名人/順位戦(将棋)

登録日:2018/04/10 Tue 13:25:00
更新日:2025/03/04 Tue 18:24:34
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名人とはある物事に優れた人物のことを指すが、ここでは将棋のタイトルの一つである名人位について扱う。
また、同時に名人戦と密接な関係のある順位戦についても取り上げる。


●目次

概要


将棋には2018年現在8つのタイトルがあるが、その中でも最も格式が高いのが「名人」と「竜王」である。
織田信長が本因坊算砂*1を「名人」としたのが始まり。
1600年代初頭に算砂に将棋で勝ち越しいていた大橋宗桂が将棋所として独立。これにより将棋の名人の歴史が始まる。
幕府からも「将棋の者」として俸禄が支給され専門職として庇護を受け、将軍などにも指導対局も行っていた。
江戸時代においては宗桂の息子2人と娘婿の子孫(将棋三家)のうち、時代最強の者が只一人「名人」を名乗った。
この頃は「名人」すなわち「九段」でもあった。いわゆる十一世名人までがこれに当たる。

明治維新後は俸禄の消滅や将棋三家も絶え、将棋界自体が長らく統一的組織が定まらなかったが、そうした中にあって周囲の推挙から当代の第一人者が「名人」とされることになった。
この方法で名人となったのは小野五平(十二世名人)と関根金次郎(十三世名人)である。

関根は先代の小野が長寿であり、自分が名人位についたのが既に全盛期を過ぎていた*2こと、また時代的に名人位も競い合うことを求められていることを感じたことなどから、
1935年に「一世名人を廃す」ことを宣言。ここに「名人戦」が始まることになる。

最初のうちは「どういう棋士が名人への挑戦への資格を持つか」また「どうやって名人への挑戦者を決めるか」に試行錯誤があったが、1951年にはA級順位戦の優勝者が名人への挑戦権を得ることに決まり、それが今日まで続いている。

名人位


先述のように現在の名人とA級順位戦の優勝者が7番勝負を行い、その勝者が名人位を得ることになる。
名人位を獲得または防衛を1回すればそれを1期とし、通算5期獲得した場合「永世名人」の称号を得る。
実際は歴史ある名人の名跡を継ぐとして「〇〇世名人」と表記される。何世目かは関根金次郎の十三世より後から数える。通例としては引退後に名乗ることになる。
そのため現役棋士は「永世名人資格者」「第〇〇世襲位予定」とされる。大抵無視されるけど。

実際には最初に実力制名人となった木村義雄が2度目に名人位を失陥した直後に引退し、十四世名人を名乗っている。
大山康晴、中原誠、谷川浩司はいずれも現役中にその功績を称えて永世名人の名乗りを許されているため、今のところ引退して永世名人を名乗ったのは木村しかいない。
2022年現在、現役の永世名人は谷川浩司*3、永世名人の資格者が森内俊之*4羽生善治の2人。
関西将棋会館にある御上段の間には木村以降の歴代永世名人が書いた掛け軸が置かれている。書面は『老子』の第二十五章から引用されている。

その他「永世名人」とは別に升田幸三への贔屓顕彰のために創設された「(称号としての)実力制第○代名人」というものもある*5
永世名人にはなれなかったものの、3期獲得した者または2期を獲得し抜群の成績であった者には引退後70歳以上になるとこちらの称号が贈られる。
なお2022年現在この称号を贈られたのは升田幸三(実力制第四代名人)と、死後に追贈された木村義雄(実力制初代名人)と塚田正夫(実力制第二代名人)の3人だけである。

名人はA級棋士しか挑戦ができないので、他の棋戦とは異なり新人が獲得することは制度上不可能(理由は後述)。保持者も挑戦者も勢いだけではない歴戦の実力者が集う。
そのため「名人には(運に恵まれ、誰しもが認める才能を持つ)選ばれた者がなる」という格言がある。

歴代名人(獲得した順に掲載)

