SCP-188-KO

登録日:2019/01/05 Sat 17:35:22
更新日:2025/03/29 Sat 21:43:10
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今日も明日も、地球は歪む。


SCP-188-KOとは、シェアード・ワールド『SCP Foundation』に登場するオブジェクトの一つ。
KOのナンバーの通り、韓国サイトにて管理されているオブジェクトである。
オブジェクトクラスKeter



概要

まずこいつが何かというと、サモア諸島のとある市に存在する高さ数十mのT字タワークレーンである。
1900年代のある日、同市の工事現場で発見されたものがそのまま収容された。
周辺に住んでいたある民間人によると、SCP-188-KOは「突然」出現したらしい。証言者の民間人にはクラスD記憶処理が施された。
しかし当時オブジェクトを撮影していたカメラ等は存在していなかったため、この証言の真偽は不明となっている。

お約束として、このオブジェクトの枠組みは未知の金属体で構成されており、破壊不可性を有している。
ただし高熱による融解は可能な事が確認されている。その融点は約25万ケルビン。ちなみに太陽の表面温度が約6000ケルビンである。
更にクレーンの巻き上げ装置は金属板で囲まれている。この金属版に限っては融解すらできず、このオブジェクトで唯一破壊できない部分となっている。

巻き上げ装置で引き上げられたワイヤーロープは通常のクレーン同様に巻き上げ装置内部のワイヤードラムに巻かれていると考えられている。
しかし現在まで巻き上げ装置全体の質量や体積の増加は確認されていない。つまり巻き上げ放題。
また基端部は地中に数km以上打ち込まれているものと推測されており、現在のところ発見場所からの移動は不可能となっている。
さらに操縦室の全ての機器は内蔵されたインストルメントパネルを除いて動作していないが、なぜかエレベーターは正常に動作している。



特別収容プロトコル

さて、こいつの特別収容プロトコルだが、要約すると
  • SCP-188-KOの駆動音が外部に漏れないように防音設備で覆うよ。
    • 民間人には「何らかの理由で建設が中断された建物のタワークレーン」というカバーストーリーを流布するよ。
    • カバーストーリーの説得力を上げるためにオブジェクトの周辺に鉄骨の構造物を建てて不透明なビニールで覆うよ。
    • その構造物には民間人の立ち入りがあってはならないよ。
となっている。移動が不可能な以上、順当なプロトコルと言えるだろう。

……が、問題なのはこの続き。
  • このSCiPが発生させる異常な現象は地球全体に及ぶよ。
    • でもその現象自体は隠しようがないから、民間人への情報の遮断を集中して行ってね。
    • 地質学、気象学、天文学などのこのオブジェクトによる現象を扱う学問の学会には財団のエージェントを潜入させるよ。
    • 潜入したエージェントは学会への記憶処理と論文操作を通じてオブジェクトに関連する全ての情報を遮断/操作するよ。

なんとこいつの発生させる異常の影響は防げないと断言されてしまっており、情報統制のみという消極的な対処が取られている。
その一方で情報統制自体はかなり大規模で、実に3つもの学問の学会に財団が干渉して情報統制を行うこととなっている。

しかしここまでやってもこのオブジェクトの完全な封じ込めには不足らしく、
  • 一般大衆がオブジェクトの起こす変則的な現象に気付くほどに動作が長期化した場合は情報の遮断は難しいと予測されているよ。
    • このオブジェクトの長期的な危険性を排除する為に安全に破壊あるいは停止させるための研究が進行中だよ。
    • 関連する研究資料を手に入れたエージェントはセキュリティクリアランスレベル4/188の研究員に報告を行ってね。

との文まである。
そう、こいつはKeterの中でも最悪な財団がその理念を放棄し完全な無力化を試みているオブジェクトの一つなのだ。

しかし、こいつは既に約25万ケルビンの高熱によって融解するという事が判明している。
財団の技術を以てすれば融解自体は不可能ではなさそうだが、それでも未だ融解が実行されていない理由。
それはこいつの破壊不能性以外の異常性にある。



