マッチ売りの少女

登録日:2020/11/03 Tue 10:09:16
更新日:2023/07/26 Wed 12:09:04
所要時間:約 3 分で読めます




マッチ売りの少女とは、ハンス・クリスチャン・アンデルセンによって1845年に発表された童話である。

【あらすじ】

雪が降り積もる寒い街の大晦日の夜。
1人の少女がマッチを売っていた。
マッチが売れなければ父親に叱られるので、全てを売り切るまでは家には帰れない。
しかし大晦日の夜の慌ただしさから人々は少女には目もくれず、ただ通り過ぎるだけである。
それどころか、元々母親のものであった、履いていた大きな靴も猛スピードで走ってきた馬車を避ける際に脱げてしまい、
片方は馬車に潰され、もう片方も浮浪児に持っていかれたことで、少女は裸足になってしまっていた。

夜も更け、裸足の少女は少しでも暖まろうとマッチにを付けた。
すると炎の中に、温かいストーブや七面鳥などのごちそう、飾られたクリスマスツリーなどの幻影が浮かび上がる。
だがその幻影も炎と共に消え去ってしまう。
ふと天を仰ぐと流れ星が流れ、少女は可愛がってくれた祖母の事を思い出す。
「流れ星は誰かの命が消えようとしている象徴」と話してくれた優しい祖母…。
再びマッチをつけると、その祖母の幻影が現れるが、炎が消えると再び消えてしまう…。
それを嫌がった少女は持っているマッチ全てに火をつける。祖母の幻影は少女を温かく抱きかかえ、神様の元へと昇って行った。
残されたのはマッチの燃えカスと、幸せそうに微笑んだまま息絶えた少女の遺体だけであった。
人々はそれを見て同情はするものの、彼女が最後に体感した幸せな光景、そして行き着いた先は誰も知ることが無かった…。

【概要】

編集者から『これで童話を書いてほしい』と送られた三枚の絵のうち、マッチ売りの少女の絵を選んだアンデルセンが書いたもので、
誰にも救いの手を差し伸べられなかった不幸な少女が些細な幸せを幻影の中で手にし、それらに包まれたまま亡くなるという悲劇である。
少女本人は(幻影とはいえ)大好きな祖母に導かれ、幸せの中天国に昇っていったのだが、少女以外誰もそれを知ることはなく、
また、幻影の祖母以外(つまり現実世界の人間)は誰一人として生前の彼女を助けようとしなかった(もしくはできなかった)という救われない話でもある。

あまりにも不幸すぎる物語のため、後世では「少女には友達がいた」「父親も少女の事を思っていた」…等と改変されることがある。
だが、結局少女は寒空の中、マッチの中に見た祖母の幻影に導かれて亡くなってしまうという、結末は一切変わらない。
むしろこの場合、そこまで想っても少女を救うに至らなかった周りの人間の無力さが現れ、より空しい結果となる。
アメリカの絵本では「死ぬ直前に心優しい富豪に助けられ、少女は幸せに過ごした」というハッピーエンドに改変される事もある。
一流の悲劇より三流の喜劇であって欲しいのはいつの時代も変わらないのだ。

また、少女の遺体を心優しき牧師が見つけ、救えなかったことを悔やむと共に教会で手厚く葬り、
「二度とこのような少女を生み出してはならない」と諭する教訓的な終わり方をすることもある。

【時代背景】

こんな物語が生まれた背景には、当時の時代と貧しい者たちの扱いにある。
元々アンデルセン本人は「女性が幸せになる事に懐疑的」かつ「死こそが幸福」と考えている節もあったのだが、そこに母(祖母とも)の少女時代の話が加わり*1、この作品が生まれたという。
他にも「貧しい者を見捨てる当時のデンマーク社会への批判」ともいわれている。
アンデルセンは社会に見捨てられ、幸せな幻影すら見ることなく死んでいく貧しい者達にほんの少しでも救いを与えたくてこのような話を書いたのかもしれない…。

【余談】

  • あらすじがやけに短いが、実際これだけの話であり、一人の不幸な少女が天に昇る迄しか書かれていない。
  • 主人公の少女の容姿に関しては「幼い」「金髪」とだけ述べられているが、名前は決められていない。
    後の創作では必要に応じて「アンナ」「マリア」「ミクサ」「リン」等と名付けられている。髪色は無視される事も多いが、年齢だけは一定である。
  • 幻影の七面鳥やクリスマスツリーのせいで「話の時期はクリスマス」と勘違いされがちだが、実際はもう少し後の大晦日*2
    少女はすんでのところで新しい年にたどり着けなかった事がこの悲しい物語の肝である。
  • 童話をモチーフにした作品には基本的に登場しているが、悲劇になることが作品のキモである為か、基本的に後年の創作、二次創作でも救われることは少ない。
  • 学研映像局による人形アニメ版も存在し、1971年冬の東宝チャンピオンまつりで上映されている*3
  • 漫画「ドラえもん」の作中では、実際に起きたエピソードとされている。詳しいあらすじはマッチ売りのドラえもん参照。

追記修正は、少女を死の淵から救って幸せにしてからお願い致します。


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最終更新:2023年07月26日 12:09

*1 その母親も60年ほど生きたが、結局貧困からは逃れられず亡くなったとされる。

*2 近年では子供には複雑と考えられたのか時期をクリスマスにしているものもある。

*3 同時上映は『ゴジラ・モスラ・キングギドラ 地球最大の決戦(「三大怪獣 地球最大の決戦」の短縮版)』『帰ってきたウルトラマン 竜巻怪獣の恐怖(第13,14話再編集)』など