ハチオーグ

登録日:2025/02/22 Sat 02:22:22
更新日:2025/04/01 Tue 20:48:53
所要時間:約 20 分?いずれにせよ物騒な話ね




「待っていたわルリルリ。ようこそ私の巣へ」


演:西野七瀬

ハチオーグとは、シン・仮面ライダーの登場人物である。
SHOCKERの上級幹部構成員であり、組織を脱走して次々と構成員を撃滅していく本郷猛と緑川ルリ子の3番目の標的として登場した。

概要

平時は黒い打掛を羽織り着物に身を包んだツインテールの女性で、少女と言っても差し支えのない若々しい容姿をしている。
口癖は「あらら…」

SHOCKERの上級幹部構成員は各々が定義した幸せを掲げているが、彼女の幸福は「支配すること」であり、洗脳によって多くの人間を拉致し、下級構成員や労働力に仕立てている。


「支配こそ私のささやかな幸せ。服従こそが奴隷たちの幸せ」


社会実験のテストモデルと称してに街の一つをテリトリーとしており、住民たちは意のままに従う。
その姿は働きバチを統べる女王バチそのもの。

「社会にも自然にもストレスをかけない効率的な奴隷制度による統制された世界システム」の実現を理想とし、やがてそれを世界の基準にしようと目論む。
「暴力は嫌い」と嘯くが、問答無用で洗脳して配下にしているあたりお察しである。

実はルリ子と同じ人工子宮によって組織に生み出された存在で、演者同士の年齢差は6つくらいあるけど彼女とはほぼ同世代の友達のような間柄。
「ルリルリ」という愛称で呼んでいる。


イチロー兄さんの頼みもあって当初は本郷とルリ子を保護し組織に戻るよう交渉するが、ハチオーグの理想は「人々の心の自由を奪う」ことに他ならない。
ルリ子としても友情のような感情がないでもなかったが、既に一線を越え危険な野望を抱く彼女を見過ごすことはできなかった。

六角形の蜂の巣のような巨大な塔をアジトとしており、本郷とルリ子を待ち構える。

【ハチオーグ】


「スズメバチはバッタの天敵」


緑川グループが開発した昆虫合成型オーグメント。富士山麓に生息するスズメバチを改造したらしい。
現時点でビジュアルは出ていないが、蜂の生態のようにサナギから羽化して現在の姿になった。
組織での識別IDは「HACHI-AUGMENT-01」

その成り立ちから仮面ライダーと同じくプラーナを戦闘に活用し、翅の形状のプラーナを放出して高速移動する。
ただしライダーのような大気プラーナ変換の機能はなく、手を握る事で他者のプラーナを直接奪い、エネルギーとする。

人間から直接奪うプラーナのエネルギーは即時的かつ効率も優れているが、吸収された対象は死亡してしまう。
周囲に従えている下級構成員達はハチオーグが求めればすぐさま身を差し出す使い捨て電池でもあるのだ。最期に握ってもらえるなら本望かもしれない

刀を武器とし、趣味レベルで拘る使い手。
最近の流行は人体に有害な金属を溶かして叩き丹念に研いだ日本刀で、相手は突き刺されると同時に苦しみ悶えるか即座にショック死してしまう。
毒針ならぬ毒刀で、並の相手なら一撃必殺の蜂の一刺しである。
逆に攻撃面はこの刀に頼っているため、徒手空拳では火力半減なのが弱み。
超スピードで蜂のように舞い、刀で蜂のように刺す。



蜂のマスクは視力に優れており、複眼のような緑の目は素早く動く相手も捕捉する。
プレデターの照準みたいな三角に配置された額の赤い3つの丸も目に相当する器官であり、サーモグラフィーのように周囲の温度や熱源を感知し、姿を隠した敵を見つけ出す。
バッタの脚力を得たジャンプの如く鋭い顎はスズメバチのように強靭で、鉄骨をも噛み砕く。
迂闊に密着すれば噛みちぎられて死ぬ。是非とも死なない程度に一噛みしてほしいものである