  1. 初代大橋宗桂(一世名人)
  2. 二代目大橋宗古(二世名人)
  3. 初代伊藤宗看(三世名人)
  4. 五代目大橋宗桂(四世名人)
  5. 二代目伊藤宗印(五世名人)
  6. 三代目大橋宗与(六世名人)
  7. 三代目伊藤宗看(七世名人)
  8. 九代目大橋宗桂(八世名人)
  9. 六代目大橋宗英(九世名人)
  10. 六代目伊藤宗看(十世名人)
  11. 八代目伊藤宗印(十一世名人)
  12. 小野五平(十二世名人)
  13. 關根金次郎(十三世名人)
  14. 木村義雄(十四世名人、実力制初代名人)
  15. 塚田正夫(実力制第二代名人)
  16. 大山康晴(十五世名人)
  17. 升田幸三(実力制第四代名人)
  18. 中原誠(十六世名人)
  19. 加藤一二三
  20. 谷川浩司(十七世名人)
  21. 米長邦雄
  22. 羽生善治(十九世名人有資格者*6
  23. 佐藤康光
  24. 丸山忠久
  25. 森内俊之(十八世名人有資格者)
  26. 佐藤天彦
  27. 豊島将之
  28. 渡辺明
  29. 藤井聡太

最多保持 大山康晴(18期)
最年少獲得 藤井聡太(20歳)
最年長獲得 米長邦雄(49歳)
永世名人 木村義雄、大山康晴、中原誠、谷川浩司、森内俊之、羽生善治


順位戦


先ほどから何度も出ている言葉として「順位戦」というものがあるが、これについて解説する。

本来、棋士の実力は段位で表すのが一般的だったが、低段の棋士が高段の棋士に勝つことも増えてきたため実力を示すのに適していない問題が発生した。
そのため木村義雄十四世名人の意向で現在の実力を可視化するために順位戦制度が導入された*7

全てのプロの棋士は「名人」「A級」「B級1組」「B級2組」「C級1組」「C級2組」「フリークラス」のいずれかに属する。
名人とフリークラス以外は1年をかけてこの組み分けの内部でリーグ戦を行い、成績上位者が上の組へ上がり、成績下位者は下の組へ落ちることになる。なお竜王戦と違って飛び級は一切無く、C級2組から名人獲得には最低5年はかかる。
勝ち星が同じ場合には、前期成績で決まる「順位」によって、昇級・降級が決まる。順位差によって、昇級を逃したり落ちたりすることを、俗に「頭ハネ」といったりもする。
クラスごとに昇級/降級する人数は(ある程度)決まっているため、あの「将棋星人のコピペ」で羽生竜王の引き合いに出されている深浦九段のように「10戦中9勝1敗でも上に上がれない」なんてこともある。
ちなみに深浦九段、2回もそんなことがあった。マジ不運。この件について深浦九段本人は「全勝できなかったから上がれなかっただけのこと」と謙虚な姿勢であるが。
なお昇級/降級人数は定期的に見直されており、その時の各級の在籍人数や年齢層に配慮して調整されていると思われる。

このように対局のための組み分けである。5部制のリーグだと考えればわかりやすいだろう。ゆえに「藤井聡太が強いからA級の上のS級ってことにしようぜ!」とか言い出すと笑われるので注意(2024年度時点で藤井は名人を保持)。

他のタイトル戦や棋戦でも、順位戦の級によっては「2次予選以降の登場」などの形でシード権を得られたり、NHK杯テレビ将棋トーナメントのように予選自体が免除となることがある。
後述するが強制引退に関する規定に順位戦が大きく関係していることもあり、その意味でも順位戦は非常に重要。
段位についても、五段、六段、七段、八段、九段になる条件の一つとしてそれぞれ「C級1組に入る」「B級2組に入る」「B級1組に入る」「A級に入る」「名人獲得」がある(つまり名人挑戦は必然的に八段ないし九段に限られる)。*8
棋士の基本給*9もこの順位戦の級で決まる。当然上に行けば行くほど給料も上がっていく。
なお名人は順位戦には参加しない為、順位戦の対局料の代わりに名人手当が毎月支給されることになっている(A級の対局料より高いらしい)。

