1998年第59回菊花賞

登録日:2019/09/15 (日) 22:34:00
更新日:2024/04/15 Mon 15:48:14
所要時間:約 7 分で読めます





38年ぶりの逃げ切りなるかセイウンスカイ!

1998年11月8日に京都競馬場で行われた第59回菊花賞はセイウンスカイが勝ったレースである。

出走馬


1 カネトシガバナー
2 シンボリクラウン
3 ミツルリュウホウ
4 セイウンスカイ
5 コマンドスズカ
6 レオリュウホウ
7 ダイワスペリアー
8 ボールドエンペラー
9 キングヘイロー
10 シンコウシングラー
11 メジロランバート
12 テイオージャ
13 タヤスメドウ
14 サンプレイス
15 エモシオン
16 エプソムダンディー
17 スペシャルウィーク
18 グリーンプレゼンス

牡馬クラシック最後の舞台にふさわしく絶好の秋晴れの下、菊花賞は良馬場で行われることになった。
1番人気は前走京都新聞杯勝ちの日本ダービー馬スペシャルウィーク。
2番人気は前走京都大賞典勝ちの皐月賞馬のセイウンスカイ。
3番人気は前走京都新聞杯2着のキングヘイロー。
4番人気は前走セントライト記念2着のダイワスペリアー。

98年クラシック戦線は皐月賞、日本ダービーを経て菊花賞に舞台を移してもやはり注目は3強だった。
1番人気には皐月賞、日本ダービーに続いてスペシャルウィークが支持されていた。
しかも単勝1.5倍という圧倒的支持だった。
皐月賞馬セイウンスカイも前走では古馬相手に完勝していたのだが、スペシャルウィークには根強い人気があったのだ。
セイウンスカイは前走京都大賞典の時にゲート入りを嫌がったため、ゲート再審査が行われていた。
もし前哨戦に京都大賞典ではなく1週間後の京都新聞杯を選択していれば菊花賞に間に合わなかったかもしれなかった。
キングヘイローは日本ダービーの後、鞍上交代が持ち上がった。そして神戸新聞杯では岡部騎手が騎乗したのだ。結果は3着。
その後、次走京都新聞杯の時、岡部騎手がマイル戦の超名馬タイキシャトルと共にアメリカ遠征の予定があったため、福永騎手がもう一度チャンスを貰った形になった。
その結果、スペシャルウィークに首差の2着。福永騎手の首がギリギリ繋がったのだ。
ちなみにタイキシャトルのアメリカ遠征は中止になっている。
3番人気であったキングヘイローの単勝オッズは10.3倍、4番人気のダイワスペリアーの単勝オッズが19.3倍。実質2強+1の様相だった。

レース内容

スタートはタヤスメドウ、グリーンプレゼンスの2頭が出遅れた。それ以外はまずまずのスタート。
まずはレオリュウホウとセイウンスカイが先頭争いを始める。
すぐにレオリュウホウが控えてセイウンスカイが先頭に立った。
キングヘイローは先行集団に取り付き、スペシャルウィークは中団に構えた。
1週目のホームストレッチ、セイウンスカイの先頭は変わらず。しかし、京都大賞典のように大きく引き離しはしなかった。
2番手はレオリュウホウ。そこからやや間があいてボールドエンペラー、ダイワスペリアーとダービー上位組が前を行く。

第2コーナーを回って大勢は変わらず、先頭はセイウンスカイ。2番手はレオリュウホウ。
キングヘイローはメジロランバートと共に5番手争い。
スペシャルウィークは中団前目に着けてその前にはエモシオン。
第3コーナーを過ぎてもセイウンスカイは止まらない。
第4コーナーに向けて後続が2番手のレオリュウホウを呑み込もうとするが、その前を悠然とセイウンスカイが逃げに逃げる。

セイウンスカイが逃げ切るのか!
ハククラマ以来の逃げ切りになるのか!!

京都競馬場の長距離レースには昔から一つのジンクスがあった。
「この坂はゆっくりと登りゆっくりと下らなければなりません」
かつてそう実況されたこともある京都名物第3コーナーの坂。
しかし、その坂を常識を破って克服した馬もいないわけではなかった。
ミスターシービーは縦に長く伸びた馬群を向こう正面で外からまるまる20頭坂の上りで捲りきって菊花賞を勝利し三冠を達成した。
ライスシャワー天皇賞・春で第3コーナー手前からの超ロングスパートを仕掛けて強引にスタミナ勝負に持ち込み力で他馬をねじ伏せた。
人気の影に隠れて天皇賞・春を逃げ切ったエリモジョージという馬もいた。
そして今、セイウンスカイが逃げ切りを果たそうとしていた。

最後の直線、後続との差は4馬身差か、5馬身差か、差が縮まらない。

セイウンスカイ先頭だ!
逃げた逃げた逃げた!
セイウンスカイが逃げた!
セイウンスカイが逃げた!!
逃げた逃げた逃げた!

