鯨肉

登録日:2011/11/14 Mon 00:00:57
更新日:2025/06/22 Sun 11:47:19
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鯨肉とは、文字通り鯨の肉。


■概要

古代から近代にかけての日本では、
獣肉を避ける傾向(大陸と比べて食用に適する哺乳類が少ない、仏教思想の延長で殺生を好まない文化が形成される等の理由)があった。
だが、鯨はその漢字や古名(いさな:勇魚)から判る通り「魚」と見なされたのでタブー視されず、古くから食べられていた。むしろタブー視されていた猪肉の隠語として「山くじら」の名称が使われた程である。
その歴史は旧く、縄文時代の貝塚からも鯨の骨が見つかっている程である。さすがの海洋民族と云うべきだろう。

現在では信じられないが、アメリカもかつては捕鯨をしていた歴史がある。あのペリーが日本に開国を迫ったのも、捕鯨海域を広める為だった。
ただ、肉も少しは食べていたが、その用途は主に「鯨油」だったようだ。「~ガロンの鯨」と言う感じの呼び方をしていた。
現在、日本の捕鯨を非難するアメリカ人も、一昔前は鯨を虐殺しまくって油を絞り取って残りはポイ棄てという、
とんでもなく不経済かつ残酷の限りを尽くしていた。

日本は肉も骨も余す所なく使っていたのは当然、神社にもお祀りしているのに……。


戦後の日本では、ロシアの捕鯨船から安く鯨肉を買えたので、当時の日本人にとっては貴重な蛋白源となっていた。
ただ、余りにも安かったのと、冷凍技術がイマイチだったため、味の評価も高くなく、牛肉の缶詰と偽装して鯨の肉が使われていたという事件もあった。
それでも、戦後の日本人を鯨が支えてきてくれたのは事実である。
また、現在は冷凍技術も発達しているので、捕鯨さえOKなら当時とは比べ物にならないほど美味しい鯨が食べられるのだ。

アメリカは捕鯨を禁止しているが、アラスカの先住民族イヌイット達には捕鯨の許可を出している(理由は「伝統だからね」。だったら伝統的に食ってる日本の味方しろよ……)。

基本的に、現在市場に流通している鯨肉はミンククジラと呼ばれるヒゲクジラの一種。ミンククジラの他にもナガスクジラやイワシクジラなどが食べられている。
マッコウクジラなどのハクジラ類はヒゲクジラに比べてクセが強い。

実は鯨肉は高タンパク、低脂質、低カロリー、ビタミンAと鉄分豊富とかなりヘルシー。
さらにはバレニンという抗疲労成分が大量に含まれており、疲労回復、脂肪燃焼に効果がある。

ちなみに漫画美味しんぼ』の13巻には、捕鯨問題や反捕鯨団体の本質を描いたエピソード『激闘鯨合戦』が収録されている。



■主な鯨の部位

部位によって味わいは違うが、魚と獣、二つを合わせたような味がする。臭気は殆どなく、淡泊な味わいである。
元が巨大生物ゆえに、意外な部分も食用肉になる(それでも希少部位ではあるのだが)。

◆赤肉(赤身)
一般的な部位。背中の筋肉質な部位から取られ、栄養価は他の肉類と大差なく様々な料理に使える。

(うね)
縞模様がある腹の部位。皮というより脂肪層に当たり、主に後述の「さらしくじら」等に加工される。

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赤身より脂が乗った、畝の内側の肉。主にベーコンとなるのはこの部位。

