ZB26

登録日:2015/07/20 (月) 23:37:30
更新日:2025/09/16 Tue 21:46:27
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性能

全長:1130mm
銃身長:503mm
重量:9.6kg
使用弾:7.92x57mmモーゼル
装弾数:20/30
作動方式:ロングストロークガスピストン ティルトボルト式ロック オープンボルト
発射速度:550RPM



概要

ZB26とは、旧チェコスロバキアのブルーノ造兵廠で開発された軽機関銃である。
ZBはZbrojovka Brnoの略でブルーノ造兵廠設計を示す。軍制式名称はLK vz.26(26年式軽機関銃)。LKはLehky Kulometの略で軽機関銃を示す。
第一次大戦直後の段階においてかなり優秀な軽機関銃であり、その後の連射火器の手本とされた。


前史

機関銃と歩兵戦概略

第一次世界大戦では19世紀までの戦争に比べ死傷者数が爆発的に増加した。その原因の一端にあるのが機関銃である。
陣地防衛の要として配置された重機関銃の前には戦列歩兵が通用せず塹壕を掘っての長期戦となり、戦争は塹壕の攻略を軸に大きく変化した。

既存銃器であるトレンチガンSMGピストルカービン、シャベル等による白兵戦が繰り広げられる傍ら、戦車のような装甲による攻撃兵器も発明された。
しかしながら戦車はコストがかかるし手榴弾や火炎瓶など対歩兵に弱い。
そこで輝いたのがショーシャ軽機関銃ら軽機関銃に相当する自動火器である。歩兵分隊による運用で機動性を確保しつつ重機関銃のように制圧効果を発揮することができ、支援火器としての需要が認められた。

しかしながらショーシャやBARなどは意訳すればマシンライフルという分類であり長時間の連射など機関銃に求める能力に欠ける面もみられた。ショーシャに影響されて急遽用意されたMG08/15なども重機関銃ベースなのでどうしても重く、一次大戦終結後、戦時急造品ではないまともな軽機関銃が各国で開発された。
それは敗戦し崩壊したオーストリア=ハンガリー帝国から分離独立したチェコスロバキアでも変わらなかった。

開発

戦後間もないとはいえ、強大な戦時戦力を残す他国と対等に渡り合うにはチェコスロバキアの国軍は弱小であり、早急な近代化を必要とした。
また、外貨獲得手段も乏しい為輸出できる高機能な製品も必要とされた。
そこで優秀な軽機関銃を製造し国軍、輸出ともに需要を満たすべく、ブルーノ造兵廠のヴァーツラフ・ホレク技師を中心に国産軽機関銃の開発を開始。
幸運なことに、ブルーノは独立以前からの重工業地帯であり、優秀な工業基盤と銃器製造技術を備えていた。
プロトタイプの製作はトントン拍子に進み、1926年に陸軍が制式採用。
国軍への充当後の生産分は順次海外輸出され、購入諸国からは好評をもって迎えられた。
その後も評判を聞きつけた国からの購入オファーが続き、外貨獲得に大きく貢献した。



構造

小銃弾としては強力な7.92mmモーゼル弾を採用。小銃弾をそのまま使用可能で兵站にやさしい。
シンプルなシステム構成からかなり頑丈に仕上がっており、当時としては若干軽量に仕上がっている。そして安価。
バレル直付けのキャリングハンドルは画期的で、銃身交換が容易に行える。銃身自体も300発ほどまで耐えられる。
ボックスマガジンのためベルトリンクに比べて装弾数が物足りないが、数発ずつのバースト射撃を主とすれば必要十分。むしろベルトリンクの分離機構などを省略できる点が大きいといえる。
上方から給弾するので装填手による交換や伏射時の再装填がしやすい。照準器は左にオフセットされている。
排莢は下向きでダストカバーも引き金と連動して開く形式で用意されており、異物侵入対策は十分。
チャージングハンドルは機関部右側面にありノンレシプロ。派生型ではトリガーメカ自体がコッキングハンドルを兼ねている場合がある。
標準で折り畳み式2脚を装備しており、ガスシリンダー基部で固定する形。肩当部分に展開可能なプレートもあり連射時の反動軽減に役立つ。

そんなわけで、シンプルで頑丈、軽くて高威力、安価かつ高い環境耐性と、抜群の性能を見せたZB26は戦間期に開発された軽機関銃のマスターピースとして今なお有名なのである。



