アバター(2009年の映画)

登録日:2021/04/12 (月) 08:23:35
更新日:2024/03/18 Mon 17:13:39
所要時間:約 10 分で読めます






もうひとつの体。もうひとつの運命。



観るのではない。そこにいるのだ。



『アバター(AVATAR)』とは、2009年公開の米映画である。

概要

地球から遥か離れた未知の惑星を舞台に、星の中の冒険と自然を巡って起こる戦争を描いたSF巨編。

監督は『ターミネーター』『エイリアン2』『ターミネーター2』を生み出し、『タイタニック』で映画史の記録を塗り替えたジェームズ・キャメロン。
キャメロンは今作を10代の頃から構想を練り始め、1995年からプリプロダクションをスタートさせたが、テクノロジーの関係でなかなか本格的な製作には乗り出せなかった。
しかし、2000年代になり、映像技術の発展に伴い、モーションキャプチャーを駆使したデジタル技術を大いに活用し、さらには本作を、立体かつ奥行を十分に映えさせる3Dカメラによる撮影を敢行。
現実離れしたクリーチャーや異星人の描写にも、一切の妥協のないこだわりが入った映像となった。

全編にわたる3Dの効果により、圧巻の映像美には多くの賞賛の声が寄せられ、「映像革命」として話題が沸騰。
この映画をきっかけに3Dの上映システムが全世界的にも普及し、特にIMAXシアターの知名度も飛躍的に向上したという見解もある。
更にはブルーレイディスクの普及にも一役買い、3D環境を自宅で楽しめるBlu-ray 3Dの開発に繋がったのも記憶に新しい。

しかし、映像の美しさが高評価の一方で、ストーリーに関しては「陳腐」「類型的」「『ダンス・ウィズ・ウルブズ』や『ポカホンタス』で見たことある」といった批判も少なくない。
「軍隊を露悪的に描き過ぎている」と問題視された事もあったという。
日本人的にはハリウッド版もしくはSF版もののけ姫との見方も。
また、本作のヒットをきっかけに急遽3D上映を決定した映画が頻発し、3D変換技術の質も現在と比べて低かった影響もあり、低品質な3Dが映画自体の酷評に繋がってしまった作品も少なくない。

本作の興行成績は凄まじく、公開されるや否や日本を含めた世界中で天井知らずのヒットを記録した。
公開41日目で『タイタニック』の記録を破り全世界最高興行収入を樹立。47日目で世界初の20億ドルを突破した作品となり、最終的には世界興行収入は27.8億ドルを記録した。
この偉業は、2019年公開の『アベンジャーズ/エンドゲーム』の27.9億ドルに抜き去られるまで維持していた。

さらに、2021年の中国での再上映により、『エンドゲーム』の記録をさらに抜き、再び世界興行収入第1位の座に返り咲いた。


2021年現在、キャメロンは本作のシリーズを5作目まで製作中である。海洋ドキュメンタリーのノウハウを生かした作品になる予定で、延べ10年以上ものの製作期間が設けられた。
2作目となる「アバター:ウェイ・オブ・ウォーター」は2022年12月公開。

また、海外ディズニーパークのアニマルキングダムには本作の世界観を再現したテーマエリアが建設された。


ストーリー

西暦2154年、人類は宇宙に進出し、外宇宙の惑星の開発を進めていた。

そんな中、元海兵隊員のジェイクは戦闘で負傷し、車椅子での生活を余儀なくされていたが、ある日、彼は地球から離れた惑星「ポリフェマス」の衛星「パンドラ」での滞在任務を命じられる。
パンドラでは、鉱物資源の採掘が進められていたが、大気が地球人にとって有毒だったため、それを解決するために、ハイブリッドのDNAを組み合わせて出来た肉体「アバター」を使っての研究が進められていた。
ジェイクは、アバタープロジェクトの研究者の双子の弟だったため、その代役としてアバターの肉体を使う任務を与えられる。
科学者グレースの下で、自由に動ける肉体を駆使しながらパンドラの研究を続けるジェイクは、ある日調査隊からはぐれ、先住民のナヴィ族の族長の娘・ネイティリに助けられる。
そのまま成り行きでナヴィ族と交流をすることになったジェイク。最初は軋轢はあったものの、徐々にネイティリをはじめとしたナヴィ族の面々とも打ち解けていき、次第に調査隊も交流を深めていく。
しかし、一向に進まない採掘活動に業を煮やした海兵隊と企業の上層部は、遂に強硬手段に出、自然豊かなナヴィ族の住処を焼き払おうとする。
ジェイクはパンドラの自然を守るために、ナヴィ族と共に海兵隊に立ち向かう決意をする。


