サリア(ゼルダの伝説)

登録日:2020/05/11 Mon 10:00:00
更新日:2024/12/15 Sun 19:34:39
所要時間:約 15 分で読めます





「わぁ~っ、妖精ね! やっとリンクのところにも妖精がやってきたんだ。
よかったね! なんだかサリアまでうれしくなっちゃう!」



【種族】

サリアとは、ゼルダの伝説シリーズの登場人物。
直接の登場は第五作「ゼルダの伝説 時のオカリナ」のみであるが、テーマ曲「サリアの歌」とともに絶大な存在感を誇る。



【外観】

種族はコキリ族という、森の中でのみ生きる、永遠に子供のままの種族。
一人につき一匹の妖精と共生し、さまざまな恩恵を受ける。
なお、森から出ると死亡するとされるが、これはどうやら虚偽の模様。
(森の中では年を取らないが、森を出ると老化が始まり、やがては死ぬ、とする説もある。この場合、コキリ族も大人になりうるということである)

したがって、サリアも見た目は小学生ぐらいの少女である。
頭髪は緑色で、先端がくるりとカールしているのが特徴。
瞳は深い青色。
スカートではなく短パンを履いていて、活動的な印象を受ける。
またリブ生地のインナーを着ている。


【人物】

リンクにとっては幼馴染みで、家も隣同士。

明るく活発な性格で、初登場シーンからして軽い足取りで駆けながらリンクに向けて大きく手を振る、というものだった。
ミドがリンクをいじめるのに反発したり、森の異変を察知してリンクに武装を勧めたりと、芯の強さと優しさが同居した正統派ヒロイン的な少女。
言動の端々には、リンクに対する好意も見える。
一方、ミドから向けられる好意に対しては気付いていないか流している模様。

一人称は「アタシ」もしくは「サリア」。
語尾は「ヨ」や「ワ」がつくぐらいで普通の、女の子口調だが、たまに「~ジャラ」というコキリ訛りが出る。
本人的には訛りが出るとちょっと恥ずかしいらしい。かわいい

「なんか楽しい気分になるジャラ!」
「あ……コキリ訛りが出ちゃった」




+ しかしその本質は……
しかしその本質は、豊かな感情を持ちながらも静かに湛え、静謐な態度で相手を見据える、底の知れない情と愛を秘めた女性
リンクと二人きりで向き合う場面では、冒頭の明るさは鳴りを潜め、落ち着いた口調で語りかける。


明るい態度の裏では深い洞察力も備えており、リンクがいずれ森から出ていく存在であることを、本人よりもかなり前から悟っていた。
それでいながら、普段は明るく優しい幼なじみとして接し、自分の想いを押さえつけてきた模様。
そうした自分の真意を抑え込む点は、七年後の「賢者の間」でも垣間見える。

洞察力とは別に、予知能力・予感能力も強く備えていると思しき描写がある。
「まことのお面」や「こわそなお面」を見ると「悲しいって感じがした」と語ったり、ガノンドロフのクーデターを気配だけで察知したり、いずれ自分が「森の賢者」となることを悟っていたりと、感応能力が強い模様。
また、デクの木サマやケポラ・ゲボラとの会話で外の情報も知っているのだが、サリアいわく「デクの木サマと会話できるのは名誉なこと」らしいため、どうもコキリ族のなかでも格別な力を持つ存在であるらしい。

七年後には、大人になったリンクを仲間たちが彼と気付かない中、サリアだけは彼の正体を悟っていた。
これも、サリアの洞察力などの一端とも思える。



余談ながら、コキリ族のファドも割と冷酷・嗜虐的な一面を備えており、コキリ族全体にそうした性質があるとも推測できる。
そういう文化圏で育ったリンクもあるいは……


【活躍】

◇初登場

「え? ミドがデクの樹サマの広場へ通してくれないの?」
「もう…アイツってば、どーしてイジワルばっかりするんだろ?」

妖精ナビィに起こされたリンクが家を出たところ、家の前まで駆けつけてくるのが初登場シーン。
従って、リンクがゲーム開始から二番目に出会うキャラクターとなる。

リンクのもとに長年妖精がやってこず、ミドからいじめられていたのを気にしており、
それゆえリンクのところにナビィが来たことや、デクの木サマに招集を受けたことを我がことのように喜んでくれる。
また、ミドの妨害を聞いて憤慨しながらも「最近森の様子がおかしいから、剣と盾はあった方がいいかもしれない」と助言してくれる。

