登録日:2023/11/11 Sat 03:44:16
更新日:2025/04/21 Mon 22:52:09
所要時間:約 30 分で読めます
『Thisコミュニケーション』は、ジャンプスクエアにて2020年から連載されていた(全12巻)漫画作品。
作者は六内円栄。連載デビュー作。
あらすじ
20世紀後半、地球に突如現れた謎の生物「イペリット」により人類の生存圏は尽く奪われ、
21世紀の今、地上は全てイペリットに牛耳られ、彼らの発した有毒ガスによって汚染し尽くされていた。
高地に逃げ延びた者もわずかな資源を奪い合って自滅し、もはや人類の生き残りは、予め極地に拠点を作っていたようなほんのわずかな者たちだけだった。
そこは日本、槍ヶ岳の山頂。80年前の大戦の折に作られた「研究所」にはおよそ200名の人類が隠れ住んでいた。
彼らを守るのは、研究所の人体実験によって生み出された、死んでも1時間前の状態に復元され蘇る不死身の少女たち「ハントレス」。
そんな最中、食料を求めて彷徨っていた元軍人「デルウハ」が研究所に辿り着く。
歴戦の指揮官である彼の下で、烏合の衆だった彼女らは力をつけ、終末世界で共に生存のための戦いに身を投じ続ける。
概要
そんな最強の指揮官……にして必要なら誰でも殺す血も涙もない殺人鬼である主人公デルウハが、
自分たちが勝利し生き残るためには信頼と結束が必要だから少女たちと交流して連帯を促し、
何かしら都合の悪いことがあれば1時間以内に殺して記憶を消し飛ばしてリセットし、それを隠蔽しながら、日々の生存に全力を尽くすお話。
こんなもんタイトル『Disコミュニケーション』の間違いだろとツッコみたくなること請け合いではあるが、
突き詰めれば全て自分が生きるためで都合の良いようにリテイクしてるとはいえ、デルウハは紛れもなく全力を以て少女たちに向き合っていく。
正面から向き合おうとしない研究所の大人たちとは異なるその態度にこそ少女たちは心を開き、成長を促されていく、紛れもないコミュニケーションの物語なのである。一応。
ジャンルとしては公式には「サスペンス」の語が使われることがしばしばあり、実際、人類の生き残りを懸けた戦いの部分より、伏線回収による事態の真相究明、アイデアによる状況の打破、殺人事件など、サスペンスと呼ぶに足る要素が強い。
その設定上、ロケーションが屋内以外ほぼ雪山という特徴がある。また、ともすると忘れがちだが舞台は槍ヶ岳、すなわち
長野県・岐阜県である。
ご当地コラボに期待。
ちなみに言語は
エスペラント語が戦後しれっと導入されたという言及がある。
2023年10月を以て、あと半年(6話)での完結が作者の口から公表され、2024年3月を以て完結。
「一番長く続ける際の構想」をやり切っての自己志願での完結で、打ち切りだと思われないよう早い段階で公表させてもらったとのこと。
また、2年前に始まった
電子版アンケートの平均順位が2.03位(1年前からに限ると1.66位)とのことで、連載誌がアニメ化作品を多数抱えるジャンプSQながら、実は打ち切りなどあるわけもないほどの人気作だったことが覗える。
表舞台に立てないのは主人公が倫理的に終わりすぎてるせいと、知的な駆け引きが魅力で連載時期も近くタイトルがちょっと似てるジャンプ系列の漫画と同列に扱われることも。
連載終了後、作者のX(Twitter)アカウントにて、「販促用DLC」と称した、空白の時系列に挟まるおまけ漫画を複数話にわたって掲載している。
内容は一言で言うと
デルウハ版孤独のグルメ。作る側も兼ねているので喩えとしては微妙だが。
というか「孤独」の指すところが異なる。
登場人物
「戦死者の2割は同士討ちだ 気にするな」
主人公。大体前述した通り、合理を重んじ倫理を顧みない極悪非道の指揮官。
詳細は個別項目を参照。
ハントレス
長年の研究を元に、供出された子供を薬物等で強化して生み出された存在。
超人的な身体能力を持ち、軍人でも白兵戦など考えたくもないイペリットに対して近接武器での戦闘を行うほど。
