SCP-4610

登録日:2019/12/16 Mon 22:18:42
更新日:2025/04/06 Sun 13:21:40
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SCP-4610はシェアード・ワールド『SCP Foundation』に登場するオブジェクトである。
オブジェクトクラスはSafe。
項目名は『cloud compute by dado/くらうど こんぴゅーた by dado』。


概要

最初に説明してしまうと、クリーニング店兼日焼けサロン業を営むdadoが生み出したクラウド・コンピューティングシステムである。
クリーニング店とも日焼けサロンとも無縁すぎるものをお出ししてきたdadoであるが、
dadoらしいすばらしい勘違いぶりが光るオブジェクトとなっている。

クラウド・コンピューティングって?

コンピュータを使ってデータを保存をしたり、ゲームをしたりといった「コンピュータの資源」を利用するには、
ストレージ*1といったハードウェアを購入したり、ソフトウェアのインストールが必要になるなど、利用するための環境づくりが必要となる。
全て自分が管理しているので細かいカスタムが利くものの、導入に時間がかかり出先で使えないなどの不便が生じる。

そこでそういったサービスの利用に必要な環境を1箇所に集約した上でネット経由で利用するようにして、
ネット回線さえあればそういった手間をかけずに利用できるようにしたものがクラウドコンピューティングである。

例えばファイル保存であれば、ネット回線経由でネットの向こう側にあるファイルサーバーへと保存・取出を行うといった形態となる。
ファイル自体はネットの向こう側のファイルサーバにあるため、保存したコンピュータのストレージ容量は当然減らないし、ネット回線さえあればスマートフォンなど別の端末から取り出すといったこともできる。

クラウドという名前はIT業界でネットワークの向こう側の喩えとして「雲」が使われてたことが由来とされる。
さて、それを踏まえてこのSCPの詳細を見ていこう。

SCP-4610の概要

まず、プログラムは未知の言語で書かれており、.dadoなる拡張子のファイルとなっていてそれが1枚のZip100に収められている。
このZip100というのはアメリカでは流行ったフロッピーディスクの上位互換的なメディアである。
形も似ているものの互換性自体はなく、しかし保存できる容量とアクセス速度の速さから
米国ではフロッピーディスクより流行った。日本ではCDのような光メディアにおされて対して流行らなかったが。
……流石にフロッピーディスクの解説は要らないよね?

これを実行できる環境であれば、使用しているOSは問わないらしく、
おそらくWindowsでもLinuxでもBSDでもSolarisでも動くものと見られる。
そしてこれを実行すると、半径5マイル以内にある雲の中で、一番近くにある雲に似た形のディスプレイが表示される。
ちなみに、垂直方向にでかい雲より平行方向にでかい雲の方が選ばれやすいようだ。
さらに、ネットワーク接続用としてどんな部品を選ぼうが雲に接続するらしく、原理は不明。
ソースも不明ならば原理も不明、dadoでしかできないプロプライエタリ・ソフトウェアというわけだ。
これはリチャード・ストールマンも激おこ不可避。

そしてこの雲を通して、近隣のコンピュータとデータをやりとりできる。
上記の通りクラウド・コンピューティングのクラウドは「ネットの向こう側」を雲に喩えているだけなのだが、
コイツは文字通りクラウド(・・・・)データをやり取りするというわけである。

これでやり取り可能なのはテキストファイル(.txt, .rtf, .doc)と画像ファイル(.bmp, .jpg, .gif)だけであり、
それ以外のファイルはたとえどれだけ小さくても『ふぁいる おおきい すぎる!』と表示されて送受信できない。
そしてファイルはかねがね1KBあたり5秒で通信可能。
なお、ここでいうファイルサイズはファイルそのもののデカさではなく、ファイル名のサイズを参照しているらしい。
つまり、4Kの画像に「a.jpg」と付けたものと、マリオドット絵に「GB『スーパーマリオランド』時代の配管工の走っている差分.gif」と付けたものだと後者のほうが重いという判定になるらしい。
なおこのとき通信に使うのは、最初に接続した雲である。
1から10まで不可解な挙動である*2

