シャチ(鯱)

登録日:2010/01/27 Wed 09:54:53
更新日:2021/05/11 Tue 18:25:08
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シャチ(鯱、学名:Orcinus orca)は、クジラ目ハクジラ亜目マイルカ科シャチ属に属するハクジラの一種。

概要

体長5m~
体重3t~
大型の個体は10m近く、10t弱にもなる。
寿命は30年~50年ほど。長寿の個体はヒトとほぼ同じくらいまで生きる。
冷水を好み北の海を主な居住地とするクジラ類としては適応能力に非常に優れた生物で、太平洋・大西洋の他地中海・アラビア海他暖かい海など世界各地の海に棲む。
地球で最も生息域が広い哺乳類と称する学者もいるほどだ。

サカマタ(逆叉)ともいわれる。
一部の学名でもあるオルカを使う研究者もいる。
学名はOrcinus:オルクス(ローマ神話におけるハデス)に属する=冥界の、orca:クジラや巨大な魚、の意味。
「冥界に住まう大クジラ」てな感じ。よくorcaは魔物の意とされて訳される。出典は不明。
骨格が下手な海生爬虫類より獰猛と一部で評判。

クジラやイルカと同じく、海に生息する哺乳類。
最近の学術論文では食生によりホエールイーター、ママルイーター、フィッシュイーターの三つに細分化される事もある。

フィッシュイーターには、他の哺乳類を襲わずにむしろ一緒に行動したりする事もある。マッコウクジラを群れの一員として受け入れていた例も存在する。

なお、例えばクジラやイルカは、ママルイーター (ホエールイーターも?)のシャチたちを音波で判別できるらしい。

遺伝子を調べると地域差が大きく、交わす言語(超音波を用いた意思伝達)や見た目も居住地域によってかなり異なるらしいことが確認されている。

白黒パンダな可愛らしい模様で、水族館では大人気の「賢い生き物」。
独特で愛らしい容姿をしており、コミカルでユーモラスな人気者というイメージがあるが、野生のシャチは恐るべきハンターである

海の食物連鎖では、子供や弱った個体などでない限りは敵となる捕食者がいない。
歯クジラ類ではマッコウクジラに次ぐ巨体と海棲哺乳類では最速の速度(=交戦の選択が出来る)、高い知能、更には群れによる連携戦術を兼ね備える為、大型のクジラ類にとってすら危険な捕食者となり得る。

動物番組では、浅瀬まで来てアシカの類いをパクリとやるシーンがよく放送される。
自身よりも巨大なクジラ達を攻撃することもあり、史上最大の動物であるシロナガスクジラをも仕留める事が有るが、喧嘩慣れして栄養・健康状態が良好な大型クジラの成体が相手だと集団で襲っても蹴散らされることも。
特に、喧嘩慣れしたザトウクジラの群れや歴戦のマッコウクジラの雄はシャチの群れ相手でも真っ向から互角以上に渡り合える上に、
シャチに襲われている同族やザトウクジラに至っては他種のSOS信号をキャッチして助太刀に現れる事すらあるので、シャチにとっては厄介な強敵である。
そのため、ホエールイーターのシャチは子連れで自由に動きが取れない母親や、餌場に向かう途中の飢えた個体を標的にする場合が多い。

陸生哺乳類最大の肉食獣ホッキョクグマを貪り食うことすらある。
その為「Killer Whale」の異名をつけられている。
日本にはこんな昔話も伝わっている。

昔々、クジラは山で暮らしていたそうじゃ。
何せあんなに大きいからの、山の動物は片っ端から食われておったのじゃ。
それを見かねた神様はの、海でいじめられていた動物に目を付けたのじゃ。
その動物は動きが鈍くて、のろのろと動く上毒を持ち誰も食わんような海蛇しか食えずいつもひもじい思いをしておった。
じゃから神様は蛇がたくさんおる山にその動物を送り、逆にみんなから嫌われていたクジラを海に追放したのじゃ。
その山に行った動物は今、イノシシと呼ばれとるんじゃよ。
そして、クジラが海で暴れんように、神様は強くて怖い番人を作ったんじゃ。
その番人は、シャチという名前を与えられたのじゃ。
今、時々クジラが浜辺に流れ着いておるのは、シャチに追われることのない大昔の事を思い出しておるからなんじゃ。


このほか、シャチは大型で獰猛なホホジロザメをも臆することなく攻撃し捕食する事もある。もう何なんだコイツらの食欲…。
ちなみに、ホホジロザメは軟骨魚という生態もあって実は海ではそこまで速くも強くもなく*1、シャチにとっては手強いどころかむしろ殺しやすい相手であり、
ひっくり返して擬死状態にさせ、抵抗も許さずに殺すという容赦のない狩り方をするため、ホホジロザメにとっては天敵と言っても過言ではない。
特に子連れのシャチはメスですら「子供が襲われるとマズいから念のために殺しておくか」とホホジロザメを瞬殺してそのまま捨ててしまった例すら観察されている。
因みに大柄なホホジロザメでも全長6m、体重1.9t、最高速度35㎞/h程度に対して、一般的なシャチのメスは全長5m、体重3t、最高速度70㎞/h程度で骨格強度も遥かに上。
体重が1.5倍、速度が2倍も違えば、突撃時の破壊力は6倍も開くので、とてもホホジロザメが太刀打ち出来る相手ではない。
そのためか、例え上質な餌場であってもシャチがいる海域にはホホジロザメは近付かないという。