登場人物

地球人

  • ジェイク・サリー
演:サム・ワーシントン/吹き替え:東地宏樹
元海兵隊員。戦闘で大怪我を負った影響で歩けなくなり戦線離脱を余儀なくされ、戦士としての復帰を望んでいた。
そこへ、双子の兄がアバタープロジェクトに参加し、彼が亡くなったためにその代役としてアバターの肉体を使う任務を与えられる。
久しぶりの自由な肉体を謳歌するが、任務の最中にナヴィ族に出会い、彼らとの交流を深めるうちに、パンドラの自然と生活を愛するようになる。
しかし、クオリッチの圧力との板挟みとなり、それが露呈してしまって一時は関係が破綻してしまったが、
命をかけてナヴィ族に戻り、彼らと共に海兵隊相手に戦うこととなる。

  • グレース・オーガスティン
演:シガニー・ウィーバー/吹き替え:弥永和子
アバタープロジェクトの責任者の植物学博士。
15年以上もパンドラで生活し、パンドラの自然をこよなく愛しており、開発を推し進めようとしている企業や海兵隊からは煙たがれている。
ジェイクを通してナヴィ族とも交流を深め、彼らと友好な関係を築くことを願っている。

  • トルーディ・チャコン
演:ミシェル・ロドリゲス/吹き替え:杉本ゆう
「トルーディ」は愛称形なので、おそらく正式には「ガートルード・チャコン」と思われる。
海兵隊員の一人で、凄腕の女性ヘリパイロット。コールサインは「サムソン16」。
アバタープロジェクトの関係者運搬を担当しており、隊の中でもグレースに理解のある人物。
RDAのホームツリー攻撃強行には反感を示し、一人攻撃に加わらず離反、ジェイク一党を援護し彼等を森に脱出させる。
反乱でもジェイクやナヴィ族に味方し、彼女と彼女のヘリもオマティカヤ族の戦化粧を施して空中戦での戦力となった。

  • ノーム・スペルマン
演:ジョエル・デヴィッド・ムーア/吹き替え:清水明彦
アバタープロジェクトの研究者で、パンドラの生物研究を担当。
ジェイクと歳が近いこともあって、彼の理解者となる。

  • マックス・パテル
演:ディリープ・ラオ/吹き替え:村治学
アバタープロジェクトの医師。アバターへの意識転送を担当。
彼もジェイクの離反時に協力者となるが、ジェイクから「信頼できる人に残ってほしい」と頼まれ、基地でRDAの動向をリークする密偵として活動する。

  • マイルズ・クオリッチ
演:スティーブン・ラング/吹き替え:菅生隆之
パンドラに駐屯している海兵隊の大佐。事実上RDA実働部隊の指揮官を担う。
顔の傷はパンドラ到着直後に付けられたもので、地球の技術であれば治せるが戒めとして敢えてそのままにしている。
大の戦闘狂で、先住民であるナヴィ族を一掃してパンドラの自然を蹂躙する欲望に渦巻いている。
ジェイクに「ナヴィ族を立ち退かせたら手術を受けさせてやる」と約束するも、躊躇する彼に業を煮やして強硬手段に出る。
ホームツリー攻撃作戦、続くオマティカヤ族一掃作戦でも前線指揮官として参戦、ナヴィの側に立ったジェイクを相手にAMPスーツを駆って戦いを挑む。
一応、面倒見の良さという意味ではそこまで悪い人物ではなく、ジェイクの事情に親身になり腰の治療を約束する、
作戦終了後に部下全員に「よくやった、みんな後で一杯奢る」と連絡するなどしており、異文化を理解する気がゼロという面で全てを台無しにしている感が強い。

  • パーカー・セルフリッジ
演:ジョバンニ・リビシ/吹き替え:難波圭一
宇宙開発企業RDAの基地の所長。
鉱物資源採掘による金儲けに執念を燃やしており、そのためならばパンドラの破壊も厭わない、典型的な金利主義。
グレースからエイワいついて説明され、その研究価値や希少性を懇切丁寧に説明されるも全く理解しようとしなかった*1
ホームツリー攻撃前にジェイクに最後の説得チャンスを与える場面もあったが、温情を見せたというより「あまりにうるさいから仕方なく」という面が強く、
ましてやナヴィを必要以上に傷付けさせないためという意識は見られなかった。


