SCP-2747

登録日:2016/12/12 (月) 23:39:46
更新日:2020/06/15 Mon 23:33:21
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SCP-2747はシェアード・ワールド「SCP Foundation」に登場するオブジェクトの一つ。
項目名は「As below, so above (下の如く、上も然り)」。
オブジェクトクラスは堂々の「Keter」。


概要

このオブジェクトが何かというと、フィクション作品を専門に議論する印刷物やオンライン媒体が、存在しない作品に言及し始める現象である。SCP恒例の、みなさんおなじみ「どうやって収容するんだシリーズ」の一つ。

作品が存在しないにもかかわらず、記事、投稿、コメントなどのそれに関連するメタ情報は、存在しないフィクション作品を実際に存在するかのように扱っているのが特徴。この「存在しない作品」は様々な地位の様々な個人によって言及される可能性があり、その形態は掲示板への簡単な書き込みから学術的エッセイの主題にまで及んでいる。つまり、認識災害やミーム汚染系の可能性が高いとされている。

SCP-2747の影響を受けた媒体では、作品の解説、スクリーンショット、物理的頒布物の写真、文章の一部などが散見されている。これらの記述は互いに完全に一致しており、SCP-2747が生成したメタ情報の記述を通し、フィクション作品全体を再構築することも可能であることが証明されている。SCP-2747が生成したフィクション作品の一覧は後述する。

メタ情報の作成者は特定可能な場合もあるが、しかし脅迫による尋問を行った場合でも、対象は常にその情報の作成を否認し、内部で言及されるあらゆるフィクション作品の存在を否定する。

さらにこの現象、なんとリアルタイムで記述されたことはない。つまり、これまでに観察された全ての実体は事後に記録されたもの。また、2008年1月より以前に記述された実体は存在していない。この理由は空想科学的観測によって確認されているが、これは後に示す。


ところが現在の研究チーム内では、SCP-2747は現象ではなく、自然発生的なanafabula、または反物語の痕跡を示しているという仮説が立てられている。
これは独立した印、図像、物語素(物語の基本単位。ミームみたいなもの)の集合であり、フィクション作品内に十分な量が含まれた際にそれ自体との対消滅を引き起こす(だから反物語。これらの要素が物語を構築できるほど集まると、含まれている作品ごと消える)。
一次資料によるanafabulaの再構成はその異常性質のために不可能だが、二次資料や三次資料による記述が観測手順“輝ける聖杯”によって生成。これについても、この現象が事後確認に留まっている理由と共に後で示す。

さらに、事例からわかっているのは、消えた物語は現実にも消えてなくなる、ということである。その結果、物語自体ではない、それに対する評価や言及だけが残っているのだ。つまり現象部分は単なる痕跡。
識別の鍵となるのは、全てのSCP-2747発生事例でこれが常にその世界内において敵対者または受け入れ難い存在を代表していることである。これはSCP-2747が内包する物語要素が示す、異質であっても中心的なものとなる性質のためだと思われている。


というわけで現在、財団は観測手順「輝ける聖杯」に基づき、この反物語要素の洗い出しを常に行っている。この手順について簡単に説明すると、色々複雑な階層構造を持つ物語を作って流し、解説を作り、それに対する不整合部分を見つけ出すことである。すっげえ地道である。
そしてこの手順による観測の結果と成果も、後に示す。


で、何でこれがKeterなのかというと、この反物語が現実世界自体に作用した場合、現実が消えてなくなる恐れがある、という理由である。


非実在作品の実例

表で提示する。

作品名 形態 発生規模 作品の概略
螺旋/尖塔の頂点 短編小説 ウィキに作成された17の記事 主人公が不特定の受取人に贈り物を届けるため、荒廃し「黒く切り立った」山に向け川を下る物語。主人公は目的地に少しも近づけず疲れ果て死亡。物語を通して山の細部が説明されており、山に神または悪魔が棲みついていることが繰り返される比喩によって交互に仄めかされる
タイトル アニメ映画 ブログの記事。55回の編集がされた 最初の作品を完成させるため苦闘する漫画家の物語。ストレスによる疲弊から現実と幻覚の境目が曖昧になり、結末はぼかされている。きめ細やかで変幻自在な、そして時には非常に不穏な描写が見られる
No Sister of Mine テレビゲーム フォーラムの77のスレッド 6名のキャラクターが7人目を探すターン制RPG。ゲーム内では鍵となる書物について幾度も言及されるが最後まで出て来ず、ソースコードにはそもそも存在しなかった。おぞましく不快なサウンドが何度も繰り返されるのが特徴
The Scolipendra Wiki 共同制作 ファンフィクションサイトに投稿された49の二次創作作品 7名の登場人物が一連の世界を渡り歩き、超自然的または異常性質を有する物品を回収して保管している。だが、最重要なある物品は何度も存在がほのめかされるが出て来なかった
I/O 音楽アルバム 14の著名な出版物に掲載されたレビューコラム 活動停止中のロックバンドのアルバム。評価は高いが、一人だけ平均して7点の評価。テーマは分離とインスピレーションの螺旋。リーダー曰く「自己嫌悪や自己冒涜を弄ぶことを恐れてはいないが、アルバム全体としてはそこに達するには不十分で、決してその中心に触れることはない」
Mavigne、あるいは内宇宙旅行の形而上学に関する論文、そしてErikaarの王国、その名は光を創造した闇を意味するものであり、そしてそれについてのさらなる神学的解説 小説 文芸評論に関する様々な学術誌上に、1週間内に掲載された7記事 ある人物が夢の中で目覚め、超存在に世界の秘密を明かすと言われる。6つの世界についての話を聞くが、最後の世界の秘密を聞く前に目が覚める
ex lux インタラクティブ小説 7個の別個のフィクション批評ブログにおける深い考察と、1本のタイム誌の記事における実験的な物語の形態としての言及 6人の人物それぞれの視点で書かれた書簡による物語と、正体不明の1人の意識の流れからなるインタラクティブ・フィクション。7つのストーリーを行き来した後物語は合流するが、それぞれの物語についての説明になるため複雑化。場面転換で時間軸が繰り返されたり回り道の末に伏線が拾われたりするが、犯人と思しき「よそ者」が現れず、結末も曖昧


