インターステラー(映画)

登録日:2020/08/22 Sat 11:20:53
更新日:2025/04/14 Mon 20:17:27
所要時間:約 13 分で読めます







必ず、帰ってくる。

それは宇宙を超えた父娘の約束――。



概要

『インターステラー(INTERSTELLAR)』とは、2014年に公開された映画。
滅亡の危機に瀕した人類を救うため、果てしない宇宙の旅に出た宇宙飛行士と、地球に残った科学者の娘の絆を描いたSF映画である。

圧倒的な宇宙の情景とオタク心をくすぐるメカニック描写、最新の理論に基づいたハードな宇宙物理学、そしてそれらを吹っ飛ばすほどの親子愛が起こす奇跡。
これらが余すところなく描かれ、多くのSFファンを魅了した。
特に、ブラックホールの描写については圧巻の一言である。
テーマソングである「First Step」、挿入歌である「S.T.A.Y.」も非常に評価が高く、現在ではInstagramやTiktokを中心にさまざまな場所で見かけることができる。

監督は『ダークナイトトリロジー』のクリストファー・ノーラン。
脚本は弟のジョナサン・ノーランとの共同執筆。
出演者には、『ダラス・バイヤーズ・クラブ』のマシュー・マコノヒー、『ダークナイト ライジング』のアン・ハサウェイ、『ゼロ・ダーク・サーティ』のジェシカ・チャステインといった実力派キャストが集結。
さらには思わぬサプライズキャストがノンクレジットで出演している。

ちなみにタイトルの「インターステラー」とは、「星と星の間の、星間の、恒星間の=星から星へ渡る」という意味。



【ストーリー】

近未来、地球は滅亡の危機に瀕していた。環境変化による穀物の死滅により、致命的な食糧難に遭っていたのだ。
そんな中、妻を亡くし、息子と娘、三人で暮らしていた元パイロットのトウモロコシ農家のクーパーは、娘のマーフの発見で謎のバイナリ信号を探知し、大きな秘密施設を発見する。
そこは、死にゆく地球から宇宙へと人類を脱出させるため、NASAが極秘で進めていた「ラザロ計画」の研究施設であった。
機密情報を知ってしまったクーパーは拘束されるが、彼は、責任者のブランド博士に、身の安全の保証をする代わりにラザロ計画に加わるよう依頼される。
クーパーに与えられた任務は、移住可能な外宇宙の惑星の探査。しかしそれは、家族とは時間と距離を遠く離れ、下手すれば二度と会えなくなることを意味していた。
涙ぐみながら娘たちと別れ、3人のクルー、そして2機のロボットと共に宇宙の旅へと旅立つクーパー。
そこで待ち受ける様々な星と数々の苦難。その間にも地球は長い時間が流れ、大人になったマーフは父を待ち続ける。
果たして、父と娘の再会はなされるのか。そして、人類移住の計画の行く末は?


【登場人物】

《エンデュランス号クルー》

  • ジョセフ・クーパー
演:マシュー・マコノヒー/吹き替え:小原雅人
元パイロット兼エンジニアで、現在は亡き妻の実家のトウモロコシ農場を営んでいる。
好奇心旺盛な娘と一緒に電子信号の研究をするうちに、NASAの研究施設に迷い込み、ラザロ計画の宇宙飛行士に選ばれてしまう。
冷静で的確な判断を下しながら宇宙の航行を続け、決して最後まで諦めない意志を貫いていく。
宇宙飛行の際に家族と離れるうちに、娘たちとの年齢も追い越されてしまうが、彼らとの再会だけを希望に生きていく。

  • アメリア・ブランド
演:アン・ハサウェイ/吹き替え:園崎未恵
生物学者であり、計画責任者のブランド博士の娘。
地球の生物の種(動植物)を持ち込み、テラフォーミングの準備をする任務を担っている。
科学に従事する立ち位置ではあるが、「愛」の強さを信じており、時としてそれは理論すら超越すると主張し、暴走する一面も。
最後はたった1人の世界(ロボットは1体いるけど)でコールドスリープについた。

