SCP-6442

登録日:2023/01/06 Fri 04:59:33
更新日:2024/04/11 Thu 07:14:41
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“何でも知っている”のは、”何でもできる”くらいには強すぎる。だから、同じ対処をしなければならない。



SCP-6442はシェアード・ワールドSCP Foundationに登場するオブジェクトである。
メタタイトルは「ミーミル、ミーミル」。

この記事には異常存在分類システムが導入されており、分類のされ方が従来とは異なる。詳しくは当該項目を参照。
収容クラスThaumiel
攪乱クラスはVlam。五段階中二段階目、影響力は無くはないが局地的。
リスククラスはCritical。五段階中五段階目、影響を受けると確実に死ぬか、死んだ方がマシなことになる。
報告書の閲覧にはセキュリティクリアランス5が必要である。

財団に利するThaumielにもかかわらず、極めて脅威度の高いCriticalというのはなかなか見ない組み合わせ。
物々しさを感じさせるが、実際その通り。元記事の構成は特別収容プロトコルと説明のみの単純なものだが、そのうち8割以上を特別収容プロトコルが占める。
しかも、以下のような記述もある。

保安上の懸念があるため、本文書からは完全版の収容プロトコルに含まれる未決部分が除外されています。

これでも全てではない、ということだ。


特別収容プロトコル

説明がしやすくなるので最初に言ってしまうが、コイツは財団製オブジェクトである。
なので「確保」は最初からされているし、自分から動くものではないので「収容」もそんなに重要ではない。
問題はコイツが抱える性質により、「保護」がとんでもなく重要になること。
以下では要約するが、とにかくガッチガチに警備が固められている。

まず、SCP-6442が収容されている収容施設[データ削除済]について。
  • ここへの立ち入りは財団防諜局によってしか認められないよ。
  • どこにあるか絶対知ることのないために、ここに配属される職員は着いた時にBクラス記憶処理をされるし、GPSとかの位置測定機器を持ち込んではいけないよ。
  • 職員は緊急ゾーンとかメンテに必要な場所以外はここのレイアウトを深く知らなくてもいい、というか知ろうとしなくていいよ。
  • ここから無許可で出ようとしたり、ここに無許可で入ろうとしたら速やかに拘留・記憶処理・降格。場合によっては終了されるよ。
  • ここの外部は財団製オートマトン部隊が警備してるよ。潜入者の撃退、航空機の無音撃墜、奇跡論的な攻撃への対抗ができるよ。

まず、財団には防諜担当の部門もあるらしい。どっかの要注意団体と四六時中ぶつかっているイメージだし、確かに必要だ。
その防諜局が管理しているオブジェクトのようなので、スパイの抑止に役立つのだろうか。
という割にはなにやら直接的に、かつアノマリーを用いて攻めてくる勢力も想定されているようである。

次にSCP-6442を収容するチャンバーについて。
  • 16個の、全く同じで区別できる要素が一切ない球形のチャンバーのどれか1個に収容されてるよ。
  • 16個のチャンバーは最低50m離して、それぞれを超絶難易度の狭い迷路で接続してあるよ。
  • どれが本物かは財団職員は絶対に知ってはならないよ。
  • それぞれのチャンバーの中心に天井からタングステンの球体が吊り下がってて、その中に本物か精巧な複製かが入ってるよ。

ガワだけでもうこれ。
ところで財団職員が本物がどれかを知ってはならないということは、人工知能とかが知ってるのか?
それとも保安的には財団側にさえもマジで誰もどれが本物か知っている必要がないのか。
……おそらく後者。

そしてトドメにソフト的な対抗策があまりに多種多彩に用意されている。
以下に列挙するが、これだけに留まらないらしい。
  • 対核兵器・対固有兵器防衛プロトコル
  • 各収容チャンバーに充満するエアロゾル化したクラス I 記憶処理薬。
  • スクラントン現実錨 (SRA) 。現実改変攻撃によるSCP-6442への被害を防ぐため、各チャンバーに6基ずつ設置。
  • シャンク/アナスタサコス恒常時間溝 (XACTS) 。時間操作を防ぐため、各チャンバーに1基ずつ設置。

ここまではよく見るレベル。とはいえ下2つのせいで実質的な除外サイトができてそうだし、普段こいつらを見るのはアノマリーの性質を抑制するためなので、「そういう攻撃」をしてくる者がいるのだろう。
ちなみにクラスI(アイ)記憶処理薬は一時的に記憶喪失にさせるものらしい。

  • 実験的ランドール/ヨッサリアン式アキヴァ無効装置 (ERYAN) 。神格の介入を防ぎ、かつ思い止まらせるため、各チャンバーに36基ずつ設置。

敵は神すらけしかけて来る。もしくは敵が神本人。そしてそれを抑止できる財団。
なんかやたら数が多いのは装置が「実験的」だからだろうか?というかベータ版の設備すら駆り出さねばならんのだろうか。

  • 機動部隊タウ-5 (“サムサラ”) 構築タンク。上記の対応策が不十分であるか、現地保安部隊が敵対勢力に圧倒された場合に備えて、各チャンバーに1セットずつ設置。

