SCP-201-JP > AiliceHershey

登録日:2019/08/04 Sun 17:01:20
更新日:2023/09/08 Fri 20:05:29
所要時間:約 12 分で読めます






Ni-Doが、Ni-DoがSozaXeiをすべる、すべる、すべる。ああ、かけた!私はかけた! Addieeは、既に逃げおおせただろうか。Blockageralの中に、二酸化Zoarの空気濃度の幻を見た。それでも零れぬ、そう、私は既に。



「誰か」のための追悼。



SCP-201-JPはシェアード・ワールド『SCP Foundation』に登場するオブジェクトである。
オブジェクトクラスはEuclid(Neutralized審議中)。
項目名は『ざんごのハイウェイ』。

現在は作者AiliceHershey氏の引退に伴う自主削除により別の作品が登録されている。



概要

SCP-201-JPは北海道札幌市内に存在する、走行距離約57.8kmのかつて使用されていた高速道路である。
この高速道路は、かつてから首なしライダーがバイクで走行する道路として財団の関心を引いており、
その調査中に本当にライダーが現れたことで土地の所有者や国交省との協議の末、収容に至った。

といって、このライダーは別にパンチもキックもしてこないし、ぶっとばすぞと叫びながら冷たい海に相手を叩き落とすこともない。首なしライダーという騒ぎになっていたのも、こいつの走行ポーズの問題(常に項垂れており、前方を見ない)。
黒のバイクスーツとヘルメットを着た180cmのライダーは前も見ずに80km/hの速度でオートバイを駆るのである。

こいつが現れるのはその道路を走っているバイク乗りが、かつての自分の行為に罪悪感を抱いている場合である。
そんなこいつを追い抜いた状態でトランシーバーを031に入れるとこいつと会話でき*1、そのなかで
被験者は自分の罪の体験を語り、ライダーを説得しようと試みる強制力を持つ。
だが、ライダーからはその罪悪感をえぐるような反論が返ってくるため、非異常性の心理的ダメージによって被験者はしばしば停止することがある。
この道路の領域を超えるか、うなだれライダーに抜かされるとこのうなだれライダーは消失する。
そして、被験者はうなだれライダーを説得できなかったことを嘆き、鬱傾向が上がる。

たぶんうなだれライダーは日本人ではないだろうと思われるが、
日本語以外の言語は現時点で通じず、故に非日本語話者の前には出現しない模様である。

実験

実験は複数回行われている。

自身の家族全員を殺害し、死刑判決を受けているDクラス

自分が金欲しさに母親の財布から金をくすねたところを家族に目撃され、衝動的に家族を殺害したことを語る。
その後、母親は水商売、父親は親族から金を借り、妹は売春で金を調達していたことが発覚したことを述べ、
うなだれライダーを説得しようとした。

しかしうなだれライダーからは
「何故仕事を選び、働くという選択肢を取ることができなかったのか。その賃金でどれだけ生活が楽になるのかを考えた事はなかったのか」
と返され、思わず激昂。罵倒を続けたがうなだれライダーは消失した。
実験後、Dクラスは鬱傾向が悪化した。

元テロリストのDクラス

テロ組織に入ったことで、自分の居場所をはじめて見つけたと実感し、テロに加担してきたことを語る。
しかし方針に疑問を感じた頃、家族が人質に取られて抜け出すことができなくなったことでその加担を後悔したと述べ、
うなだれライダーを説得しようとした。

しかしうなだれライダーからは
「何故人質に取られ、捨てる事の出来なかった家族を初めから大切にする事ができなかったのか。テロ組織等に入らず、最初から家族を大切にしていれば、そこに自分の居場所はできたのではないか」
と返され、気を取られてDクラスは転倒。
怪我は軽微だったが、実験後に別のアノマリーの実験で命令違反を起こして終了された。

財団の██研究員

実験中にかつての恋人であった同僚研究員███が自分のミスで命を落とし、
しかもその原因が自分ではなく███のミスであると扱われていることを語り、
うなだれライダーを説得しようとした。

しかしうなだれライダーからは
「一介の仕事人であるならば、公私混同は避けるべきであった。少なくとも、貴様は盲目と色恋の違いを知らぬ、阿呆な餓鬼であるように見える」
と返され、██研究員は停止。その場で泣き崩れて心理カウンセリングを受けることになった。
また、説得しようとする強制力故に機密情報が漏れる可能性が高いという財団の判断により、
研究員を実験の被験者に選定することはこれ以後なくなった。

