クモオーグ

登録日:2023/09/13 Wed 22:55:40
更新日:2025/04/12 Sat 22:42:06
所要時間:約 6 分間。それがこの項目へ掛かる時間です。






【注意!】この項目には映画『シン・仮面ライダー』のネタバレが含まれています。




























裏切り者に死を。それが私の仕事ですので。




クモオーグとは、映画『シン・仮面ライダー』に登場する怪人。
組織での識別IDは「KUMO-AUGMENT-01」。

CV.大森南朋  
スーツアクター.柏崎隼風

データ

身長:不明
体重:不明
出身地:奥多摩の山林
特直・力:粘着性の糸を利用した攻撃、機械仕掛けの子グモ、4本の隠し腕
弱点:腕の付け根や肘などの関節が脆い


概要

秘密結社SHOCKERに所属する上級構成員の1人にして、「人外融合型オーグメント」第1号。
原典の蜘蛛男にあたり、配色も同じ赤黒で本郷猛こと仮面ライダーの最初の敵という立ち位置も変わらない。

その名の通り、メカニカルな蜘蛛型のマスクが特徴で、自身のクレストは髑髏を模した蜘蛛になっている。
服装は赤の黒のジャケット、SHOCKERのエンブレム入りのズボンと割とラフなスタイル。
特報や予告映像でも連続バク宙を披露するシーンが出ており、歴代蜘蛛男の中でもスタイリッシュな印象が強い。が、結局本編でこの映像は使われなかった。

オーグメンテーション手術を受けた上級構成員だが、いわゆる幹部ではなく、死神グループの傘下で活動し、主に拉致や暗殺など隠密の役割を担う*1
裏切り者の始末も例外ではない。

同じ死神グループにはK.Kサソリオーグが属している。


人物


「私は人間が嫌いです」

「だから人間を捨てさせてくれた組織に感謝します」

「その組織のために…人間をこの手で殺す」


「それが私の幸福」



SHOCKERに目をつけられた人間嫌いの男。自ら進んで合成手術を望んだ。

丁寧な口調で一見紳士的な物腰に見えるが、その本質は人間を嫌い、人間を殺すことに戸惑いのない危険人物。

SHOCKERの上級構成員は各々の幸福を掲げるが、クモオーグの場合は「人間を捨て、人間を殺すこと」
獲物の命を自分の手で直接奪い(絞殺)殺める事に幸福を感じ、命を奪う相手への礼儀としている。私に幸せをありがとう。
更には手にかけた相手に「未来永劫お幸せに」と言っており、殺害こそが人間にできる最大限の善意と思っている節すらある。

人間をやめさせてくれた組織に感謝と忠誠を捧げおり、組織と同胞であるオーグメントの為に人間を殺し、残虐性の発露を惜しまない。
生かして連れ戻す目的のルリ子すら例外ではなく、当初は2度と逆らえないように両目を潰そうとしていた。

下級構成員にも当たりは厳しいらしく
『シン・仮面ライダーチップス/スナック』付属カードのナンバー23では、「3コール以内に大幹部からの電話を受ける訓練」で下級戦闘員を意図的に妨害して死に追いやってしまうなど悪辣に扱う。


ライダーが人類の味方ならクモオーグはオーグの味方といったところ。
裏切り者とはいえ本郷に対しても「親愛なるオーグ仲間」として殺害にも遺憾の意を示し、分かり合えないのが残念と言い残すなど、同族に対して友愛の心を持つ。
ただし、組織の命令は絶対であり、抹殺命令が降れば同胞であろうとも容赦なく殺す。
劇中の本郷への一貫性がないように見える言動も、この2点が矛盾なく共存しているためである。

