アウトレイジ ビヨンド

登録日:2019/12/08(日) 21:15:17
更新日:2020/01/16 Thu 22:56:41
所要時間:約 10 分で読めます







全員悪人 完結。



一番悪い奴は誰だ?


概要


『アウトレイジ ビヨンド』とは、2012年に公開された日本映画で、2010年公開の『アウトレイジ』の続編、そして『アウトレイジ3部作』の第2弾。
監督は前作に引き続き北野武。ワーナー・ブラザース映画 / オフィス北野共同配給。海外配給はマグノリア・ピクチャーズが担当。

映倫からR15+指定を受けているが、前作と比べると直接的な残酷描写は少なくなっており、代わりに「バカヤロー!」「コノヤロー!」を始めとする、罵倒の嵐が前作以上に吹き荒れている。
主人公の大友と木村が、所謂『ダークヒーロー』的な扱いとなっており、勧善懲悪とまではいかないまでも『毒を以て毒を制す』的な痛快さがある為、北野映画としてはかなり見やすい部類の作品となっている。

北野監督作品では初となる続編映画となった本作は各所において積極的な宣伝活動がなされ、その甲斐あってか初日三日間において観客動員ランキング初登場第一位という、
北野映画史上初の快挙を成し遂げている。

本来は『ビヨンド』で完結の予定だったが、今作の大ヒットにより、続編の制作が決定。
真の完結と大友の『最期』は『アウトレイジ 最終章』に持ち越しとなった。

また『悪人から学ぶ劇場マナー養成講座』と題して劇場でのマナーに関する注意喚起を本編の映像を用いて作った動画にまとめているが、動画内の悪人達がマナー以前の問題行動を繰り返しており、1分の動画にもかかわらず、非常にカオスな出来栄えに仕上がっている

あらすじ


強大化する山王会

前作から五年。
二代目会長となった加藤と若頭になった石原のコンビの下、山王会は政界にまで触手を伸ばす程に勢力を拡大させていた。
これに危機感を覚えた警察上層部は山王会と太いパイプを持っていた片岡をマル暴に復帰させて山王会の対策に当たらせる。

片岡は新体制に不満を持つ古参幹部の富田に目を付けて叛心を焚き付ける。関西の巨大勢力花菱会の若頭である西野と兄弟盃を交わしていた富田は、
その助力でもって加藤と石原の追い落としを狙うが山王会と花菱会は裏で協力関係になっており、花菱側の密告で計画は露見。富田は射殺されることとなる。

目論見が失敗した片岡は、今度は出所が近づく大友を利用する事を思い付く。
前作で木村に刺殺されたように見せられていた大友だが実際はどうにかして生き延びており、死亡説は片岡が流していたデマであった。

大友と木村の決意

だが大友は、既にヤクザの世界に見切りを付けており、旧知の日韓フィクサー張 大成(チャン・テソン)の下で平穏な生活を送ることを望んでいた。

片岡は、刑務所から出所後にカタギとなって暮らしていた木村を大友と和解させた上で「本当の敵は山王会」だと伝え、復讐心を焚き付ける。それでもなお計画への協力を渋る大友を見た片岡は、加藤と石原に大友が生きていることを伝えて復讐を恐れた石原が大友の命を狙うように仕向ける。
大友には木村の子分である嶋と小野が護衛についていたが、ビルのエレベーターで二人と離れたところを襲われ重症を負う。

大友は嶋達が早く医者に運んだのでなんとか一命を取り留めたが、大友を守りきれなかったことに責任を感じた嶋と小野は山王会に殴り込みをかけるものの、幹部である舟木とその部下によって惨殺されてしまう。
親しい人間、しかも命の恩人を殺された大友は、ようやく片岡の計画に乗ることを決める。

抗争開始

大友と木村は花菱の協力を取り付けるため、二人で本部を訪れるが、そこで西野と若頭補佐の中田らに罵声を浴びせられる。大友も負けじと食い下がって場は一触即発の修羅場となるが木村がケジメをつけるために自分の指を噛みちぎって場を収める。大友と木村の覚悟を確認した花菱会は、2人なら山王会を倒せると考え、助力を決める。