この時点でのサリアは、アドバイスをしてくれるかわいい幼馴染みとしての印象が強かった。


◇吊り橋にて

しかしその後、デクの木サマは魔獣ゴーマの呪いを克服できず、枯死してしまう。
ミドを初めとするコキリ族はこれを「リンクのせいだ」と捉えて拒絶。
リンクも、デクの木サマの遺命もあるが、彼らの反発を受けつつも森を去ることにする。



「行っちゃうのね」


……森を出る吊り橋を掛けていたリンクの足が、縫い付けられたように止まった。
サリアは、吊り橋の脇にずっと立っていた。

「サリア、わかってた……リンク、いつか森を出て行っちゃうって……
 だってリンク……サリアたちとどこか違うもん」

ためらうように歩み寄るリンクに向けて、サリアは続ける。

「でもそんなのどうでもいい! アタシたち、ず~っと友達! そうでしょ?」

そして、彼女は妖精のオカリナを差し出す。

「このオカリナ……あげる! 大切にしてネ」
「オカリナ吹いて、思い出したら、かえってきてネ」


サリアは、リンクをただじっと見つめていた。
リンクはそんなサリアからすぐに視線を逸らせず、少し後ずさりしながら、駆け出していった。

サリアは、静かな微笑みを浮かべて、いつまでも見送っていた……



このイベントは、ゲームとしては、「時のオカリナ」入手までの代替アイテムである「妖精のオカリナ」の入手イベントであるが、
ストーリーとしては、サリアの「明るく優しい幼なじみ」とはまったく異なる、静謐かつ深遠な一面が描かれた。
リンクとの意識の「違い」、そしていずれ来る「別れ」を予期していながら、それを淡々と述べ、
それでいながらリンクとの繋がりを求めるようにオカリナを渡し、「思い出したら、帰ってきてね」と、母親のような言葉を奉げ、あとは無言で見つめ続けるサリアの姿は、
幼女の身なりとは思えないほどの「母性」さえ湛えていた





◇森の聖域

「なんだかここって……これからのふたりにとって、すっごく大事な場所になる……そんな気がするの」

その後のサリアはコキリの里ではなく、迷いの森を抜けた先の「森の聖域」で、オカリナを吹くようになる。
ゲーム的には森を出た直後にも聖域までは行けるが、
ストーリー的には「ゼルダ姫と出会い、精霊石やトライフォースにまつわる話を聞いた後、ナビィに『サリアに話してみたら?』と勧められる場面」が順当であろう。
いずれダルニアの関係でサリアには再会する必要があるため、ゴロンシティに向かうよりも効率はいい。


「森の聖域」の最奥の広間に到着すると、切り株の上で曲を奏で続けるサリアがおり、再びイベントが開始。
リンクはゆっくりと歩み寄り、サリアも歌を止めた。
サリアは、ここは「ふたりにとって大事な場所になる」と予感していた。
そして彼女はリンクに『サリアの歌』を教えてくれる。

「わたしの声……聞きたくなったら、サリアの歌をふいてネ……いつでも話せるから…」


今後は、『サリアの歌』を奏でることで、遠方からでも会話が可能となる。
会話の中には攻略のアドバイスもある。
また、サリアと会話する前にもナビィを介している様子があるため、これも妖精同士のテレパシー的なものかもしれない。



今回のイベントも、サリアは「静謐な女性」として描かれる。
サリアが演奏をやめてリンクの会話する時だけは、森に木霊する音色も止んでおり、サリアの森における神秘性が強まる演出が為されている。

それでいて、リンクが「サリアの歌」を習得したときには明るく笑い、その声が反響する演出もまた美しい。


◇子供時代その後

子供時代の大きなイベントはこれで終わるが、サリアは森の聖域に居続けるため、いつでも会話は可能。
お面屋から借りた仮面を見てもらったり、オカリナ通信で楽しげな声を聞けたりする。

なお、妖精のオカリナは時のオカリナを入手するとアイテム欄から消えてしまう。妖精のオカリナ「俺はもう用済みか・・・」
姫川明の漫画版ではガノンドロフ時のオカリナと間違えて奪い、その後に気づいて妖精のオカリナを壊したという演出になっている。

「あら……? なんだかオカリナの音色が変わったネ……リンク、うまくなった?」


◇森の賢者

大人時代に入ると、ガノンドロフが力のトライフォースを保有し、ハイラル城を攻略して世界の闇と魔物の世界に変えてしまう。

リンクは待っていた青年シークから、フックショットを手に入れたうえで「森の少女」のもとに急ぐよう伝える。
この直後に「サリアの歌」で通信を図ると、サリアは森の聖域に建てられた、森の神殿にいるとわかる。
助けを求める彼女の声に応えてリンクは森の神殿に赴き、フックショットを用いて崩れた階段を超え、ガノンドロフの差し向けた異次元悪霊ファントムガノンを撃破。

