登録日:2023/02/01 (水曜日) 15:00:00
更新日:2023/03/24 Fri 21:34:56
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藤井聡太は、
将棋星から来た刺客将棋棋士(九段)。
杉本昌隆八段門下。
生年月日 2002年7月19日
愛知県瀬戸市出身。
幼少期
2007年、当時5歳の時に祖母から教えてもらったことをきっかけに将棋に目覚める。
同じ年の12月には将棋教室に入会した。
当時は読み書きができなかったため、符号を通して教本の内容を理解していた。
この頃は小学生大会によく参加しており、2011年には「全国小学生倉敷王将戦 低学年の部」で優勝。
2012年に「小学館学年誌杯争奪全国小学生将棋大会 3年生の部」に参加した際は後にプロ入りし2021年に新人王になった伊藤匠とも対局している(この時は伊藤が勝利)。
この時にゲストで訪れていた森内俊之名人(当時、十八世名人有資格者)と高見泰地四段(当時、後に叡王を獲得)と一緒に撮った記念写真が残っている。
同年6月の奨励会入会を機に、同じ愛知県出身であり
名古屋市で将棋教室を運営していた杉本昌隆七段(当時)に弟子入り。
2つ年下で後に「藤井システム」をひっさげて竜王3連覇を果たすことになる藤井猛九段をはじめとする「振り飛車御三家」の陰に隠れてしまう感はあるが、この世代では屈指の振り飛車の強豪棋士である。藤井自身、杉本と小林健二九段(杉本の兄弟子、通称コバケン)の指し筋に影響を受け、2人の先行研究を踏まえて新しい振り飛車の戦法である「藤井システム」を開発・体系化している。
「藤井システム」が世に出る前、昭和末期~平成初期の将棋界では振り飛車は居飛車穴熊や左美濃といった居飛車側の堅陣に苦戦しており、不人気であった。そんな中で杉本はコバケンとともに従来の振り飛車将棋を徹底的に研究・体系化し振り飛車オンリーでプロ入りを果たす。杉本の振り飛車は当時としては評価が高く、すぐ年下の
羽生世代の棋士でも
- 同世代でかつ関西で切磋琢磨していた村山聖九段も「全振り飛車党の中で唯一の本格正統派」と高く評価していた。
- 振り飛車党として自信を失いかけていた藤井猛は杉本の戦いぶりをみて自信を取り戻し、杉本が四段に上がった直後の三段リーグを突破してプロ入りを果たす。その後上記の経緯で藤井システムを生み出す。
というように少なからず影響を与えている。
プロ入り後はタイトル戦出場や一般棋戦優勝などの華やかな実績はないものの竜王戦で1組まで上っているほか、棋王戦で本戦決勝進出(その後敗者復活戦で負けてしまうが)、朝日オープンで準優勝、NHK杯でもベスト4が最高成績になっているなど、トーナメントプロとしてもなかなかの実績を残している。
また、メインの対局場である将棋会館が東京と大阪の2箇所のため多くの棋士が関東・関西に定住する中、杉本は早世した師匠・板谷進九段やその父・板谷四郎九段の遺志を継ぐ形で地元・名古屋に定住し貴重な名古屋在住の現役プロ棋士として地元での普及にも懸命に努めた。
名古屋の将棋事情はこんな感じだったので、瀬戸在住の藤井聡太が杉本門下を希望したのはある意味自然なことであった。
杉本は藤井の事を彼が小1の時に知ったが、対局の姿勢から既に只者じゃないと感じていた様である。
弟子入りを希望された時には「ついに来たか」と思うのと同時に、杉本は今まで取った弟子で棋士になれた人がいなかったため「きちんと才能を潰さすにプロ入りさせられるだろうか」の不安もあった。
そのため杉本は藤井が棋士になれなければ自身も引退すると言う気持ちで向き合っていたが、今となってはそれは杞憂であったと言えるだろう。
藤井との出会いのお陰でやる気が向上したと語っており、後に自身もB級2組へと再昇級し八段に昇段している。
この時期は奨励会に集中していたため小学生大会には不参加だった代わりに詰将棋解答者・作家としても活躍が目立った。
2014年には大人のアマチュアも棋士も参加する詰将棋解答選手権では史上最年少の小6で優勝。作る方でもコンテストで何度か入賞している。
これを機に他の棋士達にも注目されるようになり、この様子を見た谷川浩司九段(当時の日本将棋連盟会長、谷川は詰将棋作家としても有名)や伊藤果八段(引退棋士、詰将棋作家)は詰将棋は解く方に専念した方が本人の為になると杉本に助言を送っている。
先輩棋士の助言を受けた杉本は2015年以降、藤井の詰将棋制作をプロになるまで封印させている。(もちろん四段になってからは解禁)
同じ時期には史上最年少で奨励会初段に昇段する偉業も残している。