左足のSHOCKERのエンブレムはいわゆるキルマークで8つ刻まれており、既にそれだけの裏切り者を始末したという証。


オーグには友好的なはずなのだが、その陰湿なやり口と組織内でも飛び抜けて異常な幸福像から同僚からの心象は非常に悪い。
コウモリオーグやハチオーグなど他のオーグに関してはそれなりに砕けた態度を取っていたルリ子も「人間を捨てるのが幸せの姑息で支離滅裂な変人」と吐き捨て、
ハチオーグとは殺し合いレベルの小競り合いを起こし、それなりに良好そうに見える同グループのサソリオーグにすら「万年仮面の変態男」と言われるなど、他媒体やOMITシーンでは何故か女性陣から軒並み嫌われている様子ばかり綴られる。

そういった異常性と折り合いを付けられれば同族には優しいらしく、同じく不意打ちと暗殺に特化したK.Kオーグには隠密としての教えを授け、困った時には電話で相談に乗るなどかなり親身に接している。

このほかにもライダーカードの世界観ではコウモリオーグとコンビを組んでライダーを追い詰めており、個人主義が当たり前の組織内では比較的仲間意識のようなものを持つ。


「見てください! この圧倒的な殺傷能力! ヒトではない喜び!」

「あなたも同じオーグメント」


「なのに…この幸せがなぜ分からんのです!?」

「さあ、あなたも死んで、私の幸福の一部となって下さい」


クモオーグは人間とクモを合わせたオーグメントである。
彼を改造したSHOCKERは幸福をもたらすアイの秘密結社である。
クモオーグは組織への報恩と同胞の幸福のために戦うのだ。


能力

クモとの人外融合型オーグメント。
本人の希望もあるが同タイプの特徴として人間に戻ることができず、仮面や体の下には異形の怪物が潜む。
世界中のクモを素材にしたオーグメンテーションを受け、マスクから強粘着性の蜘蛛の糸を吐き出して敵を拘束し、
猛毒性の牙や爪で相手を溶解させる。
バク転や三角蹴りを駆使したパルクールめいた身軽な動きで飛び回り、蜘蛛の糸をターザンロープにした移動と合わせて機動力で戦う。

着込んだ豹柄のようなチョッキには無数のチャックがあり、そこから漫画版の如く体から4本の別の腕を生やして計6本の腕になる能力を持つ。
腕を全て駆使した拘束はライダーも容易くは外せなかった。
チョッキは隠し腕のジッパーの他にも機械仕掛けの子グモや毒の注射が仕込まれた闇の四次元ポケットになっているらしい。

同作のマスクをつけたオーグメントは基本的に変な所でリアリティを求めてマスク越しのモゴモゴした感じで喋るが、クモオーグだけはノイズ混じりに妙にハキハキしている。
これは既に仮面の下の素顔がもはや人間の原型を留めていない=声帯すら存在しない事を示唆しており、ヘッドフォン状の意匠はスピーカーでそこから機械音声を発して話しているらしい。


死神グループ産なので緑川グループのオーグメントのようにプラーナを戦闘に行使できず、序盤こそ戦い慣れていない本郷を翻弄したが膂力では劣り、徐々に押し負けていった。


劇中の活躍

原典の蜘蛛男とほぼ同様。

逃亡した本郷とルリ子を追うも、バッタオーグとして覚醒した本郷猛にひとまずは奪還される。
子グモを利用した再度の追撃で緑川博士を殺害してルリ子を確保するも、今度は仮面ライダーとして戦う決意を固めた本郷と交戦。
機動力で翻弄し蜘蛛の糸を吹き付けるが、コートを利用した一撃を貰ってしまう。
最期は隠し腕を利用した拘束で上半身を完全にロックするが足がそのままだった為にバッタの跳躍力でジャンプされ、頭突きで振り解かれ移動手段のない空中で身動きが取れなくなる。

