緋衣南天

登録日:2015/05/26 (火) 00:14:06
更新日:2023/12/24 Sun 20:09:18
所要時間:約 7 分で読めます





「忘れないで。あなたは私のために生まれてきたんだっていうことを」



『相州戦神館學園 万仙陣』の登場人物。
CV.橘桜



世良信明の同級生として千信館に入学してきた新一年生。

とはいえ、未だ一度も登校していないため、四四八らは彼女の存在すら知らない。
どこか陰のある気だるげな雰囲気をかもし出しており、その印象どおり発言の意図が読めないため何を考えているのか分からない。
ただのアンニュイ系と言えばそれまでなのだが、彼女がそこにいるだけで訳もなく周囲を不安の渦に巻き込んでしまうという、独特の存在感を持っている。
そうしたことから、真っ当な人間ほど無意識に彼女を避けてしまうのが常なのだが、唯一信明だけはなぜか南天と精神的にシンクロしていくことになる。


名前の由来はシソ科アキギリ属の植物、サルビアの和名緋衣草。
ちなみにサルビアの近縁の関係としてセージと呼ばれるシソ科アキギリ属の植物が存在する。



以下ネタバレ







その正体は、柊聖十郎の後継である三代目逆十字。
と言っても上記の公式サイトからの引用文で既に隠す気ゼロな感じだったが。

聖十郎の息子であり、柊四四八の異母兄である緋衣征志郎の曾孫。つまりセージの子孫。

四四八に聖十郎の病が一切伝染していなかったのに対し、緋衣征志郎はその病を全て受け継ぎ、完全に聖十郎と同一の人格を有していた。っていうかどう見てもセージの2Pカラーだった。

そしてその病は南天にも引き継がれている。
節くれ、ひび割れ、干からびた手足、柘榴のように病巣が浮き出て元の色など見当たらない肌、眼球は濁り、髪は抜け落ち、頭部は奇形化し、歯など一本も残っていない。
普段の姿はこの姿を隠すための迷彩の夢を使った隠蔽。健康な体だった場合の仮定の姿と思えばいい。


そんな状態で生きていられるのはセージと同じくその強靭に過ぎる精神力のためであり、当然その内面もほぼ同一と言っていい。

ただ、唯一の違いとして、彼女は他人を羨ましいなどとは欠片も思っていない。






聖十郎と征志郎は、健常な肉体を持った者を羨ましいと思い、盧生の資格を欲していたことで、略奪の急段、生死之縛・玻璃爛宮逆サ磔を発現させた。
しかしそれは矛盾している。逆十字は己のみを唯一絶対至高の存在とし、それ故にあらゆる他者を道具としか見ていない。
ならば眷属であったところで関係は無いはずだ。所詮は盧生も己の道具。その力で病を癒したところで何の問題があるというのか。

いつ資格を剥奪されるかという恐怖。それもある。
生きる為に邯鄲の夢を編み上げ、にも関わらず盧生の資格を持てず、他人に頼るしかなかった初代。同じ父親の胤から生まれながら、盧生の資格を持っていた弟と違い、病だけを受け継いだ二代目。そこから生まれる屈辱。それもある。

しかし最も大きな理由は、単純な話、彼らは自分が盧生という冠を持っていない事が我慢ならなかったのだ。
物理的な強さを欲するのは男という生物が持つ単純な渇望であり、それ故聖十郎と征志郎の肥大した自我は自分が持っていないものを他人が持っていることが許せない。
それ故の略奪。お前達は道具なのだからそれを俺に献上するのが当然という思考の具現。それが生死之縛・玻璃爛宮逆サ磔である。


しかし女である彼女にはそれがない。道具はただただ利用するだけのものであり、彼らが何を持っていたところで自分が至高であることには何の変わりもないのだから。
そしてその思考は、彼女の逆サ磔を全く別のものへと変貌させた。










「築基・煉精化気・煉気化神・煉神還虚・還虚合道――」

(ちくき・れんせいかき・れんきかしん・れんしんかんきょ・かんきょごうどう――)


「以って性命双修、能わざる者墜ちるべし、落魂の陣」

(もってせいめいそうしゅう、あたわざるものおちるべし、らっこんのじん


――急段・顕象――


「雲笈七籤・墜落の逆さ磔」

(うんきゅうしちせん・ついらくのさかさはりつけ)




■雲笈七籤・墜落の逆さ磔


緋衣南天の急段。

協力強制の条件は「都合のいい希望を持ち、それに不安や疑いを抱くこと」。


意志と身体は一つであり、魂魄を構築する二つのバランスを極める事で人は無敵になれるという内丹術における極意、これを性命双修と言う。*1
そしてそれに能わず、現実から目を逸らして夢に逃げる愚か者を突き落とす奈落の大穴。それが墜落の逆さ磔である。


