更年期少女/みんな邪魔(小説)

登録日:2016/07/10 Sun 21:36:33
更新日:2025/04/20 Sun 11:31:28
所要時間:約 16 分で読めます







概要
幻冬舎より出版されている小説。版によってタイトルが変わっており、
2010年に発売された最初のハードカバー版のタイトルは『更年期少女』、2011年に発売された幻冬舎文庫版では『みんな邪魔』に改題されている。
著者は『女ともだち』『殺人鬼フジコの衝動』『孤虫症』『5人のジュンコ』等で有名なミステリー作家、真梨幸子。
告白』の湊かなえ、『ユリゴコロ』の沼田まほかると肩を並べる、「嫌な気分になるミステリー小説」=「イヤミス」の名手として有名な著者の代表作の一つである。


昭和の少女漫画のインターネット上のファンクラブで集まった6人の中年女性たちが、次第にそれぞれの内側の欲望、嫉妬、怠惰、怒りといった醜い感情を剥き出しにしていき、やがて殺人事件に発展していく。
中年女性の嫌にリアルな心理描写や苦境に立たされる家庭状況、いい年してオタク活動に乗り込む女たちの「イタさ」、食べ方や仕草の汚い食事シーンといったような描写が連発し、読む人によっては非常に不愉快な気分になること請け合いである。
また、アニヲタ的にも陥る可能性のある要素も多いので、肝に銘じる点もあるのではないだろうか。
なお、ミステリー小説に区分されているように、ラストではある「仕掛け」が用意されている。






あらすじ
1970年代後半に、少女雑誌『少女ジュリエット』で連載され、小中学生の間で一大ムーブを巻き起こした漫画『青い瞳のジャンヌ』。
だがその漫画は連載一年半という短期間で突如打ち切られ、作者は漫画界から失踪。マニアの中でいくつもの謎がつきまとう曰くつきの作品となった。

そして現代、『ジャンヌ』のインターネット上のファンサイトにて結成されたファンクラブでは、少女時代『ジャンヌ』のファンだった「元」少女たちが同人活動に勤しんでいた。
中でもファンクラブの中心に立つのは「青い六人会」。ファンの中でも選ばれた六人だ。
毎月開かれる池袋での会合は高級ランチに高級ティールームのお茶会と、実に豪華。
『ジャンヌ』の同人活動や世間話に花を咲かせる彼女たちだが、実情はそれぞれ家庭で人には言えない秘密を抱える、醜い中年女性なのだ。

そして、メンバーの中に生じる不和、陰口、抜け駆け…殺人。
一人、また一人とメンバーが殺されていく。犯人はいったい誰だ?そして、最後に笑うのは?





登場人物

【青い六人会】
『ジャンヌ』公式公認ファンクラブ「青い伝説」の中核を担う六人の幹事スタッフ。
ファンクラブサイトの運営や同人誌の発行、毎月の会合の開催を取り仕切っている。
会合は大体池袋の高級フレンチレストラン(フルコース6000円以上)でランチの後、貸し切り高級ティールーム(紅茶一杯1500円以上)で同人活動の報告。
たまに旅行(ジャンヌ聖地等)、カラオケの集まりもある。


  • エミリー
新参のメンバー。41歳。本名は村上枝美子。
結婚以来働かなくなった夫の代わりにパートで生活費を賄っており、よくアル中の夫の機嫌を損ねては暴力を振るわれ、鬱屈した日々を送っている。
一度不倫しその相手との子供も堕ろしたが、自分が既婚者と知って逃げられた。
小学校からのジャンヌの大ファンで、偶然ファンサイトを見つけてブームが再熱。
漫画家志望だった経験を生かして二次創作の漫画をファンサイトに投稿し「原作絵に最も忠実」と称賛され、ガブリエルに推薦を受けて青い六人会に加入。
そのため、メンバーの中では人一倍ガブリエルに心酔している。
青い六人会のセレブムードについていけず困惑することもあったが、ガブリエルとの会話や『ジャンヌ』談義に心の拠り所を求めていた。