「しまりました…」

「空中では私が圧倒的に…不利ィィ!!」


最期はプラーナ放出で軌道補正した「ライダーキック」を叩き込まれて敗北。
キックの勢いでダムの壁面にめり込み、肉体はそのまま溶解した。


真の安らぎはこの世になく



「…人間は嫌いですが 子供はいくらか救いがある」
「この組織を生きるにはもっと強い体と心が必要です」
「…もし君が望むなら 私が君を戦士に鍛え上げましょう」

映画の前日譚を描く公式漫画作品にも第2話から登場。
当初は軽度の人体強化改造を受けた「強化人間」であり、コードネームはシンプルに「クモ」。
初期の改造手術は不可逆の精神崩壊をもたらすとされているが、表面上は意思疎通が可能な状態で留まっている……が、やはり何かしらおかしい。
同じく死神グループの構成員であるサソリとは同僚で、当時まだ10才のイチローの教育に協力する。
この時から既にクモの仮面をしているが、首から下は作画に優しい黒ジャージ。

この時点で人間が大嫌いなサディストであり、態度に問題があったとはいえ柔道の授業でサソリの首を絞めるなど、エキセントリックな気性は昔から変わらない。
サソリさんも過去の境遇から暴力を受けるとecstasyしてしまうため、ある意味では需要と供給が完璧に噛み合った永久機関な関係。


「逝くかも!これ逝くかもぉ!!」
「お逝きなさい!」


主な任務は本編から変わっておらず、組織の“汚れ”を拭き取る掃除屋さん。主にサソリとコンビを組む。
自身が嫌いな人間むき出しのサソリさんをめちゃくちゃ邪険にしているが、当人からそうでもなさそうで「クモ君」と呼ばれている。
なんだかんだクモさんも必要な会話はちゃんとするため、上記の異常さとそこそこ良さそうな仲が共存している狂った関係。

当初は「人間は嫌い」としながらも上記のように子供にはまだ可能性があると感じ、イチロー少年を何かと気にかけており、
敵対組織に啖呵を切ったイチローの心意気を褒め、時に教えめいた言葉をかけ、鍛錬に付き合い何気ない会話を交わすなど、まさかの師匠キャラだった。
オフの日には自然を愛し、小鳥に懐かれるなど穏やかな一面も見せている。
文字通りのお掃除も好きなようで、単行本のおまけページでは朝早く起きてあの姿のまま竹箒でせっせと掃き掃除に勤しむ衝撃的な姿が描かれた。

マスクの下は焼け爛れたケロイドのようになっており、かつての罪の証として自ら溶かしたのだという。
過去の経験から人間を心底憎み、人ならざる者という希望を示してくれたイワン博士に忠誠を誓っている。

やがて緑川博士の神経科学技術で発展したイワン博士の強化手術により完全に人間の体を捨てた「クモオーグ」として覚醒。
SHOCKER初の人外合成型オーグメント第1号となる。


「彼は…子供のように無邪気で純真な人でした」

かつては政(マサ)と呼ばれていた、ロン毛の黒髪で耽美な雰囲気の大学生だった。
同性愛者であり、浩介という可愛い系の同級生と深い関係だったが、浩介はゲイをカミングアウトした事で孤立し、命を絶ってしまう。
パートナーである政の秘密は守ったのだが、浩介を嘲笑する周りに政は言い返す事ができず流されてしまい、激しい自己嫌悪に包まれた。


「彼を本当に傷つけ…命を奪ったのは 醜く…勇気のない…私の態度…!」
「私が…本当に憎いのは 私自身…!!!」



再改造を重ねる度に望み通り人間の体を捨てていったが、同時に精神崩壊も進行。
かつての穏やかさは失せ、悪辣な性格に変貌しながら同じく人の体を捨てつつあったイチローには友情を抱いており、完全に魔道に堕として「こちら側」に引き込もうと策謀を巡らす姿は、皮肉にも自らが忌むべき「人間性」に他ならなかった。

かつてはプラーナを通して過去に触れ「マサさん」と愛称で呼び慕っていたイチローとの仲も完全に決裂してしまい、自分で自分に洗脳手術を施すという奇行を繰り返して自分に残された「人間」を追い出そうとする。