大友は手始めに先代の山王会トップ関内のボディガードであった舟木を拉致して加藤が禁じ手を使ってのしあがったことを自白させ、レコーダーに録音。音声は花菱会会長の布施に届けられた。
布施は舟木の自白を加藤に突き付けた上で石原が情報提供をしたことをほのめかし彼を疑心暗鬼に陥らせる。
配下の組長が殺されてパニックに陥った石原は、木村が未だに大友を恨んでいると考え、木村を抱き込んで大友を殺害しようとするが、逆に木村に部下達を殺害され捕まってしまう。
ようやく石原と対面を果たした大友はピッチングマシンを使って石原を殺害し、復讐を果たす。

終幕

舟木の証言音声は山王会の幹部陣にも届けられ、「親殺し」が露見した加藤は失脚。後任の会長には古参幹部の白山が、空席となった若頭には同じく古参の五味が就任し、山王会は花菱会の影響下に入った。

木村は自分の組に大友を誘うが、大友はヤクザの世界に戻るつもりはなかったため、すべての手柄を木村に譲った。
花菱会も木村に対して、加藤引退の交換条件として大友を破門して関係を断つように命令したため、大友は張会長の下に戻り、韓国へと消える。
数日後、大友は密かに日本に帰国すると、張会長の腹心である李(白竜)と協力してパチンコ店で待ち伏せし、一人寂しくパチンコを打つ日々を送る加藤をナイフで刺殺する。

一方、警察では「山王会の代わりに花菱が台頭しただけじゃねーか」という声が高まり片岡の立場が危うくなっていた。
片岡は再び大友と木村を巻き込んで花菱会の力を削ごうとする。片岡は、加藤の元部下をリーダーとした数名をけしかけて木村を殺害させる。さらに片岡は「大友が木村を殺害した」という噂を流しつつ、大友には「花菱会が木村を殺した」と吹き込む。
片岡は木村の葬儀に現れた大友に、参列者の花菱会幹部らを襲撃するための拳銃を渡したが、全てを見抜いていた大友は片岡に向けて引金を引き、自らの手で葬り去ったのであった。


登場人物


大友、木村一派

「お前オレが死んだって噂流したろ?」
前作に引き続いて主人公。
前作で殺害されたと示唆されていたが、実は生きていた。
自身の行為を悔い改めがっており、模範囚として五年間トラブルもなく静かに過ごしていた。
出所後はヤクザの世界からすっぱり足を洗って平穏な生活を望んでいたが、片岡の策略もあって山王会への復讐に邁進する。
事が済んだ後は今度こそヤクザを引退し、張会長の勧めで韓国に渡ったが、密かに帰国し最大の敵であった加藤と全ての黒幕である片岡を葬り去る。
今作では彼自身の罵倒シーンは控えめ*1で、全体的にダークヒーローに近い印象となっている。

  • 木村(演:中野英雄)
「兄貴…お久しぶりです」
元村瀬組の若頭で、出所後はバッティングセンターの経営で食っていた。
片岡の仲介で大友と和解を果たし、コンビを組んで山王会への復讐に邁進する。
子分であり、息子同然の存在だった嶋と小野を失ってしまうが、加藤の引退に貢献した功績で「木村組」を貰い受ける。
…が、片岡が唆した山王会幹部の手先により組員共々射殺されてしまった。
今作では『漢』としての見せ場が多く、大友と並んでダークヒーロー的な印象が強い。

  • 嶋(演:桐谷健太)
  • 小野(演:新井浩文)
「オレがオンナだったら抱かれたいぐらいのスイングして」(嶋)
「千円入れたぐらいで何時間も遊んでんじゃねーぞコノヤロー!!」(小野)
木村の子分であり、息子代わり。
どこの組にも属してないので、実質的にはカタギ。
木村の昔の兄弟分の息子で、親を失ってから木村が引き取って、育てていたらしい。
若さゆえに無鉄砲な言動も多いが、木村の教育の影響か、理不尽な暴力は決して振るわない一面もある。*2
石原の差し向けたヒットマンに襲われた大友を救ったが、大友を守りきれなかった自責の念から、二人は山王会に殴り込みに向かったが、逆に舟木に拘束されて凄惨なリンチを受けて殺害され、遺体は頭に袋を被せられて鉄くず置場に放置された。
二人の死は、大友と木村の復讐心を後押しすることになった。

  • 張 大成(チャン・テソン)(演:金田時男)
「大変だったナ…!!」
在日韓国人のフィクサー。
戦後の上野の闇市を10代で仕切ったという伝説を持つ。
大友とは旧知の仲であり、出所後の彼を気にかけて自分のところで働くように面倒を見てくれた。
今作ではほぼ唯一、大友と木村の味方であり続けた人物。
演じてた金田氏は実際に在日韓国人の実業家で北野氏の友人。俳優ではないが、本職にも勝るとも劣らない熱演を披露してくれた。

