食の軍師

登録日:2018/08/05 (日) 22:39:07
更新日:2025/05/20 Tue 08:26:16
所要時間:約 4 分で読めます





いかに美味く食すか、それは“戦い”である!!


『食漫』で連載され、同紙休刊後は『週刊漫画ゴラク』で月一連載されていた漫画。全8巻。
作者は泉昌之(原作:久住昌之/作画:泉晴紀)
2015年にTOKYO MXで実写ドラマ化された。

孤独のグルメ』などの多くのグルメ漫画の原作を手掛ける久住昌之氏が、デビュー当時からのコンビ『泉昌之』として遂に送り出した作品。

タイトルの『食の軍師』は『蜀の軍師』のパロディで、主人公・本郷の内に存在する諸葛孔明をモデルにした軍師の事。
他にも、度々食を三国志にたとえる話がある。

内容は、デビュー作の『夜行』など、多くの泉昌之作品に登場する『トレンチコートのおじさん』が『食』を『戦』にたとえ、粋でかっこいい完璧な食の組み立てを追い求めるというもので
『夜行』の後継作として見てもいいかもしれない。*1
ドラマ版は津田寛治氏の初主演作である。

食漫掲載期にあたる1巻ではおでんやとんかつといったテーマとなる食事を前に、主人公が軍師となり戦術を披露する形態を取っていた。
2巻以降は露骨にスタイルが変わっており、土地に遠征してはそこの紹介を兼ねつつ「隠れ名店」を探す形態に変わったため。
1巻の雰囲気ややりとりが好きで2巻以降を期待すると、やや面食らうかもしれない。
なお、ネットでしばしば出回っていた「タマリマセブン」等のミーム画像の元ネタもほぼ全て1巻に収録されている。

  • 第1巻:個別店編
  • 第2巻:遠征編
  • 第3巻:名城編
  • 第4巻:神社・仏閣編
  • 第5巻:郷土料理編
  • 第6巻:食堂編
  • 第7巻:朝食編
  • 第8巻:昼食編

【登場人物】

◆本郷播
演:津田寛治

食を戦ととらえ、ひたすらに完璧な食の組み立てを追い求める男。
自らの脳内に存在する軍師の策に従い様々な店を食べ歩いており、遠方まで遠征に行くことも多い。
ただし運転免許を持っていないため車は運転できず、徒歩や電車やタクシーなどの手段で遠征を行う。

食べ方や注文したものの組合わせを「○○の陣」「○○の計」と称し、「無い」を「ぬ!」と言う。

食の進め方には自分なりの拘りを持ち、自分が食べようと思っていたものを取られた時にはそれを注文しなかったり、蕎麦屋における『ボコビー』*2のような定番すぎる策を馬鹿にしている。

しかし、メインの食事に気を取られるあまり付け合わせを忘れたり、自ら撒いた策のせいでペースが狂ったりなどの詰めの甘さや凡ミスで敗走を繰り返している。明確に「勝った!」と気勢を上げる話のほうがむしろ少ない。
というかこの作品をよく見ると、食事メニューの組み立てや食べ方の「粋」を追求する『 カッコよさ 』を表しているが
それと同時に食べ方にこだわる奴の『 滑稽さ 』をも表している。同じ漫画の同じ主人公が、表裏一体で表現しているのだ。
これは作画担当の泉晴紀が『みみっちい食の拘りを描写させたら日本一』と評価されているからでもある。

酒好きでありビールと日本酒を好み、特にビールは料理がイマイチでも「ビールがあれば全部許す」と言い、反対に海ほたるが全店ノンアルコールと知った時にはろくに食事もせずにさっさと引き上げてしまうほど。
記憶を無くすほど酔っぱらうことも多く、その時は結構酒癖が悪いのもあって大抵何か恥をかくようなことをやらかしており、
「もうあの店行けない」とほとんどが敗北認定している。
また、見栄っ張りな気質で遠征に行った時に知ったかぶって大恥をかいたこともある。

力石のことを一方的にライバル視しており、強い対抗意識を持っているが連戦連敗を重ね、今では力石が店に現れるとまだ途中なのに食事を打ち切ってこそこそ逃げ出したり、現れてもいないのに力石の影に怯えて注文が決まらなかったりと最早トラウマレベルで恐れている。
作品後半になると本郷の食べ方の善し悪しに関わらず、力石が同じ店に現れて食べ始めただけで負け判定を出してしまう程悪化していた。

服装は季節を問わず帽子にトレンチコート(下はスーツ姿でいることが多い)だが、店のルールで着れない時はキャラクターがハイテンションに変化する。
普段はクールでハードボイルドを気取っているが、実は意外と下品。卑猥な替え歌や言い換えを口にしたり、強風で女性のスカートがめくれたのを見て「こいつは縁起がいい」と呟いたりと、スケベな面もある。
また、久住作品の常かダジャレを言う事も多く、テンション極まってタマリマセブン!と叫ぶ姿にはハードボイルドの欠片も無い。
通してみる限り、恋人はいないようだ。

◆力石
演:高岡奏輔

常にフード付きのパーカー姿の青年*3埼玉県出身。
ズンチャ~カ♪ズンズンチャ~カ♪というテーマソングと共に現れる。
ドラマでのフルネームは『力石馨』

何故か本郷のいる店に現れ、本郷が見落とした一品を注文したり、考えつかなかった食べ方で本郷を毎回敗北に追い込んでいる。

店員とすぐに打ち解けるなど社交性も高く、一度店員とのやり取りだけで軍師を憤死させた。また女性連れ(結構美人が多い)で店に入ってと打ち解けていることも多く、羨ましがられている。
本郷からはライバル視されているが力石本人は全く気づいておらず、友人として付き合っている。
地元の焼き鳥屋を紹介して回ってくれたり、一緒に旅行に行ったりと基本的に良い奴である。
しかし途中からはライバル視されている事に気づいたのか、わざと自分のオススメ食を見せつけているような素振りを見せる事もあった。
尚、やたらと縁が有る事には本人も気付いているのか、群馬で会った際は「そろそろ現れるんじゃないかと思っていた」とメタい発言をしている。
食事スタイルは基本的に余計なものは頼まず、メインとなるものをきっちり抑える場合が多い。食事の所作も洗練されている印象があり、座ると同時にフードを下げるなど無駄がない。
あれこれと手を出す傾向の強い本郷とは対照的で、実にクールでスマートである。

しかし、本郷が引っ掛かった『罠餃子』*4に同じく引っ掛かるなどお茶目なところもある。

◆軍師
演:篠井英介

本郷の脳内に存在する存在で、本郷に様々な策を授ける。
元々は本郷が自身を軍師になぞらえて策を弄してゆく設定だったため、髭の無い若い風貌であったが、
2巻途中から勝手に駄洒落を考え始める等して別人化。現在は髭のある諸葛亮関羽を足したような姿で定着している。
本郷に様々な助言をするが一人相撲など策に溺れて自滅することもしばしば。

脳内の存在のわりに、本郷にプロレス技をかけたり直接制裁を加えたりとアグレッシブに動く。




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最終更新:2025年05月20日 08:26

*1 『夜行』のリメイクと言っていい回や『かっこいいスキヤキ』の場面を回想する回がある

*2 蕎麦屋に入ってまずビールと板わさを注文すること。本郷はこれをする奴を「超凡庸蕎麦男」と言って軽蔑している。

*3 一度だけダウンジャケットを着ていた時がある。

*4 ラーメン屋でビールのアテやラーメンのついでで注文する程度の、単品ではあまり美味しくない餃子