アウトレイジ(映画)

登録日:2018/11/24 Sun 16:45:50
更新日:2025/03/13 Thu 10:24:06
所要時間:約 10 分で読めます










目次



【概要】

『アウトレイジ』は、2010年に公開された日本映画で北野武監督作品の15作品目。ワーナー・ブラザース映画 / オフィス北野共同配給。
色々とバイオレンスなシーンがあるため、映倫からR15+指定を受けた。
本項目冒頭の「全員悪人」のキャッチコピーの通り、劇中に善人と呼べる登場人物が一人もいない。(タバコのポイ捨てを注意したおっちゃん刑事を除いては)
北野監督曰く「どうやって人を殺そうかというプロセスを先に考え出し、それに対しストーリーを後付けした」らしい
劇中では罵倒の嵐が吹き荒れ「バカヤロー」「コノヤロー」が頻繁に飛び交っている。
本作のスマッシュヒットを受けて、2012年には続編の『アウトレイジ ビヨンド』、2017年には3作目にして完結編となる『アウトレイジ 最終章』が公開され、
北野監督作品では唯一のシリーズ化作品となった。



【ストーリー】※ネタバレ注意

関東一円の裏社会を取り仕切る巨大暴力団「山王会」の会長関内は、傘下の池元組が麻薬を扱っている独立勢力の「村瀬組」と兄弟盃を交わしてつるんでいるのを快く思っていなかった。
関内は山王会の会合の際に池元組の組長池元に対して「村瀬を締めろ(軽い制裁を与えろ)」と本家若頭の加藤を通して無茶苦茶な命令を下す。
兄弟分相手に事を荒立てたくない池元は傘下の大友組にこの命令を丸投げした。
村瀬組の若頭木村の思いがけない抵抗や山王会内部の思惑に翻弄されながらも大友組は命令を忠実に遂行していくのだが...

【登場人物紹介】

山王会本家

関東一円を取り仕切る巨大暴力団。

「いつか倍にして返してくれよな」
  • 関内(せきうち)(演:北村総一朗)
山王会の会長で本作の黒幕枠。
表向きには寛大な態度を取っているが本性は狡猾で腹黒い狸。

「池元も会長の言う事聞かねぇからなぁ…」
  • 加藤(演:三浦友和)
山王会本家の若頭で、関内の右腕として部下に様々な命令を下す。関内にどんなに理不尽に叱責されようと無言で服従していた。冷静沈着な策略家で頭脳派。
関内にはきつく当たられながらも黙って従うが、村瀬に形だけの引退を持ちかけたり、刑事の片岡や大友組の石原と個人的なパイプを持つなど、目の届かぬ所で着々と地盤を固めていく。

池元組

山王会の直系(二次団体)で、大友組の上部団体。

「舌は1枚に決まってんだろうがよ!」
  • 池元(演:國村隼)
池元組組長。
私利私欲の為に周りに二枚舌を使いまくる下劣な男で今回の騒動最大の元凶。
自分の手を汚したくないが為に関内・加藤から言いつけられた無茶を傘下の大友組に押し付け、自分は何もせずに嬉々として侘び金を懐に収めていくという調子のよさを見せている。
村瀬らが引退後も麻薬売買を続けていることが発覚すると大友に村瀬の殺害を命じるが、村瀬殺害が本家で問題視されると大友に破門を言い渡し、加えて大友組のシマまで取り上げようとしたために彼を激怒させる。

  • 小沢(演:杉本哲太)
池元組若頭。
20年に渡って池元に尽くしており、池元からの信頼も厚かったが、関内や加藤に唆されて後釜を狙い始める。
大友に対しては、池元の無茶な要求を聞き同情しているような素振りを見せており、池元が引退したら池元組の若頭にしようとする。

ちなみに、演者の杉本哲太は、水野役の椎名桔平と長年の交流がある。*1

大友組

池元組の傘下(山王会の三次団体)で、規模こそ小さいものの、武闘派でならしている精鋭揃いの組織。

「破門したり取り消したり、てめぇの舌は何本あんだこの野郎!!」
主人公。
大友組組長。
下請けで嫌な汚れ仕事ばかり押し付けられても親分の池元に愚直に従う昔気質。
敵に対しては情け容赦ない武闘派だが子分に対する情は厚い。

