郡千景

登録日:2019/12/11 (水) 20:41:20
更新日:2024/09/28 Sat 19:25:56
所要時間:約 7 分で読めます




私は……価値のある存在ですか……?

『郡千景(こおり ちかげ)』とは、『乃木若葉は勇者である』に登場するキャラクターで、四国を守る勇者である。


概要

中学三年生で、四国を守る勇者の一人。好きな食べ物はうどん(後述の理由からインスタントが多い)。
のわゆ本編の勇者達の中では唯一の中学三年生なのだが、先輩らしく振舞うことはなく、年下から敬語を使われることはあまりない。
苗字である「郡(こおり)」を群体の「群(ぐん)」と間違われることもあり、高嶋友奈も初めは呼び方を間違えていたが、
クリスマスの出来事をきっかけにそれが彼女からの呼び名となり、「ぐんちゃん」と愛称で呼ばれるようになった。
(本人曰く、「高嶋さんならいいよ」とのこと)

内気な性格をしていて、趣味をゲームとしている。
他人に対する当たりは強く人見知りの気があるが、本来は相手のことを思いやれる優しい性格の持ち主。
しかし様々な要因が重なった結果、現在のような性格になってしまった。
不倫に耽る母、子供がそのまま大人になった責任感の欠片もない父という最悪な両親の元で育ち*1、その家庭環境に目を付けられて周囲から陰湿ないじめを受けてしまう。
机に罵詈雑言を書かれたり、仲間外れにされ陰口をたたかれるのは日常茶飯事*2
階段から突き落とされ、ハサミで体を傷つけられるということもあった。
趣味であるゲームは、そんな過酷な環境から自分を隔絶して守るために始めた事であり、
料理が出来ないのもガスの元栓が閉じられてコンロに火が付かないことに気付けなかったため、自炊が出来なかったのが原因。

・勇者としての能力

私が、全部倒すわ…!

変身後のイメージカラーはあずき色。勇者装束のモチーフは彼岸花。
武器は大型の処刑鎌「大葉刈」。
初陣では恐怖心のあまり動けなかったが、高嶋の存在や勇者になったことを称賛されるようになった事で修練に打ち込んだ結果、若葉に並ぶ実力を身に着けている。

《千景の精霊》
  • 七人御先
神樹内の記憶にアクセスして自身に直接精霊を宿らせる勇者たちの切り札。
千景が宿らせるのは四国に伝わる怨霊の一種である七人御先。切り札として憑依させる事で発動する能力は分身。
千景が七人に分身、その圧倒的な手数でバーテックスを殲滅する。
さらにやられても分身が1体でも無事なら何度でも復活するという非常に強力な特性を備えている。
ただし分身の数は七体が上限。それ以上増えることも減ることもない。


以下、本編のネタバレ
+ 《上巻》
(やっぱり……帰ってくるんじゃなかった……)

第四話。高知県にある生まれ故郷に一時帰郷。
母はバーテックスの襲撃によって天空恐怖症候群という精神的な病を患い、父はゴミを家に放り出すだけでなにもしようともしない……。
「帰ってくるのではなかった」と憂鬱に沈む千景だが、今まで自分を虐げてきた集落の人々は手のひらを返して彼女を賞賛。
誰からも愛されず、必要とされずただ虐げられていた自分が“勇者”になることによって存在価値を得た。

私の武器に宿る霊力は“大葉刈”……死ぬには相応しい武器でしょう……?

その事が千景の心に火を着けたのか、以降はバーテックスとの戦いに一層力を注ぐようになる。
七人同時に葬らなければならない精霊の力を利用し、進化体となったバーテックスを斬殺したりと、着実に戦果を上げていく。


あれ、泣いてる? 何か悪いこと言っちゃったかな!? ごめん!

ううん…違うの。これは……
ありがとう……高嶋さん


後日、若葉に追い付くべく一人黙々と鍛錬をする千景は、初めての友達である高嶋の「この前の戦い、ぐんちゃんが一番活躍してたと思うな」という暖かい言葉を聞いて不意に涙を流す。
それは、虐げられて出た涙ではなく、嬉しさから溢れた涙だった。

あなたに……私たちのリーダーとしての資格なんて、ない!
あなたが戦うことで、高嶋さんは傷ついた……きっと、これからも同じことが起こる! だったら……もう――

第七話。戦場において若葉が突出し、それを救援しようと高嶋が傷つき意識不明の重体に陥った。
若葉の暴走同然の突出により親友が傷つき倒れた。その事実に激昂した千景は激しく若葉を責め立てる。
杏や球子には言い過ぎと釘を刺されたが、結果的に千景の激しい糾弾がなければ若葉は考えを改める切っ掛けをつかめず、四国の勇者達は全滅していたかもしれない。