緑川グループ製であり、本人も何かと家族と懇意にしているからか、身に纏っている装備にもライダーと同じ技術が使われている。
着物はルリ子謹製のライダーの黒コートと同じ材質でいわゆる「鋼よりも強く絹よりもしなやか」な作りで、銃弾程度なら弾き返す。
下にピッチリ着込んだタイツのような蜂の巣模様のスーツは電気仕掛けで、戦闘と同時に光り輝き筋肉の運動を強化する。
ハチオーグの高速移動を支えている強化服である。

要するに変身前の仮面ライダーとほぼ同じ装備だが、機能面はともかく長い黒コート一丁で不審者スレスレのバッタくんと比べるとかなりファッションに気を遣っているあたりはなんとも女性らしい。
これはハチオーグ流の"強くなるオシャレ"なのだとか。
なので残念ながらその見事な上半身を守る胸部装甲はライダーと違い存在しない。

"自身の幸福に至るための方法"として初歩の洗脳技術以外はプラーナの情報をSHCOKERの他グループに開示していなかった緑川博士(緑川グループ)がどのような経緯で彼女を改造したかは現時点では明らかになっていない。
ルリ子とは疎遠になっていたが友人同様であったし、イチロー兄さんにルリ子の保護を頼まれ、外伝漫画では幼少期に緑川博士にお世話になっていたり、何かと緑川ファミリーと縁があるのも関係があるのかもしれない。

プラーナを戦闘に活用こそするが大気プラーナ変換などの後発の技術を有さず、劇中ではルリ子も特に驚いた様子を見せていないので、バッタオーグよりも早い時期に改造された昆虫合成型の先輩なのは確かである。


装備も同じ、緑川グループ製の昆虫合成型なのでプラーナを行使する能力も同じ。
決戦時にマスクを装着してから「これで基本スペックはお前と同じ」とはそういう意味なのである。
クモ先輩コウモリおじさんなど、非・緑川製でプラーナを戦闘に活用できない人外合成型オーグメントと有利な条件で戦ってきた本郷にとって初めての同型との戦いとなった。

…ただし、カタログ上の能力や装備は同じでも緑川最期の最高傑作にして最新型の仮面ライダーと渡り合うには荷が勝ちすぎていたようで、1対1の決闘では敗北した。
短期決戦覚悟で初手からプラーナを全力開放した高速移動も殆ど見切られ、ようやく胸を一突きしても肉体にはダメージが届かず、映像の様子からかなりの無理ゲーであったのが伝わってくる。

【人間態】


「SHOCKERの素晴らしさは生まれた時から堪能してるでしょ?」
「私たちの幸せを形にしてくれる"アイ"の秘密結社」

ルリ子と同じ人工子宮を母として生まれた存在だが、こちらはイワン博士率いる死神グループの元で誕生した。(ただし緑川にかなりお世話になったようである)
最終的にこの人工子宮実験は3人しか成功しなかった。
派閥の壁はありながらも次代のSHOCKERを担う人材として、ルリ子とは幼少期から友人同然に過ごす。


生体電算機であるルリ子とは異なり、、戦闘に特化した強化人間として生を受けている。
年齢はルリ子と同世代程度という言葉を物差しにするなら、人間換算で17〜8歳くらい。
平時は普通の人間とあまり遜色のない少女だが、着物+黒スーツの和風ゴシックな出立ちである。

本家の蜂女よろしく、人々を洗脳して労働力としたり、見込みのあるものは下級構成員(戦闘員)に仕立てる。
組織の運営上、プラーナを応用した洗脳技術はグループ全体に共有されているが、彼女の派閥独自の発明として街一帯を纏めて操れる巨大な洗脳システムを完成させている。
外付けの試作段階なので電子機器を利用しており、アジトである塔の一部に設備を集中させる必要はあるが、この技術で組織の人材提供の大半を担っており、上納による功績で成り上がったらしい。

