機動戦士ガンダム0080 ポケットの中の戦争

登録日:2010/12/24(金) 00:00:16
更新日:2021/03/19 Fri 02:11:18
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このごろ僕は思い出す
初めてザクを見た日のことを…
止められなかった戦いのことを……


MOBILE SUIT GUNDAM 0080
ポケットの中の戦争




1989年よりバンダイから発売されたガンダムOVAシリーズ第一作。通称『ポケ戦』。
全六話構成。


□概要

監督の高山文彦の意向により従来のガンダムシリーズから離れた「少年が見た戦争」という人間ドラマを重視した作品となっている*1
そのため主人公が小学生であり、全く戦わない。
またバトルシーンも初代ガンダム第34話でのシャアの台詞「実戦というのはドラマのように格好のよいものではない」を地で行く、派手さや爽快感よりも写実性を重視したものとなっている。

主人公「アルフレッド・イズルハ」を演じた浪川大輔は1989年当時12歳で、これはガンダムの主人公を演じた声優では最年少記録であり、未だに破られていない。
後にDVD化された際には浪川大輔の成長による声変わりを逆に利用し、成長したアルが当時を振り返り独白するという内容のCMが製作された。
さらに2017年のBlu-ray版発売の際には、そのDVD化された1999年の時より「年を重ねたアル」という設定で再びPVのナレーションを担当した。
そのPVには1999年の分も含めた浪川氏が演じるアルの声が入っているので聞き比べるのもいいかもしれない。

登場するザクなどのMSのデザインはパトレイバーシリーズを手掛けた出渕裕の手によってリファインされた物である。

これはよりリアリティの高いデザインで描くためのものであり、
最初の設定段階では「初代ガンダムと同じMS」という設定だったが、ガンプラの売上を伸ばすため「別の機体」へと変更された。
その1/144の旧キットシリーズはバンダイが産んだ狂気の産物で「多色整形」「専用ポリキャップ」「カメラ部にクリアパーツ採用」と、
発売から20年以上経ってポケ戦シリーズがHGUC化した今でも全く遜色がない。

「同じ機種でも作品によってデザインが異なる」が受け入れられるようになるには、「新機動戦記ガンダムW Endless Waltz」まで待たねばならない。

オープニングの「いつか空に届いて」とエンディングの「遠い記憶」は名曲とされていて、少年期の心を見事に表現している。



□物語


U.C.0079『一年戦争』の最中。ジオン特務部隊「サイクロプス隊」は連邦軍の秘密兵器の奪取を目的に北極基地を襲撃した。
しかし連邦軍の秘密兵器は攻撃を振り切り、ロケットにて脱出する。

中立コロニー『サイド6』に住む少年、アルフレッド・イズルハは退屈な毎日を送っていた。そんな少年にとって「戦争」という非日常的なものはどこか魅力的な物であった。
そんな折りに突如ジオン軍がコロニー内に侵入。駐留していた連邦軍と交戦を開始する・・・
アルは不時着してきた一機のザクを追いかけて森に向かう。そこにいたのは一人の青年兵「バーナード・ワイズマン」だった・・


『一年戦争』終結まであとわずか・・・

クリスマスまであとわずか・・・



□登場人物


●アルフレッド・イズルハ
(CV:浪川大輔)
リボーコロニーに住む小学生。愛称は「アル」
別居中で厳しい母親やつまらない授業などに退屈しており、戦争やMSに興味を持っている。
ガンダムシリーズ最年少主人公

バーナード・ワイズマン
(CV:辻谷耕史)
ザクに乗って不時着してきた新兵で階級は伍長。愛称は「バーニィ」
そのまま「サイクロプス隊」へ補充兵として編入されルビコン作戦に当たることに・・・
主人公ではない

●クリスチーナ・マッケンジー
(CV:林原めぐみ)
かつてアルの隣に住んでいたお姉さん。愛称は「クリス」。
連邦軍の中尉で、パイロットの腕と着眼点を認められ、シューフィッター(MSの調整を行うことを、靴職人に例えたもの)を勤める。
地球に居たが、仕事の都合で久しぶりにコロニーに帰ってきた。
普段はとても優しく接するが、実はいざという時の気はきつく、責任感もかなり強い。
バーニィに初めて会った時には泥棒と勘違いしてバットで殴り飛ばした。
このときバットを左手で持っていたり、アレックスのサーベルも左腕で扱ったりと左利きである模様。