ナヴィ族

  • ネイティリ
演:ゾーイ・サルダナ/吹き替え:小松由佳
ナヴィの一派、オマティカヤ族の族長の娘。
弓矢の腕に優れ、高い戦闘力を身に着けている。
部族の人々や自分の住む豊かな自然を愛しており、そのためならば外敵を排除する覚悟を持っている。
当初は異物であるジェイクを嫌っていたが、パンドラの木の精に気に入られ、自然にも敬意を払うようになった彼に心を許していく。

  • モアト
演:CCH・パウンダー/吹き替え:滝沢ロコ
オマティカヤ族の族長夫人で、ネイティリの母。
エイワとの精神交感に通じているシャーマン的な存在。

  • エイトゥカン
演:ウェス・ステューディ
オマティカヤ族の族長で、ネイティリの父。
部族の存続のため、異分子に対しても厳格に対処する。
ネイティリの手引きでジェイクと出会い、当初はただの異分子としか見做さなかったが、彼が「俺は軍人、つまりカイヘイタイ部族の戦士だ」と名乗ったことで、
「地球にも戦士が居るのか」と関心を持ち、彼がオマティカヤ族と行動を共にし文化を学ぶ事を許可する。
ジェイクがハンターとしての修行を終えると、遂に彼をオマティカヤ族の一員として認めた。

  • ツーテイ
演:ラズ・アロンゾ/吹き替え:竹田雅則
族長の補佐を務めるナヴィ族の若き兵士。ネイティリの婚約者。
地球人を「ドリームウォーカー」「スカイピープル」などと呼んで敵視しており、
ジェイクの事も信頼しておらず、彼に幾度も敵意を向け、ネイティリに警告する。
しかし幾度もの衝突を経て遂にジェイクと和解、彼の理解者の一人となる。


用語

  • パンドラ
地球から5光年離れた惑星「ポリフェマス」の衛星の一つ。
地球を遥かに上回る自然に囲まれ、神秘的な宙に浮かぶ山や肥沃な山林、圧倒的な水資源に覆われている。
大気成分そのものは地球と大差ないが、非常に揮発性が強いためフィルターを兼ねた専用のマスクが無ければ人間は呼吸不可能(もしマスク無しで屋外に出れば20秒で意識が無くなり5分で死亡するとの事)であり、獰猛な土着生物が多数生息する事もあって生活には困難を極める。
アンオブタニウムの影響で地磁気が非常に強く、そのため地球人が使う機械の計器類は常にノイズが入ってしまう。
前時代的とも言えるヘリコプターをRDA社が多用するのもそのため。

  • ナヴィ
パンドラの先住民。青い皮膚に高い身長が特徴。天然の炭素繊維で構成された強靭な肉体を持つ。
高い運動神経を有し、動物を自在に駆使しながらの戦闘に長けている。
フィーラーと呼ばれる触覚を使って精神交感をすることができる。
パンドラの各地に複数の部族に分かれており、下記オマティカヤ族の他に海を拠点とし女性が族長を務める部族なども確認されている。
地球人がパンドラの空気を吸うと前述の通りだが、逆にナヴィも地球人用に調整した空気では長時間の活動は出来ず、定期的にボンベから吸引しなければならない。

  • オマティカヤ族
ジェイクが交流する、ネイティリ等が属するナヴィの一族。
一族となる者は「オマティカヤの息子」であり、信仰上一族は皆兄弟として扱われる。
住処としている巨大な樹「ホームツリー」の下には膨大なアンオブタニウムが埋蔵されており、
地球側が立ち退きと引き換えに様々な便宜や物資の提供を申し出ているが全く応じていない。
またその過程上、一部の者に英語教育が施されているため、ネイティリ等はカタコトながら英語を話す事ができる。

  • アバター
地球人がパンドラで生活するために開発された、人造の肉体。
地球人とナヴィのDNAを組み合わせて造られ、「化身」の名の通り使用者はこの肉体に意識を転送することでパンドラでの生活が可能となる。
当然、使用中は元の肉体が無防備となるため、元の肉体が死んだら元には戻れなくなる。逆にアバターが重症を負っても元の肉体は問題ない。(かなりのショックを受けるようだが)

  • エイワ
女神の様な存在としてオマティカヤ族から信仰されているもの。全ての生命を見守っていると言い伝えられている。
その正体はパンドラの植物が持つ神経ネットワークの集合体。
つまりパンドラの全ての植物がこのエイワに繋がっており、ナヴィも「魂の木」から意思を交感する事ができる。
女性の様な意思を持っているらしく、パンドラを包んでいる星の意思とでも言うべき存在として「女神」は実在している。