対局カードは毎年の開幕前に(先手後手含めて)抽選で決定するため、対策を立てやすいという特徴がある。また棋士への心情的配慮のため完全なランダムではなく下のような制約がある。
  • B級2組以下では師匠と弟子を当てない。総当たりとなるB級1組以上で師弟戦となる場合はリーグの中間にする。
  • 最終局は兄弟弟子戦にしない。
  • B級2組とC級1組では、なるべく2年連続で同じ相手と当てない。3年連続では絶対に当てない。C級2組では、絶対に2年連続で同じ相手と当てない。
  • 先手と後手はなるべく同じ回数にする。3連続先手や3連続後手にしない。最初の2局、最後の2局もそれぞれ違う手番にする。

持ち時間は6時間で一日制のタイトル戦よりも長く、日を跨いだ深夜まで対局が続くことも珍しくない。
長丁場になるので対局者には40分ずつ昼食と夕食休憩が与えられる。
A級のみストップウォッチ方式で、B級1組以下はチェスクロック方式を採用している。

病欠等のやむを得ない理由で休場する場合は対局カードが決まる前ならその年度の級位維持が保障される(ただし最下位となる)。
それ以降休場した場合、A級とB級1組は2期連続で降級。それ以外は2期連続で降級点が付き、3期連続なら降級となる。
対局カード決定後(順位戦開始後)の場合は不戦敗扱いとなる。

A級


魔窟。

10人という枠が定められており、下位2名がB級1組に落ちることになる。*10
リーグ戦の優勝者は名人へと挑むことになるが、その一方で下位は容赦なく下のクラスに叩き落されるため、A級を維持しているだけでも大変である。
タイトルホルダーの多くはA級経験者であるが、そんな環境なので仮に一度もタイトルを持ったことがない棋士でもA級で(長期に渡って)活躍し続けるだけで非常に凄いこと。
A級昇級は八段への昇段条件にも含まれているが、他の昇段条件は「竜王1期獲得」「竜王・名人以外のタイトル2期獲得」「七段昇段後公式戦190勝」であり、その重みが分かると思う。
そのため将棋連盟会長やタイトル保持者に次ぐ将棋界の看板役としての露出も多い。

なお、複数人が同率1位のときは例外的に頭ハネではなくプレーオフで名人挑戦権を争う。2017年度の順位戦では「6勝4敗で6人が並んだため、6人プレーオフ」というとんでもない事態も起きた。ちなみにこの事態を引き起こした一端は、自身のA級残留を賭けて久保利明王将を下した深浦康市九段にあったりする。つくづく順位戦の変な事態と縁のある人である。*11

名人戦で挑戦者が勝った場合、新たな名人は順位戦から外れ、代わりに前名人がA級1位に入ることになる。
(要するに順位戦の概念上、A級の上に名人がいる)

A級順位戦の最終対局は一斉に静岡市にある料亭「浮月楼」で実施される*12
最終対局まで名人挑戦権および残留争いが決着していないことが多いこともあって、この日は「将棋界の一番長い日」と呼ばれ、将棋界全体が緊張に包まれる。
なお最終局は名人による大盤解説会も実施されることが慣例。

ちなみにA級最多在籍者、最長連続在籍者は共に44期で大山康晴。最年長在籍者も大山康晴で、69歳で死去するまでA級から陥落しなかった。

B級1組


定員13人。上位2名はA級へ上がれるが、下位3名*13がB級2組へ降格*14となる、最も入れ替わりの激しい組。
タイトルホルダーがこのクラスに居ることも珍しくなくA級も10名という定員があるため、A級から溢れるほどに強者がいるとこのB級1組が必然的に阿鼻叫喚となることに……。
実績のある強豪や新進気鋭の若手も、格下だと判断されると容赦なく黒星が付くため、通称鬼の住処と呼ばれる。