共通して扱う武器は折り畳み式の剣。角ばった無骨な形状で、展開状態では身の丈ほどの大剣サイズ。
ただし、肉体の耐久力は普通の人間と何ら変わらない。
死に至るダメージを受けると仮死状態になり、8時間後、「死亡1時間前の損傷していない状態」に復元され、また記憶も1時間前の状態に戻る。
身体の欠損や変質が生じてから時間が経つと「損傷」扱いでなくなるのか、正常でない状態のまま固定されてしまう問題があるが、研究所は長年の研究の成果で高度な再生治療技術を持っているため、少なくとも外傷の治療に関しては取り返しがつく模様。
当の研究所サイドも知らなかったが、再生機能の延長で生じたと思われる「血を操る能力」が秘められている。
急速な再生や、血を飛ばしたり固めたりする攻撃や拘束技、医学的に細かく血の機能をコントロールしたりと、習熟すればかなり器用な使い方ができるが、過剰に使うと力が暴走して体がメチャクチャになってしまうリスクもある。
「進化」してその能力を開花させる方法として、デルウハは対象の性質を理解した言葉をかけると促せることを発見している。
既に進化済みのハントレスの能力に触れて感覚を掴むという方法もあり、これが最も手っ取り早い。
暴走のリスクや、殺すのが難しくなる問題からデルウハはできるだけ進化させないようにしていたが、使わないと勝てなかった“二本足”戦の終了あたりからは標準装備になっている。
「すみませんデルウハ隊長! うちの妹達が…」
後ろで丸めた長髪に猫耳のような髪型の、名前通り最初に誕生したハントレス。もっとも、数週間から2ヶ月程度の差にすぎないとのこと。
真面目で礼儀正しく、その境遇から姉としての自認を持っており、理知的な性向もあって一歩引いた位置から見守る。
……が、そんな態度を「妹」らは特に顧みず、しかも肝心の戦闘のセンスが今一つなのもあって臆病者のレッテルを貼られている。そのことに内心ムカついていたりと、子供っぽい部分も多々ある。
デルウハと出会ってからはその指揮や砲術の技能に関心を持ち、習得に勤しむ。
「え~? ノリ? いちこにつられたしぃ」
2番目。デコ出しヘアーで、ぶりっ子かつ他人を挑発したがる問題児。
精神的優位を持っていないと安心できない気性がそうさせているとデルウハは分析している。
一方、望み通りのことを言ってくれたデルウハに好感度爆上がりしてしおらしく甘えようとしたり(面倒事と判断されてその場で殺されたが)、
ひょんなことから飛び出した「世界を救う」という発言をからかいながら内心共感し、掌を返されたら激怒するなど、性根は純朴なところがある。
戦闘のセンスは高い様子もあるが、隙を見せてあっさりやられる場面も目立つ。
「…かわいいでしょ?」
3番目。大人びた雰囲気でいつも帽子を被り、言動は寡黙。
その雰囲気に反して無類の「かわいいもの好き」で、主にファンシーな動物のデザインなどを好む。
というか、かわいいもの以外には興味がなく、仲間を含めた人間に興味がなさすぎるのが欠点。
「自分の娘を人身御供にしました」と家族からは捨てられた孤児同然の境遇になっているハントレスの中で、唯一家族が名乗り出ている。
……もっとも、家族に対しても関心はないが、祖父母はかわいいものを作ってプレゼントしてくれるので好いている。
彼女から信頼を得るためにデルウハはかわいいものの研究に勤しむ羽目になる。
「アンタが私以上に役に立ったことがあるの!? その体たらくで私に意見!? 最初からそうやってしおらしくしてればいいのよ!」
4番目。男勝りで気性が荒く、戦闘能力は飛び抜けて高いが、それ故にプライドが高く、弱いものを見下す性向がある。
とはいえ、「強いから皆を守る」という観念を持ち、素直に気持ちを表せない
ツンデレでもある。
未熟者ばかりなハントレスの中でも、そういった気性に現れている精神的な脆さは人一倍のもので、絶対的な戦力であることも相まってデルウハもその扱いに腐心することとなる。