尾羽毛(おばけ)
尾びれの事。曰く「絶品」。
刺身によし、さらしくじらによし。

◆尾身
尾の付け根。霜降りで鯨の最高級部位とまで言われている。

◆皮鯨
脂肪層がついた黒い皮。鯨肉自体が貴重になった今では最も広く出回っているかもしれない。
乾燥させたものをコロと呼ぶ。

◆鹿の子
アゴの付け根。赤身に脂肪が散らばってる見た目が小鹿の模様に似ているところからその名がついた。
刺身、ハリハリ鍋、すき焼きで食べる。

◆ハツ
心臓。刺身は牛の生レバーに似た味わい。ゴマ油を垂らすとよし。焼いてもコリコリして美味しい。

百畳(ひゃくじょう)
第一胃袋*1。畳は広さの単位であり要は「めっちゃ広い」という意味。
茹でたものをスライスしてポン酢で味わう。

百尋(ひゃくひろ)
小腸。尋とは両手を広げた位の長さのことで要は「めっちゃ長い」という意味。
茹でたものをスライスして薬味醤油や酢味噌で味わう。

豆腸(まめわた)
腎臓。臭みはないが独特の食感。

◆さえずり
舌。刺身、煮物、おでんにしていただく。脂が多く濃厚で上品な味わい。

◆子ひげ、じゃばら、びり
歯茎。アワビに似た食感で「くじらあわび」の名で提供するところも。

(たけり)
ち〇こ

金巣(きんそう)
きんのたま

(ひな)
クリトリス。



■主な鯨料理

◆ベーコン
脂の多い須ノ子に畝をつけた肉「畝須」を燻製にする。戦後間もなくは、豚肉のベーコンより一般的であった。
独特の香りがあるので好き嫌いは別れる。
だが、ベーコンならば美味いだろう。


◆竜田揚げ
出た~!とか思う人もいるであろう、鯨料理の定番。臭み消しの生姜を入れた醤油で味付けし、衣をつけて揚げる。
給食の定番だったので、馴染み深い中年の方やご老人もいる筈である。
こちらも独特の香りがあるので、嫌いな子もいた。


◆鯨カツ
こちらも給食の定番。鯨の味以上に下味のカレー粉の方が印象に残っていた方もいるかもしれない。
上記の通り鯨肉はヘルシーなのでカツにしても罪悪感が薄く、あっさりした味わい。


◆ハリハリ鍋
大阪名物、鯨鍋。
「コロ」と呼ばれる鯨の脂身をまず出汁に入れてから、鯨の身を入れる。そして大量の水菜を添えて頂きます。食い倒れまっしぐら!
「はりはり」は水菜の触感から来ている。


◆鯨かやき
脂っこい皮鯨を、脂物との相性がいいナス等と一緒に醤油ベースで煮込んだ汁物。
絶品。


◆さらしくじら
薄切りにした尾羽毛や畝に熱湯をかけて余分な脂肪分を落とし、冷水でしめた逸品。酢味噌で食べると……もう何もいりません!


おでん
現在では殆ど見かけないが、関西ではサエズリやコロは欠かせない存在だった。


刺身
今や高級品。
獣肉だが、魚の刺身のような風味がして不思議な味わい。尾の刺身は至高。


◆大和煮
醤油・砂糖・生姜で甘辛く似たもの。大体は缶詰。赤肉が主流だが須の子を使ったものもあるとか。
味が濃いのでご飯やお酒と一緒に。


味噌汁
具は鯨の皮鯨。茄子と一緒に入れると美味。
江戸時代では煤払い(12月13日に行う年末大掃除)の後に食べる習慣があり、「江戸中で 五六匹喰ふ 十三日*2」という川柳も残されている。





※追記募集


戦後の日本を支えてくれて、鯨さんありがとう。


でも一番美味しいのはベーコンだよね?

そうに決まってる。


戦後、超がつくほど反捕鯨派だった外国人が、とあるきっかけで鯨の供養塔を見て日本人の「余すところなく食べ、且つ感謝する」という精神に感動。
捕鯨反対と言わなくなったというエピソードがある。


因みに鯨の脂肪は殆ど皮の下にある、赤身は油が無い為低カロリー。

次いでに鯨の脂肪だが、これはワックスエステルと言い、人間には消化・吸収が出来ない。



……皮鯨を食べ過ぎると放屁と共に、油が吹き出てきてしまうので注意!






追記、修正は、鯨肉のベーコンを食べながらお願いします( ^ω^)

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最終更新:2025年06月22日 11:47

*1 鯨には胃袋が四つある

*2 鯨汁が5、6匹分食べられたという意味で流石に56匹ではない