事件

ある日、出現したうなだれライダーが道路に存在していたコンクリート片に躓き転倒する事故が発生した。
割れたヘルメットはらはハマナス(Rosa rugosa)と推測される花弁が成育された頭部が露出
うなだれライダーが消失するまでの間、被験者のトランシーバーからは嘆きの声が流れ続けた。


Ni-Doが、Ni-DoがSozaXeiをすべる、すべる、すべる。ああ、かけた!私はかけた! Addieeは、既に逃げおおせただろうか。Blockageralの中に、二酸化Zoarの空気濃度の幻を見た。それでも零れぬ、そう、私は既に。


そう、冒頭の叫びである。

顛末

そんなうなだれライダーであったが、とあるエージェントがこの実験に参加し、この叫びの意図がついに判明するのであった。

エージェントはうなだれライダーに、「そんなに急いでどこに行くんだ?」と語るも、「貴様には関係ない」と突っぱねられる。
エージェントは何も話さないなら自分が話すといい、自身のことを語りだす。

俺はスピードになりたかった。けどなれなかったんだ。スピードを出すために必要だったものをどこかに置き忘れちまった。エンジン、ガソリン、タイヤ、ボディ。何もかも全部な。それでもまだ俺はバイクに乗り続けてる。それはきっと、彼女に対しての後悔と懺悔なんだろうな。

エージェントは、かつて絶対に死ぬことはないと思っていたある人物のことを語る。
その人物はサイトで起きた収容違反で、化け物から同僚を守って死んでしまった。
信号を無視し、警官を無視し、法定速度も無視してあと僅かでサイトに辿り着くところだったのに、間に合わなかった。

アクセルを握りこんでた腕に、力が入らなくなった。その後ずっと、道の真ん中で立ちつくして、どうして間にあわなかったんだろうとか、どうして俺はスピードになって、彼女の下に辿り着く事はできなかったんだろうとか、どうして死ぬのが俺じゃなかったんだろうとか、色々考えてるうちに、ワケ分かんなくなってその場に蹲って歩けなくなった。その日から、バイクに乗ることを止めた。

ならば何故貴様は今、その忌々しき乗り物で、私を遮ろうとする。貴様が再びそれに乗った所で、件の女性は帰ってはこないのだろう。

そのままそっくりお返しするぜナス野郎。お前は一体いつまで下を向いて、現実を見ないで進み続けるつもりだ?

エージェントは反駁した。前も見ずに高速道路を突っ走るなんて、自殺志願者か小心者のすることだと。
するとうなだれライダーは自分は小心者ではない、間に合わせるのだと叫ぶ。
どこに? そうエージェントが問うと、うなだれライダーもついに語り始めたのであった。

彼女に、Addieeに頼まれて、私はいつものように買い物に出かけた。そう、彼女の大好物だったKera-Harazinの材料を買いに行ったのだ。SozaXeiを抜けて、光宮の御膝元まで、私は駆けた。彼女は変わっていた。後から聞けば、高貴なるゲ-ディルの女官ヴェンロータイでありながら、卑しきヤグェンドであった私を私財をはたいてまで買い叩き、雑用係としての役割を受け持たせたのだ。疑問を提示すれば、答えはいつも決まって言っていた。退屈しのぎでもあり、自分はUgosaの花が好きなのだと。ただそれだけの理由で私を買ったかと思えば、庭にはUgosaの花の1つもない。この辺りは二酸化Zoarの濃度が高く、育てる事ができないからと彼女は笑っていた。だが母親から受け継いだばかりの職務に追われ、幼い御身に蓄積された疲労の、その顔の悲しそうなことよ。それでも彼女は時々、有頭階級の世話や私的な要求の話を私にしては、ただ笑っていた。彼女は、彼女にも見えない誰かをきっと守ろうとしていた。だから、その日は買い物だけではなく、彼女にUgosaの花束を贈りたいと思っていた。肉と、卵と、そしてUgosaの花束を買った時、ああその時! 天蓋が崩れ去った!