そして開かれた賢者の間で、森の紋章から姿を現したのはサリアであった。

「ありがとう……アナタのおかげで、賢者として目覚める事ができました……
 ワタシはサリア。森の神殿の賢者……」
「きっとアナタが来てくれると信じていたわ。だって、アナタは……」

七年ぶりの再会を果たすサリアは、あえて「他人」のような態度をとる。一人称も「サリア」や「アタシ」ではなく、他人行儀な「ワタシ」として。
動揺するリンクだが、彼女も「…ううん。なにも言わないで」と、「幼なじみのサリア」としての顔を出してしまった

「アナタとワタシは……同じ世界では生きていけない運命だもん……」

いつかのような別離の言葉。話しかけるのはいつもサリアで、しかし今度は、サリアのほうが離れるという。

「サリアは、森の賢者として、アナタを助けていくの……」

そうしてサリアは、森のメダルをリンクにささげて、光のなかへと消えていった……





このイベントを通して、サリアの持つより深淵な感情が描かれることとなった。
賢者となり、ガノンドロフを討ち果たすまでは世界から隔絶される。サリアは内心で、それを望んでいなかった。
それでも、為さねばならないと覚悟して、一度はリンクの前で初対面のような態度を取り、決別しようとする。

しかしすぐにそれができなくなり、「何も言わないで……」と、愛情を封じる役をリンクのほうに頼んでしまう。
リンクは言葉を発しない主人公だが、この場面では本当に絶句したのかもしれない。

望んでも願っても、結実しない愛情がある――そんな印象を刻み付け、故郷との離別を押し付けながら、サリアの最後のイベントはこの言葉でくくられる。



「サリアは、いつまでも…… アナタの友だちだからネ……」




◇大人時代その後

以後の登場は、ガノン城攻略時の森の結界を突破する場面と、エンディングムービーのみ。
後者ではダルニアの肩の上に乗っている。


ただ、森の賢者として賢者の間に住むようになっても、サリアの歌を介して引き続き会話は可能。
以前から予感・予知があったようで、そのうえで「賢者となるのは嫌だった」という思いと、「リンクと一緒に行動できる今は嬉しい」という思いを述べている。



◇その他の作品

サリアに限ったことではないが、「風のタクト」ではハイラル城に六賢者の姿が描かれたステンドグラスが飾られている。

なお、ゼルダの伝説シリーズでは主要モブ問わずスターシステムがよく使われている(例として、ロンロン牧場のマロンとタロンは「夢をみる島」のマリンとタリンからきている)。
特に時のオカリナはシステムやグラフィックを流用した続編「ムジュラの仮面」が存在し、ダルニアはダルマーニ3世、大人時代のルト姫はルル、ナボールはアベール、マロンの子供時代と大人時代はロマニーとクリミアの姉妹、コッコお姉さんはアンジュ、という風に似ているけれどまったくの別人として登場している。


サリアのスターシステムとしては、「トワイライトプリンセス」にリンクの幼馴染の「イリア」という少女が登場している。
しかし、イリアはリンク(※トワプリリンクは16歳)と近い年齢のハイリア人なので、立ち位置は似ているが設定や雰囲気はサリアとだいぶ違うキャラクターでもある。

それがかえって、サリアというキャラクターが「時のオカリナにとって(あるいは時の勇者リンクにとって)格別な存在」という印象を強めている面がある。

ただ、ゼルダシリーズは全体としてみれば客演そのものの数は少なく*1、今作で登場した他のコキリ族もこの後出てない点から前述のコキリ族の設定が尾を引いていた*2のが要因と言ってしまえばそれまでではあるが。

【サリアの歌】

ゲームシナリオ順では二番目か三番目、優先すれば最初に教わることも可能な曲。
サリアが友達にだけ教える、友情の証でもある。
そのためミドやスタルキッドでも、これを奏でる人物は信用する。

この曲を奏でると、いつどこにいてもサリアと会話ができる。
また曲を奏でつつもサリアと会話しない場合、ナビィとも会話ができる。

明るいアップテンポな曲調で、豊かな森の中を妖精と子供が跳ね回って遊んでいるようなイメージ。
ステージでは迷いの森・森の聖域で永遠に流れており、闊達な印象を受ける。
またゴロン族もこの曲を好んでおり(ゴロンシティには森につながるワープゲートがあり、そこから漏れ聞こえる)、特に族長のダルニアはこの曲を聞くとノリノリで踊りまわるほど好む。
ゼルダ無双』においてはダルニアのみ勝利デモのBGMがサリアの歌という特別仕様である。