単純な力は自分ほどではないとはいえ文句なしに「強い」デルウハに対しては、反発しつつも早々にデレ始める。
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ネタバレ |
生まれてこのかたハントレスとして腫れ物扱いされてきたことから、「自分を本当に必要としてくれる人」を心の中で強く求めていた。
そんなある日、飛び出した自分を助けに来たいつかが口にした「お前がいて良かった」という言葉が響き、心を開くことになる――
が、自分以外の誰かに心酔してしまったことを問題視したデルウハが(3人で新型イペリットと交戦しながら命懸けで)急いで2人を殺害。
そうして「魔法の言葉」をパクったデルウハにベタ惚れする結果となるのであった。
デルウハとハントレスの決裂時は、2回目までことごとくよみのデルウハへの好意と心の弱さを突かれており、
1回目は5人の犠牲と引き換えにほぼ勝ちの状況まで追い込むも、デルウハにこのまま自分を殺した先の現実を突きつけられて投降。
2回目は元々よみに交渉の意思があったのもあってデルウハに説得されて寝返り、協力して他のハントレスを殺し、自分から全てを無かったことにすることを選んだ。
3回目は2回目までの自身の行動も含めた全てがあけすけになる大事故だったのもあって、 「檻の中なら守ってあげられる」「死なせないけど四肢を落とす」と完全に やべー方向への覚悟が決まってしまい、説得が失敗した。
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「ぼかぁねぇ! 昨日からずっと言いたくてウズウズしてんだ! だのに毎回毎回よみで止まって…もー我慢ならねぇ! ごーーッ!!」
5番目。男性的な仰々しい言葉遣いの僕っ娘で、陽気で社交的な性格。
一つにまとめた三つ編みにそばかす、小さいファッション眼鏡と外見的特徴が多い。
その性格のためハントレスの協調に積極的で、デルウハともすぐ打ち解けたが、ポジティブな反面空気を読まず、視野狭窄な傾向があるのが欠点。
血を操る能力にいち早く(本編以前から唯一)目覚めていた。
「うん 私だと効率悪いから一回帰るね…」
6番目。内気でオドオドした性格がよみを筆頭に好まれておらず仲間内で溶け込めていないが、本人は仲良くしたがっている。
戦闘技術は劣る一方、ハントレスたちの中では例外的にデルウハと似た合理的な気質の持ち主だが、それも溶け込めない理由の一つ。
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ネタバレ |
あの人 多分 私たちを殺してるよ…?
(お…お… お前かぁーーーーっ!!)
実は初陣の時点から状況に対して不自然に多い死亡数を不審がっており、ダメ元で自称テレパシストの吉永を送り込んでみるなど探りを入れていた。
そして3戦目を終えた後、仲間との団欒中にその「推測」をポロリとこぼす。
デルウハの的確なフォローもあって打ち解けてきた途端にとんでもないことをぶちまけるコミュ障ぶりが炸裂。
だが、他のハントレスには突拍子もない推測にしか聞こえず、全く信じてはもらえなかった。
そして、吉永の接触から誰かが自分を疑っていることを確信してハントレスの会話を盗聴していたデルウハは、事前に用意しておいた毒をたまたま入手していたチョコドリンクに仕込んで全員を即座に毒殺。
しかし、甘いものが苦手なむつは予期せず回避しており、現場に現れたのをバッチリ見られてしまう。
殺し合いもやむなしと身構えるデルウハに対して、むつはなんと「倫理的な部分を考えなければ効率がいい」「それで仲良くできるようになるなら構わない」という態度を示す。
じゃあなんでそれをバラしたのかというと
そもそもの「疑っている」部分を遡って消せないため、やむなくむつを「共犯者」にするということで合意が結ばれる。
と言われて油断した隙を突かれてその場で殺された。