そして、シャチが獰猛と言われている由縁の一つが、狩りの方法である。
獅子は兎を駆るにも全力を尽くすというが、シャチは全力で狩りは行わない。そう、遊びながら狩りを行うのだ。

ただ獲物を狩るだけでは楽しくないという理由でアザラシ等の獲物を尾ヒレで吹っ飛ばして海面に叩き突けたり噛んで放り投げたりするのだ。
その姿はまるで子供が無邪気に玩具で遊んでいる様である。


さらにシャチはその優れた頭脳を使った狩りも行う。

魚を狩る際に、物凄い勢いで尻尾を振り、強烈な衝撃波で魚を気絶させるのだ。
そして気絶した魚を悠々と食すのである。

他にも会話に使う音波に殺傷力を持つ指向性を与えてぶつけるなど、テクニカルなことをする個体群もいる。

飼育されている個体がエサの魚を囮に使って寄ってきた海鳥を捕食した事例もある。
まさにハンター。

時折流された人間を餌となるアザラシ等と間違えて寄ってくることがある。
しかし人間と気付くと華麗にスルー。


「雑魚に用はない」


まさに王者の風格。


実は人間を襲うと逆襲される事を理解していると言われている。それらを踏まえて人間はスルーしているのだろうと思われる。
という説もあるが、ただ単に人間を喰う機会が少ないことや彼らが非常に偏食、言い換えるとグルメな連中ということもあるのかもしれない。
グルメ説を裏付ける話として、クジラ喰いやホオジロザメ喰いの個体群は舌や口のあたりや内臓の一部を食べたらもう食べないらしく、食べ残して去るらしい。
厳しい自然の中で偏食できるほどの余裕を持てる力の持ち主という顕れである。


その容姿を遠目に見るとまさに「単発ジェット戦闘機」である。


なお、人間社会でも水族館のショーでもおなじみ。
それを題材にした映画「フリー・ウィリー」で、その知名度をさらにアップ。
ただ、この作品では獰猛な面も描いていたので、ある意味正しい姿を伝えることになったと言えるだろう。

では、水族館等でよく見るシャチのショーはどうやって行っているのか。

それは上述した狩りの習性を上手く用いているのだ。
調教せずとも、シャチのありのままの本能を利用しているだけでショーができる……のだが、故に油断すると飼育員であっても殺られる。
好奇心旺盛で遊び好きのシャチだけに、軽くじゃれるだけでも人間には命取りなのだ。
過去には調教師がショーの最中、水中に引きずり込まれて溺死した事故も起きている。
遊び半分で調教師のスーツをくわえ込み、そのまま潜って引きずり回したのである。


出現は鮮新世ごろ。
当時はメガロドンやケトテリウム類、現生のハクジラ・ヒゲクジラ類の祖先が出現していた頃であったが、
気候変動と、シャチの祖先と現生のホオジロザメの出現によりメガロドンは生存競争に破れたとされる。
一方、シャチの祖先は多数のクジラ類が高緯度の海に進出した事もあり、豊富な餌を得て巨大化に成功した。

日本にもいた古代種「Orcinus paleorca」は、現在のシャチよりも大きかった可能性もある。

「鯱」の語源は頭が虎で常に逆立ちをしているという水を操るインド神話の怪魚。
「サカダチ」が訛って「シャチ」になったとも言われる。


シャチをモデルとしたキャラクター


しゃちほこ(伝説の生物)
グランパスくん、グランパコちゃん、グランパスくんJr.、グララ(名古屋グランパスのマスコット)
鯱(銀魂)※人間
トリトン(ブラック・ジャック)※本物のシャチ
赤鯱、シャチ(北斗の拳)※人間
シャチラカン(ジャッカー電撃隊
オルカロード仮面ライダーアギト
シャウタコンボメズール、シャチパンダヤミー(仮面ライダーOOO
オルカ大尉(マリンハンター)※シャチのフィッシュハーフ
シャチ(ONE PIECE)※もちろん人間
ウイリー(ONE PIECE デッドエンドの冒険)※シャチの魚人
サカマタ(逢魔ヶ刻動物園)
ギャングオルカ(僕のヒーローアカデミア
ジャレッド・アンダーソン(テラフォーマーズ)※シャチの改造人間
カイオーガポケットモンスター



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最終更新:2021年05月11日 18:25

*1 あくまで「サメの中では最強・最速クラス」というだけである。