  • 李(演:白竜)
「大友さんから電話がありまして…」
張の腹心の部下。
終盤の大友の加藤暗殺に協力する。


山王会

  • 加藤稔(演:三浦友和)
「誰が山王会これだけデカくしたと思ってんだ!!」
山王会の二代目会長。「親殺し」という禁じ手を使ってトップにのし上がった。
山王会の勢力を強大化させるが、その一方で行き過ぎた実力主義や倹約主義で古参連中の反発を買っている。
片岡や花菱会の策略によって、自身の派閥の幹部を次々葬られ、更には禁じ手を使ったことが露見して完全に失脚。
しかも組の金を横領していた事も発覚し、そのカタとして美術品などのめぼしい財産はほとんど奪われてしまった。
最期は一人寂しく暇つぶしにパチンコを打っていたところを大友に刺殺された。

  • 石原秀人(演:加瀬亮)
「ガタガタ抜かしてっとマスコミに洗いざらいバラすって大臣に言っとけ!!」
山王会若頭。前作で大友組を壊滅に導いた後、金稼ぎの手腕を加藤に見出されて出世を重ねた。
前作以上に尊大かつ傲慢になり、古参幹部を顎でこき使い、下っ端にとくに意味もなく暴力を振るい、気に入らない奴はカタギだろうと警察官だろうと平然と殺す暴君に成り下がった。
だが、大友の出所を知るや、復讐にビビって怒鳴り散らしながら彼の殺害を命じる有り様は「弱い犬ほどよく吠える」ということわざを体現していると言えよう。*3
かつての親分に捕まった時は震え失禁しながら命乞いをしたが……

石原「いう通りにするんで、許してもらえませんか!!!」
大友「何でもするのか?」
石原「はい!!」
大友「……野球やろうか。
石原「えっ…?」

聞き入れて貰える筈もなく、ピッチングマシンの投球を当てられ続けて絶命した
その横暴さ故に人望はゼロに等しく、木村に襲撃された際は部下たちは誰一人として石原を守ろうともせず、我先に勝手に逃げ出そうとするような有様であった。

  • 舟木昌志(演:田中哲司)
「俺ァ先代のボディーガードだ。あいつらに護って貰う程落ちぶれちゃいねーよ」
先代のボディガードで、事の真相を黙っている代わりに幹部に取り立てられた。事実上のNo.3。
ボディーガード上がり故か、考えが浅い面もあり、殴り込みを掛けた嶋と小野を惨殺して大友と木村が押さえ込んでいた復讐心に火をつけてしまい、山王会と花菱会の抗争の決定的要因となってしまった。
序盤はクールに振る舞って見せていたが、部下が顔をドリルでブチ抜かれて殺られているところを見るや秘密をベラベラと喋ってくれている。
彼が最後どうなったか、はっきりと描写されていない。

  • 富田(演:中尾彬)
「お前ら、人に言うなよ…?」
古参幹部。序列的には本来ならば彼が若頭になる筈だったらしい。
先代会長の死の真相に気付き、片岡に唆されて加藤の追い落としを狙うが、兄弟分に裏切られて命を落とす。
人望はある方とは言えなかったが、それなりに貢献してきたであろう彼の死は、他の古参幹部達の加藤への不審を決定的にしてしまった。

  • 白山広(演:名高達男)
「老後の安心を買うにはよ、それなりの、カネが必要なんだよ…!!」
古参幹部。
冒頭で描写された刑事殺しで自身の部下を身代わり出頭させられており、現体制に不信感を抱いていた。
富田のクーデター未遂の際は、花菱会の密告もあり、あっさり富田を裏切ってしまう。
だが、五味と違って彼なりに富田へは罪悪感を感じていたようである。*4
当初は裏切る気なんてなかったと思われるが、花菱会の後ろ盾を失った現状で、下手に口答えしていたら(石原の横暴っぷりから言っても)真っ先に組員ごと殺されてた可能性が高かった為、白山にしても苦渋の決断だったのだろう。
その後は石原に八つ当たり同然に処分勧告を食らい、遂に憤慨し花菱会に寝返る。
他の古参幹部も押えて加藤が失脚すると、漁夫の利で三代目会長に就任。
だが、それは事実上の吸収合併に近かった。

