壱時砲固定式(遊戯王OCG)

登録日:2021/03/25 Thu 00:05:35
更新日:2024/12/19 Thu 19:01:34
所要時間:約 8 分で読めます




勝利の一次方程式は、全て揃った!
......が、解けたとは言っていない。ええと、宣言する数字は...

壱時砲固定式(いちじほうこていしき)」とは「遊戯王OCG」に登場するカードの1つである。

【概要】

このカードは『BLAZING VORTEX』にて登場した罠カード。レアリティはノーマルレア
特に原作やアニメに出た訳でもない、OCGオリジナルの罠カードの一端に過ぎないのだが、このカードの効果を見たデュエリスト達から少なからず困惑の声があがったのだ。
「どうせ遊戯王お馴染みのコンマイ語がらみだろう」と思うかもしれないが、このカードに限っては別ベクトルで難解なテキストであった。

それでは、実際にそのテキストをご覧に入れたい。初見の諸君は試しに読み返したりせずに一回だけサッと読んでみるといいだろう。




壱時砲固定式(いちじほうこていしき)
通常罠
このカード名のカードは1ターンに1枚しか発動できない。
(1):自分・相手のバトルフェイズに、1・2・3・4・5・6のいずれかの数字を宣言して発動できる。
相手フィールドの効果モンスター1体を選び、以下の数値を合計した数が自分の墓地のカードの数と同じ場合、
宣言した数まで自分のデッキの上からカードを墓地へ送り、墓地へ送った数まで相手フィールドのカードを選んで持ち主のデッキに戻す。
違った場合、自分は宣言した数×500LPを失う。
●選んだモンスターのレベル×宣言した数
●相手フィールドのカードの数



さて、諸君は無事に一回でこのカードの効果を理解しきっただろうか?
そう、このカードは複雑化の一途をたどる遊戯王のカード達の中でも、特に効果の内容が理解しづらいものであったのだ。
なぜ、このカードがそんなにも理解が難しいテキストとなっているのか? 順を追って解説していきたい。

もはや現代遊戯王にとって恒例の「1ターンに1枚しか発動できない」縛りの文はいいとして、(1)の効果を順番に見ていこう。

①:「自分・相手のバトルフェイズに、1・2・3・4・5・6のいずれかの数字を宣言して発動できる。」

まだ1文目ともあって、この程度であれば遊戯王を知らない人でも理解は容易であろう。
宣言する数字の範囲から「ひょっとしてダイス関係のカードか?」と思う人もいるかもしれないが、このカードはサイコロとは全く無関係である。

そして、特に問題となるのは次である。


②:「相手フィールドの効果モンスター1体を選び、 」


ここで「ん?」となるデュエリストが多かったのではないかと思われる。
なぜなら、先ほど宣言した数字が結局何を参照するものなのか全く明かされないまま、相手の効果モンスターを一体選ばせられるのだ。
だがまあ、どうせ読み進めていけばすぐに分かるだろうと思い続けて読んでみると...


③:「以下の数値を合計した数が自分の墓地のカードの数と同じ場合、宣言した数まで自分のデッキの上からカードを墓地へ送り、墓地へ送った数まで相手フィールドのカードを選んで持ち主のデッキに戻す。違った場合、自分は宣言した数×500LPを失う。 」


一気に一区切りまで読んでみたデュエリスト達は、さらに首をひねる事になる。
なぜなら加えて4行近くまで読んでみたにも関わらず、「最初に宣言した数字は何だったのか」「効果モンスターを選んだ意味はなんだったのか」、よく分からないのである。


一応、宣言した数字については少し触れられている。
「宣言した数まで自分のデッキの上からカードを墓地へ送り、墓地へ送った数まで相手フィールドのカードを選んで持ち主のデッキに戻す。違った場合、自分は宣言した数×500LPを失う。 」と書いてある。
つまり、成功すれば宣言した数だけ墓地を肥やせる上に相手のカードを対象を取らずにデッキバウンスまで追い込めるのだ。それは確かに強力である。


だが、その成功とは一体何なのかと改めて読み直してみると...


「以下の数値を合計した数が自分の墓地のカードの数と同じ場合」


とある数字を合わせた数と、自分の墓地のカードの数が同じ場合...らしい。
ここにきてまた新たな参照場所として「自分の墓地のカード枚数」が挙げられ、ますますややこしくなってくる。
そして、最後にその「以下の数値」とやらを載せることによってこのカードテキストは終わりを告げる。

④:
●選んだモンスターのレベル×宣言した数
●相手フィールドのカードの数


そう、最後の二行にてようやく②の時に自分がモンスターを選んだ意味が分かったのだ。
単なるレベル参照だけにモンスターを選んだのだ。別にモンスターをどうこうするわけでもなく。ただし、この効果に成功すれば、その選んだモンスターをもデッキバウンスすることを狙える。


ここまで解説をしてみたが、結局のところこのカードが分かりにくい理由は、「参照したものをどう使うのかすぐに分からない」「そもそも参照するものが多い」という2点が挙げられる。

この一枚の罠カードだけで
  • 「宣言した1~6のいずれかの数字」
  • 「選んだ相手フィールドの効果モンスター1体のそのレベル」
  • 「自分の墓地のカード枚数」
  • 「相手フィールドのカードの数」
と、4つも数を参照している。(1)の効果にこれほど参照すべき数を詰め込んでいるカードは初ではなかろうか。

もし、あえてこのテキストをわかりやすく書き換えるとするならば......