その後の足取りは不明だが、以下の情報がある。
CD『機動戦士ガンダム・オデッセイ』では、後日談的なクリスのモノローグ(アル宛ての手紙という形式)の中で「自分は軍を辞めるかもしれない」と語っていた。
また、OVA『機動戦士ガンダム0083 STARDUST MEMORY』では、第7話の中盤(AE本社の森林浴施設を写したカット)ごろ、クリスに似たアナハイム社員が登場している。
ただし、これは製作スタッフによるファンサービスであり、同一人物であるという確証はない。
故に単なる「そっくりさん」とする見方もある。
30年後ガンダムやアムロと世界を超えて出会ったサンリオの猫とは関係ない。念のため。

●ハーディー・シュタイナー
(CV:秋元羊介)
ジオン軍「サイクロプス隊」の隊長で階級は大尉。
沈着冷静な人物でルビコン作戦の裏まで理解していた。ヘビースモーカーでいつもタバコをくわえている。
「シュタイナー・ハーディ」という名前だった時期があるが不自然だったので変更された。


●ガブリエル・ラミレス・ガルシア
(CV:島田敏)
「サイクロプス隊」隊員で階級は軍曹。愛称は「ガルシア」
コクピットにHな写真を貼っている。
バンダナがトレードマーク。若干乱暴でバーニィを叱り飛ばすことも多いが、実は仲間想いのいいヤツ。


●ミハイル・カミンスキー
(CV:島香裕)
「サイクロプス隊」隊員で階級は中尉。愛称は「ミーシャ」
毛糸の帽子がトレードマーク。戦闘中に飲酒したり、コクピットに酒を持ち込むなどアル中気味。
しかしパイロットとしての腕は一流である。
確かにケンプファーは青いが、間違っても青のケンプファーではない。
ちなみにバーニィの中の人とは、奇しくも2人の最晩年にゲーム作品共演することになる。


●アンディ・ストロース
(CV:星野充昭)
「サイクロプス隊」隊員で階級は少尉。
自分のテーマソングを自作し作戦中に口ずさむなどユーモアのある人物。
北極基地強襲作戦時にロケット発射を止めるため突撃。ジム・コマンドによって蜂の巣にされて死亡した。



□登場MS


ジオン側

ザクⅡ改(正式名「MS-06FZ」)
MSの規格を一元化する「統合整備計画」に基づいて作られたザクの最終生産タイプ。
ドムゲルググに匹敵するほどの性能を持っていたと言われている。
ジムのジャンクパーツで修理が出来る等整備面でも優れている。
ザクで唯一、映像作品でガンダムタイプを倒した機体である


ケンプファー
拠点攻撃を目的とした強襲型MS。多数の実弾兵器と高い機動力を持つ。
実は紙装甲というのは後付け設定で、本作の製作当時は重装甲高機動の超ハイスペック機だった。


ハイゴッグ
同じく「整備統合計画」に基づいて作られたゴッグの改修型。改修の結果、長い腕や低い全高など、殆ど別機体となっている。
前半の北極基地での戦闘シーンで活躍。
デザイン画に「ゴッグ改」という表記があり、他の統合整備計画機と異なり初めから「ゴッグ(0080版)」ではなく「ゴッグの改修型」と設定されていた。


ズゴックE
同じく「統合整備計画」に基づいたズゴックの改修型。
「すごくいい」と評判の高い名機。


リック・ドムⅡ
「統合整備計画」で作られたリック・ドムの改修機。
この当時は所謂ヤラレメカだったが、後々0083で活躍する。


ゲルググJ(イェーガー)
ゲルググの「統合整備計画」改修機。当時最新機種のゲルググもヤラレメカ。
…なのはアレックスの戦闘シミュレーター内での話
ポケ戦が産んだ狂気の産物ジオン側。ビーム「マシンガン」で狙撃できる超狙撃性能+一年戦争量産機。
「両軍合わせて最強」のカタログスペックを誇る「専用機?ナニソレオイシイノ」なぶっ飛んだ機体。



連邦側

ジム寒冷地仕様
北極基地に配属されていた序盤のヤラレメカ。デザインが秀逸。シャトル発射成功時にさりげなくにサムズアップしたり地味にカッコイイ


ジム・コマンド
ジムの後期生産型で、局地戦用の機体
地上型・宇宙型・狙撃型(後述)とバリエーションが豊富。
別名(デ)ブチジム


量産型ガンキャノン
ガンキャノンジム・キャノンを経てようやく量産されたガンキャノン。
肩のブチ穴と頭の緑色が素敵。


ジム・スナイパーⅡ
ジム・コマンドの狙撃型
ポケ戦が産んだ狂気の連邦産物の1機目。
30秒位しか画面に写っていないため、一時期MSV扱いされるほど知名度が低かったが、つい最近やっとHGUC化された。