シルビアに「ガブリエルが掲示板であなたの悪口を言っていた」とガブリエルへの不信感を植え付けられ、さらに「自分は本物の秋月美有里」、「あなたを漫画家としてデビューさせてあげる」と胡散臭い口車に乗せられ、今度は彼女にのめり込み、高額な金を貸すようになる。
この時夫に借金がバレ、シルビアを警戒されていた。
だがシルビアが殺され、夫が殺人容疑で逮捕され自殺してしまい、生命保険が下りて一人暮らしを始める。
その後ガブリエルの誤解も解け、青い六人会に復帰するが、同時に裕福になって羽振りも態度も大きくなり、ガブリエルに大胆にアプローチをかけるようになる。


  • シルビア
古参4番目。53歳で、メンバー最年長。本名は咲野詩織。
ドラム缶のように太った体に、縦ロールが痛々しい。
メンバーの中でも声やリアクションが無駄に大きいムードメーカー的存在だがどこか空気の読めない。
シングルマザーで、美形の一人息子を芸能事務所に入れることを目標にしているが結局金づるにするため。
浪費癖が強く、生活保護を受けているにもかかわらず派手な買い物で無駄に散財する。
おまけに虚言癖があり、呼吸をするように「息子が病気」だの「某劇団女優の隠し子」だのといった胡散臭い嘘をつき、他の会員から金を騙し取っていた。
ジゼルやマルグリットも被害者の一人。

絵の上手さでエミリーに嫉妬し、さらにガブリエルまでエミリーに気に掛けるのを機に、彼女を追放する画策を練る。
エミリーにガブリエルの悪口を吹き込み、自分を秋月美有里本人とまで大嘘をついて彼女をファンクラブから脱会させ、自分の虜にして金をせびり取っていた。
だが、エミリーを夫のDVからの避難先を手配した直後、自宅マンションの廊下でメッタ刺しにされ、死亡する。
生前の悪行から、彼女の死はファンクラブの中では「自業自得」と切り捨てられていた。


  • ミレーユ
最古参のメンバー。47歳。本名は酒井稲子。
マイペースで急に突拍子もないことを言い出すような変わり者。
無論、ガブリエルにもプレゼントで気を引こうとしている。
独身で定職に就いておらず、同居中の母親の年金とパート代を当てにして、パチンコ通いしながら生活している。
三人兄弟の長女で、生まれつき母親に甘やかされて育ったため、母に甘え放題のわがまま放題のまま大人になった。
そのくせ、パチンコに負けたり機嫌が悪いと母に暴力を振るうのだから始末に負えない。
金が手に入ったら調子に乗ってすぐ贅沢して遣い切ってしまい、すぐ収入に困る。

父の死を機に遺産相続問題で弟たちと揉め、彼女の母への扱いのひどさから、一時は別居して一人暮らしになるも、結局自堕落な生活を送り、母と二人暮らしに逆戻り。
さらに母の容態も悪くなり、ベッドに寝たきりとなって、弟は前のマンションを売り払い、母の受け入れを拒否され自分で彼女の介護をすることになる。
だがもともと自堕落な彼女がまともに母の介護を出来るわけがなく、次第にネグレクト状態となり、彼女自身も鬱気味となってしまった。
定例会にも不参加しがちになるが、マルグリットの強い勧めで伊豆への旅行に参加するも、躁状態で旅行を滅茶苦茶にした挙句、帰り道に謎の失踪を遂げる。


  • ジゼル
古参3番目。42歳。本名は保科早苗。
上級公務員の妻で、井の頭公園付近の一等地に住むセレブ妻。隙のないメイクと綺麗に着こなすファッションで「客室乗務員みたい」と一見憧れの的。
プライドも高く、マルグリットと一緒に青い六人会を取り仕切りそれを鼻にかけている節がある。
しかし、実際は夫婦不仲、引き籠りになった息子、何かと押しつけがましい姑に囲まれ、鬱屈した日々を送っている。
実家でも居場所は皆無で、実の親からは冷遇され、兄と妹にいじめられ、さらには「少女ジュリエット」を買えず『ジャンヌ』のために嫌いな子(自分をいじめていた同級生)に頭を下げる辛い少女時代を送った過去のトラウマを持つ。
ガブリエルには、表面上は苦手のような態度をとっているが、実は密かに憧れを抱いている。

伊豆旅行の2ヶ月後、妊娠が発覚。さらに姑の見立てた霊能者の予言もあって気が滅入っていたところ、ファンクラブへの思い入れも薄まり、心機一転を図る。
夫との仲も改善し、息子も外に出るようになるなど、劣悪になっていた家庭は徐々に改善されていった。
ファンクラブにも脱会を通告したが、その直後マルグリットから妊娠について詮索される。
実は妊娠した時期は2か月前。夫と最後にした日ではなかった。