復活後、「殺したのは事実だが、あくまで仲を取り持つためだから他の奴らには言わないでくれ」等と適度に虚実織り交ぜた情報によって丸め込まれた。
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むつには大きな秘密があった。
それは、例外的に死亡直前までの記憶を残したまま再生することができる体質を持っていること。
つまり、先の「共犯者」の一件を境に、その真実を洗いざらい知ることになったのだ。
原理としては、「お前のように怠惰で合理的だから(デルウハ談)」再生時に無事な部位を再利用しているため。そのため、脳をミキサーにかけるくらい徹底的に破壊された場合は例外となる。
その「違い」が知られると変な目で見られると思ったむつは事実をひた隠しにしたため、誰にも知られず現在に至っていた。
「それなりに皆と仲良くなれたし、死ぬほどの苦痛を味わわせてくるのは嫌なのでできれば殺したい」と思っていたが、1回目の対決にて全員がかりでも敗北したことを受け、デルウハを正面から殺すのは難しいと判断。
勝ち目はあるとしても、犠牲なしで勝てなければ
→死んだハントレスは「デルウハが殺人鬼だと証明された」記憶を失う
→頼れる指揮官をなぜか殺したという遺恨が残ってしまう
→関係が険悪になる
→「仲良くなる」目的は果たせない
そのため、謀殺など回りくどい手口をとるしかないと方針変更し、人付きイペリットとして蘇生した吉永に接触し、オスカーから得た情報で次の調査目標となるはずの上高地に先んじて向かわせて待ち伏せを計画する……が、デルウハが罠を怪しんで遠征を拒否したため頓挫。
上高地遠征を巡る賭けと駆け引きの末、デルウハは途中で既に秘密を(むつのミスから)見抜いていたことが明らかとなり、賭けで遠征の約束こそ取り付けたが「二度と逆らわない」という約束を飲まされ、精神的には完敗する。
私は皆と仲良くしたいの 6人で普通にしゃべったり遊んだりするのが 私の…夢……
これだけは…これだけはやっちゃいけないことだったのよ!!
(バカな! 俺が殺して好感度調整するのは良いが ハントレス同士を殺し合わせるのは地雷だっただと!!?)
しかし2回目の対決時、デルウハがよみを寝返らせて相争わせた(ただし、よみに直接殺させることはしなかった)のを見て、激怒して約束をぶん投げ襲いかかる。
重傷の状態だったため捌ききれず、右目を潰されたデルウハもその行動に怒りを露わにする。
テメェはそんなだからいつまで経っても俺を排除できねぇんだぞ!! テメェはいつだって逃げてるだけだ!! 俺を殺すことから! ハントレスとの関係を自分の力で良くすることから!! こんな仕返しをして何になる!? お前は選んだんだろう!! 俺を利用して友情を手に入れると!! 責任も努力も放棄したくせにこの俺に! 俺の体に慰めを求めるのか!!? この卑怯者!!
動揺したむつはそのまま射殺。しかし、それではこの決裂を埋めることはできないはずだったが……なぜか他の5人より遅く蘇ったむつにこの記憶は無かった。
むつの秘密を見抜いた時点から、研究所に「死亡後に即投与すれば脳細胞を破壊できる薬」を開発させていたのだ。
デルウハはその事実を自分からバラし、一方で「記憶を消せるのは(そのことで苦しんでいる)お前にとって悪い話じゃない」という理由で納得させ、約束を破られた側であるデルウハの側から持ちかけて和解が結ばれる。
危ない橋を渡ったものの、デルウハとしてはむつの地雷を致命傷にならない形で把握して信頼度を上げられる、満足な結果だったのだ。
……という優しい態度から言うなら今のうちと思って、「デルウハ抹殺のために吉永を生かして“二本足”を奪わせ待ち伏せさせてたこと」をバラしたが、デルウハもそこまでの事態は想定しておらず盛大にブチ切れられた。
なんってことしてくれてんだテメェエエエエ!!! あのド変態と二本足を…テメェ!! それで上高地にあんな行きたがってたのか!? 俺と殺り合わせるために!!?