ガンダムNT-1
通称「アレックス」
全身にマグネットコーティングを施したニュータイプ用MS。追加装備として特殊装甲「チョバムアーマー」を持つ。
一般パイロットでは機体の挙動が敏感すぎて扱えない機体。
シューフィッターに選ばれたクリスですら全力で稼働させることは到底叶わず、数分の一の出力でしか動かせなかった。

調整後はホワイトベース隊へと送られてアムロ・レイが搭乗するはずだった……。
つまり、ファーストの後半の主役機になり損ねた機体。

ポケ戦が産んだ狂気の連邦産物の2機目。
1年戦争中なのに全天周モニターや内蔵重火器を搭載し、スペックも何処かおかしい「オーパーツロストテクノロジーレベルの機体」。
こんな機体をコロニー内部で戦わせなければならなかったクリスの精神的疲労は察して余りあるものがある*2


□余談

本作のタイトルである「ポケットの中の戦争」とは、レビル将軍がこの一件を「しょせんは、ポケットの中の戦争に過ぎんさ。我々には、もっと大きな戦場が待っている」と評した事に由来する……と言われているが、実はこの台詞は本作からしばらく後に出てきたものである。
作品の内容から解釈するなら、一連の事件の全容を知るのがアル一人であることから、「戦争の真実は全てアルのポケットにしまい込まれた」と言うのが実際の所だろう。

ガンダムシリーズのパロディアニメシリーズ『機動戦士SDガンダム』にも本作のキャラが登場している。
『嵐を呼ぶ学園祭』ではバーニィとクリスが学園祭のイベント司会として登場。
『宇宙の神秘・大作戦』ではブライト・ノア率いるパトロール隊の隊員としてアムロ・カミーユ・ジュドーと並んでクリスが出演。クリスというより女らんまかリナかという乗りで奮戦した。
またその後制作されたドラマCD『機動戦士SDガンダム・こちらマッケンジー探偵社』では何とハサウェイ・ノアを相方にした名(?)探偵としてクリスが主役となり、
なぜか「オコッチャマ」(CV:神代知依)なる「万能ロボット」を従えもはや『SDガンダム』等関係ない世界でカミーユらの依頼を引き受けていた。*3
…どれでもスルーされているアルは泣いていい。
上記のメディアから見ると発表直後は「ガンダムパイロット」のクリスが優遇されていたのかもしれないが、後にバーニィ役の辻谷が『機動戦士ガンダムF91』、アル役の浪川が『機動戦士ガンダム00』・『機動戦士ガンダムUC』でガンダムパイロットとなったため、
2009年のイベント『GUNDAM BIG EXPO』内「スペシャルステージ」の歴代ガンダムパイロット勢ぞろいコーナー(宇宙世紀編)に辻谷、当時上映直前だった『機動戦士ガンダムUC』特集コーナーで浪川が登場し、林原はスルーされた。

スーパーロボット大戦シリーズ』でも何度か参戦はしているが、初期シリーズが原作再現を重視しない作風だった事や本作のストーリーの再現が難しい部類に入るためか、
参戦回数の多さに割に大半がいわゆる「いるだけ参戦」となっている。キャラ・ユニット共に微妙な能力である事も多い
このため、本作のストーリー再現が行われたのは本作を含めた一年戦争を題材とした作品が多く登場する『スーパーロボット大戦GC』まで待たなければならなかった。
ちなみに、この作品でアルにやっとまともな出番が与えられている。



今でもたまに夢に見る
運命は信じないけど…
哀しいことばかりじゃなかった……




「自治厨や立て逃げが憎いとかじゃないんだ……」

「ただ…コイツを、追記・修正したくなったんだ」



これでお別れだ

じゃあなアル!


元気で暮らせよ!

クリスによろしくな!

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最終更新:2021年03月19日 02:11

*1 高山監督はもともと「でかいブリキの箱の中に入ってパンチふるって何が楽しいんだろう」とロボットアニメに疑問を感じていた口だという

*2 ちょっとミスすれば、コロニーに大穴を開けて大問題になりかねないため

*3 この展開からか、『第4次スーパーロボット大戦』ではエンディングにおいて「戦後クリスとバーニィは結婚し、バーニィが探偵事務所を開く」という展開を迎えている。