最期はバッタオーグ、仮面ライダーをプラーナを駆使する格上の最新型と知った上での戦い。
それはまるで愚直に使命を果たす「虫」となり、「獣」として死に場所を求めるかのような行為だった。

“人間が嫌い”の根底に潜むのは愛する人を守れなかった自己嫌悪であり、拭いがたい人間性に苦しみ続けた生涯に幕を閉じたのである。


余談

  • 8本垂れたドレッドヘアは蜘蛛の節足の表現。他にもハチオーグの翅ツインテールなどで同じ手法が使われている。

  • 冒頭の襲撃シーンは台詞がないのでやや分かりづらいが、「警察組織の機動隊に擬態して騒ぎを誤魔化しつつルリ子を捕獲」というもの。最初はこれについてルリ子が言及していたが、説明口調すぎるからかOMITされた。

  • 「残念です」の後の宙返りはCG……ではなくマジで中の人が演じており、スーツアクターの柏崎隼風はクレーンに吊るされて壁面にへばりつく所まで演じ切った。この決死行に撮影後は思わず宿敵のライダー(の中に入った池松壮亮さん)と熱いハイタッチ。

  • このクモオーグの一連の流れはTV版の第1話「怪奇蜘蛛男」のオマージュであり、登場場面の細かなワンシーンやカット割、ロケ地の小河内ダムなどその徹底したリスペクトによる再現度は極めて高い。
    仮面ライダーが崖から初めて姿を現すシーンはそっくり同じ場所で行い、なくなってしまった木々をCGで再現して当時と同じ景観にしている。

  • 冒頭15分という短い時間ながらライダーとの戦闘シーンは激しく、制作としてもオリジナルを踏襲すべき部分と時代相応に発展させたい部分のせめぎ合いの中で撮影している。
    • その結果、ダムの100mの通路を1分かけたアクションでワンカット撮りという無茶が行われ、双方の中の人は息が上がり、ミスって転び、三角蹴りに失敗して背中から落ち、酸素スプレーが乱れ飛ぶ過酷な現場となった。

  • 言葉遣いが独特なので「ヘヴィですね!その近接戦闘能力」と重さは関係なさそうな台詞を言っているように聞こえていたが、「いいですね!」が正解で前者は空耳である。
    • また、末期の「しまりました! 空中では私が圧倒的に…不利ィッ!!」というセリフは、
      しまりました」という耳慣れぬ敬語*2やシチュエーションに見合わぬ説明的な台詞回しなどからファンの間でネタにされた。ついでに似たような事を劇中劇で言ったアイドルに飛び火した

  • クレヨンしんちゃん』で放送された『シン・仮面ライダー』とのコラボエピソード『しん・仮面ライダーだゾ』では、
    この蜘蛛オーグを露骨に意識したSHOCKER上級構成員、その名も雲オーグが登場。クモオーグの隠し腕もしっかり再現されている。
    放送が『シン・仮面ライダー』本編の公開と同日だったせいで、封切初日に観なかったファンがネタバレを喰らったことがしばしばネタにされる
    SHOCKERではかなり珍しい非生物モチーフの構成員だが、あくまでコラボ回のキャラで映画本編とは無関係だからか、
    その出自については特に触れられなかった。怖顔オーグなんかもいるくらいだし



私は荒らしが嫌いです。その荒らしを捨てたWiki篭り達のために…

項目をこの手で追記・修正する!

それが私の幸福……


※追記・修正は人間性を捨て去った獣になってからお願いします。

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最終更新:2025年04月12日 22:42

*1 自身の派閥を率いる幹部の場合は、上級"幹部"構成員という肩書きになる。

*2 なお、「しまった」という言葉は「仕舞う」が語源のため、「しまり」と活用するのは本来は誤用。また、そもそも感嘆詞なので敬語の形にする事自体が厳密には誤りである。