B級2組/C級1組


ここから下は定員がなくなる。また、その都合上総当たりではなく、同級内で10戦を行っての勝負となる(ので、10戦全勝や9勝が複数という事態が起こりうる)。
上位3名*15が上のクラスへ昇級する。ただし全勝者が4名以上ならその全員が昇級。
この場合次期で人数が調整される。例えばB2から4人がB1へ上がったのであれば、来年度は降格者が3人から4人に増える。
また、B級2組なら下位2/8、C級1組なら下位2/9(級の在籍人数によって変動。端数切捨て)に「降級点」がつき*16、降級点が累積2点で降格となる。
ただし、既に降級点を1点持っている場合でも、勝ち越すか5勝5敗の成績を2期連続でとれば降級点を0点にできる。
上がってきた棋士にも落ちてきた棋士にも正念場。

C級2組


通常の組み分けの最下級。奨励会からプロ棋士となった者は基本的にこの級の最下位から始める。
上位3名が上のクラスへ昇級する。ただし全勝者が4名以上ならその全員が昇級。結構上がりやすい……のだが、新四段は順位が低いため、全勝以外では頭ハネで上がれないこともしばしば。
下位2/10(級の在籍人数によって変動。端数切捨て)に「降級点」がつき、累積3点で降格。
既に降級点を2点持っている場合でも、勝ち越すか5勝5敗の成績を2期連続でとれば降級点を1点にできるが、降級点が1点の者が同様の成績を残しても0点にはならない(昇級した場合は当然降級点もリセットされるが)。
要するに「降級点の減少は降格にリーチがかかっている状況に限られる」ということである。

フリークラス


C級2組から降級点3点で降格したものはこのクラスとなる。
また、それ以外に
  • 三段リーグで次点を2度連続で取った者(ただし、その権利を行使することを拒否して三段リーグに留まることも可能。
    なお2020年現在、権利放棄で三段リーグに留まったのは上述の名人経験者の佐藤天彦九段だけである。)
  • アマチュアまたは女流棋士で棋士編入試験に合格した者
も、このクラスに編入される。

昔はC級2組から降級した者は奨励会三段リーグに戻る事になっていたが、流石にそれは…との声もあり、一旦はC級2組からの降格制度自体が廃止になった。
しかし現実問題、棋士が増えすぎると運営に支障が出ることやプロとしての競技性維持のために導入された物である。他にもやむを得ない事情で休業したC級2組在籍棋士への配慮も兼ねている。

ちなみにフリークラスに順位戦はない。
只、扱いとしてはプロなので各種棋戦への出場資格は持つため、それらで好成績を収めればC級2組へ昇級できる。

具体的には、
  1. 参加棋戦数+8勝以上、かつ勝率6割以上
  2. 連続30局以上の勝率が6割5分以上(ちなみに一番都合のいいところから数え始めて問題なし)
  3. 年間対局数が「(参加棋戦数+1)×3局」以上
  4. 全棋士参加戦で優勝、またはタイトル挑戦

なんとなくだがどれも割とハードル高いのは分かっていただけると思う。佐藤天彦があえて三段リーグに留まった心境も理解できるだろう。
勧めたのは佐藤の師匠の中田功八段だったが、師匠曰く

  • 当時はフリークラスが参加出来る棋戦が少なく昇級条件を満たせるか微妙だった*17。フリークラスを脱出する事を意識して将棋をしてほしくない。
  • (当時の)フリークラス制度は、フリークラス宣言(後述)をした盛りの過ぎた棋士が活躍する場と言う印象が強かった。
  • 佐藤と年齢が近い奨励会員には豊島将之や糸谷哲郎、稲葉陽等を始めとしたプロ入りが確実視される有望株が多くおり、そこで切磋琢磨した方が将来的に良い。