お付きの下級構成員は個別に処置を施して従えているが、町の住民は巨大電子機器で一括して外付けで操っており、後者は装置を破壊されると一斉に洗脳が解かれてしまう。


眼鏡という媒介を用いていた本家と比べ、テリトリーに入った途端に洗脳という激ヤバな代物だが、基盤がプラーナ技術なため本郷は元よりルリ子もプラーナコンバーター(ベルト左側のアレ)でプラーナを制御可能なので無効化される。
本家の緑川ブランドには勝てなかった。

洗脳した市民を本郷に差し出して「暴力を振るえるのかしら?」と人質戦法にも躊躇がないが、本気の決闘の際には公平に戦うという騎士道精神的な考えも持っており、ライダーとの決戦の際には自分の得物と全く同じ作りの刀を渡して対等な条件で戦おうとした。


趣味は刀とワイン。
刀の鍛錬と整備はマメに行い蒐集し、グー・ド・ディアモンを切らしているのでシップレックで我慢してもらったりしている。*1
軽口やユーモアも解し、本郷に「今日はバイクじゃないなら飲んでも平気かしら?」と聞いたりも。

日本刀を飾りまくったりやたら蜂の巣六角形のアジトの内装も個人的な趣味のようで、ルリ子は「相変わらずの趣味ね…」と零していた。


「趣味は個性の表れ。ステキでしょ?」



【ルリ子との関係】


人々を捕らえては機械で洗脳する、恐るべき蜂の巣を支配する女王蜂。
しかし、ルリ子には愛憎入り混じった執着心を抱いている。

「ルリ子を泣かせたい」「私の前で思い切り泣いて欲しい」「私のせいで傷ついて切なくなって欲しい」
そして、「ルリルリに殺してほしい」
と、悲しんでいるあなたが好きで慰めたい、ないしあなたの心の消えない傷跡になりたいと思ってる系女子のような何か。

とはいえ、屈折した態度になってしまうのはルリ子が本心を見せずに家族の願いのために自分を殺しているように見えるのが気に食わないからのようで、外伝漫画などでは普通の人間の暮らしが分からないなりに心の奥底で友情を欲しながらも素直になれない非常にいじらしい様子が描かれている。

ルリ子としても「私に友達はいない」としながらも、「友達に一番近い存在で殺せない」と言い切っており、劇中では互いにSHOCKERを抜けて(SHOCKERに戻って)と説得し合っていた。
組織という特殊な環境下や家族のために他者に心を開けなかったという事情こそあれど、要は互いに素直になれず不幸にもそのまますれ違っていった、というのが本編の構図なのだ。

ライダーカードの世界観では「子供のころから2人は時々ケンカをし、そんな時は面と向かって話せないので同じ椅子に2人で腰掛けながら顔を合わせず電話で仲直りする」という微笑ましい様子が演者2人の特写つきで語られている。かわいい。
平時からルリ子とは電話友達だったようで、仲の悪い同僚と一触即発になった時は「次やったらその時が奴の最後よ」とかめちゃくちゃ楽しそうな様子で話してるらしい。


そんな彼女の人間だった頃のコードネームは「ヒロミ」
なんて事はない一般的な日本人名で、劇中でもルリ子の会話で普通に呼ばれる。
しかし原典『仮面ライダー』のある登場人物に引っ掛けた名前でもあり、一発で立ち位置がバレてしまうので劇場公開前のライダーチップスや公開直後の入場者特典の第1弾のカードでも一貫してこの名は使わず、呼び分ける必要がある時もハチオーグ(変身前/変身後)と回りくどい表記で伏せられていた。これについては後述。