壱時砲固定式(いちじほうこていしき)
通常罠
このカード名のカードは1ターンに1枚しか発動できない。
(1):自分・相手のバトルフェイズに、1・2・3・4・5・6のいずれかの数字を宣言して発動できる。
相手フィールドの効果モンスター1体を選び、「選んだモンスターのレベル×宣言した数相手フィールドのカードの数」と、「自分の墓地のカードの数」を確認する。
同じ場合、宣言した数まで自分のデッキの上からカードを墓地へ送り、墓地へ送った数まで相手フィールドのカードを選んで持ち主のデッキに戻す。
違った場合、自分は宣言した数×500LPを失う。

こんな感じであろうか。もしかしたら、余計に分かりにくくなったと思うデュエリストもいるかもしれないが。

カード名や効果は数式の「一次方程式」を踏襲している。
つまり、「宣言する数字をX選んだ相手モンスターのレベルをa相手フィールドのカードの数をb自分の墓地の枚数をYとして、一次方程式「Y=aX+b」が成立する時、相手フィールドのカードをバウンスできる」という事になる。
こうして数式を交えて表記するのがもっとも分かりやすいはずだが、遊戯王のテキスト上で一次方程式を使うわけにもいかなかった結果、このようなテキストになってしまったものと思われる。


使用法

散々テキストの難解さを解説してきたので、そろそろ実戦デュエルでのこのカードの使い心地を考えてみよう。
……とは言っても、正直なところ現状は環境レベルで活躍させるのは非常に難しいカードである。
「効果の発動を相手に依存してる時点で弱い」と昨今のガチ勢の間で言われている中、このカードは「相手フィールドの効果モンスターのレベル」「相手フィールドのカードの数」と、思いっきり相手に依存している。
レベルを持たないエクシーズモンスターリンクモンスターしか相手の場にいない場合、このカードは発動すらできないのだ。
「自分の墓地のカード枚数」にしたって、特殊な構築をしてない限り枚数をコントロールをするのはちょっと難しい。
メインフェイズに使えればまだこの辺の難易度は低かったのに…
なので一番自由の効く「1~6のいずれかの数字」を上手く宣言する必要がある。

しかしそうなるとこのカードを使う場合、常にどの数値を宣言すればよいか考える必要があり意識が削がれやすくなるデメリットが生まれる。
相手の未公開カードが何か、それを含めて次にどう動くかといった先読み要素も常に考えるデュエルにおいて、目先の数値計算に思考力がそがれるのは結構不味い。

しかもバトルフェイズ限定が祟って、狙った条件が揃ったら即発動!もしにくい。

とりあえず「自分の墓地のカードの数−相手フィールドのカードの数」=「選ぶモンスターのレベル×1〜6」と捉えれば条件は掴みやすいか。……え?そんなことない?

最終的には「宣言する1〜6」の数字がデッキバウンスの枚数になる。
大きい数を選びたいところだが、ここで大きい数を選ぶと必然的に大量の墓地肥やしと枚数調整が要求される。
例えばレベル4モンスターをマトに選ぶとしても、単純に考えても4〜24枚+αの枚数調整が必要。
メインアタッカーになるような高レベルモンスターを想定すると、期待できる枚数はさらに下がる。



それでも、仮に条件を満たして方程式を解けたとしよう。
だがこいつは超融合みたいなチェーンを不可にする効果がないのでカウンターができる、
どころかフリーチェーンで参照する数字の場に手を加えられるカード、特に除去系で簡単に計算を狂わせられて簡単に不発する。
特にA~Bみたいな一定範囲ではなくジャストを求めるのでなおさら。

一例:
壱時砲「今度こそは解もできた!くらってデッキに戻りやがれ!!壱時キャノン!!!
サイクロン「あなた自身を数え忘れてますから駄目ですね。」
壱時砲「(´・ω・`)・・・」

一応、「くそめんどくさい解なんていちいち解いてないであろう」理論で、そこまで読んで数字を選ぶ運用も出来なくはないが、
読みあいによる勝利を至上とする大会ならともかく、
友達と気軽にワイワイしてる中、相手にデュエルに支障が出るレベルの計算を無理強いでさせてまでしてこのカードを使いたいかと言うと…。
うん、無用なトラブルを避けるなら使わないのが無難だよね!、ってなりがちなのもなんとも…。