  • ニコライ・ロミリー
演:デヴィッド・ジャーシー/吹き替え:山岸治雄
天体物理学者で黒人ハゲの髭面。
ブラックホールの研究に熱心で、作中の天体現象についての解説役を担う。
ミラーの星(後述)では降下せずに船で留守番していたが、その際に23年ものの年月が経ち老けてしまった。
氷の惑星で作業中に、仕掛けられた爆弾の爆発に巻き込まれ死亡。
ちなみに実は人類を移住させる方法は不可能であることを最初から知っていた。

  • ドイル
演:ウェス・ベントリー/吹き替え:小松史法
探査隊のリーダー格で七三分けの髭面。
実地経験に乏しく、クーパーにサポートされることが多かった。
ミラーの星の探査中に手間取っているうちに海に溺れてしまい、津波に巻き込まれ死亡する。

  • TARS(ターズ)
声:ビル・アーウィン/吹き替え:多田野曜平
ラザロ計画をサポートする元軍用ロボット。見た目はメタリックな板というか箱。身長150cm。
海軍所属だったらしく、彼の話す英語には海兵隊訛りがあるほか、キッツいブラックジョークをぶちかます賑やかし枠。
宇宙船が飛び立つや否や「機械の奴隷になった気分はどうだ?」だの唐突に「自爆スイッチ起動!3,2,1...」だの……
ちなみにジョークのキツさは「ユーモアレベル」の設定を変えることで調節可能。
「正直レベル」も存在し、こちらは「ウソがつけないとコミュニケーションに支障が出る」という理由で90%に設定されている。

銀色の直方体に無機質なCUI(黒い画面に文字だけが表示されるディスプレイ)が付いているだけ、という愛嬌もへったくれもない外見。
だが、本作最大の萌えキャラであり、お喋りでフレンドリーな性格で精神・任務の両面でクーパーを支え続けた頼れる相棒。
何気に「彼」がいなければ人類は滅んでいた事になる。
ちなみにTARSとCASEはボディにデカデカと名前が書いてある。


  • CASE(ケース)
声:ジョシュ・スチュワート/吹き替え:丸山壮史
もう一台のサポート用ロボット。こちらも銀色の筐体+CUIという組み合わせ。
TARSとは対照的に慎重で几帳面な性格。映像特典では「優しいがまだ経験不足なパイロット」らしい。
ミラーの星では出遅れたアメリアをお姫様抱っこで救出した。
最後の別れ際にクーパーのことを師匠と呼ぶ。

彼とTARSのボディは分割できるようになっており、真ん中から割り箸のように割れることで自立歩行する。
縦に4列に並んだ直方体が組み合わさってできていて、直方体自体はブロックの集合体で、折り曲げる事も可能。
そのほか端の方を分割して腕がわりに使ったりできる。


《先遣隊メンバー》

  • ローラ・ミラー
先遣隊の一人。生物学者であり生物学の権威でもある。
水に包まれた惑星に到着したが、不時着したらしく見つかったのは着陸船の残骸のみ。
ミラー飛行士が到着したのはこの惑星の時間としてはほんの数時間前だった。
劇中の数分前、クーパー達が到着する直前に津波に巻き込まれて死亡したと思われる。

  • ウルフ・エドマンズ
先遣隊の一人。素粒子物理学者。
アメリアの恋人で、彼女は彼に会うことを願っている。
ちなみにエドマンズの着いた星は地球と似た大気で構成されている惑星である。

  • ヒュー・マン
演:マット・デイモン(ノンクレジット)/吹き替え:土田大
ラザロ計画を提唱し、先遣隊として宇宙に探査しに行った博士。地球最高の科学者と称されている。
氷に包まれた惑星に到着し、地球に人類が生存可能であることを信号で伝え、無期限に設定した冷凍睡眠につく。
翌年では火星に置き去りにされていた。