他のオーグメントもそうだが、基本的には改造された時点で組織内でのコードネームは一貫して怪人名の方になり、人間の名前は使わなくなるようである。


「"ヒロミ"は昔のコードネーム」
「今はSHOCKERの上級幹部構員"ハチオーグ"よ。間違えないで」


【変身方法】


「そう…これで完璧」


下級構成員2人で両脇からハチマークの横断幕を持ってきて姿を隠し、幕を下ろすと変身が完了。

本気モードになった最終決戦では「チェンジ」の掛け声と共に目が異形の緑に変色し顔に虫の筋ような痕が浮かび上がる。そして肩にかけている黒い打掛をマントのように両手で持ち上げて顔にかぶるように前に振り下ろすとハチオーグへと姿を変える。

バッタオーグと同タイプという事もありそのシークエンスは非常に似通っているが、前述したようにエネルギー補給のために都度配下からプラーナを奪い取る。
そしてどこかで見た事あるような変身ポーズで、変な所で死神グループ生まれっぽい。




【劇中での活躍】

テリトリーに侵入した本郷とルリ子と迎え入れ、「SHOCKERに生まれし者はSHOCKERに還るのが筋よね」と言葉をかけるが互いに交渉は決裂。
その後、洗脳の要であるアジトの巨大電子機器を本郷の航空機から飛び降りドリルキックという奇策により破壊されてしまう。*2
人間態のまま腹心である背広の男との共闘で本郷と戦うも戦局は膠着し、背広の男のプラーナでブーストをかけたハチオーグの姿でライダーに決戦を挑むも敗北。
本郷の優しさとルリ子の友情によりトドメは刺されなかったが、施設を制圧し後からやってきた諜報機関の男の銃弾により命を落とす。
通常の銃弾程度なら物の数ではないハチオーグを一発で死に至らしめたのはSV1(Scorpion Virus)
プラーナシステムすら対応できない、サソリオーグの猛毒性化学兵器であった。

「残念…ルリルリに殺してほしかったのに」


組織の壊滅に必要な犠牲だったと理解しつつも、友人と呼べる存在を失ったルリ子は深く悲しみ、暫しの間だけ感情を露に狼狽した。


【ルリ子以外の対人関係】


・背広の男

ハチオーグにいつも仕えている黄色い背広の男。
これといった名前がなく、文字通り「背広の男」としか呼ばれない。
紳士的な振る舞いを崩さない人物で、中華そばの暖簾からヌルッと出てきて礼儀正しく本郷とルリ子をアジトまで案内した初登場シーンの妙なインパクトでお馴染み。

ハチオーグと同様に剣を使い、共闘を許されているほどの一番の側近である。
そして女王のためなら命を捧げる覚悟も持っており、求められれば躊躇いなくプラーナを差し出す。

最終的に手を下した(プラーナ吸収)のは自分とはいえハチオーグにとっても失うのが惜しい傑物だったようで、OMITシーンではその自己犠牲に対し「すまない、仇は討つ」と言い残すほど。死体を屋上からレッドフォールするシーンが途中まで作られていた

・下級構成員のみなさん

ある程度の見込みがあるとして、プラーナを応用した洗脳で肉体を強化し戦闘員としてアジトで控えていている仮面の兵隊。
やはりハチオーグの趣味なのか女性の方は上着が黄色い。

その役割は露払いと、ハチオーグのプラーナ補給のための使い捨てバッテリー。
怪人態に変身するたびに自ら手を差し伸べ、命を散らしていく。

本編ではモバイルバッテリー係で終わってしまったが、実は最後の屋上の戦いで本郷を取り囲みトンファーのような武器を駆使した戦闘シーンも撮影されていた。
某メイキング番組で「段取りの打ち合わせっぽい」と言われてしまったアレである。結局カットされOMIT行きになってしまった。
ルリ子が1人でヒロミと話している時は周りを取り囲んでいるのにサーバーを破壊した本郷が駆けつけたらいつの間にか消えているのはこのため。
その戦闘シーンも基本的に男性タイプしかおらず、女性型は変身用の幕を持ってくる係の2人しか登場していない。


