筑肥線

登録日:2015/03/23 (月曜日) 10:34:00
更新日:2025/03/16 Sun 22:58:38
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筑肥線(ちくひせん)は、JR九州の鉄道路線である。


概要

姪浜~唐津間を結ぶ東線と、山本~伊万里間を結ぶ西線で構成される。

1983年以前は博多~伊万里間を結ぶごく普通の路線だった。
が、唐津駅を経由しない為に博多方面へ向かう人間は
  • 唐津線に乗って唐津市の南部郊外にある山本駅で筑肥線に乗り換える
  • 唐津市中心街から離れた東唐津駅まで移動する
という不便を強いられていた。
事実、作家の宮脇俊三は1975年に列車が東唐津駅でのスイッチバックと山本駅での接続待ちで時間がかかる為、

東唐津駅で列車から下車しタクシーで西唐津駅に移動。
         ↓
唐津線の列車に乗り、山本駅まで移動。
         ↓
東唐津駅で一度降りた筈の筑肥線の列車に再びドヤ顔で乗車する。
という芸当をやってのけている。

そんな不便極まりない状況を改善する為、唐津市と国鉄は大規模な改良に着手した。
具体的には
  • 博多~姪浜間を廃止し、この区間は新規に開業した福岡市地下鉄1号線(現:空港線)が受け継ぎ、同線との直通運転を開始
  • 姪浜~唐津(~西唐津)間は地下鉄との直通運転に伴い、国鉄九州地区では史上初となる直流電化開業
  • 東唐津駅を南東に1km移動させ、高架の新駅として開業
  • 虹ノ松原~山本間を廃止して東唐津から唐津に直通する新線を建設
を実施。
これに伴い筑肥線は東線と西線に分断され、両線は唐津線を介した形で連絡している。

運行形態

東線区間・西線区間双方を直通する列車はない。

  • 東線
JKの路線記号が設定されている。
殆どの列車が福岡市地下鉄空港線に直通し、平日には1日4往復、土曜・休日は福岡空港~西唐津間に1日5往復の快速列車が運行する他、筑前前原以東は日中15分間隔(ラッシュ時5~10分)、筑前前原以西は日中20~40分間隔(ラッシュ時10~20分)と都市鉄道のダイヤとなっている。
いわゆる都市型ワンマン運転が実施されており、下山門~筑前前原間にはホームドアが設置されている。
昭和バスの「からつ号」とは競合関係にあり、快速列車と所要時間はほぼ互角。

  • 西線
日中はおおよそ3時間に1本、朝夕は1時間に1本と東線に比べると大幅に本数が減少する。
山本始発・終着の列車はなく、全列車が唐津線に直通して唐津か西唐津の発着となっている。

車両

JR車にはすべてトイレが設置されており、電車は103系の一部を除き6両固定編成となっている。

東線

電化の際に導入された車両。ああ、國鐵。
なぜここに新車が入ったかって?言うなれば国鉄という面子の問題。
当初は6両編成のみだったが、1989年から筑前前原~西唐津間で輸送力適正化のため、一部編成で3両編成に分割する工事が実施された。
ワンマン運転対応機器が無く、地下鉄線内ではホームドアの開閉ボタンを押すためだけに運転士が車掌として乗務していた。
後述する305系の導入に伴い廃車が進み、現在は筑前前原以西で3両編成のみ運用されている。
2023年には電化開業40周年と福吉~浜崎間開業100周年を記念して1編成が登場時の塗装に復刻されており、車体には4~6号車の号車札も振られている。

  • 303系
下山門~今宿間の複線化に伴う増発用の車両で2000年に運行開始。
近畿車輛製のステンレス車で、当時増備されていた815系の4ドア版という外見。
JR車では初となるワンマン運転対応車で、3編成が投入された。
後にトイレの設置工事が実施されている。
*1

  • 305系
老朽化に伴う故障が頻発していた103系置き換えのため、2015年に登場。
日立製作所製のアルミ車で、外見と椅子の硬さは東武50000系列にそっくり。
意匠は当時増備されていた817系3000番台に寄せたものとなっている。
*2