結論

これらの情報と「輝ける聖杯」による観測の結果、財団はこのSCiPがどういうものなのか、おおよそ突き止めることに成功した。
















……いや、その。



石を投げないでいただきたい。怒らないでいただきたい。
マジで本家記事はこうなっている。

ここまでやっておいて、財団職員が見て、確認して、注意すべき「輝ける聖杯」による観測結果がきれいさっぱり消えてしまっているのである。これでは、「結局これってどういうオブジェクトなんだよ!? 何に気をつければいいんだよ!?」となってしまう。

しかし、文中にはちゃんと、答えと言うべきヒントが隠されている。
もう一度消されてはかなわないので、ここでずばり、「輝ける聖杯」が導き出したSCP-2747「反物語」の発動条件を解説する。


解説

この反物語が起動する状況は、次に述べる条件が物語においてすべて満たされた場合である。

  1. 作中で7つの物語が語られる
  2. 螺旋のモチーフが物語内にある
  3. 最後の結末の存在を何回もほのめかす

表で挙げた実例は全て、表現の方法に差こそあるが「七つの物語」である。言い換えれば「7つのストーリー=7つの視点≒7人の主役」でもよい。
最初の短編小説にはその兆候がないが、恐らく述べられていないだけで文中にはあったのだろう。
そしてこれが満たされ反物語が起動すると、それは結末の消失とそれに伴う不自然な終わり方、という形で現出し、最終的に作品自体を現実から消し去る。



そして、本家記事も大体同じである(この記事でも結果について何度も仄めかしているのがお分かりだろうか)。
つまり、

  1. 実例として提示された7つの物語
  2. その物語に記された螺旋のモチ―フと、元記事冒頭のアルバムジャケット画像(まんま渦巻)
  3. 何度も提示される「輝ける聖杯」の成果と結果

この結果、肝心の「輝ける聖杯の成果と結果」=結末が消えてしまったのである。



だが、これを以て財団世界そのもので起動している、という結論を出すのは早計である。
なぜならばこのオブジェクト、前提として「フィクション作品にしか感染しない」からである。

財団世界においては、SCP-2747の報告書は当然、「実在する現象型オブジェクトに関する報告書」であり、ノンフィクションである。
それなのになぜ報告書がSCP-2747に感染しているのか?



これを解決するには、SCP-2747の報告書がフィクションである、という前提に立つ必要がある。
そして冷静に考えてみよう。SCPなんてものは、我々の知る現実にはない。フィクションの中の存在である。



つまり、メタ的にフィクションである「我々の現実におけるSCP-2747の記事」が、財団世界におけるSCP-2747に感染してしまっているという話である。

どっとはらい。





関連オブジェクト

  • SCP-2495「泉に至る道、一つの陥穽」
Euclid。小説「ユリシーズ」の新しい解釈をつづった論文。認識災害ベクターであり、曝露すると強力なパターン認識能力が付与されるが、代わりに脳に負担がかかって不眠症や高血圧に悩まされることになる。
これを書いた女性はかなり深いレベルで曝露しており、パターン認識が高じて限定的な未来予知能力を得ている。

これだけだと関係ないように思えるが、この女性の自宅を財団が捜索したところ、パソコンからこの論文の前のバージョンらしい6つの論文が見つかっている。
ところがこの女性、記事のタグにはないものの第五教会と関わってしまったらしく、まずSCP-1425に曝露。それを思わせるコメントが旧バージョンに添付されていた。
加えて、2014/9/10の第六版から後のデータがなかったが、コメントをよーく見ると、「結末=論文の最終版に対する繰り返しの言及」「更新が繰り返された結果残った6つの旧バージョン(うち6つ目が現在のSCP-2495)」と、反物語の起動条件のうち2つを満たしている。

で、どうやら螺旋のモチーフがどこかに存在したことでこの論文自体が反物語に引っ掛かってしまったらしく、結末にあたる七つ目=最終版のデータが綺麗に消失してしまっている。
ダメだこりゃ。


余談

実例の4番目であるWikiはSCPWikiのパロディであり、SCP-2747が我々の現実に存在したならばSCPWikiも消えてなくなる、ということである。
また、概要部分には2008年1月以前には実例が観測されていないとあるが、これは2008年1月にSCPのWikidotが立ち上がった=それ以前には財団はなかった、というメタネタである。





CC BY-SA 3.0に基づく表示

SCP-2747 - As below, so above
by minmin
http://www.scp-wiki.net/scp-2747
http://ja.scpwiki.net/scp-2747

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