  • KIPP(キップ)
マン博士のサポートをしていたロボット。
TARSやCASEの同型機だが、クーパー達が辿り着いた時には壊れてしまって機能を停止していた。
名前の由来は本作の発案者で、アドバイザーの理論物理学者キップ・ソーンから。


《地球の人々》

  • マーフィー“マーフ”・クーパー
演:マッケンジー・フォイ(少女)、ジェシカ・チャステイン(大人)、エレン・バースティン(老女)/吹き替え:諸星すみれ(少女)、岡寛恵(大人)、沢田敏子(老女)
クーパーの娘。
好奇心旺盛で宇宙をはじめとした科学に関心を持っているが、周囲からは「役に立たない」と馬鹿にされ、唯一父だけが彼女に真摯に接している。
自分の発見のために父がラザロ計画のパイロットになることになり、不貞腐れて別れの挨拶もままならない状態で離れてしまった。
その後、父の手助けになるために宇宙物理学の道を歩み、スペースコロニー建造のための重力の法則を見つける研究に着手しているが、難航を極めている。
やがて、ブランドからラザロ計画の真意に気付き絶望するが、彼女はかつて子供の頃体験した「現象」による父の想いを受け取ることになる……。

  • トム・クーパー
演:ティモシー・シャラメ(少年)、ケイシー・アフレック(大人)/吹き替え:上村祐翔(少年)、加瀬康之(大人)
クーパーの息子でマーフの兄。
妹とは違って大のリアリストであり、宇宙に熱心な妹を小馬鹿にしていた。
成長すると父が運営していたトウモロコシ農場を継ぎ、ロイスという女性と家庭も持つ。
後に長男ジェシーを授かるも幼くして亡くし、次男クープも喘息の病気を抱えている。
当初は父との通信を心待ちにしていたが、連絡が途絶えた今は完全に父との再会を諦めている。
一方で父との再会に未練がましく縋っている妹を疎ましく思うようになる。

  • ジョン・ブランド
演:マイケル・ケイン/吹き替え:有本欽隆
ラザロ計画の責任者を務める宇宙物理学者。
偶然知り合ったクーパーの腕を見込んでラザロ計画へとスカウトし、計画の進行を後押しする。
成長したマーフの恩師でもあり、彼女に宇宙物理学の全てを叩き込む。
やがて病床に伏すが、死の間際にマーフに衝撃の告白をする。

  • ドナルド・クーパー
演:ジョン・リズゴー/吹き替え:福田信昭
クーパーの亡き妻の父親。
トウモロコシ農場のオーナーであり、代々農場を守ってきた。
長い間の環境変化を見続けていたため、人類の滅びに諦観を抱いている。

  • ゲティ
演:トファー・グレイス/吹き替え:松本忍
マーフの同僚。
彼女と共に重力の法則の研究に着手している。


【用語集】

  • 幽霊現象
クーパー家で頻発している、書斎の本棚が落ちたり、埃が模様を描くようになった現象。

  • ワームホール
48年前、土星付近に現れNASAが見つけた……というか、「突然発生した」という謎の異空間。球状をしている。
外宇宙に繋がっており、“彼ら”と呼ばれる存在によって創造されたと考えられている。
NASAは“彼ら”が人類に救いの手を差し伸べていると捉え、ラザロ計画が立ち上がった。

  • ラザロ計画
ジョン・ブランド博士やヒュー・マン博士が進めていた地球からの人類移住計画。
一つは星間航行可能なスペースコロニーを建造し、そこに人類を移住させるプランA。
もう一つは、ワームホールから外宇宙に移住可能な惑星を探査し、種の保存に務めるプランBだった。
マン博士ら12人の宇宙飛行士が宇宙を探査し、その結果3つの星が候補地となったため、クーパー隊が確認に行くことになった。

  • エンデュランス号
クーパーらが乗り込んだ外宇宙探索用の星間航行可能な宇宙船。
ワームホールを利用して他星系への移動を可能にしており、何十年という宇宙航行ができるほど耐久性も高い。
リング状の形状をしており、中心には降下艇「レインジャー」、大型降下艇「ランダー」が駐機してある。
リングには12個のブロック・ユニットが連なっており、それぞれ決まった機能(居住区やコクピット)が分化されている。
なお、エンデュランスとは「辛抱、忍耐」という意味。