いやそこまでするか。
というか「死した神の肉から生み出された不死のサイボーグクローン」ってこんな普通に生成できるんだ。

さんざん他のアノマリーを利用して保護しているこのオブジェクトだが、まだある。
万が一、ホンモノを取り出す必要がある場合は他の15個の複製も一緒に運び出されるのだが、再収容するときにどのチャンバーに入れるか決めなければならない。
元記事には「無作為に選ばれた16ヶ所のチャンバーのうち1つに」戻されるとあるのだがコレがどうもこの世唯一のガチの無作為で、この「無作為に選ばれた」の部分にSCP-4559へのリンクが張ってある。

何でこんなにガッチガチなんだ?何が襲ってくるというんだ?

特別収容プロトコルもこれで最終盤なのだが、ここである要注意団体の名が出てくる。
このオブジェクトは様々な対抗策を以って何としても守らなければならないが、そのために財団が相手をしなければならないその団体は、攻撃のエキスパートだった。


そう、世界オカルト連合(GOC)。


ここにSCP-6442を奪われてしまった場合、何が何でもSCP-6442を無力化せねばならない。

……この記事での財団世界では、どうも超常を扱う団体同士の仲がよろしくないらしい。
ずっと緊張状態が続いているし、その状態を緩和するための会議も難航している。
互いが互いを全く信頼できない。スパイ活動の嵐。それもアノマリーを使ってのスパイ活動が横行しているのだろう。

スパイに使える異常性、もしあったらどういうものが便利だろうか。少し考えてみよう。
好きな書類を覗き見る能力?書類以外に書いてある重要情報もあるだろう。
ネット上のセキュリティを突破できる能力?スタンドアロン状態の端末にしかないファイルもあるだろう。
ならば誰にも認識されなくできる能力?現実改変でもしてあらゆる防御を無効化する能力?
……いやいや、もっと単純に考えよう。なぜわざわざ情報を得に行く必要があるのか?
その答えを明かす前に、SCP-6442の正体を明かそう。


説明

端的に説明する。SCP-6442は財団の防諜局とミーム部門が共同で開発した財団史上最強の認識災害である。
物理的には、機密指定されたゴムみたいな素材でできた球体に彫り込まれた刻銘の形で存在する。
効果は単純明快、この刻銘の73%を知覚したその瞬間、そいつの神経学的機能が止まる。死ぬ、と言い換えても支障ない。

SCP-6442が最強たる所以、それはその強度だけでなく効果範囲の広さである。
なんとこの効果、あらゆる知性体に及ぶというのだ。人間以外の生物はおろか、物理的実体がなくとも認識してしまえば死んでしまうということになる。

強度の方とは言うと、認知抵抗値742以上無いと生き残れないらしい。この値がどういう定義かは不明なのだが、対数の尺度で示されているとのこと。
つまり、この742という数字は本来、10かなにかの右肩に乗っている数なのである。
例えば10から20は2倍だが、10の10乗から10の20乗は10の10乗つまり100億倍なのだ。マグニチュードと同じように数字が上がるほどそのエネルギーは指数関数的に増大する。底(今の例で使った10の部分に当たる数)が不明なので認知抵抗値742がどれだけヤバいかも不明瞭だが、ともかくこの世には恐らくこれを認識して生き残れるやつはいないだろうことがうかがえる。
こんなもの、あまりに強すぎて対抗ミームが作れないだろう。財団はそう見なしている。

では、本題に移ろう。なぜSCP-6442はここまで厳重に保護されているのか。
先ほどの疑問、「スパイをするにあたって便利な能力とは?」に対する最も単純かつ強力な解答は、これだ。


全 知 能 力


何でも知っているなら、もはやスパイするにあたって何も行動をする必要がない。だってもう知りたい情報は知っているから。
あまりに、あまりに反則的過ぎる。
こんな能力を持っているヤツが敵対勢力にいたら、それだけであらゆる防諜やセキュリティが無意味と化す。そして実際いたのだろう、主にGOCに。

だから、財団はもううんざりしてしまって、全知アノマリー全自動皆殺しマシーンSCP-6442を作った。

2023年に制作され、収容下に置かれて以来、SCP-6442は最低でも8,000体の全知能力実体を成功裏に無力化しており、そのうち少なくとも2,000体は世界オカルト連合に雇用されていました。

反則的な能力を持つ敵の、その能力が反則的であるがゆえに生じた弱点を突いた見事なカウンターである。GOCなど、財団の敵側からしたら、こんなものの存在を許すことは出来ないだろう。だから、どんな犠牲を払ってでも無力化するか、対抗ミームを作りたい。
それをさせないために、ここまで厳重なセキュリティが取られているのだ。

もちろん、SCP-6442の製作工程などから対抗ミームを作られないために、そういう情報は全部焼却処分されている。だから、これをもう一度作ることはできない。
絶対に、守りきらねばならないのだ。

この荒んだ超常社会で、明日を生き抜くために。




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最終更新:2024年04月11日 07:14