こうみるとなにかと駄目な部分が目立つが、流石にリターンは小さくない。
墓地を肥やすのはもはやメリットにならないデッキの方が珍しいくらいにはなってきたので、大概のデッキの手助けとなる。
正直、ここまで難しいと「ランダム墓地肥しなんてけちくさいこと言わず、ドローでもバチはあたんなかったんじゃあないか」とは思えちゃうが。
なにより目玉の対象を取らないデッキバウンスというのが特に強力で、完全耐性持ち以外はほぼ除去できると考えていい。
例え宣言した数字が1だったとしても1:1交換なので損はしない。「大抵は準備段階で消費するだろ」だって?知ら管

なお、「6を宣言すればほぼノータイムで自分のライフ3000を確実に削れる」という方面での使い道も一応なくはない。基本的には自分のライフ削りに使いつつ、上手く状況が整ったら本来の効果を狙う……なんていうのもアリといえばアリだが、ライフ削りだけが目的なら他にも有用なカードは山ほどあるので、やはりこの使い方もネタの域は出ないだろう。

とにもかくにもカード枚数の調整と計算が難しいところではあるが、是非とも勝利の一次方程式を解いて、逆転の一手として狙って欲しいロマンカードと言えるであろう。


【関連カード】

連慄砲固定式(れんりつほうこていしき)
通常罠
(1):レベル・ランクの合計が、お互いの手札・フィールドのカードの数と同じになるように、
自分のEXデッキからXモンスター2体(同じランク)と融合モンスター1体を除外する。
その後、以下の効果を適用できる。
●相手フィールドの表側表示モンスター1体を選び、
レベル・ランクの合計がそのモンスターのレベル・ランクと同じになるように、
自分の除外状態の、Xモンスター1体と融合モンスター1体をEXデッキに戻す。
その後、相手フィールドのカードを全て除外する。

『LEGACY OF DESTRUCTION』にて登場したまさかの続編。レアリティは勿論ノーマルレア。
更に情報公開されたのは2024年1月14日と大学入試共通テスト2日目であり、ちょうどその日は数学のテストの日でもある、と明らかに意識している。
名前の通りに今度は「連立方程式」を元にしており、「コストとして除外するエクシーズモンスターのランクをX同じくコストとして除外する融合モンスターのレベルをY互いの場・手札の合計枚数をa相手モンスター1体のレベル・ランクの数をbとして連立方程式「2X+Y=a、X+Y=b」が成立する時、相手の場のカードを全て除外できる」と言う物。
バトルフェイズ限定と言う制約やライフロスのデメリットがなくなり、使いやすくなっただけでなく相手の展開を妨害する使い方も出来るようになっている。
その代わりに発動コストとして同ランクエクシーズモンスター2体融合モンスター1体とを要求する様になり、相手の場だけではなく互いの場・手札の合計枚数を計上する必要が出たため数字の管理がより厳しくなっている。
オマケに前半の数式である「2X+Y=a」を満たさないと発動すら出来ないため、変動が激しい互いの場・手札の合計枚数に対して幅広く対応しようとするとそのためのコスト用モンスターでEXが圧迫されて戦術の幅が狭くなってしまうのも無視できない。

運用するにあたってはある程度狙い撃つ互いの場・手札の合計枚数相手モンスター1体のレベル・ランクにヤマを張っておき、エクシーズモンスターはランク1〜3と低めのランクで1組、多くても2組用意しておき、融合モンスターはレベルがバラバラになる様に多めに入れてある程度調整出来るようにしておくのが無難。狙い撃つ相手モンスター1体のレベル・ランクに関しては7〜10辺りにしておくとこちらから壊獣などで調整出来るためなお良し。
また、後半の数式である「X+Y=b」は除外効果を適用するために必要なだけで、実は「2X+Y=a」さえ満たしていれば発動は出来る上にレベル・ランクを参照するモンスターは効果処理時に決定するので、除外が出来ない状態で発動する事で相手に計算フェイズを与えて相手の持ち時間を削ったり、計算を嫌った相手に無効効果を使わせて無駄撃ちさせるなんて姑息な使い方も可能。
更に言うと後半の効果で除外ゾーンからEXに回収する融合モンスター・エクシーズモンスターは発動時に除外した融合モンスター・エクシーズモンスター以外でも良いのであらかじめ別のレベル・ランクの融合モンスター・エクシーズモンスターを除外しておいてそれらを使って調整する事で除外条件を満たすなんて事も可能。カンペかな?




追記、修正はこのテキストを一発で理解できた方にお願いします。
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最終更新:2024年12月19日 19:01