その効果は、「希望を抱いた者を現実へと墜落させること」。

この大穴の中で助かった。もう大丈夫。勝てる、いくぞ逆転だといった、何かしらの希望を持った者は現実に衝突し、墜落時間と希望の大きさに比例した衝撃を食らう事になる。
そしてその効果は南天には発揮されない。術者としての特権ではなく、単純な話、常に死病という現実と戦い続けている徹底したリアリストである彼女は都合のいい希望を抱かない。故に墜落することはなく、出入りすら自由。
そもそも南天が現実から目を逸らすような事があれば、この急段自体が発動しない。この夢が顕象する事は即ち南天が現実を見ている事の証明であり、同時に相手が希望に不安を抱いている事の証明である。
故に発動すれば絶対無敵。落魂陣に落とされた者は現実に衝突し息絶えるまで墜落し続けるしかない。


その協力強制の普遍性は万仙陣に迫る。希望を抱かない人間などおらず、それに不安を抱かない程の精神力を持った人間など盧生くらいしかいない。
盧生という叶わぬ夢を求めている聖十郎すらも例外ではない。そして、同じ死病持ち同士では彼の玻璃爛宮は成立しない。
緋衣南天はこの能力故、史上最強の眷属となっている。










彼女の主となる盧生は黄錦龍

南天の曽祖父である征志郎は、錦龍を盧生として仕立て上げた張本人だったのだが、錦龍は「柊四四八を倒せ」という八層試練に失敗。征志郎は息絶えた。

が、実はその試練は完全なものではなかった。
四四八は甘粕事件の際、「柊聖十郎を抹消したいという自分の中の憎悪を克服する」という八層試練を突破し、盧生となった。
しかし、この時点で四四八は緋衣征志郎の存在を知らなかった。それはつまり、聖十郎の所業の全てを理解していなかったという事であり、その不備によって四四八もまた完全な盧生ではなかったのである。

そのため、錦龍は完全に消滅しておらず、八層試練は朔の日に持ち越された。

緋衣の血統を制し、聖十郎の残した禍根を完全に精算すれば四四八の勝ち。そして緋衣の血統が四四八の盧生資格を剥奪すれば錦龍の勝ち。






そのための役者として選ばれたのが石神静乃であり、緋衣南天である。
静乃は四四八達を顕象する事を、南天は征志郎の代役を行うことが、朔の日における八層試練のやり直しだった。
南天の病は、第二盧生の資格を剥奪するための病原として押し付けられたものであり、彼女は生まれた時から錦龍の眷属として接続されていた。
つまり、南天が病を癒すためには錦龍を復活させる他ない。

その手段として南天が目論んだのが柊聖十郎の廃神化。第八等廃神・玻璃爛宮の召喚である。

ただ、眷属とはいえ錦龍は木っ端微塵になって無意識の海に漂っているため、その接続は蜘蛛の糸のようなものでしかなかった。
その力を現実で使うためには、錦龍の存在を浮かび上がらせる必要が有り、南天は鎌倉住人を邯鄲の夢に巻き込み、百年前の歴史を追体験させ、錦龍の存在の痕跡を浮かび上がらせ、徐々に力を増していった。

更に玻璃爛宮の核とするために静乃が顕象させた柊聖十郎を殺害。同時にかつて神野明影を召喚させた世良信明を篭絡して自陣に引き込むと同時に彼に聖十郎の存在を刷り込んでいく。


そして信明を絶望させ、その憎悪を聖十郎へと向けさせたことで第八等廃神・玻璃爛宮は降臨。柊聖十郎の復活によって四四八が聖十郎を超えたという事実を破壊し、錦龍を復活させ、完全に聖十郎との縁を断ったことでその死病は完全に癒された…はずだったのだが。











錦龍が現実への唯一の窓として残していた静乃の復活によってその死病は再発し、更に玻璃爛宮に取り込まれたと思い込んでいた信明が戻ってきたことで南天は一転窮地に立たされる。

南天は信明を排除しようとするが、墜落の逆さ磔は発動しない。
信明が愛する人を救えるという希望に一切の不安も恐れも抱いていないこと、そして南天が自分自身の気持ちから目を逸らしていること。それ故に逆さ磔は信明に効果を及ぼさない。

そして南天を救うため、信明の急段が発動する。


その協力強制は「相互理解」。つまり一方だけの理解では成立しない。もし南天が信明をただの道具としてしか見ていなかったなら、決して発動するはずのないものだった。

きっと、柊聖十郎や緋衣征志郎であったなら、他人に救われる事を拒絶していただろう。
だがそれがなんだという。その結果、彼らは敗北した。死病に冒されたまま、憤死するしかなかった。
奇しくも聖十郎自身がこう言った。「生きるということに嘘も真もない」。ならば、未来を掴んだ南天が敗者であるはずがない。


「緋衣南天は勝者だよ。誰がなんと言おうと間違いなく」
「ーーーーー馬鹿」



恋する少女を救った少年は去り、少女は目を逸らしていた想いを受け入れて、生まれて初めて誰かを思って涙を流した。







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最終更新:2023年12月24日 20:09

*1 急段詠唱の「築基」「煉精化気」「煉気化神」「煉神還虚」「還虚合道」とは性命双修に至る五つの段階を表す。