な 仲良く…… するんじゃ…
やめだァ――ッ テメェやっていいことと悪いことがあんぞ!! 絶ってーこの薬二度と使わねーからなァ!!!
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7番目のハントレス
7番目というのは便宜上のもので、失敗作として安置されていた「旧型の」ハントレスの双子を指す総称。
現行のハントレスとの決定的な違いは、再生のギミックが「即座に肉体を成長させる」というものであること。
ほんのわずかな時間で再生するため、まさに不死身の兵士として戦い続けられる利点を持つ反面、損傷再生に必要な時間だけ肉体が加齢するため、再生に伴って徐々に成長・老化していき、再生は有限。
精神面も肉体の変化の影響を受け、反抗期になったり老け込んだりする。
また、高熱・極寒・水中といった継続的ダメージがある環境下においては、寿命を消費しっぱなしになる事態を防ぐため再生をしないようになっている。
記憶の損失に関しては、脳が再生の対象になると短期記憶が吹っ飛んでしまう。そのため、頭部を破壊されて死ぬと、すぐ生き返るが殺される直前のことは忘れる。
加えて、再生で成長した時間分だけ体感時間が延びるため、1ヶ月消費したら直前のことも1ヶ月前のような感覚になって何気ないことは忘れてしまったりする。
再生のプロセスの違いのためか、血を操る能力は全く使えない様子。
研究員が誤ってカプセルを破壊したことで生を受け、胎児から幼児の状態に成長して活動し始め、研究所を脱走するが色々あって戻ってきたため保護。
その後は所内で秘密裏に育てて様子を見ていたが、後にやむを得ない状況のため戦力として投入される。
金髪でウサミミ風の
カチューシャをつけているのが特徴。回想で生まれてしまった直後に服を着せた時点から着用済み。なんで着けたんだろう。
面倒を見ていた研究員の女性がお笑い番組映像などを見せていた影響で、彼女のことを「おかん」と呼ぶようになってしまったほか、時々関西人みたいなことを言い出す。
戦力としてデルウハと共に戦うようになって以降、デルウハを「デル兄」と呼び慕っている。
「あーあ また身長伸びちゃった」
長髪。子供っぽくワガママで、良くも悪くも純粋だが、冷徹な部分もある。
「ウチも…ウチも…早く大人になりたぁあああい!!」
短髪。本来個体名は用意されてなかったのだが、両方「7」
というわけにもいかないためデルウハが便宜上命名した。
正確にはデルウハは「7」「8」と数字表記で呼んでおり、自分たちで呼ぶ時は名前のようにひらがな表記になる。
容姿はななと瓜二つだが
男性。基本的に同じノリだがななよりは大人しい弟キャラ。
その他の人物
「30分目を離しただけなのに また殺人事件が起きてる…」
研究所の所長。オールバックで細身の頼りなさげな男性。年齢は50代後半~60代前半程度。
見た目通りの温厚な性格で、研究所の人々を守る義務を嫌々ながらも背負い、ハントレス研究に心を痛める良心もある、良くも悪くも普通のおじさん。
何故こんな人物が人体実験を是とする研究所の所長になってしまったのかは謎。少なくとも35年以上前にはここに来たらしく、約10年前にはもう所長をやっている。
最初の出会いからデルウハの「悪魔」ぶりを見せつけられて恐れ慄くも、待望していた軍事の専門家、それもとびきり優秀な人材を前にして背に腹は代えられず、悪魔との契約を交わす。
以降、研究所で唯一デルウハの本性を全て知る協力者として奔走することとなる。
1本のタバコを後生大事に持ち歩いており、世界が救われて嗜好品を作れるようになったら畑の真ん中で思い切り吸ってやろうという夢を持っていたが、1話で砲の点火に使われてしまった。
基本的に「所長」としか呼ばれないが、終盤になって研究員である餅屋の発言などごく一部で「所」と呼ばれていることが確認でき、11巻の
プロフィールでフルネームが明かされた。
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ネタバレ |
裏切りに報復? そのような狭量 デルウハ殿にはありますまい
人格を捨て去り“怪物”となったデルウハを元に戻すため、一世一代の大仕掛けでデルウハの記憶を消してみせた所長。
そのことが事態を大変カオスにしたものの、結果的にはデルウハが正気のままハントレスと和解してうまいこと収まった。
だがその矢先、「生命線である電力塔の損壊」「その電力塔を直すのにも必要なハントレスが、一か八かの反攻を試みた結果異次元に消失」
……の結果、もはや先が無くなった研究所に見切りをつけたデルウハが残された食料を独占するために皆殺しを開始。
当然所長もその例外ではなく……ただし、無言で全員殺していたデルウハも所長には敬意を払ってか最期の会話を交わす。
そして所長も、「悪魔との契約」の代価を支払う時が来たことを観念し笑って受け入れるのであった。
“止まれ! この瞬間は美しい” 悪魔と契約した奴が一番言っちゃいけねぇ言葉だぜ 博士
どうぞ…全て お持ちください 研究所の備蓄は約14日分 一人ならば約7.7年分…でしょう?