  • 福岡市交通局1000系
1980年に登場した日本初となるワンマン運転対応の地下鉄車両。
国鉄の車両設計事務所が設計を担当し、内装や機器類は当時増備されていた201系に準じており、見た目は違えどセミステンレス版201系と言ったところか。
ステンレス車体はコルゲートを大幅に減らしているが、これを編成単位で採用した例はこの形式が日本初となる*3
現在は更新に伴いVVVFインバータ制御となり、形式の後ろにNが付いた。
内外の新機軸と国鉄の本気が認められ、1982年鉄道友の会ローレル賞受賞。
*4

  • 福岡市交通局2000系
1993年の空港線開通に伴い登場した車両。
丸みを帯びた外見が特徴で、こちらはオールステンレス仕様。
現在は更新で幕板部分にも青帯がつき、全車2000N系に改称された。
*5

  • 福岡市交通局4000系
1000N系置き換えのため、2024年に登場した最新鋭車両。
運転士の要望から従来車と異なり、完全な直線に切り落とした前面形状が特徴。
車体は空港線系統では初となるアルミ車体を採用している。

西線

  • キハ47形
今でも現役の国鉄時代に全国多くの地域で導入されたお馴染みの車両。
普段は2両編成だが、キハ125形との混結で最大4両編成で運行。因みに便所は和式。
なお、片運転台の車両なので1両だけでは運行できない。

  • キハ125形
普段は1両ないしは2両編成だがキハ47形と混結で最大4両編成で運行。
こちらの便所は正反対に洋式である。


主な駅解説

東線

  • JK01 姪浜
福岡市地下鉄空港線乗り換え。
1983年以前は単なる中間駅だったが、電化後に線路名称上の起点駅となり、新幹線なみの高架駅に生まれ変わった。
が、しかし現在は空港線に直通運転している為に、やはりただの中間駅となっている。

  • JK02 下山門
姪浜車両基地を建設する際のバーターとして新たに建設された。
何もないように見えて実は元寇防塁跡の最寄駅。
高架から下る区間は撮影地としてもおなじみ。

  • JK03 今宿
強風による脱線事故が起きたことがある。瓦造りの江戸時代風の駅舎となっている。

  • JK04 九大学研都市
2005年に開業した新しい駅。
駅名が示すとおり九州大学伊都キャンパスの最寄駅。
なのだが伊都キャンパスと4km以上離れているので移動はバスor自転車推奨。
むしろ駅前にあるイオンモールへのアクセスという側面が強い。
土休日の快速は姪浜~筑前前原間は当駅のみ停車する。

  • JK05 周船寺
読みは「すせんじ」。福岡市の駅はここまで。

  • JK06 波多江
隣接する農協の建物がかつての駅舎だった。

  • JK07 糸島高校前
2019年開業の一番新しい駅。

  • JK08 筑前前原
糸島市の中心駅で、複線区間はこの駅まで。
運行上の拠点駅で、両方向に多くの折り返し列車が設定され、特に日中は当駅で系統分断となる。
平日に運行される快速は当駅以西が通過区間。

