LOVE特急こまち

登録日:2018/06/09 (土曜日) 02:28:50
更新日:2024/12/16 Mon 05:49:04
所要時間:約 3 分で読めます




概要

『LOVE特急こまち』とは、1999年にリリースされた『電車でGO!2高速編』のプレイステーション版イメージソング。
歌詞はこちら(外部リンク)

電車でGO!2高速編』は、初代『電車でGO!』のパワーアップ版として優等列車をメインに据えていた。このため、ゲームの目玉ダイヤとして当時開業したばかりの秋田新幹線「こまち」号を運転できるダイヤが収録されていた。
これは誰もが運転したかったであろう新幹線のシミュレーション、それも開業したばかりの秋田新幹線を運転できるとあって、大きく話題を呼んだ。
プレイステーション版でもゲームのジャケットにはE3系の写真が使われており、秋田新幹線がこのゲームの主題と言っても差し支えないと思われる。


ところで、『電車でGO!』のイメージソングといえば『J.A.Mの電車で電車でGO!GO!GO!』が有名である。現に『高速編』においても、同じくイメージソングとしてこの曲のパワーアップ版『電車で電車でGO!GO!GO!2000』が用意されている。詳しいことはこれらの曲の記事ではないので割愛するが、これらの曲はいわゆる「電波ソング」である。
この『LOVE特急こまち』も同じような電波ソング…ではなかった。

『LOVE特急こまち』は後に、『電車でGO!』シリーズ最大の名曲として語り継がれる曲となる。


プレイステーション版を起動してタイトル画面で放置していると、この曲をバックにE3系電車が走行する映像が延々と流れるが…


映像がとにかく美しいのである。


冬の奥羽本線田沢湖線沿線で撮影した雪の中を走るE3系の映像が流れるが、これが後述する曲の雰囲気とダブらせたものとなっている。
撮影地は鉄道写真愛好家なら思わず「おっ」と感じるようなポイントが選出され、E3系の流麗な走行シーンを見ることができる。
特に、2回目の転調後、E3系と701系が並走する映像はこの曲を象徴するシーンとして名高い。
ただし、この部分の映像は初代『電車でGO!』のPS版オープニングの流用だったりする。


曲の特徴

以下、曲の方の話題について説明する。

当時、『電車でGO!』のイメージソングは、石川勝久、高萩英樹、鎌田良和による、ZUNTATA所属の「Jankie As Machine」(通称:J.A.M.)というグループが担当していた。この曲も同じくJ.A.M.が担当しているが、今回に限りゲストとして女性ボーカル(詳細不明。ライブではZUNTATAの国京沙織が担当していた)が加わっている。

楽曲構成だが、この頃はglobeやTRFといったいわゆる「小室ファミリー」が全盛期であり、小室哲哉の曲として特徴的な、転調を多用した曲がブームとなっていた。
この曲も似たように、パートごとに次々と転調していく構成。曲の入りは女性ボーカルによるバラード調であり、その後J.A.M.によるラップ調のファンキーなパートに移る。J.A.M.が歌った後は再び女性ボーカルによるバラードに戻り、そしてサビ部分でフルメンバーでのソウルフルなパートへと移行していく。

ここまでがゲームサイズの流れだが、フルサイズではこの後さらに英語によるラップめいた詩が入った後、再びJ.A.M.パート→バラードパート→サビへと展開していく。

ゲームのムービーはこれと合わせ、バラードパートでは雪の中を走るE3系の映像、J.A.M.パートでは加工を施したカラーエフェクト入りの映像、そしてサビ部分では無加工映像とカラーエフェクト入り映像が次々と入れ替わる。


歌詞の方だが、最初に聴くと、サビ部分の「こまち(HA!)」を連呼する部分が印象に残る。転調を繰り返した後に入るパワフルなパートであり、秋田新幹線「こまち」に対する愛が見える。


だが、その他の部分の歌詞を見ると逃避行のストーリーであり、実は仄暗い。
何せ、疲れ切った恋人同士が全てを捨て最終の「こまち」で旅立つものの、まだ東京での幸福だった時を忘れられないでいるというストーリーなのだから…。