「どっちが損か得か考えたほうが身のためだぞぉ」
  • 水野(演:椎名桔平)
大友組若頭。
組長同様生粋の武闘派だが、大友には絶対的な忠誠を誓う。風貌はインテリヤクザっぽいが。村瀬との抗争でも先陣を切って動いた*2他、安部とともに麻薬の売人の締め上げも率先して行う。
残虐な行為を繰り返していたが、彼自身も本作屈指の残虐な方法で殺害される。パンフレットによると、北野監督は水野をいかに殺すのかを一番気にしていたらしい。

  • 石原(演:加瀬亮)
大友組金庫番。
英語に堪能な現代的なインテリヤクザで、闇カジノを開くなど頭脳を使って金を稼ぐ。
旧態以前としたヤクザを見下しており、特に度々自分に手を上げる水野を嫌っている。

「なんだできねえのかこの野郎!早くやれよ!」
  • 安倍(演:森永健司)
大友組の組員で幹部の一人。
ゴリラのように厳つい風貌をしており、他の大友組組員同様武闘派である。謝罪に来た木村に指詰めを強制させたり、村瀬との抗争にも動いたほか、麻薬の売人に制裁を加えた。
余談だが、演じた俳優が公開の翌年にひったくりでパクられた。

  • 岡崎(演:坂田聡)
大友組の組員。
一見ヤクザには見えないリーマン風の容貌をしている。それを利用した大友の指示により、わざと村瀬組が経営するぼったくりバーに引っ掛かる。組員としての能力は不明だが石原などから、一連の行動に対し「お前本当は(たまたま)引っかかったんじゃねぇのか?」と言われるなど、評価は低い模様。
その後は調子に乗っていた言動を繰り返していたが、おでんの屋台で江本と飲んでいたところを木村らに拉致され、リンチを受けて最初の犠牲者となってしまった。

  • 上田(演:三浦誠己)
大友組の組員。
ヤクの売人を洗ったり、カジノの上がりを上納したり、グバナン大使を脅したり、色々とやってる。
なお、演者の三浦誠己は元お笑い芸人である。芸人時代から千原ジュニアを慕い、彼の元に集う後輩芸人達の教育係的役割を担っていた*3


  • 江本(演:柄本時生)
大友組の組員。
岡崎の側近でありながらおでんの屋台でうっかり眠りこけてしまい、その際に岡崎が殺害された為、小沢の怒りを鎮める為水野から鉄拳制裁を喰らう。その後は闇カジノのディーラーを担当。

  • 運転手(演:新田純一)
大友組組員。大友の運転手であり、そつなく運転する。
警察署前で水野がマル暴に怒られた際、遠くの方で気まずそうな表情をしているなど芸が細かい。またグバナン大使館前にて安倍と仲良くじゃれていた。

村瀬組

山王会の傘下に入っていない独立勢力。麻薬売買や水商売(ぼったくり)をシノギにしている。

  • 村瀬(演:石橋蓮司)
村瀬組組長。
山王会入りを目論見、池元と兄弟の盃を交わす。
所がその山王会との抗争が起こってしまい、池元が黒幕とは知らずに泣きついて収拾を図ろうとするが、木村や飯塚たちの独断行動により、金による手打ちでは済まなくなる。最後の手段として池元と山王会本家へ謝罪に行き、表面上は関内の許しを得たが、数日後に歯科医院で大友に襲撃され口内を治療用ドリルで破壊され重傷を負う。あまりの泥沼化に見かねた加藤から打診された「形だけ」の引退を受け入れるが、襲撃も引退も全ては山王会の謀略であった。
最期は取り上げられたはずのシマで麻薬売買を仕切っていたことを理由に、大友にサウナで側近や麻薬の売人・佐山(演:芹沢礼多)共々射殺される*4

  • 木村(演:中野英雄)
村瀬組若頭。
大友組の策略にはまり、カッターナイフで顔を切られる。この恨みと村瀬から「情けない」と貶されたことから、腹いせに岡崎をリンチする。
結果として飯塚は射殺されて村瀬も引退に追い込まれ、自身は堅気になって尚も大友の命を狙い、大友の乗る車を襲撃するが、水野に部下を射殺され、自身は水野の銃撃から逃げ切り逃走する。
それ以降は姿を見せなかったが…。

  • 飯塚(演:塚本高史)
村瀬組の組員でボッタクリバーのポン引き。
抗争を狙う大友組に嵌められ、謝罪のため指を詰める……が、許す気の無い大友組によって木村が重傷を負わされると彼に従って大友組の組員の岡崎を拉致してリンチし、抗争に終わりが見えなくなる。
自身は故郷の青森県へ逃げようとしたが、大友組の拷問を受けた仲間が逃亡先を白状してしまう。そして送り込まれたヒットマンに新幹線内で見つかり、最期は諦めのような表情を浮かべつつ射殺された。
せめて来世では幸せになってください。