後は頼んだ、千景
ゆっくり……休んでなさい……。さて……鏖殺してあげるわ……


今まで復讐のためだけに戦っていた若葉は変わり、仲間である千景に背中を預け休息するべく後衛に下がる。
後の世に「丸亀城の戦い」と呼ばれる総攻撃を耐え抜いた千景たちは、生命反応が確認された南方と北方に向かうべく四国を出て旅立つ。
まるで部活の合宿旅行みたいだとはしゃぐ球子を余所に、千景は以前とは違い刺々しい雰囲気を纏い、廃墟と化した梅田駅の地下へと歩を進める。
そこには人骨が大量に散乱した地獄のような光景と、残酷な末路を遂げてしまった薄幸な少女が書き記した一冊のノートがあった。

+ 《下巻》
梅田の地下街にて少女が遂げた残酷な死は勇者たちに深い衝撃を与えた。
あんな風になりたくない。再びまた最底辺へと戻りたくない。生き残ってやるんだ、と決意を新たにする千景。
紆余曲折の末諏訪にたどり着くも、あるのは廃墟となった建物と荒れ果てた大地だけ……。


ここも……同じ……全部、壊されて……!

ううん、全部じゃない……これが残ってた。
白鳥さんから引き継いだバトンだね、きっと……

全部壊されたと悲嘆に暮れる千景だが、何も残っていないわけではなかった。
勇者・白鳥歌野から託されたバトンを受け取った一行だったが、四国が窮地に立たされていると告げられ、調査を打ち切り四国へ舞い戻る。

千景さんには、別の命令にします。命令は、これを受け取ってください

……命令なら、仕方ないわね……

つかの間の休息の際、模擬戦に負けた千景は、杏の命令で卒業証書授を授与される。
常に前線で戦っていたので忘れていたのだが、千景は中学三年――卒業してもいい学級だったのだ。

十三話。蠍座をモチーフにしたバーテックス・スコーピオンとの戦いで球子と杏は壮絶な戦死を遂げる。
二人を喪って以降、苦戦が強いられるようになると人々の勇者に対する評価は冷たく残酷なものとなっていった。
友人である高嶋は、禁忌とされた精霊・酒呑童子の降霊によるダメージで面会謝絶となり千景は心の拠り所を失い、次第に人間不信に陥っていく……。
そんな中、大社から「家族を丸亀に移住させる」事を伝えに実家に戻った千景だが、小さな田舎村という閉鎖的な環境。
戦争状態で不安と不満を抱き、強いストレスに晒された住人たち。そして元々から嫌われ者の郡家と、『四国と人々を守る』という役割を持ちながら、それを果たせない勇者の存在、と悪条件が揃い、*3度重なる糾弾を受け続け
耐えられなくなった父親から罵詈雑言を浴びせられてしまう。

毎日毎日、うちの家に投げ込まれていくんだ!紙だけじゃない、そこに書いてあることはな、陰口でみんなが言っていることだ!
村を歩いているだけで蔑まれ、中傷されて……ああ、もうこんな村に住んでいられるか!
千景、お前のせいだぞ!勇者のくせに負けるから!人を守れないから!クズが!

……!


そんな中、千景の目に一つの文章が飛び込んできた。


土居と伊予島は無能。税金返せ。勇者なんて無価値!

……球子と杏はこんなことを言われる為に戦ってきたのか?
心身を削り取るように戦って、最後には命を落として―――

その報いが…これ……?
ふざけてる
無価値なのは―――
お前たちだ

『勇者の犠牲の下に暮らしているくせに私達のおかげで生きている寄生虫のくせに
今までさんざん頼っておいて状況が変わったら手のひら返して許せない許せない許せない許せない
なぜ褒めてくれないのなぜ讃えてくれないのなぜ愛してくれないの価値を認めてくれないなら愛してくれないなら―――)


……殺してやる」


あってはならないものを目にした千景は激昂し、家を飛び出した。
どうにも好きになれなかった球子と杏の二人だったが、それでも千景にとって幾多の死闘を潜り抜けたかけがえのない戦友だったのだ。
戦友二人を槍玉にあげられ勇者の価値を否定されたことで、千景の人間不信は頂点に達した。

