SCP-2050-JP

登録日:2021/10/28 Thu 12:48:57
更新日:2021/11/21 Sun 23:22:40
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万物を照らすのは。

SCP-2050-JPは、シェアード・ワールド「SCP Foundation」に登場するオブジェクトの一つである。オブジェクトクラスEuclid

概要

こいつが何かというと、結構デカい花崗岩である。高さ10メートル、直径14メートルほどの円柱形であり、表面は風化している。いくつか加工された跡が残っており、一つ大きな亀裂が入っている。

この亀裂からは、どうやって発しているか分からない光が常に漏れ出ている。その明るさは凄まじく、至近距離では文字通り太陽のような明るさを放つ。しかし、離れるにつれて普通よりも早いペースで明るさは減衰していき、1.5キロメートル離れるとほとんど見えなくなる。

内部を調べようと機材を入れたところ、それらは溶けるだけで済まず蒸発してしまった。このことから、SCP-2050-JPの中身は超高温の熱源と考えられている。しかし、温度による影響は岩の外に出ておらず、また内部は5.3立方メートル、つまり人一人入れるくらいの空洞になっていると判明しており、熱源の正体は分かっていない。

この岩から3メートル以内にいる人間は、正体不明の知的存在(SCP-2050-JP-Aとする)とテレパシーを使って会話することが出来る。こいつは2~30代の女性らしい声で、上代日本語*1を用いて話す。恐らくこの岩の中にいるのだろうと推測はされているが、未だに確認できていない。

発見経緯と特別収容プロトコル

この岩は日本のとある山に存在していた。2018年7月に起きた土砂崩れによって亀裂が地上に露出、漏れた光を付近の財団職員が観測した。明らかにおかしいこの岩を職員は財団に通報、収容に至った。付近の住民にはカバーストーリーとして「被災者捜索のサーチライト」という情報を流した。

現在は岩を取り囲むようにして収容ユニットが建設されている。直視したら失明は免れないので、ユニット内に立ち入る際は遮光バイザーを身に付けなければならない。また、民間人の接近を防ぐため、「豪雨災害による道路崩落」ということにして立入禁止にしている。また調査のため、SCP-2050-JP-Aとは週に一回のコミュニケーションが試みられている。

インタビュー

SCP-2050-JP-aには数度インタビューが行われている。報告書では、その中から2つのインタビューが引用されている。
この知的存在は上代日本語を使うため、インタビュー記録では翻訳されている。

インタビュー記録2050-JP-1 
日付: 2018/7/8
<記録開始>

エージェント・██: すみません、少しよろしいですか?

SCP-2050-JP-A: [長い沈黙]なんでしょうか?

エージェント・██: いくつかおたずねしたいことがあるのですが、お願いできますか。

SCP-2050-JP-A: 話すことなど何もございませんよ。ここから出ることもございません。[沈黙]放っておいていただけませんか。

エージェント・██: そこにいらっしゃるのには、何か理由があるのですか?

SCP-2050-JP-A: [長い沈黙]昔、私はある男をかばったことがあるのです。その時には正しいことをしたと思っておりました。

SCP-2050-JP-A: [長い沈黙]しかし、私はそれを強く悔いたのです。私があの男をかばったことで他の皆様にも失礼をいたしましたし、ここでしばらく反省させていただきたいのですよ。

エージェント・██: なるほど、反省ですか[黙考]よければ貴女のお名前をうかがいたいのですが、よろしいでしょうか?

SCP-2050-JP-A: [長い沈黙]いいえ、どなたかは存じ上げませんが、あなたが私を連れ出しに来たのではないという証拠はありません。[沈黙]申し訳ありませんが、そろそろお引き取りいただけませんか?

エージェント・██: いえ、こちらこそ長々と申し訳ない。今日はこれでおいとましますが、その前に私に言っておきたいことなどはありますか?

SCP-2050-JP-A: [沈黙]2つほど、周りにいる方にもお伝え願えますか?

エージェント・██: [黙考]はい、なんでしょう?

SCP-2050-JP-A: 少し明かりを弱めてほしい、と。 いくら外を照らそうと、今しばらく私が外に出ることはございません。以前のように宴に惹かれることもない、とも。お願いいたします。

エージェント・██: [沈黙]はい、承りました。これでインタビューを終了します。

<記録終了>

インタビュー記録2050-JP-2
日付: 2018/7/9
<記録開始>

エージェント・██: すみません。少しお時間よろしいでしょうか?

SCP-2050-JP-A: [長い沈黙]またあなたですか。[沈黙]お話しすることなど、もうありはしませんよ。

エージェント・██: いえ、今回おたずねしたいのは先日あなたがおっしゃったことについてです。

SCP-2050-JP-A: [沈黙]

エージェント・██: あなたは先日、周りにいる方と仰いましたね。あれは誰のことでしょうか? あの時、周辺には誰もいませんでした。少し離れたところに私の同僚は待機していましたが、彼女のことでしょうか?