との理由である。そう思った末の判断だったが、折角のプロ入りの機会を放棄するよう勧めた事は周りに中々理解してもらえなかったそうである*18
その後、佐藤は3期後に自力で昇段し初年度から順位戦に参加。その後も順調に昇級し名人を獲得した。
上にあげた有望株の多くもプロ入りに成功し、A級(豊島は名人)まで昇りつめ死闘を繰り広げるライバルとなった。師匠の判断は間違っていなかったと言えるだろう。

ちなみに、2023年現在フリークラスからの昇級を果たしたのは11人*19いるが、いずれも2の条件である*20

……さて、このフリークラスだが。
編入後10年以内に順位戦に復帰(=C級2組に昇格)できない、または満年齢60歳の時点でフリークラスに在籍していた場合、その年度の全対局終了後*21 引退 となる(編入時に60歳以上の棋士は即引退となる。加藤一二三九段が引退に追いやられたのもこれによるもの)。
ただ引退と言っても直後に廃業となるわけではなく、特例として各棋戦や朝日杯、NHK杯の本戦でベスト4以上に入っている。もしくは銀河戦で準優勝を獲得した棋士に関してはその棋戦に限り翌年以降も出場が可能になる。
さらに竜王ランキング戦では4組以上に在籍している場合は期限を設けずに、5組在籍の場合は上位組在籍期間を含め2年以内であれば継続出場可能となっている。*22
例えば桐山九段は2020年(72歳)にフリークラス降格と共に順位戦他の出場資格を失ったが、その後ランキング戦5組にて2年戦っている。最終的には4組昇格を果たせずに引退となった*23
2025年2月現在これらの特例で完全引退を免れている棋士は川上猛七段*24がいる。

実力なき者は去れ。勝負の世界は非情なり。

フリークラス宣言


順位において次の期からB級1組以下になることが決まっている棋士については、「フリークラス宣言」という順位戦からの引退が認められている。
(逆に言うとA級には順位戦から退く自由はないということである。完全引退ならもちろん可能だが)
この宣言をした場合、二度と順位戦に参加することはできない。
また、最短でフリークラスまで落ちる年数*25に15を加算した年数か、65歳になった時点で完全引退となる*26
上記した通り、満60歳以上でC級2組からフリークラスへ陥落すると即引退だが、フリークラス宣言をしていた場合はより長く現役を続行できる可能性があるという利点がある。
近年この宣言をした人の中で有名なのは永世名人の資格を持つ森内俊之九段。2017年、A級からの降級を機にフリークラス宣言をした。
フリークラス宣言をしても予定よりも早く完全引退することも可能である。著名な棋士だと米長邦雄永世棋聖と中原誠十六世名人*27は途中で自分の判断によって引退した為、65歳まで指す事はしなかった。

追記、修正は順位戦でA級昇級を果たしてからお願いします。

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最終更新:2025年03月04日 18:24

*1 ただし本因坊算砂は将棋も強かったものの囲碁の棋士であったことに注意。

*2 小野は享年89、数え年なら91という長命で、関根が十三世名人を襲名したときにはすでに53歳であった。

*3 2022年5月に十七世名人を襲位した。

*4 後述するが森内はフリークラス宣言をしているため、今後名人戦に挑むことはない。

*5 升田は全冠独占経験があるものの永世名人は獲得できなかった。当初は前例のある「名誉名人」の授与が提案したが名人になれなかった実力者向けの称号だったので升田が拒否したため。

*6 羽生は森内俊之よりも早く名人を獲得したが、永世名人の資格は森内の方が先に手にしている。

*7 段位の代わりに「x級x位」も当初実施されたが、こちらは継続しなかった。

*8 というか、1984年に勝数規定による昇段が制定されるまでは五~八段の昇段は「原則、順位戦で昇級する」以外の方法がなかった。

*9 棋士は個人事業主扱いなので正確には基本給では無いのだが「参稼報償金」と言う形で毎月連盟から支払われる。

*10 ただし、2017年度の順位戦では11人、下位3名陥落であった。これは三浦弘行九段がソフト不正疑惑がかけられ出場できなくなったが事実無根であると判断され、そのお詫びとして本来なら対局カードが決まる前のみに認められる級位保全の休場扱いとなったためである。