ライダーカードの世界観ではハチオーグが毎日欠かさず行う刀の鍛錬に付き合わされているという凄まじい設定があり、真剣勝負で大抵の個体は死ぬが生き延びれば重宝されるという蠱毒めいた環境だと説明されている。命は投げ捨てるもの。
その中で一番強かったのが背広の男だった。

・トオル(透)

ヒロミと同じ死神グループの人工子宮実験の生き残りで、姉弟(あるいは兄妹)のように育つ。
無事に生き残れた(誕生し生育できたのは)緑川産のルリ子を含めて3人だけらしい。(ルリ子が最初の成功例で、2人が後に続いた)
やはり強化人間として生を受けるが、植物のような穏やかな心を持ち「個」としては満ち足りた理想的な精神だが、それゆえに野心がなく「全」を導く器たり得えなかった。
それに気づいた組織が改善案としてヒロミに「満たされない心」を与え、彼女は幸福や生きる意味を自ら追い求める野心と上昇志向の塊となったのである。

やがて「サラセニアオーグ」のオーグメンテーション手術を受けるが、人間とかけ離れた構造である植物との合成は難しく、術後まもなく死亡した。
透がいればヒロミは大丈夫だと思っていたルリ子はアジトで対峙するまでその事実を知らされておらず、かなり動揺している。

旧1号編の(藤岡弘が声も担当してる頃までの)怪人の中で唯一サラセニアンだけが割愛された理由づけとしてこのような形となった。
庵野監督としては言及するシーンをギリギリまで入れたかったが結果的にOMITとなっている。
後に外伝漫画で在りし日の透少年が登場し、ヒロミやルリ子との交流が描かれた。

元ネタは本家のコブラ男のエピソードに登場する同名の少年。
TV版と漫画版の双方で登場し、前者では古賀刑事のご子息である。


【他作品・他媒体での活躍】


【SD シン・仮面ライダー 乱舞】

「そう。これでパーペキ」


概ね本編と同じ流れで戦闘になるが、本作のルリ子はオペレーターキャラで現場に出てこないので
「あら、ルリ子は来なかったのね。孵化した姿を見せたかったのに」と少し拗ねた様子を見せる。かわいい。
この感じからするとルリ子は成虫に進化したハチオーグの姿はまだ見ていないらしい。

【真の安らぎはこの世になく】


人工子宮実験を終え、覚醒した直後の幼少期の姿から登場。
死神グループの生まれだが、緑川の計らいでルリ子や透と3人で外の世界の勉強として組織傘下の保育園で過ごしたり普通とは程遠いが楽しそうな昔日の思い出が描かれた。

10月〜11月に保育園に編入し、残り半年もせず卒園らしいので、登場当初は普通の人間に置き換えれば5〜6歳程度。
普通の子供についてはてんで分からないが「子供は仲良く遊ぶものらしい」という知識はあるのでルリ子や透を誘い、自分たちの時代がくるまで大人の言うことは適当に受け流しつつ素直に従って生きようと考えている。
代名詞のルリルリは「普通の子供に溶け込むならあだ名の一つでも必要でしょ?」として呼ぶようになった。


「人工子宮実験の最終完全体」を自称し、いずれ幹部になってみせると豪語する野心家の幼女。
後天的に改造されたクモやサソリとは異なり生まれながらの強化人間で、この時点でナノボットで暴走した野生の熊を叩きのめしたりしている。

「満たされない心」を与えられ、幸福や生きる意味を自ら追い求めるようにプログラムされたが、幹部になるという目標は自分で見出したもの。
将来的には透やルリ子を配下にしたいらしく、幼い時分から熱心にスカウトしている。

ルリ子や透と比べると普通の園児たちに混ざって遊ぶのはあまり楽しそうではないが、もうこの時点で「支配の塔」のビジョンがあり、おもちゃで塔を組み立てて独裁肯定!のスローガンと共に意気揚々と説明して園児にドン引かれたりする一幕も。ただし「役割を与えられるのは嫌いでない」そうで、諸々の事情から園に通えなくなったと知らされた時は寂しそうな顔を見せた。