流産した妹を見舞いに出かけた直後、奇妙な悪夢を幾重にも見る。
吉祥寺駅にて何者かに線路に突き飛ばされ、下半身を切断し、赤ん坊も流産したあげく出血多量で死亡する。


  • マルグリット
古参2番目。46歳。本名は弘田絹江。
ファンクラブのまとめ役で、行事、運営管理、その他諸々の指揮を担当する。予定管理が趣味で、愛用の手帳を携帯している。
青い六人会での繋がりを人一倍大切にしており、仲間のことを大事に思っているように見えるが、その実メンバーに執着しており、抜け駆けして辞めようとすることを阻止してくる。
世間体を気にし、住まいの社宅の自治会にも積極的に参加していたが、娘の高校受験失敗&大学進学のための家出、夫の鬱病に伴う引き籠り生活と、次々と立ちはだかる理想とのギャップに苦しみ、胃痛に悩んでいる。
『ジャンヌ』連載中はファンクラブの副代表もやっており、作者同席のお茶会にも参加し、惨劇の目撃者となった。

青い六人会で頑張ることが唯一の希望であり、ガブリエルにも熱を上げていたが、地味だったエミリーが徐々に出しゃばり、ガブリエルにまで手を出すようになって、嫉妬に狂う。
そして…。


  • ガブリエル
古参5番目。メンバー最年少の32歳。
ロシア系フランス人の祖父を持ち、元劇団員の自称脚本家。中性的な見た目で、端正な顔立ちをしている。
ファンサイトの設立者であり、数多くの小説やレポートを掲載し、ファンクラブの中でもアイドル的存在として有名。勿論、青い六人会の他メンバーは全員夢中。
理知的で物腰柔らかな態度で他メンバーに接し、悩みを抱える彼女らを気遣い、献身的な姿を見せていた。

次々と消えていく青い六人会の将来を憂いているように見えたが、その関心はどうやら殺人事件の犯人についてらしい…。






【ファンクラブの他会員】
  • ソフィー
元ファンクラブの代表。本名は吉村淑子。
看護師長で、融通の利かない見た目。ミレーユとは同級生で、ファンクラブでも親しかった。
ある日突然、車ごと失踪。ファンクラブからも除籍することになった。

  • ニーナ
青い六人会の新規メンバー候補の会員。
受験生の娘がいて、反抗期に悩んでいる。
ジゼルには苦手意識を持っており、掲示板でよく口論となる。
里彩子にファンクラブの内情を教えた。





【家族、その他の人物】

  • エミリーの夫
酒浸りで、気に障るとすぐ妻に暴力を振るうDV男。本名は村上久志。
パチンコ店で従業員のエミリーと知り合い、結婚。地元の広告代理店に勤めていたが、結婚したとたんヒモ状態となり現在に至った。
妻に金をせびり自分にもちょっかいをかけてくるシルビアを危険視し、その度に追い返していたが、直後シルビアが殺され、殺人容疑で逮捕されてしまう。
さらにその時、エミリーがかつて不倫相手の子供を妊娠したことも知ってしまい、警察が踏み込んだ際に衝動的に自殺した。


  • シルビアの息子
中学生。容姿の整った美少年で、シルビアはJ事務所に入れようと躍起になっている。
ファンクラブでも豪勢なコスプレで連れて行かれ見世物状態にされ、母親のいい金づるとして利用されていた。
母が殺される晩、誰かに電話で呼び出されたことを証言しており、シルビア殺害事件後に九州の親戚に引き取られたが、交通事故で死亡した(実際は自殺した可能性がある)。


  • ミレーユの母
70歳の老婆。本名は酒井キヨ。
娘が生まれて10年、愛情をもって育ててきたが、弟や妹が生まれた後、長女が捻くれ非行に走ってしまい、愛情をかけてあげられなかったことを悔やんでおり、今はその分甘やかしている。
しかしそれがかえって長女を増長させ、彼女の横暴、ニート生活を許すことになり、八つ当たりの暴力を受けても耐え続け、悪循環を繰り返す。
夫の死を機に長女と二人暮らしとなり、長男に引き取られてもそれを拒否し、自堕落な生活の長女の面倒を見続ける。
だが、風邪や長女の暴力による怪我を繰り返しでベッドに寝たきりとなり、長女の介護生活を送ることになるが、やがて面倒すら見てもらえなくなった。
その後の彼女については描写されていないが、長女が失踪したことによって餓死した可能性が高い。