また藤井は杉本に平手(ハンデ無し)で勝利するようになっていた。そのため杉本は藤井にはもう将棋の技術に関して教えることは無いとし、その後は棋士としての立ち居振る舞い等の指南に注視されていたとのこと。後は良い出前先とか
実力が自身を超えたこともあってか、杉本はより強い相手と練習する必要があると考え、知人の三浦弘行九段に頼み込み、三浦の自宅で三枚堂達也四段(当時)も誘い四人で研究会を行ったりもした。
2015年には奨励会三段に昇段(史上最年少)する。
プロ入り
そして苦戦する人が大多数な三段リーグをわずか一期で通過し2016年に四段昇段(=プロ入り)。
史上五人目となる中学生棋士としてデビューし今まで「ひふみん」こと加藤一二三九段が持っていた最年少プロ入り記録を更新した。
それだけでも凄いがデビュー後から史上最多の29連勝を達成。
結果として藤井を含め将棋界に注目が集まったことから、この現象は藤井フィーバーと称された。
そんな藤井の活躍に興味を持ったAbemaTVは開設したばかりの『ABEMA 将棋チャンネル』初の大型企画として『藤井聡太四段 炎の七番勝負 - New Generation Story -』という番組の放送を決定する。
対戦相手はタイトルホルダーも含めた2017年当時の七人の強豪棋士であり、この企画はいくら何でも中学生で且つデビューしたばかりで経験の少ない藤井には無謀な戦いであるとの声が大多数であった。
しかし大方の予想を覆し藤井は1敗したのみで6勝の結果で終了。
非公式戦とは言え、この結果は多くの人々が彼が只者では無いと認識するようになる切っ掛けとなった。
なお藤井相手に唯一勝利した永瀬拓矢六段(当時、後に叡王と王座を獲得)は藤井の姿勢・才能に感銘を受け、VS(練習対局)を行う関係となった。
デビューから一年後には朝日杯で公式戦初優勝を飾る(史上最年少)。
これが影響し五段に昇段から、わずか二週間ちょっとで六段に昇段。
ある出版社が藤井の五段昇段を祝う企画を実施したが、昇段が速すぎて早々終了せざるを得ない珍事が発生した。
さらに五段昇段の記念パーティをやる頃には竜王ランキング戦の2年連続昇級により七段になっていたのは語り草である。
同じ理由で新人王戦も最年少なのに参加資格ギリギリという事情でこの年度のみの参加となった(結果は優勝ついでに最年少記録も更新)。
功績が称えられ、2018年度の将棋大賞では六部門で受賞した。
過去、中学生でデビューした棋士は必ずタイトルホルダーなっていた先例があり、かねてより藤井のタイトル挑戦・獲得への期待が高かったが、
2020年度に行われた第91期棋聖戦でついに初挑戦。そのまま中学生棋士の先輩・渡辺明三冠に勝利し史上最年少の17歳11ヶ月でタイトル挑戦・奪取に成功。
更に同じ年に行われた第61期王位戦で木村一基王位から王位を奪取。タイトル初挑戦・初獲得の年に二冠達成してしまった。ちなみに棋聖戦と王位戦ともに予選から勝ち上がっている。
本来、タイトル戦は現役中で一回でも取れる、挑戦できただけでも凄い物なのは明記しておく。
一般棋戦の方も朝日杯で三連覇達成し、銀河戦でも優勝している。
2021年度以降も勝ち取ったタイトルは全て防衛に成功し、抜群の成績でついに最高位の九段に昇段した(史上最速・最年少)。
ちなみに八段は昇段時、既にタイトル保持者だったので肩書としては一回も使わなかった。
2020年に
Nintendo Switchで発売した『棋士・藤井聡太の将棋トレーニング』では当然「藤井七段」として収録されているが
そのソフトが発売されて数ヶ月で七段では無くなっている。タイトルに藤井七段とか入れなかったのはもちろんこれを予想していたため。
ただ予約特典として藤井七段の署名がある扇子は制作されている。上にも書いたように直後に八段になってしまったため、ある意味でレア物である。
同年度は豊島将之竜王から叡王・竜王のタイトルを奪取し無冠に追い込み、渡辺からはさらに王将を奪い、四段昇段から四年程度で五冠を達成し棋士の頂点として君臨する。
2022年度には順位戦A級に昇級。そのまま勝ち星を重ねた上、広瀬章人八段とのプレーオフを制し第81期名人戦への挑戦権を獲得。渡辺名人に挑む。
第72期王将戦ではもう一人の中学生棋士の先輩・
羽生善治九段から挑戦を受けるがこれを退ける。
並行して行っていた第48期棋王戦では渡辺から棋王を奪取。これにより羽生に次ぐ二人目の六冠王となる(当然最年少)。
一般棋戦の方では
朝日杯・銀河戦・将棋日本シリーズ・NHK杯で優勝し、四大一般棋戦年間グランドスラムを達成した(史上初)。なおNHK杯の決勝が放映された日は棋王の奪取が決まった日と同日(2023年3月19日の日曜日)である。