警察


  • 片岡(演:小日向文世)
大友の大学のボクシング部の後輩で、マル暴の刑事。
山王会と癒着して賄賂を受け取っている悪徳警官で、大友の他に若頭の加藤ともパイプがある。
大友とは現在も定期的に情報交換をする仲。
自身の昇進とある人物が獄中で刺殺されたことを山王会本家に報告し、後任の山本を紹介する。
  • 刑事(演:辻つとむ)
マル暴の刑事。片岡の上司。
大友に対してブチ切れる(演技をする)片岡に「茶でも飲むか」と「カツ丼食うか」みたいなテンションでなだめた。また、タバコのポイ捨てをした水野を戒めた。存在感があったが、続編では本庁がメインとなってしまったため出演せず。
  • 山本(演:貴山侑哉)
片岡とコンビを組む組織犯罪対策部の刑事。
飄々と片岡の後ろを歩いていたが、ラストでは本庁に異動した片岡の代理となって山王会と癒着する。

その他


  • グバナン共和国在日大使館大使
演 - ハーシェル・ペッパース*5
アフリカ大陸にある架空の国家「グバナン共和国」の在日特命全権大使。本名不明。在日大使のため日本語に堪能であるが、石原とは英語でやり取りする場面が多い。
グバナン共和国の国家予算はかなり少なく、村瀬組から大使館の治外法権を利用して麻薬の密売を強要されていた。大使館内の違法行為に日本警察が手出しできないことに目をつけた大友組によって、闇カジノの経営を持ちかけられる。
当初は大友組の提案を拒絶するも、石原達に拳銃で脅され、さらに情婦殺しの罠に嵌められたため*6、最終的には闇カジノを開かされた。
最終的に闇カジノ店で大友組に殺害された人物の死体の運搬・スコップでの埋葬を押し付けられ*7、水野らに「一人で歩いて帰れ」と自分以外は車で帰るという形で置き去りにされる。
  • ラーメン屋店長(演:マキタスポーツ)
村瀬組から仕入れた麻薬を売買していた。水野に耳を菜箸で突き刺され、安倍に中華包丁で指を切断された。マキタスポーツは現在マルチな活躍をしている。


【過去作との関連性(?)】

本作の約20年前に発売された『たけしの挑戦状』にて、映画館で「やくざ対やくざ」という作品を上映しているシーンがある。
そのため、本作の公開開始時「やくざ対やくざが本当に映画化された」とクソゲーマーの間で話題となった。
やくざ対やくざと異なり、本作は「つまんねえ えいか゛」ではないのでご安心を。





追記、修正ってのも形だけだからよ。

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最終更新:2025年03月13日 10:24

*1 また、かつてVシネマ全盛期の際、杉本が主演の「ジャック パチスロ闇の帝王」に椎名が出演した。一方の杉本は、椎名との初対面を「ものすごく目つきの悪い男が来たと思った」と冗談めかして振り返っていた。

*2 歯医者での村瀬襲撃の実行部隊にも参加していた。実行犯は大友。

*3 そのため、後輩芸人を叱ることが多く、通称「鬼軍曹」として後輩芸人達に恐れられていた。

*4 この襲撃もまた、汚れ仕事を嫌う池元が山王会からの指示を大友組に丸投げしたもの。

*5 日本在住の黒人タレントで、アメリカ国籍である。しかし、アフリカ人である本役を演じる際には、アメリカ英語を一切使わず、わざわざアフリカ英語のような印象の訛りでしゃべっている。ちょうど、西アフリカ・ナイジェリア出身のタレント、ボビー・オロゴンが話す英語に近い印象である。アフリカ諸国は旧英国領だった国が多く、地元言語の発音や語彙と融合して、地域ごとに独特な英語となっている。アフリカ英語と同様に、世界各地にインド英語など独特の英語が存在する。

*6 情婦はその後のシーンで、大友組が経営する闇カジノに出現している。つまり、実は情婦は殺害されておらず、陰謀の片棒を担いでいたということが示唆されている。

*7 彼自身は車内で「国外退去」と考えていたが、石原から「死刑」と言われて驚きの声を上げる。なお、殺害されたのは1人であるため、この件で死刑になる可能性は極めて薄い。