梶本(ゴルゴ13)

登録日:2021/07/29 Thu 11:30:12
更新日:2021/08/01 Sun 01:02:50
所要時間:約 14 分で読めます




ち、ちくしょうっ! こ、この男の無言が……最高の恫喝だっ!


この記事では、漫画「ゴルゴ13」にジャーナリストとして登場する、「梶本」という架空の人物について紹介する。




【概要】

漫画「ゴルゴ13」に登場する日本人ジャーナリスト。東洋通信のメキシコ支局に勤務している。

ゴルゴ13では裏社会とは関わりのない一般人のゲストキャラクターがゴルゴ13と様々な形で関わることはよくあることだが、
彼はゲストキャラクターどころか、物語に5回(※SPコミックス201巻時点)も登場しており、
(一般人よりは事件に出会いやすい立場の報道関係者とはいえ)一般人としては異例の出番の多さを誇る。

そしてそのたびに、ゴルゴに直接的あるいは間接的に振り回されてコミカルな姿を晒すことになり、
シリアスな世界観のゴルゴ世界においてコメディ的なキャラとして一種の清涼剤的な役割を果たしている……のかもしれない。

そんな彼を一言で言い表すと、彼の上司曰く「運だけは良い男」とのことだが、全くの偶然でゴルゴに何度も遭遇し、痛い目にも美味しい目にも逢っていることから、
「不幸体質ではあるが同時に強烈な悪運も呼び寄せている男」とでも言った方が正確かもしれない。



【人物像】

梶本という名前からも分かるとおり日本人。下の名前はSPコミックス201巻時点でまだ不明。
顔はお世辞にもハンサムとは言い難い、ちょっと気の抜けた三枚目といった感じの容姿に、中肉中背の標準的な体型。
年齢については、高校の同窓会が20年ぶりということから、SPコミックス201巻時点で38歳あたりと推測される。

報道機関に勤めているだけあり、正義の心を持った勇敢な人物……などということは無く、記者としては実にグータラで不真面目な人物。

勤務時間中に上司が近くにいるにも関わらず仕事用のパソコンでアダルトサイトを見るわ、飲み屋で知り合った男から聞きかじった話だけで裏も取らずに記事を書くわ、
ODAなどの国際的な経済支援事業についても一般人と同程度の知識しか無いわ、ゴルゴを追うあまり本来の目的の取材をすっぽかすわと、無能なエピソードには事欠かない。
当然ながら、社内での評価も低く、彼の上司や先輩はもちろん、後輩からもだいたい無能扱いされているダメ社員である。

性格面でも、命をかけて自ら危険に飛び込んでいくような勇敢な正義感を持っているわけでは無く、自分の安全が最優先。
「命を賭けてゴルゴを記事にしてみるか?」と上司から聞かれた際には、「命は一つしか無いんだから大切に使わないと」と答えているあたりからも彼のモットーが窺える。
決してジャーナリストとして大成する器ではないかもしれないが、なるべく危険を避けようとする彼の臆病なところが、ゴルゴの関わる話に5回も登場しながら未だ殺されずに生き延びている理由なのかもしれない。

いちおう彼の名誉のために言っておくと、記者としてスクープをモノにしようという情熱はしっかりと持っており、方向性こそ時々ズレることがあるが、スクープを追っての行動力はなかなかの物がある。
また、一目で中南米の国の高官の顔を見分けられるなど、人の顔を覚える記憶力は確かなものがあったり、海外暮らしが長いために流暢なスペイン語を身に着けているなど、
記者としての素質が低いわけでは無い。あくまで普段の勤務態度がグータラなだけなのである。……たぶん。


【ゴルゴとの関わり】

ゴルゴ世界にも報道に関わるジャーナリストは大勢出演しているが、その中でもゴルゴと深く関わり、何度も登場する人物となると意外と限られている。
その代表例としてファンから真っ先に挙がるのはおそらくマンディ・ワシントンだろうが、彼の場合は報道に携わる者としての使命感から、ゴルゴの正体を掴もうとして自ら関わったのがきっかけであった。

対して梶本の場合は、確かに報道機関に勤める人間ではあるものの、自ら積極的にゴルゴを追おうとしたことは一切無いにも関わらず、
本当に偶然に仕事で行った先々でゴルゴと何度も遭遇する、それどころか一度はゴルゴの方から接触してくるなど、本人の全く意図しないところでゴルゴと関わるという珍しい立場にある。

ゴルゴと関わることによって、本来の仕事をすっぽかす羽目になったり、ゴルゴの共犯と疑われて警察に一時拘束されるなど悲惨な目に遭っている一方で、
(間接的にではあるが)ゴルゴの仕事がきっかけで独占スクープを入手したり、ゴルゴから多額の報酬を受け取るなどの美味しい目にも遭っている。