もう直線はセイウンスカイの独走だった。
セイウンスカイの遥か後ろでエモシオンが2番手で粘るところを大本命のスペシャルウィークがようやく交わした所がゴールだった。

逃げ切った逃げ切った!
38年ぶりセイウンスカイ!!


レース結果

1着 セイウンスカイ
2着 スペシャルウィーク
3着 エモシオン
4着 メジロランバート
5着 キングヘイロー
6着 ダイワスペリアー
7着 ボールドエンペラー
8着 カネトシガバナー
9着 レオリュウホウ
10着 グリーンプレゼンス
11着 シンボリクラウン
12着 ミツルリュウホウ
13着 タヤスメドウ
14着 サンプレイス
15着 シンコウシングラー
16着 テイオージャ
17着 エプソムダンディー
取消 コマンドスズカ

払い戻し
単勝:4番 430円(2番人気)
複勝:4番 160円(2番人気) 17番 110円(1番人気) 15番 390円(6番人気)
枠連:2-8 460円(1番人気)  馬連:4-17 510円(1番人気)

勝ったのはセイウンスカイ。勝ち時計は3分2秒2、世界レコードだった。
2着スペシャルウィークとは3馬身半差の完璧な逃げ切り。
1週間前に10月11日の同じ日に同じように逃げ切ったサイレンススズカとは対照的な結果となった。
同じ逃げ馬だったサイレンススズカが力を貸してくれたのか、それともサイレンススズカほどの評価を貰えていなかったことに対しての意地だったのか。
少なくともこの時点での現役最強逃げ馬の称号はセイウンスカイのものだったことは間違いないだろう。

2着のスペシャルウィークは完全敗北だった。セイウンスカイ相手に2度目の敗北。
もうこれ以上同じ馬に負ける訳にはいかないスペシャルウィークと武豊騎手は翌年も続くライバルとの対戦に向けて新たな道を探っていくことになる。

3着のエモシオンは母がオークス馬のアドラーブルという良血馬で以前から注目されていたのだが、クラシック最終戦でようやく華が開いた格好になった。まあ、3着なので開花したとは言い難いかもしれないが、3強の1角を破って複勝圏内に滑り込んだことは称えられるべきものだろう。

人気の最後の1角のキングヘイローは5着に留まってしまった。
鞍上の福永騎手はギリギリでもう一度乗せてもらえることとなった。
これで98年クラシック世代の世代戦は終了となる。そして、この後主役たちにはクラシックに出走出来なかったグラスワンダーエルコンドルパサーなどの外国産馬やメジロブライトなどの古馬との対決が待っているのである。


23年後

セイウンスカイの劇的な逃げから23年後の2021年10月24日第82回菊花賞が開催された。
毎年開催地である京都競馬場が大規模改造工事によって2023年3月まで使えないことから42年ぶりに阪神競馬場が舞台となった。
しかし出走馬は皐月賞を取りダービー僅差2着に敗れたエフフォーリア、そのエフフォーリアを僅差で破りダービー馬となったシャフリヤール
といった有力馬は前者はダービー後から次戦は天皇賞・秋、後者は神戸新聞杯で4着と成績が振るわず出走回避。
1番人気のレッドジェネシスで勝ち鞍が京都新聞杯、2番人気ステラヴェローチェでも直前の神戸新聞杯、皐月賞・ダービー共に3着など
G2こそとってはいるもののG1を取った出走馬はいなかったことから前評判は芳しくなかった。

だがレースは開始直後から同年8月に9歳で夭折したドゥラメンテ産駒、ディープ記念を制し皐月賞で2着だった4番人気のタイトルホルダーが果敢に逃げを選択。
前半1000mをセイウンスカイさながらハイペース、中盤ペースを落としたがディープモンスターの鞍上武豊騎手は23年前と同じでタイトルホルダーがアシをためていることに気付いていた。
だがこの時馬群に飲まれており抜けだすことが出来ず、結局最後までタイトルホルダーを追うことが出来なかった。
事実沈むと思われた終盤再加速し59秒台のペースで逃げ続け、5馬身差をつけて23年ぶりに逃げ馬が菊花賞を制した。
菊花賞で5馬身以上差をつけての勝利は2013年のエピファネイア以来の史上5頭目の快挙でもあった。
ドゥラメンテ産駒としては初のG1勝利、ドゥラメンテにとっては自身が出走できなかった菊花賞を息子が制するという劇的な勝利となった。

この時鞍上を務めたのは23年前セイウンスカイで皐月賞・菊花賞を制した横山典弘騎手の三男として同年に生を受けた横山武史騎手。
横山武史騎手は同年の皐月賞も制しており鞍上こそ違ったが父同様同年に2冠を獲得、これにより皐月賞父子制覇3例目・菊花賞父子制覇4例目の快挙。
レース自体も父がセイウンスカイに騎乗した時と終始同じペースでレースを運び、逃げ切ってみせたことも話題となった。
このように芳しくなかった前評判から一転、様々な快挙と騎手・馬共々親子の縁が非常に多く見ごたえのあるレースとなった。


なんでもいいので久しぶりの快挙を達成したことがある方、追記、修正をお願いします。

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最終更新:2024年04月15日 15:48