SCP-2050-JP-A: [長い沈黙]いえ、それが真実ならば、先日のお願いは私の勘違いによるものです。外が明るいので、大勢でやってきてかがり火かたき火でも焚いているのだろうと思ったのですよ。[沈黙]あなた1人なのですか? では、わずらわしいので、火を弱めて下さいな。

エージェント・██: いいえ、火など焚いていません。今も先日も、周りにあるのは森だけです。

SCP-2050-JP-A: そんな筈はありません。ならばこの光は何だというのです?

エージェント・██: こちらには今、太陽以外の光源はありません。太陽光ではありませんか?

SCP-2050-JP-A: [沈黙]

エージェント・██: どうかされましたか?

[発生する光が8██████luxまで上昇]

SCP-2050-JP-A: [声を張り上げて]いえ、いいえ! そんな筈はありません。そちらは今、いいえ、ずっと夜のはずです! 太陽はそこにいないのですから! ここ数日、時間を置いて光を照らすのは、私があの時手を振りほどいたのをいまさらになって責めているのでしょう? 違いますか! そもそも太陽の輝きと

エージェント・██: そんなことはありませんよ。

SCP-2050-JP-A: では

[長い沈黙]

SCP-2050-JP-A: 誰なのですか、あれは

<記録終了>

付記: 最後の発言以降、SCP-2050-JP-Aは職員の呼び掛けに対して一切の反応を示していません。

考察

さて、ここまで来れば、SCP-2050-JP-Aの正体が何となく分かっただろう。

彼女の正体は、天照大御神である。

日本神話に於ける神様の筆頭と言っても過言ではない、超有名な女神。日本神道における最高位の神様であり、皇室のご先祖様でもある。

伊邪那岐命によって生み出された彼女は、日本の天界である高天原の統治者として君臨した。そこに弟にあたる須佐之男命がやってきた。当初は高天原を乗っ取ろうとしたのではと勘違いしたが、身の潔白を証明されて住むことを許可した。

しかし、若き須佐之男は高天原で無礼を働き、好き放題に暴れまくった。高天原の神々は天照に追放を提言したが、兄弟のよしみか彼女は彼を最後までかばった。だが彼女の気遣いを知ってか知らずか、須佐之男はとうとう一線を越えたイタズラをしてしまう。心を痛めた天照は、須佐之男を天界に入れてしまった反省として、天岩戸に引きこもってしまった。

…ここまでは日本神話のストーリーと同じである。

神話ではこの後、天界も地上も闇に包まれ、様々な災いが発生。そこで天照を岩戸から引きずり出す為に神々で宴会を開き、みんな楽しそうにアメノウズメに至ってはおっぱい丸出しで歌って踊った。その後…は各自で調べて頂いたほうが早いだろう。

しかし、財団世界ではそうは行かなかったようである。

彼女は当初、岩の外の光は、神々がつけていた火か何かだと勘違いした。自分こそが太陽であり、自分よりも明るい光はなく、外界は闇に閉ざされていると思っていたからだ。

それは間違いだった。

発言から鑑みるに、神話とは違い、説得に失敗してしまい、再び岩の中に自分を閉ざしたと思われる。自省の念と、須佐之男に反省を促すために。

…岩の外の太陽は、その行動が全くの無意味だったことを示している。自分が居なくても高天原、地上は平和であり、何事もなく日々を過ごせている。信仰もされない、最高神としても役目を果たせていない。彼女の立場になって考えれば、余りにもやるせない。

だが、それ以上の問題が有る。

日本とは、読んで字のごとく「日の本」の国である。言い換えれば、太陽の下、つまり天照大御神のお膝元の国と言える。

しかし、そうではなかった。高天原は天照に統治されなかった。空に浮かぶ光は、我が国の由来は、天照ではなかった。

だとすれば、それは一体。


SCP-2050-JP




…それを知る者は居ない。

余談

元記事はSCP財団の新人歓迎イベント、ルーキーコンテスト2020に合わせて制作されたものである。
コンテスト終了時点で当記事は2位を獲得している。

また、SCP-2050-JPに関連するTale「誰そ彼と太陽」と、「日の出の刻」が執筆されている。前者は元記事とは別作者の作品で、かなり救いのない内容だが、後者は元記事の作者によるもので、ようやく太陽の神としての本懐を遂げる、熱いTaleとなっている。


追記・修正は岩戸の光に照らされながらお願いします。




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最終更新:2021年11月21日 23:22

*1 奈良時代まで、主に貴族によって用いられていた古い日本語。まだ平仮名すら無かった時代である。