  • 五味英二郎(演:光石研)
「裏切ったなんて変な事言うなよ…!!」
古参幹部で白山とは兄弟分。
眼鏡をかけた姑息な小心者で自らに責任と危険が及ばないように立ち回り、白山が口火を切ってから発言する。
こちらも漁夫の利で若頭となった。

  • 岡本(演:菅田俊)
「ビデオですか?帽子を被ってるんで…誰だか分からないんスよ」
古参の幹部だが、上の三人とは違って加藤と石原の一派に属する。
自身より年下であろう石原に怒鳴り散らされる様は中間管理職の哀愁を感じさせる。
特に見せ場もなく花菱のヒットマンに射殺された。
実は潜入捜査をしていて、死んだフリをしていたのかは定かではない。

花菱会

  • 布施(演:神山繁)
「一度人を裏切った奴は、何回でも裏切りよる!!」
花菱会の会長。
山王会先代の関内とは兄弟分で共存路線を歩んでいたが、加藤の代になっての山王会の横暴ぶりに早々と見切りをつけていた。
大友と木村に助力して加藤の「親殺し」を暴き、「兄弟分の仇討ち」という大義名分が出来た事で山王会を弱体化に追い込み、影響下に組み込むことに成功する。
シリーズ屈指の知略家。
なお、演じてた神山繁氏は、今作が映画としては遺作となった。

  • 西野一雄(演:西田敏行)
「どう落とし前付けるんじゃコラァ!!」
花菱会の若頭。
加藤の親殺しの噂を聞きつけ、山王会の弱体化をなし得ようと謀略を張り巡らせる。
花菱会による山王会への介入以降は実働部分を担い、白山を新会長に据え、影響力を確保する。
富田とは兄弟分だったが、白山とは対照的に、彼にはなんの慈悲も掛けなかった。
そしてココリコ田中にも慈悲を掛けなかった。「オイ田中ぁ!ワリャあタイキックじゃボケェ!!

  • 中田勝久(演:塩見三省)
「誰がチンピラじゃ!!」
花菱会の若頭補佐で西野の弟分。
加藤の関内殺しに関する噂を探るため、山王会を恨む木村を利用する策を思い立つ。
中盤の恫喝シーンは演者の熱演もあって、「怖すぎる」と評判である。
だが演じてた塩見氏は今作が悪役初挑戦だったらしく、「ちゃんと悪役できてるか」と終始ビクビクものだったとの事。

  • 城(演:高橋克典)
花菱会の無口な腕利きヒットマン。
顔の割れてない構成員を率いて、山王会の加藤・石原一派を次々と葬っていく。
演じてた高橋氏は「セリフなしのモブでもいいんで出してください」と北野氏に直々に売り込んだそうで、本編ではセリフが一切無い代わりに、Blu-ray / DVDスペシャル・エディション収録のメイキングでは高橋氏がナレーションを努めている。

警察

  • 片岡(演:小日向文世)
「加藤と裏切った石原に!きっちりケジメ付けてくださいよ!!」
大友の大学の後輩である悪徳刑事。
5年前からマル暴の現場から離れていたが、山王会の弱体化を狙う上層部に呼び戻される。
西へ東へと飛び回ってヤクザ達を良いように振り回した本作の騒動の元凶。
山王会に代わって花菱会が台頭し始めると、木村を加藤派の残党に殺害させ、大友を唆かして花菱の幹部陣を襲うように仕向けようとしたが、これが大友の逆鱗に触れて彼に葬られる。

  • 繁田(演:松重豊)
「片岡さんにとっちゃ先輩でも、俺にとっちゃアンタ単なるヤーコーなんだからな覚えとけよ!!」
片岡の部下のマル暴刑事。
「全員悪人」がキャッチコピーの本作において一番善人の側に近い人物。
大友らに「ヤクザなんてゴミ以下」と罵るが、小野に「(そのヤクザとつるんでる)デカだって似たようなもんだろ」とそのものズバリな指摘された際は即座に八つ当たりしたが、結局言い返せなかった。*5
渋々片岡のヤクザを利用する作戦に付き合うが、終盤の所業に遂に呆れ果てて愛想を尽かす。
その際は「残念だったな。お前も出世できたのに」と言う片岡に「(ヤクザを利用して出世するぐらいなら)一生ヒラでいいッスよ!!と言い放った。
どーしても松重氏=ゴローちゃんのイメージが強いせいか「ポスターがどう見てもヤクザの抗争に巻き込まれたおじさん」という意見が相次いだ。



追記、修正お願いします


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