梶本のゴルゴに抱く印象は、三回目の登場である『人形の家(SPコミックス167巻)』でゴルゴの詳細を知る前と後で大きく変わっており、

『人形の家』より前:「あいつがゴルゴか! それならあいつが誰かを狙ってるってことだから凄いスクープが撮れそうだな!」
『人形の家』以後:「やばいぞゴルゴだ! あいつと関わったら俺もどんな目に遭わされるか分からない! どうすりゃいいんだ!」

……といった感じで、初登場時と3回目以降の登場ではゴルゴを目にした時の反応が全く違っているが、
どちらにしてもゴルゴを目にしたことで描かれる梶本の様々なリアクションが、彼が登場するエピソードにおける面白さの一つとなっている。

それはそれとしても、ゴルゴが依頼を受けるような事件の多くは悪党が関わる血なまぐさい案件であるのは間違いなく、
そんなゴルゴに何度も関わりながら今まで殺されずに生きてこられたのは、ひとえに毎回のようにゴルゴの仕事現場に直接居合わせることが無くて済む彼の悪運の強さと、
自分の命が最優先で危険に深入りしない臆病さあってのものであろう。



【本編での活躍(?)】


各回での梶本の主な行動やゴルゴとの関わり、結末などを簡潔に記す。
その内容上、各話のネタバレも含むため、ネタバレを避けたい方は要注意。

メキシコ支局に勤めているため、基本的に中米や南米を舞台にしたエピソードで登場することが多い。


両洋の狭間に(SPコミックス131巻)


初登場回。パナマで開催される国際会議の取材をしに来ていたところで、ゴルゴを見かけ、記者の経験と勘から只者ではないと判断。
その直後、知り合いの記者からの情報で国際会議に出席する台湾総統の暗殺計画の可能性を知ると同時に、自分が見かけた男がゴルゴ13だと確信。
スクープを狙うべく本来の取材そっちのけで暗殺が起こりそうな場所を駆け回ることとなる。

ゴルゴが何かをやらかすだろうという直感までは間違ってはいなかったのだが、ゴルゴのターゲットや暗殺場所の読みを完全に外してしまい、行動は空回りに終わってしまう。
その結果、本来の取材の目的である国際会議の共同記者会見への出席をすっぽかしてしまい、上司から大目玉をくらうこととなった。

この回では終始ゴルゴに振り回される普通の人間として描かれていたが、そんな彼がこの後何度も何度も登場しようとはこの時誰が思っただろうか。

梶本が初登場したこの回の時点で、彼もゴルゴ13という一流のスナイパーの存在は既に知っていた。曲がりなりにも報道機関にそれなりに長く勤めているとゴルゴの名前くらいの情報は入ってくるらしい。
ただしこの初遭遇の時点で既にゴルゴからもしっかりと顔を覚えられており、ここから梶本とゴルゴの切っても切れない縁が始まるのであった……。


ODA異聞(SPコミックス135巻)


パナマの事件から3年後の時間軸で二度目の登場。中米の小国・バルボア共和国で行われる日本の経済支援の式典の取材に、女性記者の谷山と同行する。
取材前に立ち寄った市場で、ゴルゴがバルボア国の大臣と話している場面に偶然遭遇したことでスクープの匂いを嗅ぎ取り、谷山と別れて勝手な単独行動を取ってしまう。

しかしまたしてもゴルゴのターゲットを読み違え、式典そっちのけで見当違いの張り込みを続けた結果、ゴルゴのスクープも本来の取材もどちらも成果を挙げられずに終わってしまう。

この回では現地を見ずに伝聞だけで記事を書いて大失敗したり、国際間の経済支援制度についてあまりにも無知な点を谷山記者からも呆れられているなど、終始情けない姿を見せることに。
しかし市場でチラリと見えただけのゴルゴの密談相手を、国の経済担当大臣だと一目で見抜くあたりの記憶力の良さも披露している。

ちなみに梶本が市場でゴルゴを認識した時点で、当然ながらゴルゴの側も梶本の存在を認識していた。
もし梶本が正確な読みでゴルゴの目的にたどり着いていた場合、果たしてゴルゴや武装勢力に殺されずに生きて帰れただろうかと考えると、むしろ読み違えたのは彼にとっては幸運だったのかもしれない……。


人形の家(SPコミックス167巻)


アンティーク人形好きで有名なベネズエラの女性大臣へのインタビュー要員として駆り出される形で三度登場。
このとき、支局長が持っていたゴルゴの資料を偶々目にしてしまったことで、ゴルゴの正体を確信すると同時に、ゴルゴを記事にしようとした者は命は無いと支局長から強く警告された。
(しかし一介の報道機関の海外の一支局でさえゴルゴの写真付き資料を持ってるあたり、もうゴルゴの情報は表の世界でも割と筒抜けなのではないだろうか?)

