ飛ぶほど没頭するため、事故が発生する危険性もある。

  • アラン・ブレード
世界NO.1のシェアを誇るOSの開発元・アランソフト社の社長。
想とは古い馴染み。優秀な人材として彼を引き抜くべく、金に飽かして嫌がらせじみた強引な手段で迫ってくる。
総じて性格には難があるトラブルメーカーだが、いいところもそれなりにあり秘書のエリーと結婚するに至った。
それ以降は大分人間が丸くなり、エリーの願いで全財産の3分の1を費やした「アラン&エリー財団」を設立してからは、慈善事業にも力を入れている。

『iff』では終盤近くの全員集合回以外では、たまに話題に挙がる程度のモブと化してしまった。
そのちょっとの出番を見るに子供も出来たようだが、描写が1コマのみのため詳細不明。

  • エリー・フランシス
アランの秘書。
我が儘しか口にしないアランを巧く抑える姉さん女房気質で面倒見が良い。
アランの性格に振り回されながらも、可愛げがある部分を気にしており、遂にはアランと結婚するに至った。
結婚後は「アラン&エリー財団」を設立して精力的に慈善活動に勤しんでいる。

『C.M.B.』では財団代表の「エリー・ブレイド」名義で森羅に捜査を依頼している。
『iff』では可奈の進学に財団としてバックアップしており、インターンやボランティア先の誘致、奨学金の補助を行っている。

  • アニー・クレイナー
マサチューセッツ州の地方検事。
可奈によく似た豪快で竹を割ったような性格。
名門一家の出身で、それ故に家系に縛られることを嫌っている。
燈馬の人格形成に関わる重要人物であり、その活躍と顛末はシリーズ屈指の大長編である「魔女の手の中で」と「虹の鏡」によって語られる。


探偵同好会/ミステリ同好会

咲坂高校の以下3名で構成され、名称通り(?)の行動を日々行う。
事件を『自分達で起こして』解決しようとするなどで問題を起こし、なぜか想と可奈はそれに巻き込まれる。
後にミステリ同好会へと名前を変え、メンバーに1名ドMが追加される。
『iff』では主要3人が大学生となるも、大学でも同じことをしており可奈に呆れられている。

  • 江成(えなり)姫子(ひめこ)
探偵同好会の創設者にして部長。
女王様っぽいので仲間内で「クイーン」と呼ばれる。つまり江成ークイーン。
口癖は「あなた、とてもいいことを言いました」。
クイーンの異名の通りドSなお姫様気質であり、怒らせたり根に持たれると後が怖い。
そのため可奈に並ぶアンタッチャブルな女傑と見做されている。
燈馬や可奈もミス研のメンバーのことは邪険にしているのだが、彼女は一応他のカブトムシどもと比べると常識的な方なので、一緒にミステリツアーに出掛けるくらいの付き合いは持っている。
近未来パラレルワールドでは可奈の知り合いの捜査一課の刑事だった。

  • 長家(ながいえ)幸六(こうろく)
同好会の会員の眼鏡でオールバックの男。
長家(長屋)だから通称「ホームズ」と名乗る時点で残念さが滲み出ている。
自称理論派ではあるが論理は穴だらけのため、カブトムシ呼ばわりされている。
『Q.E.D.』自体がホームズを題材にするエピソードがない上に、クイーンやモルダーと違って彼がメインを張る回もないなど同好会の中で不遇気味。
近未来パラレルワールドにおいてもクイーンの部下というチョイ役で出たのはモルダーの方で彼は姿形もなかった。

  • 森田(もりた)織理(おりさと)
同好会の会員の黒髪の男。
オカルトマニアであるため、通称「モルダー」。遂に推理小説ですらなくなった。
他と同じく推理マニアだが、何につけても宇宙人や幽霊などのオカルトにこじつける。
ある人物との問答ではちょっといい台詞を残したり。尤も、相手には不格好な理屈とか言われたが。
「人類がまだちゃんと宇宙人と会えないのは仕方ないんです」
「ほォ……、なぜ?」
「オレが一番最初に会うからですよ」

  • 菱田(ひしだ)丸男(まるお)
探偵同好会の新入会員で、入会時は1年生。
実際は部室目当てで乗っ取りを企んでおり、同好会の3人と熾烈な争いを繰り広げることになる。
紆余曲折の末、クイーンに土下座させられるが、その時変な扉を開いてしまう。
以降はクイーンを「女王様」と呼び慕うドMの下僕と化し、正式に探偵同好会改めミステリ同好会の一員となった。
クイーンへの忠誠心は常軌を逸しており、ペンギンの羽毛布団に興味を持ったクイーンのために南極まで赴くほど。
その後は表立った出番がなくなったため、南極から帰ってこれなくなったと思われたが「クリスマスプレゼント」に半モブ扱いで出演。
しかし以降は完全に存在が消えた。


その他

  • 梨田(なしだ)俊二(しゅんじ)
内閣情報調査室勤務の分析官。
オールバックで眼鏡の取っつきづらそうな男。
大学時代の友人が関わる殺人事件の捜査で燈馬らと知り合い、以降は政府・外交絡みの事件の調査を依頼しにやって来る間柄となる。
上司を抱き込むのが得意で、その伝手で三億円事件の真相が記されたファイルが保管される超極秘資料庫にアクセスできる。
実は超甘党で、恐ろしく甘いケーキ屋の行きつけになっていたりする。




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最終更新:2025年04月04日 11:05

*1 無印最後の2巻にいたっては全て描き下ろしである。

*2 『iff』からは月刊誌になったので前後編で完結するように変更。単行本収録時に1話にまとめられる

*3 燈馬と可奈の通う咲坂高校の伝統行事で、クリスマスに恋人のいない難民を救うためのボランティアパーティー。独り身達が会場に集まって栗ヨーカンを食べ合う。何故ケーキではなく栗ヨーカンなのかと言うと、発案者の偉大な先輩が「クリスマスにケーキ喰ってイチャつくな、日本人なら栗ヨーカンだ!!」と叫んだため。あまりに暗い催しだが、一応カップルも参加できるらしい。

*4 名前すら呼ばれず燈馬の「友人」扱いの回すらある