  • バンシー/イクラン
ナヴィ族が駆使している飛行生物。フィーラーで精神接続することで意思疎通しながら操ることができる。
このイクランを操れるようになる事がオマティカヤ族に於ける一人前の証である。イクランは生涯ただ一人のナヴィのみ乗せるという。
続編の描写を見るにイクランを失ったナヴィ側はまた別のイクランに乗る事ができる様だが、
同作のパンフレットによると、相棒のイクランを失ったナヴィはしばらく喪に服すという。

  • ダイアホース
ナヴィ族が駆使している陸上生物。主に移動手段として使われる。

  • レオノプテリクス/トルーク
バンシーよりも遥かに巨体な飛行生物。
現地語名「トルーク」とは「最後の影」、即ち「トルークが自分の上に影を落とす事があれば、それが生涯最後に見る影である」の意味を持ち、
それに相応しい強さを持つパンドラに於ける絶対的な捕食者。
御するのは困難を極め、トルークと精神を交感し操る事に成功した者「トルーク・マクト」はオマティカヤ族の歴史の中でも数人しか確認されておらず、
またトルーク・マクトはその威容を以てナヴィの各部族を糾合したという。
ジェイクは「食物連鎖の頂点故に天敵が居ないので、おそらく頭上は無警戒だろう」と推測を立てている。
勿論、それに気付きトルークに取り付けたとして、その後心を交わす事ができるかは別問題である。
因みに、おそらくはこれに由来する「トルーク・マクト」という名前の競走馬がいる。騎乗者の名前を馬に付けてどうすんだ

  • アンオブタニウム
パンドラで採掘される特殊なレアメタル。地球では2000万ドル/kgという破格の値段で取引されているという。
地球のエネルギー問題を解決できる鉱物とされており、RDAが血眼になって得ようとしている。

  • AMPスーツ
海兵隊が誇る最大の兵器であるパワーローダー。気密服の機能も兼ねており、ハッチを閉じている限りはマスク無しでパンドラでの活動が可能。
また非常用にマスクも備え付けられている。
銃剣付きの30mm機関銃が主武装で、クオリッチ専用機には火の玉のマーキングとナイフが装備されている。
操縦方法はマスタースレイブ式。籠手状のコントローラーで上半身の操縦を行う。
機動力、火力において最強クラスを誇り、生身で戦うものならほとんど勝ち目はない。
本作におけるメカ要素にして最大の燃え要素であり、敵サイドのメカではあるものの、多くの映画ファンを魅了した要素の一つ。
設定によると三菱重工製らしい。

  • ヴァルキリー
地球-パンドラ間を運行する宇宙船に2機搭載されている宇宙往還機。
最終決戦時は機体上部に銃座を設置し、またカーゴベイに大量の爆弾を搭載し爆撃機として運用された。

  • サムソン/スコーピオン
サイドバイサイド型に配置したダクテッドファン型2重反転ローター式ヘリコプター。
大まかなシルエットは似ているが、機体上部に飯盒のようなインテークと機体左右に4連ロケットランチャーがあり、尾翼がY字型なのがサムソン、
大小4枚のスタブウイングとそれに懸架された六角柱状のロケットランチャー等の重武装を持ち、尾翼がH字型なのがスコーピオンである。
外見からうかがえる通り、スコーピオンはガンシップ、サムソンは人員・物資輸送ヘリの意味が強いが、サムソンもドアガンナーを乗せる事で戦闘にも使用可能。
コールサインは「ガンランナー」など。

  • ドラゴン
サムソンが巨大化したかの様な大型航空機。ダクテッドファンローター4機で飛行する。シルエットはほぼ亀である。
機関銃やロケットランチャーといった武装を大量に積んでおり、また複数機のAMPスーツを搭載しヘリボーンを行う事も可能。
劇中登場機には東洋龍のマーキングが入っており、クオリッチ搭乗時のコールサインは「パパ・ドラゴン」である。
RDA実働部隊の実質的な指揮・管制機。

なお人間側の兵器は作中の世界では50年前の旧式であると語られている。これは最新鋭の兵器ではパンドラの磁器の影響を受ける為。




追記・修正はエイワと繋がってからお願いします。

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最終更新:2024年03月18日 17:13

*1 異星とはいえ、いきなり「植物一つ一つが意思を持ち、惑星規模で繋がっている」と言われてもピンとは来ないだろうが。しかし彼は昨日今日パンドラに来てその特異な自然環境に初めて触れた人間ではなく、それなりに長くパンドラに居住している。