その直後、取材先でゴルゴと3度目の遭遇。しかも今回はなんと、ゴルゴの方から声をかけて接触してきている。
本当に偶然とはいえ、ゴルゴの仕事先で2度も遭遇した報道関係者ということで、ゴルゴとしては放置できない対象として警戒されていた様子。お気の毒である。

幸いにして殺されることは無かったが、ゴルゴの目的達成のため、ほとんど脅されるような形で大臣の自宅取材に同行させるよう求められ、断ることなどできるわけもなくそれを承諾。
ちなみに記事冒頭のセリフはその時のもの。どんな脅し文句よりも、ゴルゴという死神が無言で目の前に佇んでいる方が遥かに恐ろしく逆らい難いことを実によく分かっている。
ゴルゴについて支局長から強く警告された直後であったため、この回の梶本はゴルゴと遭遇してから終始ゴルゴに脅えっぱなしであった。

その後、ゴルゴが起こした大臣邸狙撃事件に関わったと思われて地元警察に一時収監されるなど散々な目に遭ったようだが、
最終的にはゴルゴから報酬兼迷惑料として1万ドルの小切手が送られ、転んでもタダでは起きない結果となった。

なおこの回では、取材を終えゴルゴから解放された後、大臣にゴルゴの存在と命の危険を教えに行くチャンスがあったが、「よその国の大臣より自分の命が大事だ」と結局何も言わずに現場を離れている。
しかしそのときの姿は当然ながらゴルゴにしっかりマークされており、もし彼が正義感を発揮して大臣にゴルゴの存在を教えに行こうとしていた場合、おそらくゴルゴに殺されていたと思われる。本当に悪運の強い男である。


ACT-X(SPコミックス184巻)


四度目の登場。ただし今回はゴルゴと直接関わることは無く、事件にゴルゴが関わっていることも知らないままで終わることとなり、梶本本人の出番は少なめ。

ビーチバレーの世界大会の取材を企画するが、支局長の意向で大会の取材には後輩の朝比奈が派遣され、梶本はコロンビアの別件の取材に回される。
しかし実は、裏では麻薬組織が新薬の実験の舞台にビーチバレー大会を利用しようとしており、同時にゴルゴの次の仕事のターゲットがその麻薬組織と新薬の壊滅であった。

梶本本人は今回はゴルゴのことなど何も知らないまま、取材先でトラブルに見舞われながらも無事生還するが、彼の代わりに取材に行った朝比奈は麻薬組織の陰謀を調べようと深入りしすぎて殺害されてしまう。
さすがの梶本も、朝比奈の死を聞かされたときは呆然としていた。

この回では支局長から、「運だけはいい男」と評価されている。もっとも、「だから命の危険もあるコロンビアに取材に行かせても梶本なら死にやしないだろう」とあんまりな扱いを受けることになったのだが。
それでも実際、現地で携帯電話の入ったカバンを盗まれるなどのトラブルには見舞われながらも五体満足で帰ってこられたあたり、支局長の評価は実際正しかったと言えるだろう。


受難の帰日(SPコミックス201巻)

日本本社へのお使い兼、高校の20年ぶりの同窓会への出席のために、日本に5年ぶりに一時帰国する形で五度目の登場。
以前にゴルゴの事件に登場したことがある小畑刑事とは高校の同級生だったことが明らかになった。

同窓会の会場のホテルでメキシコの高官の姿を偶然見かけたことと、その不穏な会話の内容からスクープの匂いを嗅ぎ取り独自に調べ回る中で、麻薬事件を追う小畑と再会し、警察に協力することになる。
この回でも不真面目な態度は多々あれど、スペイン語に堪能している*1。ことを活かして事件解決に尽力した上に独占スクープを掴むことにも成功して珍しく(?)大活躍を見せた。

これだけで何事も無く終われれば良かったのだが、麻薬組織の密輸の企みが暴かれたきっかけが神業的な狙撃であったことを小畑から聞かされ、今回の件にゴルゴが関わっていると直感。
さらに帰国しようとした空港でゴルゴの姿を偶然目撃してしまい、一緒の便に乗ることを恐れて帰国を1日伸ばし、真っ青な顔で慌てて空港から逃げるように去っていった。
どうやらゴルゴの存在は梶本にとって相当なトラウマになっているようだ。