害になるなら上官だろうが躊躇わず殺すデルウハをして心からの称賛を送られた「優秀な上司」は、出会いの日のタバコに準えたダイナマイトを差し出され、一思いに爆殺された。
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「ざんげが無くともいつでも教会にいらしてください 研究者の方々も! 皆様どなたでも! 私はお待ちしておりますよ!」
研究所の住人である神父の青年。
一見職務に忠実な好青年だが、テレパシー能力があると自称しており、マジックらしきことをしてテレパシーと言い張っている胡散臭い男。
「この閉鎖空間で自称超能力者の異教徒だと!? 絶対に殺しておいた方がいいやつじゃねーか!!」
所内でも煙たがられているが、その言動に興味を持ったむつは(インチキだと暴いてやろうと思って)時々教会を訪れている。
心中では「僕の能力で誰かを救いたい」という願望を秘めているようだが……
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ネタバレ |
テレパシー能力を持っているのは事実である。
ただし、その能力は10年に1度くらいだけ突然発動するというものであった。
そもそも吉永が研究所に来たのは、二度目のテレパシー発現の際、研究所を知る人物から勧誘されたため。
喜んで実験台となったものの、その能力の存在を確認できずに研究は打ち切られ、厄介払い気味に神父になってもらったという形だった。
マジックを会得しているのも、自分の能力の性質を承知したうえで超能力者だと信じてもらうため。
その能力が、初めて6人に事が露見して皆殺しにした直後のデルウハと遭遇した時にたまたま発動。
デルウハの悪逆非道を知ってしまった吉永は、義憤に燃えて行動を始める。
紆余曲折あっていちこに自分が知ったことを吹き込み、敢えてデルウハに察知させることで1時間以内に殺さざるを得ない状況を作り、デルウハの殺人現場をカメラで捉えようと画策した。
しかし一向に殺す素振りがなく、やむなく先回りしていちこの部屋に不法侵入して潜むが、案の定デルウハはその先を行き、先んじて部屋に潜伏して吉永が捉える間もなくいちこを殺害。
「いちこを俺が殺すよう仕向けたのだからお前がいちこを殺したも同然だ」と言葉責めにされた挙げ句、情報を探るため拷問にかけられるも「超能力で見た」の一点張り(事実)のためデルウハもそろそろ殺そうかと思った時にイペリットが出現し、やむなく所長に後事を任せて去る。
吉永の善性を踏まえて説得すればわかってくれると思っていた所長に対して、吉永は自分の能力を理解しなかった所長以下研究員を恨んでいたため躊躇なく陥れられ、連鎖してデルウハもマジックを用いた仕込み毒に引っかかってしまう。
デルウハを脱出不能のギロチンにかけ、無様に取り乱す様をカメラに収めようとした吉永だったが、デルウハはなんと諦めて潔く斬首される。
研究所の治療技術で(全く保証は無いが)何とかできる可能性に賭けた大博打であったが、デルウハの血液サラサラ健康体のおかげもあって奇跡的に成功。
一方の吉永は悪を討った歓喜に打ち震え、隊長の死を嘆くハントレスに対してドヤ顔でデルウハから読んだ記憶の受け売りを以て説教する。
そんな独りよがりな正義面を当人らが軽蔑しないはずもないが、吉永はそれでも満足げであった……
……ところに地獄から舞い戻ったデルウハが現れる。
怯えて逃げ出して上階から転げ落ちようとしたところ、その場にあった砲で土手っ腹をぶち抜かれ、死亡。