ミレーユの弟。東京の印刷工場に勤務。
真面目で調子よく何でも引き受けるが結局何もしないいい加減な性格。
姉から酷く扱われる母を引き取ったものの、妻との折り合いや母の意向もあって、彼女を手放した。


  • 百合絵
ミレーユの妹。口うるさく、姉や母に厳しい。


  • ジゼルの夫
上級公務員。本名は保科信一郎。
小心者のくせに身内には尊大と、典型的な亭主関白のエリートサラリーマン。


  • ジゼルの姑
何かと嫁に詮索し、怪しい霊能者も彼女に勧める。


  • 紫苑
ジゼルが姑から勧められた霊能力者。いかにも胡散臭いおばさんだが、ジゼルに「生霊が取り憑いている」とあながち間違ってないお告げをする。


  • ジゼルの息子
小学校で母について酷い噂を立てられ、ショックで登校拒否になり引き籠る。


  • 理恵
ジゼルの妹。要領はいいものの底意地の悪い性格。
少女時代から、悪いことがあればすぐ姉のせいにして自分は怒られるのを免れていた。
ジゼルが『少女ジュリエット』を読めなくなった元凶であり、今も彼女から恨まれている。
現役のキャリアウーマンで、幼い娘がいる。第二子を妊娠していたが流産した。


  • 弘田里彩子
マルグリットの娘。教育熱心でいい年こいて少女漫画に入れ込む母に反発して家を出て、遠くの大学に通うため一人暮らし中。
青い六人会の殺人事件の調査としてフリーライターの渡瀬に取材を受け、母が殺人事件に巻き込まれていると知る。
その後、事件の真相を確かめるためにファンクラブの秘密を探っていくが…。


  • マルグリットの夫
社宅住まいの営業職だったが、備品整備に降格され、鬱病を患う。
さらにその後会社をクビになり、家で引き籠り生活をする毎日。


  • 渡瀬晃
ゴシップ雑誌『アングラカングラ』で記事を書いているフリーライター。結構顔立ちの整った青年で、元ホスト。
本職はTVの構成作家だが、『青い瞳のジャンヌ』とファンクラブ『青い伝説』についての記事を連載しており、現在ファンクラブを騒がせている連続殺人事件の謎を追っている。


  • 秋月美有里
『青い瞳のジャンヌ』作者。本名は「山田保子」。
高校生で漫画家デビューし、『ジャンヌ』で一世を風靡して少女たちから崇拝を受けていたが、ある日突然『ジャンヌ』を打ち切り、漫画界から姿を消す。
連載の途中で絵柄が変わっており、「実は影武者」説がまことしやかに囁かれている。
実はかつて、ファンクラブのお茶会でファンから『ジャンヌ』の展開についてバッシングを受け、さらに悪質な嫌がらせまで受けるようになってノイローゼ状態になったという。




青い瞳のジャンヌ
『少女ジュリエット』で76~77年に連載されていた人気少女漫画。
18世紀のフランスを舞台に、伯爵令嬢のジャンヌが赤ん坊の頃に誘拐され、海賊に男として育てられたことを機に、修道女、旅芸人、舞台女優と流転していった波乱の人生を描く。
波乱万丈の人生の中にも、友情と愛と希望を信じ逞しく生きるヒロインの生き様が好感を呼んだ。
もちろん多数の男キャラも登場し、誰と結ばれるかがファンの中で解釈が分かれ、論争の的となっている。
ところがある号で、突然ヒロインのジャンヌが輪姦&リンチを受けた挙句に四肢切断、スカトロプレイなどのエロ漫画顔負けのダーク展開が繰り出され騒然となり、打ち切られることになる。
その後、単行本では今までの出来事がジャンヌの夢オチとして処理され、著者の秋月美有里は漫画家を引退した。






追記・修正は「更年期」をよく調べた上で胸を張って真っ当に生きようとする少年/少女をお願いします。

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最終更新:2025年04月20日 11:31