シリーズを代表する曲としての認知度も高く、『時のオカリナ』のTVCMやエンディングでも用いられたほか、トワイライトプリンセスなど後続のシリーズにもアレンジ版などが登場。
スマブラシリーズでも頻繁に用いられており、DXにおけるスタンダードなバージョンはもとより、
Xに登場する「時のオカリナメドレー」ではサビの部分に使われ大いに盛り上げ、
SPでは中ボス戦闘曲と組み合わせた雄大なアレンジも登場するなど、人気の高さもうかがいしれる。



また「ムジュラの仮面」で重要な立ち位置にある『癒しの歌』の入力コマンドは、『サリアの歌』を反転させたものである。



【その他】

森の聖域は迷いの森を越えた先にあり、コキリ族以外では渡れない。
そのうえ森の聖域の手前はウルフォスやオコリナッツ、モリブリンなどの魔物が徘徊しており、割と危険。
……なのだが、サリアは普通に森の聖域を行き来している。いったいどうやって。
森のメヌエットを知っている可能性もあるが、里に帰るのにはやはり魔物を突破しなければいけない。

スタルキッドが「サリアの歌を知っている奴は友達」と考えていることから、ああ見えて彼女は森の顔役なのかもしれない。そんな四コマもあった


迷いの森・森の聖域で流れるサリアの歌は、彼女がいなくても奏でられている。
独自考察も織り交ぜた攻略本ゼルダの伝説 時のオカリナ百科」では、
「たとえ、そのコキリが立ち去ろうとも、まるで森が覚えているように、深い森の中で永遠に木霊が繰り返され、永遠にそのメロディは流れ続けるのだろう」
という記述がある。


ドクロのお面を見せると「どこかで見たことある。迷いの森? 違う?」と言い出す。
スタルキッドに渡す前からこの発言をするため、おそらくは彼のことではない。
この「見たもの」は、もしかしたらファントムガノンのことかもしれない。
ガノンドロフはデクの木サマにゴーマを寄生させた(「呪いをかけた」)わけだが、ガノンドロフ自ら森に入ると出られなくなる危険性がある。
そこでファントムガノンを派遣してゴーマを寄生させ、その後はずっと迷いの森に放置(回収を諦めた)して、ついでに森の神殿の制圧もさせていたのかもしれない。



サリアは「時のオカリナ」以外の出演がなく、他のキャラクターと異なり「ムジュラの仮面」にも登場しない。
ただ、姫川明版の「ムジュラの仮面」では、アンジュが意図的にサリアをイメージして描かれていた
(ゲーム版のアンジュは、時オカの「コッコお姉さん」の流用。姫川版時オカにはコッコお姉さんは登場しない)
リンクも、他のキャラクター(インゴーやキングゾーラそっくりの人物)には素直に驚きや困惑の表情を浮かべていたが、
サリアの面影があるアンジュには一切の表情が消え、妙に丁寧な口調で背を向けて去ろうとした。
こちらの方でもリンクはサリアに対して思うところがあった模様。


その姫川明版の「時のオカリナ」では、リンクとサリアの重なる別れはいくらか明るめにアレンジされていた。

また本編以前を舞台とする短編ではサリアがスタルキッドにさらわれ、リンクが助けに赴くエピソードもある。
リンクはこの時点ですでにサリアの歌を教わっており、ゲーム本編のように聖域を訪れる話はない。
同エピソードではコキリ族の祭りの演劇で、サリアが満場一致でヒロイン『妖精姫』に推薦されていた。


2016年にニンテンドードリームで行われた好きな(ゼルダ以外の)ヒロインの投票では圧倒的な票数で1位を獲得しており、
サリアがユーザーにとってどれほど思い出深いものかを窺い知れる結果となっている。
なお、この投票の2位は「風のタクト」のメドリ、3位は前述した「ムジュラの仮面」のアンジュである。



「アタシ、ここで待ってるから、項目の追記・修正、はやくやってあげて!」


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最終更新:2024年12月15日 19:34

*1 現時点で唯一のお祭りゲームであるゼルダ無双で再び日の目を見たキャラも少なくない。

*2 森から出ると年を取るという解釈になったのはブレスオブザワイルドの後に出版した書籍からであるため