うなだれライダーは、かつてのどこぞの文明の奴隷身分であった。
そんな彼を気まぐれで買った、高貴な、しかし幼き女性。

好きだったのは、おそらくハマナスの花。
でも、ハマナスは彼女の庭では咲かない。
彼女は、おそらくは神官か陰陽師みたいななにかだったのだろう。国を守る幼い女性に、奴隷は恋をした。
奴隷は、好きな女性のために、ある日彼女が好きだったKera-Harazinの材料を買うついでに、ハマナスの花を買った。

その時、世界は崩壊した。

彼は奴隷である。奴隷が高貴な身分に恋してはいけない。
しかしそんな不遜なことを願ってしまった。世界の終わりに。
彼は駆けた。

でも、間に合わなかった。

崩れゆくSozaXeiを再び抜けて、彼女の屋敷へとただ私は駆けた。ただ、私が屋敷に辿り着いた時には既に、Ni-Doは、屋敷の、事如くを。

必死で彼女を探した。数多の瓦礫を押し分けて、ただひたすらにその子どものような身躯を探した。自らの体が再構築されていくのにも気をやれず、ボロボロになった腕で、脚で、いない、どこにもいない。どこにも。嗚咽を漏らしながら、出もしない涙を流しながら、ただAddieeだけを。

そうして幾分かの時がたった頃、私は見つけてしまった。彼女がいつも好んで腕に着けていたVenutと、彼女の右腕を。そこで私は思い知った。私は、間にあわなかった。そうして、この世の冬を見た。

彼は嘆いた。奴隷が身分をわきまえず彼女に恋したから、世界は崩壊したのだと。
理を守らなかったから、彼女を死なせてしまったのだと。

しかしそんなうなだれライダーに、エージェントは、それでも生きていくしかないだろと語る。

このままだとお前もその女も、誰一人救われない。死よりも苦しい生なんていくらでも存在する。それを受け入れられもしないお前が、一体何を以ってここに来た俺達を語るんだよ。








ああ、私の、罪は。






うなだれライダーは消失し、以後、出現することもなくなった。






これでいいんだ。






うなだれライダーは、相手に相手自身の罪を受け入れさせようとしていた。

しかし、本当は自分自身の罪を受け入れさせてくれる誰かが必要だったのかもしれない。


余談

もともとは以前のwobe氏が執筆したSCP-201-JP『ざんげのキッチン』をAiliceHershey氏がオマージュしてコンテスト作品として投稿したものである。
wobe氏は引退時に自身の作品を全消ししており、そのなかでも『ざんげのキッチン』は高い評価を受けていたことから
多くの人にその削除を嘆かれている。AiliceHershey氏もその一人だったようだ。
項目名は当初『ざんぎのハイウェイ』だったが、北海道でザンギだと唐揚(とらやはかせ)じゃないかという指摘もあり、
『ざんぐのハイウェイ』、のち『ざんごのハイウェイ』となった。

しかしこの際に、wobe氏は一度CC BY-SA 3.0で投稿しているため、二次創作も含めたアイディアの再利用を否定できないのだが、
読者からは『盗作ではないのか?』という問い合わせが入るなどしている。
最も、北海道札幌市というロケーションやHarazinといった語句、そしてその表現方法程度しか流用しておらず、
いいとこパロディかオマージュの範疇であり、パクリとは到底言い難いものである。
この作品がコンテスト作品として投稿されているものであったため、
「オリジナル作品を投稿すべきコンテスト作品に他者のアイディアの流用で作った作品を投稿するのか」という意味合いもあったのだろうと思われる。

更にその後broken_bone氏が自筆全記事自主削除を行った際にアイディアを再利用することを促したところ、
「どれだけ流用していいと言われても、あなたの素晴らしい作品のデッドコピーにしかならない」と批判を集め、
一部記事を残す事態となって大混乱を起こしている。

AiliceHershey氏自身が自筆全記事自主削除(ただしSCP-TCG-JP-Jはコラボ作品のため存続)を行った際には、以前からTwitterアカウントでSCP-JP関連の創作・自作品に関連する二次創作に対して複数の理由で苦痛を感じていると思しき旨を度々述べていた他、このふたつの事例の影響もあってか
broken_bone氏とは逆にアイディアの再利用をしないでほしいという要請をしていた。
しかしその後御先稲荷をモチーフにしたVtuberが登場した際に一時的にTwitterに現れて上述の要請を撤回している。




追記・修正は、愛する人が死ぬ前に間に合った人にお願いします。



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最終更新:2023年09月08日 20:05

*1 直接声をかけても応答しない