  • JK09 美咲が丘
JR九州が開発した新興住宅地の最寄り駅で、赤い円筒形の駅舎が目立つ。

  • JK10 加布里
地元で有名なうどんチェーンの牧のうどん本店/本社最寄駅。

  • JK11 一貴山
国の史跡になっている銚子塚古墳の最寄り。
ここから隣駅手前まで田園地帯を走行する。

  • JK12 筑前深江
快速停車駅。地下鉄車両の乗り入れはこの駅までになっている。

  • JK13 大入
国道202号線が隣接するものの、そこから直接の出入りができないというめんどくさい駅。

  • JK14 福吉
徒歩圏内に玄界灘を望める食事処あり。

  • JK15 鹿家
福岡県最西端の駅。

  • JK16 浜崎
快速停車駅。2022年に駅舎が新しくなった。

  • JK17 虹ノ松原
上記の通り2代目の駅。旧駅舎に比べると小さくなったらしい。
ここから西唐津駅までは元々国鉄新線「呼子線」として建設された区間である。

  • JK18 東唐津
上記の通り2代目の駅。今では単なる高架駅だが、かつてはスイッチバック構造で拠点駅の一つだった。

  • JK19 和多田
唐津線分岐点のすぐ左にある高架駅。

  • JK20 唐津
唐津線乗り換え。
佐賀県北部の中心都市である唐津市の中心駅で、唐津城の最寄駅。

  • JK21 西唐津
東線運行上の終点駅で、佐賀県最北端の駅。
筑肥線の西線は朝夕のみ列車が乗り入れる。
今では観光特急「A列車で行こう」の運行日に限り、駅弁が販売されるなど観光に特化している駅。
車両基地が併設されている関係で構内は広いのだが、ホームは1面1線しかないため複数の列車が同時に入線できない。
前述の呼子線はここから呼子まで延長予定だったが、結果建設が中止され遺構が今でも残っている。

西線

  • 山本
唐津線佐賀方面乗り換え。かつては唐津線と筑肥線の唯一の接続駅で、相当賑わっていたという。
しかし、上述の改造の関係で東線区間との接続駅としての機能はなくなり、駅前は寂れてしまった…。

  • 肥前久保
江戸時代の伝説の侠客、幡随院長兵衛の出身地。
その為、以前の駅名はそのまま「幡随院」だった…。

  • 西相知
牛山氏の全国秘境駅ランキング109位。
そして大御所演歌歌手の村田英雄は何とこの駅前の商店街の出身だったりもする。

  • 佐里
秋櫻館と書かれた待合室がある。

  • 駒鳴
映画「僕達急行 A列車で行こう」のロケ地となった。

  • 大川野
西線では山本駅とここだけが交換可能になっている。2006年に駅舎が新しくなった。

  • 肥前長野
開業以来の木造の駅舎が残る。

  • 上伊万里
この辺一体が森永乳業の創始者である森永太一郎が私財を投げうって始めた場所という由緒ある駅。
が、いつも間にか駅舎も撤去されてしまった。

  • 伊万里
松浦鉄道西九州線乗り換え。終点駅。
言わずと知れた名物陶器である伊万里焼の一大産地である伊万里市の中心駅。
因みに以前は松浦鉄道とJRの駅舎と線路は繋がっていたが、2002年にJRの東駅舎と松浦鉄道の西駅舎に分かれ、線路も分断された。

廃線区間

言わずと知れた九州最大のターミナル駅。筑肥線は1・2番のりばから発着していた。

  • 筑前簑島
1面1線の小さな駅だが、周囲に工場が多数あったため従業員が多数利用し、ラッシュ時には駅員も配置されていた。
跡地には駅名標とホームのモニュメントが設置されている。

  • 筑前高宮
交換可能駅で、西鉄電車の平尾駅も近かったため歩行者用のトンネルも設置されていた。

  • 小笹
団地が近くにあり利用者も多かったが、廃線前までホームの欄干を使って布団を干すのどかな光景が広がっていた。

  • 鳥飼
貨物輸送があったため側線も多数あった。廃線後はマンション建設が進み、2005年には当駅から南100mほどのところに地下鉄七隈線別府駅が建設されている。

  • 西新
西新を名乗っているが、地下鉄駅とは大きく離れ南西の場所にあった。
なお、地下鉄は1981年に室見~天神間が先行開業していたため、廃線までは違う位置に二つの西新駅が存在していたこととなる。



追記・修正は両線を乗り潰してからお願いします。

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最終更新:2025年03月16日 22:58

*1 出典:日本の旅・鉄道見聞録 URL: http://www.uraken.net/rail/alltrain/ec/303.jpg 日時:2016/01/04

*2 出典:日本の旅・鉄道見聞録 URL: http://www.uraken.net/rail/alltrain/ec/305.jpg 日時:2016/01/04

*3 車両単位では1978年に登場した東急のデハ8400形試作車が最初となる。

*4 出典:日本の旅・鉄道見聞録 URL: http://www.uraken.net/rail/chiho/fukuoka/1000.jpg 日時:2016/01/04

*5 出典:日本の旅・鉄道見聞録 URL: http://www.uraken.net/rail/chiho/fukuoka/2000.jpg 日時:2016/01/04