人工子宮という「作り物の偽物」である事に悩むルリ子に対し、「自分たちこそが本物で他が偽物なのだから誇りなさい」とアドバイスするなど、完璧な存在である自分に絶対の自信を持つ。
この言葉はルリ子が自分で目標を考える切っ掛けとなり、後に感謝の言葉と共に友達(に近い存在)になった。

外の世界に触れてほしいという緑川の願いで3人は大きくなってからも保育園に足を運び、子供たちに勉強を教えていたが、保育園のルリ子は自分といる時より楽しそうで嫉妬している。かわいい。
そういった悪感情が重なり、いつからか社会勉強の計らいからは距離を置く様になってしまう。

他者を、とりわけルリ子を欲しがる「心の穴」は人工的にプログラミングされたもので、その穴を飼い慣らさなければならないという透の助言を受け入れ、趣味を見つけるなどして心を落ち着ける様に努力するなど根は真面目である。
「ヒロミの傍にはずっと僕がいるよ」と透は微笑んでくれたのだが…

「…嘘つき」

やがて大人になり、オーグメンテーション手術によってハチオーグへと姿を変える。
組織の人工知能「アイ」にアクセスできる8つのクリプトキューブのうちの1つを所持する幹部となり、ルリ子と一緒にいるために配下にスカウトするが、兄の手伝いをしたいルリ子は断ってしまう。
プラーナの研究に協力してもいい、仲間が無理なら同じ幹部でライバルになってほしいと非常にいじらしく粘るが、兄を救いたいルリ子は取り付く島もなく、2人の溝は決定的となった。


そして時は流れ、映画本編の時系列へと物語は進む。(保育園在籍時から12年後くらい)
実は本編のアジトにはワインセラーがあり、グー・ド・ディアモンはうっかり飲んだきり取り寄せるのを忘れていたらしい。

概ね本編通りの最期を迎えるが、ヒロミ視点の心情が大幅に加筆された。

父や兄のために自分を殺すルリ子が、どこか寂しそうに見えたから。
ルリ子の心に空いた穴を、自分が埋めてあげたかったから。

本編で言う所のルリ子に悲しんで欲しいとは
鉄面皮を崩して自分には本心を見せてほしい、そして慰めてあげたいという欲求の裏返しだった。
ルリ子で自分の欠落を満たしたかったのではなく、ルリ子の心の空虚を満たしてあげたかったのだと、死の間際に気づく。


「ヒロミは透に任せればいい…そういう考えに…いつからか逃げてた…」
「あなたと向き合っていれば止められたの?友達として…向き合っていれば…」


「いつもどこか悲しげだった…あなたは満たされていなかった…」
「私たち、もっと素直になれたら…きっと…一緒に…」


確かに友情のような感情はあった。
だが普通からかけ離れた環境で生まれて出会った2人は、やはり普通からかけ離れた環境により隔たれていた。

2人の不幸なすれ違いは終ぞ心から分かりあう事はなく、幕を閉じたのである。

【余談】


  • 原典『仮面ライダー』の蜂女も剣の使い手だがフェンシング的なスタイルで戦うのに対し、ハチオーグは日本刀にアレンジされている。最後に剣を使った1対1の決闘になるのもオマージュ。

  • アジトで顔合わせする前の本郷とルリ子が商店街を歩くシーンは建物の看板でかなり遊んでおり、本家・蜂女先輩の拠点である「影村めがね」を始めとして「砂田画廊」や、コーヒー喫茶の「COL」などが混ざっている。デザインもかなりオリジナルに寄せているので円盤や配信をお持ちなら一時停止で確認してみよう。
    • この手の小ネタは作品中に散りばめられており、他には諜報機関の男が若い婦人警官に選ばせて持ってきたルリ子の着替えを入れた袋に「Amigo」のマークなど。