戦歴

順調に輸出され、先々で好評を得たZB26は、その性能から積極的にライセンス生産されていった。
有名なのはユーゴや中華民国で製造されたものや、イギリスで制式採用されたブレンガン。
ブレンガンはZB30をベースに英国制式弾への適合改修を行い、不具合の解消を行ったモデル。7.62mmNATO弾*1に対応しつつインド、パキスタンら旧英領諸国で今なお使用されている。
日本でも7.7mm有坂弾に対応したライセンス生産品として九七式機関銃がある。ほぼ戦車、装甲車用の装備となっており、特徴的なバレルジャケットを装着しボールマウントを介して車載されている。

チェコやユーゴがナチスに占領されると、弾薬が同じモーゼルだったこともあり、尖った性能であったMG34に対する信頼性の高い代用機関銃として使用された。
鹵獲品や他国生産品を有効活用することで有名な大戦期ドイツらしく、他の例にもれず第二次大戦を通じて使用していたようだ。

中華民国にも輸出されたものも日中戦争では多大な戦果を挙げた。
もとがデリケートなのに黄砂の舞う中国では故障必至な十一年式軽機関銃に対し、信頼性の高い本銃はかなり存在感を放っていたよう。
中華戦線で生き残った兵士は国府軍の使っていた数種類の機関銃をひっくるめて“チェッコ機銃”と呼んでいたらしい*2
ZB26を生産していた太沽造兵廠などの国府軍の生産拠点を占領した時なぞ、嬉々として準制式にするくらいだったから、上層部にも相当優秀な銃と認識されていたのだろう。

第二次大戦終結後の中国でも現役で、国共内戦では両軍がこぞって主力火器として奪い合い、共産党経由で北朝鮮に流れたものは朝鮮戦争でも使用されたという。
ベトミン(後のベトコン)にも供給され、第一次インドシナ戦争に投入された。これは国共内戦後の在庫処分だったようで、配るだけ配って予備部品無供給だったこともあり、これまた使い捨てだったらしい。
まあもとからソ連の支援品とは使用弾薬が違うのでいずれは使い捨てられる定めであったとも考えられるが。もったいねぇ……

現在は最終生産型のVz59とブレンガンが一部地域で現役であり、基礎設計が80年前の兵器としてはかなり長寿。

正規軍以外では中東のゲリラを撮った写真にたまに見ることができる。第二次大戦後にイランがライセンス生産していたものか、あるいはどさくさに紛れて横流しされたのか…
砂塵の舞う中東でろくな予備部品もないまま酷使され続けたためか、コーティングが剥げ落ち使い込まれた兵器ならではの凄みと渋みを見せつけてくれる。



バリエーション

  • ZB26
最初期型。陸軍に配備後、予備を除く余剰品は順次海外輸出された。

  • ZB27
国内向けの改良型。銃身やボルト周りの単純化と、ガスシステムの改良が施されている。

  • ZB30
海外輸出前提のモデル。銃身が短縮されているのが外見上の特徴。輸入国でも盛んにライセンス生産された。

  • MG26(t)
ナチス・ドイツによる占領時に鹵獲されたものの、ドイツ側コード。時期的におそらく大半はZB27。

  • MG146(j)
ナチス・ドイツのユーゴスラビア占領時にry
何で呼び名変えるん?とは思わなくもないが、ユーゴ産なので若干仕様が違ったのだろうか?

  • Vz52、Vz52/57
戦後に改修が行われた最終生産前期型。独自規格の7.62x45mm弾仕様。何年採用かは言うまでもなかろう。
赤い熊さんから圧力でもかかったのか、さらなる改修型の52/57では7.62x39mm弾に対応。
ベルトリンクに対応したが、切り替え式でマガジン装弾も可能であった。

  • Vz59
最終生産後期型。使用弾薬はSVDなどと同じ7.62×54mmR弾。
部品交換で各種用途に使用可能な汎用機関銃となっている。ベルトリンク特化。



登場作品

ほとんどないし登場したとしてもちょい役がいいところ。あまりの古さ故か傑作機関銃なのにこのハブられっぷり、解せぬ。
抗日映画で時々出てくるほか、第二次大戦の映画でブレンガンが拝める。
小説だと「傭兵たちの挽歌」、映画だと「ワンス・アンド・フォーエバー」あたりが有名どころか。
後は「ストライクウィッチーズ零」にちょろっとだけ出てたりするが、ほとんどワンカットだし……



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最終更新:2025年09月16日 21:46

*1 L1A1との弾倉共有にも対応

*2 それだけZB26がトラウマになってたことの証左なのだが、ホチキス機銃なんかはさすがに外観違いすぎじゃないか?