SCP-188-KOの恐ろしさ

SCP-188-KOの異常性は、外部に露出しているワイヤーロープにある。
このワイヤーは基端部の前面に存在する直径1mの穴を介して地中に入っており、その長さは実に約6377.5km
……つまり地球の半径とほぼ同等どころか上回っている。
そんでもってワイヤーロープの端部、つまりフックの位置はインストルメントパネルの表示によれば地下6377.4km地点付近のかなり深い場所にある。
……つまり地球の中心付近にあると見られており、現在直接観測することは不可能となっている。

そしてこのオブジェクトは太平洋標準時で12時になると1秒だけ稼動し、ワイヤーロープを引き上げる。
つまり1日1秒しか働かない。怠惰ってレベルじゃねぇ。
またその引き上げ速度は秒速0.05mmと見られている。前述の通り1日1秒しか動かないので、要するに1日で0.05mmしか上がらない。
ナメクジ以下の超スローペースである。

ではこいつはそんなペースで一体何を引き上げているのか?



地球の重心である。



なんとこいつのフックが引き上げられると、上昇した高さに応じて地球全体の重心がオブジェクトに向かって移動するのだ。
つまり1日に0.05mmずつ、年間1.8cmずつ、地球の重心がどんどん上(あるいは下)に向かって移動していくのである。
超スローペースなどとんでもない、むしろ早すぎる。
現在のところ地球の重心は元々存在していたと思われる場所からSCP-188-KOに向かって2桁mほど移動しているものと推測されている。

当然だが地球の重心が移動するなどというとんでもない事態が起きて地球環境に異変が出ないはずもない。
このオブジェクトの影響によって、現在の地球全体の気流/海流の変化が発生している。水や空気は重心に引っ張られるのだから当然である。
さらに極地方の氷河が遅い速度で太平洋の方向に移動している上、太平洋地域の海面温度が温暖化で予想される数値の2倍以上の速度で上昇している。
恐らく内部のマグマも移動しているのだと推測される。
他にも太平洋と大西洋の間に微妙な気圧差が発生している上、月の軌道が微細に変化していることが確認されている
やべえ。そりゃこんなもん情報統制するしかないわけである。
更に更に、SCP-188-KOの位置する島はこの影響で最短で数十年以内に沈没すると見られている
これを防止するためにオブジェクトを大規模な防水壁で包み込む計画が立案、準備されている。

このままSCP-188-KOが地球の重心を引き上げていった場合、数百年後まで長期的にXK-クラス:世界終焉シナリオを発生させるものと考えられている。
異常気象や地殻変動による災害だけでは留まらず、最悪の場合自転や公転にすら影響が出るのだろう

当然財団も何もせず手を拱いていたわけではない。
SCP-188-KOの危険性が確認された当時、オブジェクトのワイヤーロープを融解させて破壊する案が検討されていた。
しかしこの案に対してある仮説が提起され、一時的に保留されることとなった。

ワイヤーを切るということはつまり、切られたワイヤーとフックが下に落ちるということ。
……「ワイヤーによって引き上げられていた重心」が地球の中心に「墜落」してしまえば、地球に何が起こるのか?

……仮説の結果は[データ削除済]となっている。
しかし、この案は破棄される事はなく保留にされた。それは、もしそれ以外の方法が見つからなかった場合、財団は躊躇いなく実行に移すということ。
そして、日々重心を引き上げるオブジェクトの性質上、実行は早ければ早いほど被害は少なくなると思われる。

だが、これはあくまで仮説だ。地球の重心が墜落したらどうなるかなど誰にもわからない。わかるはずもない。
もしも、財団の想定を上回る破滅が地球に起きれば――


SCP-188-KO

地球の心臓(지구 의 심장)


――人類は、存続できるのだろうか?



追記・修正はカバーストーリー「地球温暖化」を流布してからお願いします。

CC BY-SA 3.0に基づく表示


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最終更新:2025年03月29日 21:43