安定と信頼のAmazon Prime

このZip100はある日、いきなり何者かによって財団の私書箱にAmazon Prime経由で届けられたものである。
これが財団に送り付けられた理由も、送り付けた人も、元々の起源もよく分かっていない。
唯一分かっているのは、これを制作・販売したのはdadoだということだけである。
なんで分かるかって?一緒に添付されていた手紙がdadoからのものだったからだ。
筆跡鑑定からも、これは本人だろうと確証を得られるレベルである。

はろー
わたし dado です
すばらしい よい ぎふと ながい じかん dado さぽーたー へ!
dado すこし あいだ おおい くるしい うける しました、しかし dado しほんしゅぎ ひーろー です。dado りすとらくちゃ うける した だから dado おくる します よい ぎふと あなた とか よい おきゃくさま へ。
これ ひみつ dado せいひん おみせ だす しない。あなた ため だけ。なぜなら あなた dado しんじる、dado あなた しんじる は>い
くらうど こんぴゅーた くも こうこく として つかう てきせい くらうど こんぴゅーた。にせ こうこく や うま ため ちがう。
つかう ための せつめいしょ:
1 でぃすく いれる します こんぴゅーた の すろっとに。すろっと はいってる ただしい を かくにん する します。
2 「くらうど.dado」 ひらく はい
3 あなたの こんぴゅーた くらうど に あいてむ どらっぐ。これで くもに あいてむ はいる そして ほかの いちりゅう dado せいひん つかう こんぴゅーた ふぁいる あくせす できる!
4 あらし あめの とき これ つかう すると おー のー ふぁいる ぬれる そして きえる だから つかう しない。
あらためて かんしゃ よい dado おきゃくさま へ
dado

要約すると
  • 長い時間dadoをサポートしてくれた貴方に素晴らしいプレゼントを送るよ。
  • dadoは少しの間、とっても苦しい状態にあったけど、事業を再構築したよ。
  • これは非売品で、貴方とか良いお客さんとかのdadoが信じた人にしか送ってないよ。
  • このクラウドコンピュータは雲を広告として使う、適正なクラウド(・・・・)コンピュータだよ。
    • 偽広告じゃないし馬*3でもないよ。
  • 使い方は以下の通りだよ。
    • 1 コンピューターのスロットにディスクを入れてね。スロットに正しく入ったか確認してね。
    • 2 「くらうど.dado」をひらいてね
    • 3 貴方のコンピュータークラウド(・・・・)に送りたいアイテムを入れてね。クラウド(・・・・)にアイテムが入るから他のdado製品からアクセスできるよ。
    • 4 嵐や雨の日はファイルが濡れて消えるから使わないでね。
といった具合である。

しかしdado本人が送り付けてきた線は限りなく薄い。まずこれは非売品であるとdadoは書いている。
また、財団はdadoのビジネスに度々ちょっかいを入れようとしており、dadoはそれらを快く思っていない。
そして、これが罠というわけでもなく添付文書の指示通りに使えば、
まあちゃんとクラウド・コンピューティングシステムとして使えることは事実である。使いたいかは別だが。
良い顧客のために制作したというのも嘘ではないんだろう。だとすると、ますます財団に送りつける理由もない。

インシデント

そんなSCP-4610であるが、このオブジェクトの実験中に意図せずして積乱雲が実験サイト付近を通過した。
……dadoが雨の日に使うなと書いている以上、当然インシデントが発生?
すぐに停電が発生し、サイトの他の場所にはその後すぐに電力供給がなされたが、
実験室だけ供給されなかった。降りしきる雨、そしてその時アップロードしていた文章が書かれた約20000枚の紙。

財団はこの紙の起源を掴みかねている。

追記・修正はパソコンを雲に接続してからお願いします。



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最終更新:2025年04月06日 13:21

*1 ハードディスクドライブなど

*2 財団の航空監視とドローンによる調査では、雲に目に見えた変化は起きていない。

*3 Cloud Computingという競走馬が存在する。