棋風
居飛車党。角換わりを得意戦法とする。幼少期からの詰将棋経験で培われた終盤力が評価されており、この終盤力はデビュー当時の経験の少ない藤井が勝利を重ねられた原動力となった。
もっとも経験を積んだ2023年現在では序盤の精度・集中力・ひらめきに磨きがかかり、ますます隙が無くなっている。
プロ入り前から人工知能(AI)に詳しい先輩棋士の千田翔太七段の勧めで将棋ソフトを活用した研究を行っている。
その影響か本人も「読みと形勢判断以外のものは基本的にいらない」と明言している。
前述の通り、幼少期に符号で将棋を覚えたことから、現在でも指し手を思考する際は脳内将棋盤では無く符号で考える。これは棋士としては珍しいとのこと。
何か持って回転させていないと思考がまとまらないらしく、幼少期は持ち駒を回転させて考えていた。それをやめさせる為に杉本は大量の扇子を藤井にあげている。
2度ほど「最強クラスのAIですら6億手読まないと最善手として評価しない手を数十分で見出した」と話題になったが、
実は本人が研究で使っているRyzen Threadripperで計算すると30秒ぐらいで6億手を読むとのこと。
成績
昇段履歴
- 2016年10月1日 四段・プロ入り
- 2018年2月1日 五段 昇段理由:順位戦C級1組昇級
- 2018年2月17日 六段 昇段理由:朝日杯将棋オープン戦優勝
- 2018年5月18日 七段 昇段理由:竜王戦ランキング戦2期連続昇級
- 2020年8月20日 八段 昇段理由:タイトル2期(王位、棋聖各1期)
- 2021年7月3日 九段 昇段理由:タイトル3期(王位1期、棋聖2期)
獲得したタイトル
- 竜王 2021年度~(2期)
- 王位 2020年度~(3期)
- 叡王 2021年度~(2期)
- 棋王 2022年度(1期)
- 王将 2021年度~(2期)
- 棋聖 2020年度~(3期)
合計13期
一般棋戦
- 新人王戦 2018年度優勝
- 朝日杯将棋オープン戦 2017~2018、2020、2022年度優勝(4回、2019年度はベスト4)
- 銀河戦 2020、2022年度優勝(2回)
- NHK杯テレビ将棋トーナメント 2022年度優勝
- 将棋日本シリーズ 2022年度優勝(1回、2021年度は準優勝)
非公式戦
- ABEMAトーナメント 2018~2021年度優勝(4回)
- 新銀河戦 2022年度優勝(1回)
記録
歴代最年少記録
- 詰将棋解答選手権チャンピオン戦優勝 - 12歳(小6)
- 初段、三段~四段、六段~九段の昇段 - 四段(プロ入り)昇段時は14歳2か月(中2)
- タイトルの挑戦および獲得 - 17歳11か月(棋聖)
- タイトルの防衛 - 18歳11か月(同じく棋聖)
- タイトルを複数獲得 - 18歳1か月(棋聖・王位)、その後も三冠から六冠まで全て最年少
- 一般棋戦(朝日杯・新人王戦・銀河戦・将棋日本シリーズ)の優勝
- 朝日杯 - 15歳6か月
- 新人王戦 - 16歳2か月
- 銀河戦 - 18歳2か月
- 将棋日本シリーズ - 20歳4か月
歴代最多記録
- 詰将棋解答選手権チャンピオン戦連覇 - 5連覇
- 公式戦連勝 - 29連勝(達成したのはプロ入り直後)
- 勝率8割以上 - 6年連続(プロ入り後から更新中)
- タイトル戦初登場からの連続獲得 - 13期(更新中)
- 10代で獲得したタイトルの数 - 9期
- 同一年度での公式棋戦制覇の数 - 10(2022年度)
史上初記録
- 竜王戦ランキング戦5期連続優勝
- 棋聖戦に一次予選から参加しタイトルを奪取 - 第91期棋聖戦
- 王位戦に予選から全勝(14連勝)してタイトルを奪取 - 第61期王位戦(2020年度)
- 参加可能な一般棋戦全て優勝 - 2022年度
他多数
その他
藤井猛と苗字は同じだが血縁関係は無い。ただ藤井猛は上記の通り杉本とは縁が深い。
鉄道マニアである。好きな車両は地元
JR東海の313系8000番台。
昔は藤井が将棋をやっている事を知らない同級生は多く、鉄道マニアとしての印象の方が強かったとのこと。
好きなバンドは
スピッツ。『魔女旅に出る』が一番お気に入りとのこと。
将棋の研究用にパソコンを所持しているのだが、その
パソコンは自作している。
CPUはAMDのRyzenを活用していることを公言している。
AMD側も認知しており、米国本社のCEOからメッセージが送られた他、
お礼に最新のCPUもプレゼントされた。これが縁でAMD(正式には日本AMD)は藤井の個人スポンサーになった。
さらに日本AMD自体が2022年の叡王戦から初の外資系企業としてタイトル戦協賛企業になった。