余談だが、その最終の「こまち」、最初のJ.A.M.パートで「夜8時 OH! VERY泣きそなベルが」という歌詞があるが、秋田新幹線開業当初は東京発最終「こまち」は19時44分発であり、惜しいところで夜8時より早かった。だが、2002年の東北新幹線八戸開業に伴うダイヤ改正により、秋田新幹線東京発最終「こまち」は20時04分となり、歌詞の通り「夜8時、東京駅の発車ベルと共に最終「こまち」が北の国へ走り出す」ようになったのである。
歌詞では「みちのく(陸奥国)の駅まで」と言っているが秋田は出羽国だったりする。


収録状況

バラードとソウルフルが入り混じったような曲調とストーリー性のある歌詞、それにPVの映像美を伴った『LOVE特急こまち』は一躍人気曲となり、たびたび再録の機会に恵まれた。

収録ゲーム・アルバムとバージョン

さらに、2013年に開催された『みんなで決めるマイナーゲーム曲ランキング』で30位にランクインしている。初版投稿者私見だが、「マイナーゲーム」の括りとはいえゲームとしては相当マニアックな部類に入る『電車でGO!2』の曲がランク入りしたのは快挙に近い。

現在CDは生産終了してしまっているものの、iTunesで『電車で電車でGO!GO!GO! れぼりゅ~しょん』が配信されているため『LOVE特急こまち』のフルサイズがDLできるほか、JOYSOUNDで配信されておりカラオケで歌うこともできる。


余談

E3系0番台は老朽化と秋田新幹線高速化のため、2013年4月より新型車両のE6系に置き換えられ、2014年3月をもって秋田新幹線から引退した。
車両は多くが廃車されたものの、一部は山形新幹線へ転出し「つばさ」運用に就いたり、「とれいゆつばさ」「現美新幹線」といった観光列車に改造されて乗客を楽しませていた。
また、2編成が東北新幹線で増結車として最後まで残っており、「なすの」「やまびこ」で運用に就いていた。
「こまち」のロゴこそ消されているがカラーリングは変更されておらず、往年の「こまち」の姿を現世に伝える貴重な存在であった。2017年には秋田新幹線20周年記念列車として、営業運転としては3年ぶりに秋田新幹線を走行した。
だが、いずれも2021年11月までに全廃。0番台は姿を消した。

現在「こまち」は後任のE6系が担当しており、動画を探すと『LOVE特急こまち』のE6系バージョンのPVを作成している人も。

秋田新幹線に含まれる田沢湖線・赤渕~田沢湖間(仙岩峠)は、この曲で「電車は走り出す 霧の彼方へ」として歌われているその区間である。
この気象の影響による輸送障害を生じやすいため、仙岩峠に新トンネルを掘削して高速化を図る計画がある。
計画はいまだ構想段階だが、もしこの区間の線路が切り替えられればこの風景も見られなくなってしまうであろう。
ちなみにこの部分も一瞬だけだが『J.A.M.の電車で電車でGO!GO!GO!』PVの時点で使われていたりする

そういった意味では、『LOVE特急こまち』は秋田新幹線E3系「こまち」の姿を映すメモリアル的な存在でもあるのだ。

2022年10月、JR東日本秋田支社公式Twitterが、秋田支社内で行っている駅カード配布のPVと共に告知ツイートを載せたのだが、そのPVがE3系やE6系、East-iが描かれた駅カードをLOVE特急こまちの曲に合わせ、電車でGOの冒頭に出てくるフラップ式案内機を意識した紹介文で紹介するというものだった。
ちなみに該当ツイートも電GOを意識しており、まさかの形で再びLOVE特急こまちが紹介されたことに多くのファンの注目を集めた。
また、ZUNTATAも引用でこの件に触れており、それによると「小学生の時にプレイした人がJRに入社し、PVに曲を使いたい」と提案したそうな。
何とも感慨深い。


追記・修正はこまち35号(夜8時東京発の最終「こまち」)に乗ってから。

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最終更新:2024年12月16日 05:49