マッコウクジラ

登録日:2020/01/19 Sun 00:34:00
更新日:2025/04/10 Thu 21:25:15
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マッコウクジラとはマッコウクジラ科マッコウクジラ属に属するクジラの一種である。

漢字表記は抹香鯨であり、胃袋から極稀に採取される龍涎香と呼ばれる香料の材料にもなる塊から命名されている。
英語ではsperm whaleと表記される。直訳すると「精液クジラ」という意味であるが、後述する鯨蝋が精液を思わせる見た目だった事に由来。

概要

ハクジラどころか歯のある動物の中では最大の大きさを誇る動物であり、
平均して10m程だがオスの大型個体になると18mにもなると言われ、非公式ではあるが21mもの個体も存在するという。
哺乳類の中では最も深い場所へ潜れることでも知られており、公式には3000mが限界とされるが、
近年の研究では更に深い水深まで潜れるとも言われているとか。

ハクジラ含めて他のクジラとは見間違えることはないであろう丸みを帯びた巨大な頭を持っている。
ここには鯨蝋と呼ばれる脳油がメロンと呼ばれる器官に詰まっている。

何故ここまで頭部が大きいのかに関しては未だ結論が出ていないのだが、有力視されているのが、
「深海へ潜るための適応」および「深海での餌の散策のため」というものである。

その仮説に則れば、彼らの祖先となった種はシャチ含めた他のハクジラとの生存競争に敗れたために、
ほかの種とエサの奪い合いをしなくて済む、深い水深での餌の散策を選択。
やがて、そうした深海でも活動できるように進化していった結果が、あの巨大な頭部を持つ形質となったということである。

他の哺乳類では類を見ないほどの深海に潜れるのはこの頭部に秘密が隠されているようで、
海水を鼻から吸い込むことで脳油を冷やし、比重を調整することで急速で潜る事ができるようになっている他、
肺の中の空気を空にしても全身の筋肉に酸素を蓄えることができるために圧力の影響を受けず、
1時間以上呼吸をせずに深海でも活動できると言われている。
ちなみに浮上するときは潜るときとは逆に脳に血流を集中させることで脳油を温め、再び脳油の比重を調整して急浮上するようだ。
皮膚も非常に硬いらしく、小型船が激突すると穴を開けられてしまったり、下手をすると大破してしまうことすらあるという。

また、これだけ巨大な頭部を持っているためか超音波も他のクジラより桁違いの強さであり、収束して放てば文字通り武器になり、
これで主食であるダイオウイカやダイオウホウズキイカ等の巨大イカや魚を仕留めたり麻痺している間に捕食しているとも推測される。
よく動物図鑑などでダイオウイカと戦っているイラストを見るので死闘になると思われがちだが、
実際は上記の超音波を用いてほぼ一方的に捕食してしまうとか。


メスは、主に群れを形成して生活している。
オスは繁殖期を除いて基本は単独行動だが、仲間思いであり、メスや子供がシャチやサメ等に襲われた際に発するSOS信号の超音波を感じ取ると
どこからともなく現れては敵を撃退するのだという。
実際に日本近海でシャチの群れに襲われた子連れのメスを助けるためにオスが駆けつけ、
シャチの群れを蹴散らした後にしばらく付き添い、シャチがいなくなったのを見計らったのか再び去っていったというケースが観察されている。
後述するモビーディックのモチーフとなった白いマッコウクジラ、モカ・ディックも
子を守るために捕鯨船を相手取り、大暴れした末に仕留められてしまったが、その際に捕鯨船を沈めているという。

尤も、魚食やイカ食のシャチはマッコウクジラにとっては無害な相手…どころか、シャチの群れの一員に加わり一緒に狩りをしていたマッコウクジラの観察例もある。

天敵

我々人間は勿論だが、野生動物に限定した場合マッコウクジラを喰えるのは海のハンターシャチくらい。
もっともシャチにとってマッコウクジラは舌以外は食べやすい部分がなく、
オスより非力なメスや子供を襲ったところでオスに助けに来られるリスクすらある。
しかも年を取ったオスは気性が荒く、シャチの群れを一匹で蹴散らすこともある上にシャチを殺すこともあるので、
そこまでのリスクを負ってまで狩ることはしない。
なので襲うとしても相当な空腹の時などやむを得ない場合位である。

利用

かつては鯨蝋と呼ばれる脳油や高値の付く龍涎香を目的として盛んに捕鯨がされており、
あのペリー率いるアメリカ艦隊が日本に開国を迫ったのも実はマッコウクジラが
生息していることを知っていたためであるとも言われている。
にはワックス成分が多く含まれており、そのまま食べると下痢などの症状に見舞われるので、生食には向かない。
しかしそれは裏を返せばちゃんと処理さえすれば美味しく食べられるということでもあり、
実際に油を搾った残りカスをコロという食べ物に加工したり、大和煮などに加工して食卓に出回ることもないわけではない。
ハクジラだからなのかヒゲクジラであるミンククジラよりクセが強く、人を選ぶ上に味も劣るとされた一方で、
人によってはマッコウクジラの肉が一番美味かったという声もあるそうだ。
また、インドネシアのロンブレン島では先住民によってマッコウクジラの捕鯨が行われている。

類似種

マッコウクジラ科に属するのはマッコウクジラのみだが似た種類としてコマッコウという種類が存在する。
大きさも10mを軽く超えるマッコウクジラに対してこちらは大きくても3.5m程度だが名前の通りマッコウクジラを小さくしたような形。
ただしマッコウクジラ以上に稀な種類のため研究がほとんど進んでいない。

マッコウクジラをモチーフにしたもの

他に類を見ない巨大な頭部を持った特徴的な外見を持つことや、海におけるシャチに次ぐ上位捕食者であるためか、モチーフとしてはそこそこ使われている。
キャラ名等 作品名等 備考
ホエールキング ゾイド
ホエーモン デジタルモンスター
タイダル・マッコィーン ロックマンX5
グレートシング ダライアスシリーズ
伊佐奈 逢魔ヶ刻動物園
一郎彦 バケモノの子
真っ向クジラ ビックリマン2000
キャプテン・マッコウ キン肉マンⅡ世~オール超人大進撃~
高橋舜 テラフォーマーズ
クジラ怪人 仮面ライダーBLACK
テュポーン 半熟英雄シリーズ
白鯨(モビーディック) 魁!男塾

余談

ハーマン・メルヴィルの小説「白鯨」に登場する巨大な白いクジラ、モビーディックもこの種類。

モビーディックのモチーフは実在した白いマッコウクジラのモカ・ディックであり、
実際に色も白かったと言われているがアルビノや白変種ではなく歴戦を生き抜き、
全身が傷痕だらけになった結果そうなった個体だったとされる。



追記・修正は深海まで潜ってからお願いします。

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最終更新:2025年04月10日 21:25