「自分が特権階級だとでも思ってんじゃないの、役立たずのくせに!」
「こんなとこにいないで、さっさと化け物と戦えよ!やっぱてめえは、勇者になっても昔のままだな、愚図!」
「あんたら勇者が負けるから、被害者が出てるのよ!」

家を飛び出した先にいたかつてのいじめっ子からも暴言を浴びせられたことでついに千景は勇者に変身。
罵ってきたいじめっ子達を大葉刈で甚振るという凶行に出てしまう。

土居さんと伊予島さんは……命を落としてまで、絶望的な強さの化け物に立ち向かったわ……
私も……怖かったけど、頑張って戦った……
私たちを蔑むなら、あなたも……自分より圧倒的に強い者と、戦ってみなさい……!

戦いなさい……!……戦え……!私たちの苦しみを、知れ……!

すんでのところで若葉が止めに入り、「勇者が一般人を殺害する」事態は避けられたが、この一件を問題視した大社は千景の勇者としての資格を一時的に剥奪。
故郷での謹慎処分を言い渡すが、それをきっかけに千景の心の闇はさらに燻っていく…。


『乃木さんは敵よ』

ますます精神に異常をきたした千景は自身の幻影に「若葉は敵である」とかどわかされ、元から羨望の対象だった若葉に深く嫉妬すると共に憎悪の念を抱く。
面会謝絶の解けた高嶋と親し気に語らう姿を見て、自身の居場所を奪われたと誤解した千景は、「勇者が自分だけになれば、みんなは自分に頼るしかなくなる」と若葉に宣戦布告。

私が……あなたの立場に、成り代わる……!
お前が……お前さえいなければ……!!私が愛されていたのに……!!

凶刃を振るい若葉を追い詰めるも、あわやと言う所で神樹の力によって勇者の資格を完全に剥奪され、変身を解除されてしまう。

(私は……どうしてこんなふうに、できなかったんだろう……)

そんな千景を守るべく刃を振るう若葉。
殺されそうになったのにも関わらず、仲間と言う理由だけで自分を助けた若葉を見て千景は自身の心の弱さを自覚。
精霊の影響もあったかもしれない。しかし精霊なら若葉や高嶋、戦死した球子と杏も使っていた。
不幸な目にあったからかもしれない。だが若葉も不幸であり――否、この時代に生まれた誰も彼もが不幸なのだ。

高嶋さんに……伝えて……今までずっと、ありがとうって
乃木さん……私は……あなたのことが嫌いよ……
でも、嫌いなのと同じくらい……あなたに、憧れて……
あなたのことが、好きだったわ……

一瞬のスキを突いたバーテックスの攻撃から若葉をかばい、致命傷を負った千景は、
もはや助からないと悟りながら口を動かし、高嶋への感謝と、若葉への憧れの言葉を最後に微笑むようにこと切れた。

彼女の部屋を訪れた若葉たちは千景自身によって荒らされ破壊され尽くした部屋に驚く。
……しかし、一つだけ壊されていないものを発見した。
それは、若葉たちから送られた手作りの卒業証書だった――

郡千景という勇者がいたことを、
私は忘れない。
彼女は最後に確かに、自分に勝ったのだ

花結いのきらめき

「花結いのきらめき」にも登場。広い範囲を超速で薙ぎ払えるが、その分鈍足・紙装甲と非常にピーキーなキャラクター。
運用を考えなければならないプレイアブルキャラだったが、あるイベントで評価が一転。
大量の敵を一網打尽に出来ると評価が見直されつつある。
本編と違って余裕があり、他者がありのままの自分を認めてくれることもあってか当たりは柔らかくなっていて、本来の優しさがいかんなく発揮されている。
わすゆ組の須美、銀、園子(小)にも自発的に声をかけ面倒を見るようにもなっており、正に頼れるお姉さん。
防人の一人であり、色々な事情を経て二重人格となった山伏しずく(シズク)には積極的に声をかけ、二人がゆゆゆい世界に溶け込めるよう配慮したりと、細かい心遣いを見せた事も。

