氷山空母

登録日:2018/02/02 Fri 22:34:05
更新日:2024/12/26 Thu 10:55:47
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氷山空母とは、第二次世界大戦中にイギリスが計画した変態兵器である。英国面の象徴のような存在(ただし、開発自体はイギリス、アメリカ、カナダの共同開発)。


概要

ナチスの航路破壊に悩まされていたイギリスが考案したトンデモ兵器。
ハボクック(ハバクックとも)計画と呼ばれる計画だけが残されている。
なお名称の「ハボクック」とは旧約聖書の「ハバクク書」の一節にちなんだもである。

第二次大戦序盤、甘く見ていたドイツのUボートは恐るべき復活を遂げていた。
わずか数十隻でスタートした狼の群れは、数々の政治的制約を受けつつも凄まじい戦果を挙げ始め、イギリスの通商路を締め上げにかかった。
それに対して十分な護衛を貼り付けられないイギリスは、大西洋の真ん中にぽっかりと護衛の空白域を作ってしまったのだ。
ここに飛行場を設けられないものか・・・?

折しもジェフリー・パイクという英国紳士が、氷に木材パルプを一定量混ぜたパイクリートという特殊材料を考案した。
熱伝導性が低くて溶けにくく、パルプ繊維によって強度が増したこの材料を使えば巨大な氷山空母が作れると考えたのだ。*1
こいつがどれだけ頑丈なのかって?あの、硬い硬いと有名なあずきバーを想像してもらえば分かるだろう。
アイスクリームの中に小豆あんという「パルプ」が入ったあずきバー、あれがちょうどパイクリートと似たようなブツとなっているのだ。
その強度たるや、傷の付けづらさに至っては瞬間的にだがサファイアをも超えたという結果すら出している。

そのサイズは 全長約600m、全幅100m、排水量200万トン 外付けされた26基のモーター で動く超弩級の巨大空母であり、完成の暁には 150機 もの航空機を搭載することになっていた。
このサイズになるともう空母というよりは 移動可能な洋上基地 と呼んだ方が妥当かも知れない。

特性

  • 基本的には際限なく巨大化が図れる
    • 鉄骨の骨組みをベースに、氷塊を接続していくだけなので、その気になればいくらでも巨大化できる。

  • 運用する飛行機に制限がない
    • 空母と言うより飛行場なので、通常の陸上機が運用できる。

  • 周囲の水を材料にいくらでも修復可能
    • 多少の損害なら、現地であっという間に直してしまえるこの利便性は他の戦艦・空母と比べた場合非常に大きい。
    • パイクリートは溶けにくく、強い材料なので、断熱さえきちんと処理すれば艦内では快適な居住空間を確保できる。さすがに甲板上は氷点下だが。

しかし・・・

  • 高コスト
    • 当初は自然の氷を使う予定だったのが、特殊な氷を使うことになったため、コストが大幅に悪化。

なにより

  • 甲板が低い
    • コップの中の氷を観察すればわかるが、実は水面上に出ているのはほんのごく一部。ほぼ海面すれすれの高さだったのだ。
    • 試験的に作ってみたミニチュアモデルでこの一大欠点が発覚。あまりにも飛行場として使いにくいことが判明したのである。

決定的だったのは護衛戦力の充実。
アメリカの参戦により大量の護衛空母が提供されたイギリスは、大西洋の空白域を埋めることができたのだ。
こうなると使いにくくて高コストの氷山空母なんてまったく意味がなくなり、計画は(文字通り) 凍結 されたのである。



とはいえ、そのあまりにもロマンあふれる設計も相まって、現在でもフィクションでは度々登場する兵器である。


関連項目

氷山空母がモデルのポケモン。驚異の耐久力と回復技「じこさいせい」で氷山空母らしさを再現している。


追記・修正は空母が溶けないうちにお願いします。

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最終更新:2024年12月26日 10:55

*1 元々はカナダから 28万個 もの氷を切り出してきて組み立てる構想からスタートした。