*11 もう少し詳しく説明すると、まずこの年のA級順位戦は前述の通り11人在籍で人数が奇数となっているため、(通常時の)B級1組と同様に対局の消化数にズレが起きるようになっていた。そして迎えた最終日の時点で羽生、豊島将之八段、久保が6勝で並んでおり、羽生は既に全対局を終えていて(そのため、負け数が豊島と久保より1つ多い)抜け番、つまり対局なしだったため、豊島か久保のどちらかが勝てばそれで決まり、両方勝っても2人でプレーオフであった。しかし久保が深浦に、豊島は5勝で勝てばプレーオフの目があった広瀬章人八段に敗れ、さらには豊島同様5勝で勝てばプレーオフの目があった稲葉陽八段と佐藤康光九段が共に勝ち、このプレーオフの舞台が整ったのである。なお、この事態に対する評価が回りまわって深浦九段の細君に伝わり、「将棋星人」コピペが深浦九段の耳に入ることになったそうな。

*12 静岡市は名人制度確立に関わった徳川家ゆかりの地であり、同市の誘致もあり2014年からここで実施されている。

*13 2020年度より。2019年度までは2名だった。

*14 2017年は前述した通り三浦が特例残留によりA級からの降級枠が1人になり、またその降級者となった森内がフリークラス宣言をしたことに伴い、在籍人数が11人となっていたため、人数調整として降格枠は1となった。

*15 2020年度より。2019年度までは2名。

*16 2020年度より。2019年度までは一律で下位2/10。

*17 この点は渡辺明九段もそう推測していた

*18 現に、森下卓九段はこの判断を「あり得ません。私の弟子がそんなこと言おうものなら、仮にそれが増田(康宏七段)だったとしても即破門します」とバッサリ切り捨てている。また、その森下卓の兄弟弟子である深浦九段門下の佐々木大地七段も、(自身がフリークラス編入の資格を得た時に)「三段リーグに残るのか」と他の三段に聞かれた時に「フリークラスに編入するかどうかは師匠と話をしてから決めます」と返したら驚かれた、という。

*19 具体的に説明すると、C2から降級となった伊藤博文七段と島本亮六段、棋士編入試験を受けて合格した瀬川晶司六段と今泉健司五段、折田翔吾五段、三段リーグで次点を2個獲得して編入した伊奈祐介七段、伊藤真吾六段、渡辺(旧性・吉田)正和五段、渡辺大夢六段、佐々木大地七段(深浦の弟子)、古賀悠聖六段(佐藤天彦の弟弟子)である。なお、伊藤博七段は後述するフリークラス宣言をし2020年に引退、伊奈七段はC2から降級となって再びフリークラス在籍となり2024年に引退。

*20 2017年度は中尾敏之五段があと1勝すれば1の条件をクリアして復帰出来る所にまで来たが、残念ながら果たせず「編入後10年以内の順位戦復帰」を果たせなかったことにより引退を余儀なくされた。

*21 但し、放送される対局が含まれてる場合はその放映日まで繰り延べられる。

*22 2024年、第38竜王戦において後述の川上猛七段の引退条件を再確認したときに「4組在籍を含めて2年目のため、第38期で4組に昇級できない場合は引退」と判明した。

*23 形式上は5組残留戦で破れたため、6組降組と共に引退扱いとなっている。

*24 フリークラス編入10年経過、第38期竜王戦ランキング戦4組在籍。

*25 例えばB級1組で引退した場合、「B級2組降格に1年、(これ以下は降級点があるため)C級1組降格に2年、C級2組降格に2年、フリークラス陥落に3年」で、合計8年となる。

*26 ただし順位戦最短在籍年数の間であれば、65歳になったとしても現役でいられる。

*27 中原の場合、持病の治療の専念するためと言う誠に残念な理由であった。