追記、修正をお願いします。
- Switchで彼が教えてくれるゲームが出てる。乙女ゲームみたいと評判w…いやなんで? -- 名無しさん (2023-02-01 15:20:51)
- 事実は小説より奇なりを体現しつづける男 -- 名無しさん (2023-02-01 15:50:58)
- この人があまりにすごすぎて「りゅうおうのおしごと!」の作者が頭抱えてしまったというのは有名な話。 -- 名無しさん (2023-02-01 16:10:58)
- 創作作品限りなく可能な不可能だろとセーブする展開をリアル破壊し続ける男 -- 名無しさん (2023-02-01 16:53:27)
- 竜王RTAトップ記録保持者 -- 名無しさん (2023-02-01 17:27:17)
- 羽生さんですらバグみたいな存在だったのにそれを打ち破る勢いの藤井君って一体…。てか将棋星人(羽生さん)VS将棋星人(藤井君)ってもう分かんねーなコレ -- 名無しさん (2023-02-01 17:37:39)
- この人が新作魔神を組むのをイベント化したら自作PC業界盛り上がったんじゃないだろうか、と思ったのはワタシだけではないはずw -- 名無しさん (2023-02-01 18:21:44)
- 新作魔神……?藤井君が既に魔神なのでは?(すっとぼけ) -- 名無しさん (2023-02-01 19:14:53)
- 将棋星人同士の戦いを地球で見られるなんてな -- 名無しさん (2023-02-01 19:29:33)
- 地球侵略に来た異星人同士が同士討ちを始めるとか、どこかのハリウッドが作りそうなストーリー -- 名無しさん (2023-02-01 21:47:04)
- 2002年生まれってことは21世紀生まれか…若い世代の躍進はいいね -- 名無しさん (2023-02-01 23:15:51)
- とうとう項目できたんですね。 -- 名無しさん (2023-02-02 00:01:20)
- 羽生君といい彼といい -- 名無し (2023-02-02 03:56:48)
- 将棋の神様に何を叶えてもらいますか?との質問に神様がいるなら一手お手合わせ願いたいとか言えちゃう異次元の実力者 -- 名無しさん (2023-02-02 09:05:22)
- 詰将棋作家って、実はトップ棋士には少ない(何ならアマチュアにもけっこういる)。詰将棋作家止めるよう言ったのは実は結構なファインプレーだった気がする。 -- 名無しさん (2023-02-02 09:48:18)
- 誰もが羽生のタイトルに藤井が挑戦する姿を想像していたけど、現実には藤井のタイトルに羽生が挑戦するという訳の分からなさよ -- 名無しさん (2023-02-02 21:52:41)
- ところでタグの二代目将棋聖人って字アレで良いのか? -- 名無しさん (2023-02-03 12:10:39)
- 項目できたばっかりなの?ネット上だと知名度低いのか -- 名無しさん (2023-02-07 14:49:57)
- ↑まだお若いのに書くことが多すぎるのよ…。 -- 名無しさん (2023-02-07 18:14:49)
- 情報量が多い(文字通り) -- 名無しさん (2023-02-07 18:18:57)
- ↑3そういう訳ではないと思うぞ。 -- 名無しさん (2023-02-07 22:09:51)
- ↑6 しかもそれで対抗できてる羽生さんの方が褒められてるような印象を受ける(私見)ってのが……6年前にこれを予想してた人間は1人といないだろう -- 名無しさん (2023-02-12 23:29:03)
- ↑そりゃあ、年齢考えたら脳の働きも体力も衰えてくる。事実、現状で(やっと)タイトル無しの状態になり、B級に落ちてからの王将戦だからね。そりゃあウサギおじさん一体どうしたんだ?ってなるよ。 -- 名無しさん (2023-02-13 00:37:51)
- 「魔女旅に出る」をフェイバリットに選ぶセンスすき -- 名無しさん (2023-02-24 12:53:42)
- 「CPUにRyzen Threadripper PRO 5995WX、GPUにRadeon RX 6950 XT、マザーボードにASRockのWRX80 Creator、128GBメモリ、1TB NVMe SSD」…モンスターマシーンって次元じゃねえぞ! -- 名無しさん (2023-03-01 22:39:55)
- 藤井に5冠は役不足だったな -- 名無しさん (2023-03-24 13:20:32)
最終更新:2023年03月24日 21:34