なお、この回の最後のページでは飛行機に乗っているゴルゴの姿が描かれているが、その隣の座席は空席になっている
この描写について、もし梶本がその飛行機に乗っていた場合、ゴルゴと同じ飛行機どころか隣同士になっていた可能性が示唆されていると考えると、
結果的に予定の便に乗らなかった梶本の判断は大正解だったと思われる。(仮にゴルゴと隣同士になっていたら、飛行機に乗っている間中生きた心地がしなかっただろう…。)
余談だが梶本がゴルゴと同便になることを恐れた際にゴルゴが後ろの座席に座ってる状況を想像していたが実際は先述の通り隣の座席であり、ここでも地味に悪運の強さが発揮されている。


【関連人物】


・小畑
国際事件を担当する刑事。
以前にも『爆弾魔』や『日・ASEAN会議』といった、日本国内における国際的な事件のエピソードで登場している。
『受難の帰日』にて登場し、梶本とは高校の同級生であることが明らかになった。
同エピソードでは麻薬組織の麻薬密輸事件を追う過程で梶本と再会し、梶本の海外経験を活かした語学力に目を付けて協力を依頼*2。事件解決に貢献した。

ただし梶本と違い、小畑はゴルゴの正体や狙撃の腕前までは知らないために、麻薬密輸事件の過程で神業的な狙撃が行われたという情報を聞いてもいまいちピンと来てないような反応だった。
(一方の梶本は、話を聞いてすぐにゴルゴの仕業だと察して青ざめていたが、小畑にはその理由を知る由も無かった。)


・矢島支局長
梶本が勤務するメキシコ支局のリーダーの中年男性。厳つい顔立ちと禿頭が特徴。
梶本のグータラ社員ぶりには手を焼いている様子が度々描かれており、「いないよりはマシ」程度に思っているようだが、なんだかんだで梶本を上手くコントロールしている様子。
また、決して梶本の事を完全に邪険に扱っているわけではなく、『人形の家』のラストでは釈放されて憔悴している梶本を労い、「CIAが動いた」という釈放の真相を話すと梶本が立ち直れなくなると考えて黙っておく事を決めるなど、
梶本が本当に酷い目に遭った際には彼を気遣っている。*3

支局長という立場故か、ゴルゴについての情報を写真付きで持っていた。アメリカの通信社から極秘に提供された資料とのことだが、表の世界でもある程度の立場のある報道機関の人間であれば、ゴルゴについてそれなりの情報は入ってくるようだ。
当初は梶本にゴルゴの極秘情報を教えるつもりは無かったが、梶本が過去に2度ゴルゴと遭遇しており、さらにゴルゴのスクープを狙っていることを知ると、「命が惜しければ絶対にゴルゴを記事にしようとするな」と強く釘を刺していた。


・谷元
メキシコ支局に努める梶本の先輩の女性記者。『ODA異聞』のメイン登場人物。
バルボア共和国へは取材目的以外にもう一つ、裏の目的があって訪れており、このエピソードにおけるゴルゴの仕事には梶本よりも彼女の方が深く関わることとなる。
国際情勢について梶本よりはるかに深い知識と理解を有しており、ODAや日本の草の根経済支援事業の狙いなどについて、梶本(と読者)に分かりやすく解説してくれた。


・朝比奈
メキシコ支局に努める梶本の後輩。『ACT-X』のメイン登場人物。先輩である梶本のことは、ダメ社員として内心で見下している。
ただし朝比奈自身も、空気を読まない歯に衣着せぬ取材態度で相手を度々怒らせることがあるようで、支局長からも欠点として指摘されている。梶本とは違うベクトルでの問題社員。
日本の本社に戻りたいという意向が強いようで、それ故か命の危険や犯罪に近い行為を冒してでも大きなスクープを掴もうとする意欲は梶本以上に強い。

梶本が行く予定だったビーチバレーの世界大会の取材先で、偶然に大会の裏に潜む麻薬組織の陰謀を知ると、スクープ目当てに本来なら一般人が踏み込んではならない領域まで深入りしてしまう。
その結果として麻薬組織に殺害されてしまい、彼の死は梶本を含めたメキシコ支局の一同に大きな衝撃を与えることとなった。





「梶本! サボってる暇があったらお前の項目の追記・修正でもしていろ!」
「わ、分かりましたよ。すぐに追記・修正しますよ、っと……」



この項目が面白かったなら……\ポチッと/

最終更新:2021年08月01日 01:02

*1 メキシコの公用語はスペイン語である

*2 国際事件を扱う部署といえど、スペイン語のできる人材は不足していたため

*3 『ACT-X』のラストでは巻き込まれたトラブルを愚痴る梶本にキレていたが、この時は朝比奈の遺体の身元確認中というタイミングだったので単にその事を知らずに一方的に愚痴った梶本の間が悪かったというべきだろう。