  • 代名詞の「ルリルリ」という渾名は当初の台本には書かれておらず、撮影の合間に急に庵野監督がやってきて「ルリルリに変えてください」と言い出して急遽変更された。

  • 特徴的なツインテールは髪を翅のシルエットを見立てた出渕裕の発案である。グッジョブ。当初は実際に小さな蜂の翅の意匠を予定していたが、アクションでポッキリいきそうだったので実物では外された。

  • 実はライダーより先に翅プラーナのCGが作られている。SIGNIFのチームが高速移動の表現のために作ったものが気に入られて「仮面ライダーもバッタのオーグメントだから翅っぽいエフェクトとして共有性を持たせて使える」という流れで採用された。

  • 演ずる西野七瀬はアイドルグループの乃木坂46の1期性オーディションに合格し、同グループの卒業後に女優に転身した経歴の持ち主。
    • なので池松さんとかと違って過酷なアクションを望むべくもなく、当初は2手3手くらい振らせてから変身して中の人に変わってもらおうとしたが、西野氏は初期の練習で奮闘を見せ、更に練習ビデオの様子を見た某監督「いいねぇ。面つける前の戦いも増やしてみましょうか」となってしまい顔出しの戦闘シーンがドンドン増えていき、最終的に殺陣の大半を演じてしまった。それにしてもこの映画、そんな逸話ばかりである。
      • 準監督の尾上克郎、アクション監督の田渕景也も賞賛の声を惜しまなかったが、西野氏は他の現場で田渕氏の顔を見るだけでビクビクするようになったらしい。げに恐ろしきアクション最前線。

  • ハチオーグのアップ用のマスクは小顔すぎて西野氏以外誰も入らなかったとされている。必然的にアップシーンも全て本人が入って撮る事になった。
    • 加えて視界は最悪で何も見えないも同然であり、マスクをつけてからの第一声が「カメラ分かりますか?」の問いかけに対しての「分からないんです…」
      • 結果としてマスクを被ってからのハチオーグ戦は大半がCGシーンとなった。さもありなん。

  • 人間態の名前の「ヒロミ」は、本家『仮面ライダー』に登場する「野原ひろみ」に因んでいる。緑川ルリ子の大学の友達で、TV版は2号編に突入した2クール目の活躍を最後にフェードアウト*3し、萬画版では蝙蝠男のビールスの餌食となって悲惨な最期を迎えてしまう。どちらも普通の学友という感じで、さすがにこちらのように特殊な出自の愛憎入り混じった複雑な関係ではない。
    • つまり「ルリ子の友達」にこれ以上なく相応しい名前であり、ハチオーグとその名前がイコールになる事は結構なネタバレなのである。公開前のライダーカードなどで人間態の姿が先行して登場したことを「ネタバレだ」と非難する意見もあったが*4、表記は変身の前後を問わず「ハチオーグ」になっており、謂わば本命の「ヒロミ」という名前については劇場公開日までキッチリ守られていた。





「さぁ、私の理想がご理解いただけたら、正しき世界システムの礎となって?」



「項目作成こそ私のささやかな幸せ。追記・修正こそ奴隷たちの幸せ」

「何も関係のない働きバチの編集に、あなたは強権を振るえるのかしら?」


※追記・編集はハチオーグ様にプラーナを捧げてからお願いします。


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最終更新:2025年04月01日 20:48

*1 どちらも超が付くほどの高級シャンパンであり、特にグー・ド・ディアモンは日本円で約2億3000万円と言う凄まじい価格になっている。

*2 漫画版では、超高度からの飛び降りで限界以上までプラーナを一気に貯めて放出すると説明し、政府の男に航空機の支援を要請した

*3 34話にも登場するが、こちらは撮影順と放映順に開きがあり、2クール目のタイミングで制作されている

*4 雑誌やカードで映像作品の情報を先行紹介、というのは古来からのお約束なのだが、インターネットやSNSの発達した昨今ではこうした意見も珍しくない