+ 《その後の千景》
千景は「郡千景という勇者がいたことを忘れないでほしい」と願い、
若葉もそれに応え「郡千景はまぎれもない勇者だった」と、大社が決めた演説の台詞をかなぐり捨てて語った。
しかし、一般人に手をかけようとした事と、若葉を殺そうとした暴走行為が問題視され、
ひなたがこれを擁護してしまうと今後の活動に支障をきたす為、郡千景という勇者の存在は歴史から抹消されてしまう。
ちなみに千景の遺体は、大社に引き取られて以降そのまま行方不明となっており、父は重症化した母を捨てて夜逃げ。母は病院に引き取られた。
約300年後、防人である楠芽吹たちが住まうゴールドタワーは「千景殿(せんけいでん)」と呼称されており、今後その呼び名が正式なものとなるように上里家が働きかけている。
ゴールドタワーもとい千景殿にはまんま過ぎる「千景砲」という霊的な砲撃機能が付け加えられており、星屑を薙ぎ払い、我らが天使・国土亜弥ちゃんが五穀化するのを防いだ。
また歴代勇者・巫女達の慰霊碑には若葉達の戦いのモニュメントがあり、やはりそこにも千景の姿は無い・・・
のだが、4人の間に不自然に空いたスペースがあり、そこに「C」と見える書き込みがある。Cシャドウさん大勝利
一般の歴史からは抹消されてしまったが、バーテックスと戦った勇者の一人である事には間違いなく、
二期最終話に於いて歴代勇者達が集合する際には英霊として現れ、結城友奈を生贄にしようとする神樹に働きかけ、人の時代が再来するきっかけを築いた。

勇者史外典・『上里ひなたは巫女である』

千景を見出した巫女、花本美佳により遺体が保護されていたことが判明
葬儀が実家で行われると知った美佳は、高知の村落に急行。
水恐怖症を勇気により乗り切り、郡家に踏み込んだ美佳だったが、千景の遺体は袋に包まれたまま部屋に捨て置かれており、粗雑な扱いを受けていた。
その扱いに憤る美佳に言いがかりをつけてきたクソ親父父親を酒瓶で殴って気絶させ、千景の遺体を奪還した。


私はいつまでも郡様の味方です。永遠にそれは変わりません──

その後。自分の実家で葬儀を執り行い、英霊である千景に安らかな眠りを与える。
ひなたに大社という杜撰で未熟な組織から若葉を守るには乗っ取る必要があると伝え、
「千景の遺体を奪わない事」「どんな形でもいいから千景が生きた証を残す事」を条件に彼女に協力を約束。大赦へと名を変えた組織へと復帰した。
美佳がとった行動は一見すれば幼稚で傲慢な父親から千景の尊厳を守ったことになるが、その反面。若葉と高嶋が彼女を見送れなかった要因ともなっているため、そこで評価が分かれるところ。


人物関係


どうにも好きになれない人・その1。 いつも正しくて強くて、自分に自信があって、みんなの中心にいる正反対の存在*4
それ故に若葉は千景が暴走した理由を精霊の影響だけだと決めつけ、理解できなかった。しかし、同時に憧れ、千景がなりたい自分を、そのまま体現した存在でもあった。

  • 高嶋友奈
心の許した唯一の友達。後半で関われず、本当の彼女を知る事ができなかった。

  • 土居球子
どうにも好きになれない人・その2。押しが強く空気が読めないため苦手意識を持っており、自作ゲームでの扱いは敵キャラだった*5
ただ一緒にゲームで遊ぶなど、後半であってはならない言葉に激昂したり、仲間意識がまったくない訳ではない。

  • 伊予島杏
絡みこそ少ないが、卒業証書授与の命令に従い、それを大切に保管するなど関係性は意外にも良好。
ゆゆゆいのバレンタインでは杏にチョコを渡している。

  • 花本美佳
千景を見出した巫女。
従来の祝詞を諳んじて叱られたことがあり、以降、大社を歪んだ組織。大社の教える信仰体系を“神樹教”と呼び快く思っていない。

余談

そのキャラクター性からか人気は高く、彼女関連の創作は主人公である若葉、友奈ちゃんと高奈ちゃんを差し置いて非常に多い。

(最近始めた程度のにわかで……私のアカウント――『Cシャドウ』と共同で追記・修正なんて……格の違いを見せつけてあげるわ……!)


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  • 村社会の被害者
最終更新:2024年09月28日 19:25

*1 誕生日を祝われた事もない

*2 同年代のクラスメイトはおろか、村の大人からも「あばずれの子」などと迫害されるほどであった

*3 彼女を見出した巫女である美佳は、千景の実家の状況を大社に伝えたが、「村ぐるみのいじめなんて、大昔ならともかく、現代社会で起こるわけない」と信じてもらえなかった

*4 生まれた環境や育ち方も正反対

*5 倒せば、力を認め、仲間になってくれるが