  • ミラーの星
ワームホールの出口から一番近い、ローラ・ミラーが到着した地表が水に覆われた惑星。
酸素を含む大気、水、有機物といった人間が生きる為に必要な最低限の要素全てが揃っている。
ただし後述のブラックホール・ガルガンチュアの超重力の影響で時間の流れが遅く、この星の一時間は地球時間の7年間に相当する。
また潮の変化が激しく、山より高い壁のような大津波がしょっちゅう発生している。
クーパー達がエンデュランスに帰還した時には、惑星の外では23年もの月日が流れていた。
ここでの燃料浪費が原因で、残る2つの惑星のうち1か所しか行けない状態になる。

  • マンの星
ヒュー・マンが到着した惑星。
氷に包まれた惑星で、極寒かつ生命が暮らせそうもない。昼は67時間、更に極寒の夜が67時間も続く。
マン博士によると地上で人類が暮らす事は不可能だが、地下をテラフォーミングする事で入植が可能だという。
しかもこの惑星には他に有機生命体の存在と、それらと人類が共生可能であるらしい。

  • エドマンズの星
最後にアメリアだけが辿り着いた惑星。岩と水、少しの緑があり地球に似た大気がある。
ちなみに元々は砂漠の惑星とされており、入植が可能かどうかは不明。
氷の惑星から脱出後、破損した宇宙船では地球に帰還する事は不可能になっていた。
そこでブラックホールへ接近し、ペンローズ過程*4を利用してエドマンズの惑星へ向かう。
なお、燃料不足でマンの星かエドマンズの星か選択を迫られた時、エドマンズの星からの信号は途絶えていた。
アメリアが辿り着いた時には既にエドマンズは亡くなっていたが、キャンプが張られており、家屋や構造物がいくつか散見している。

  • ガルガンチュア
ワームホールを抜けた外宇宙にある巨大ブラックホール。
重力の本質を理解するためにはこのブラックホールの中心の特異点を観測して、データを持ち帰る必要がある。
理論上近づく者を全て呑み込み、本来であれば超重力場によりバラバラとなり消滅する。
アメリアを救う為、地球にブラックホールのデータを送る為、クーパーはTARSと共に……

  • 四次元超立体テサラクト
ブラックホールの特異点のような空間で、過去・現在・未来が同時に存在する場所。


  • “彼ら”
人類の導き手となった高次元の存在。
アメリアによると、“彼ら”は5次元の存在で時間も人間で言えば物理的存在でしかない。
過去は谷に下りるようなもので、未来に行くのは山に登るようなものだという。



「TARS、おまえの正直レベルは?」
「90%だ」
「90%?」
「感情を持つ相手に向けた項目の追記・修正において、完璧な正直さは外交的で安全とは限らない」
「なるほど。俺たちも90%でいこう、ブランド博士」



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最終更新:2025年04月14日 20:17

*1 回収できるだけの余裕はすでに地球には無く、最初からその計画だった。

*2 ただし一応「データには絶対アクセスするなよ」と警告はしていた。これも疑心暗鬼から誘導する作戦だった可能性も否定できないが。

*3 「クーパーを襲わず一緒に地球に帰れば良かったのでは?」という意見も多々ある。単に捏造した時点で孤独による発狂状態に近いまま死ぬかもしれないイチかバチかの冷凍睡眠、からの起きたらまさかの後発隊が到着、なのにこのままでは自分が「人間が住める星(嘘)」に置いて行かれるかもしれない恐怖に憑りつかれた結果なのかもしれない。そもそも作中でも散々船にダメージがあったように、全員地球に帰れる余力が不明なら奪い取るのが一番確実とも言える。

*4 ブラックホールのエネルギーを利用して運動量を得る方法のこと。ただし、ブラックホールに近付く事で時間が進み、地球とは更に50年も差が出る。