と思いきや、偶然にもその時交戦中だったイペリットは、生物の死体を取り込んで復元する“人付き”。
その主となっていたオスカーの討伐後、取り込まれてイペリットとして復活。
不意討ちを食らったものの、排除に成功……と見せかけ、デルウハへの叛意を抱えていたむつに救われ、オスカーがデルウハへ伝えた情報を元に“二本足”のイペリットを取り込むための旅に出た。
無事に“二本足”を吸収、道中でたまたま復活させてしまった「犀の村」の住人とデルウハらが交戦している間に暗躍し、準備を整えてデルウハらとの決戦に臨む。
吉永が切り札として用意したのは、研究所に保管してあったデルウハのクローン脳。
脳単体を“人付き”にしてからビンに入れて隔離し、その計算能力だけを拝借したコピー脳「ポースポロス」「ヘスペロス」を作成し、吉永の頭脳では不可能な“二本足"のビームの精密なコントロールを担当させる。
また、“二本足”の能力との作用でテレパシー能力が強化され、脳を介した情報のやり取りができるようになっており、隔離したままデルウハの脳から適宜助言を得ることも可能とした。
しかし、ついにデルウハに懐に入られた時、隙を見せた瞬間に反逆されて脳が入った瓶を破壊され、“二本足”の能力とイペリットの殺意を持ったデルウハという最悪の存在の誕生を許してしまう。
吉永・デルウハ(本物)共に敗走し、だが放っておけば確実に皆殺しであろう状況の中……
俺にはコピーと違って 仲間ってやつがいるんだからなァ!!
…念のため訊きますが 仲間というのは僕のことではないですよね?
デルウハの唯一の突破口は、死にかけになっていた吉永の懐柔だった。
「正義」を押し付ける悪癖を指摘し、吉永と違って自分がいかにハントレスと向き合ってきたかを言葉で証明され、それでも吉永をここまで突き動かした正義感に訴えかけられ、共闘を選択。
デルウハの発案で、吉永が使える能力を利用した死体偽装トリック、それと腹が減らない生物に成り果てるより死ぬ方がマシというデルウハ自身の精神性を利用し、コピーデルウハの討伐に成功。
コピーを倒した今、デルウハを裏切ってもおかしくはないはずだが、吉永は無抵抗で膝をついた。
デルウハにも、色々とコイツが原因だし恨み辛みまみれとはいえ、己の善意を以て自分を救った男への最低限の慈悲はあった。
助力を求められた瞬間に聞いた心の声。
皮肉なことに、吉永の「誰かを救う人間になりたい」という望みを叶えてくれたのは他の誰でもなく、倒すべき悪だったのだ。
そうして負けを認めた吉永だったが、その死後、彼の残滓がデルウハにとんでもない大事故を引き起こすことになる。
1回は殺したも同然だし、デルウハを最も脅かした男であることは間違いあるまい……
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「論理的 合理的 そして狂気…的! 貴様はいつだってそういう男だったな アンドレア…!」
デルウハのスイス軍時代からの同僚だった黒人女性。
強い正義感から軍人となった男装の麗人で、オスカーという男性名も偽名として名乗っているもの。ちなみに本名は不明。
かつてデルウハの殺人現場を目撃したが「この男を殺したら戦に勝てない」という打算からその悪事を見逃して以来、「私に正義を忘れさせた男」として心服し、
また、目撃者であることは明らかにバレたはずなのに見逃されたことから、デルウハも同じように自分の能力を認めているのだと考え、果てに愛情すら抱くようになっていた。
だが最期は2人で軍を脱走して研究所を探す道中、不時着した直後に食料の独占を即決したデルウハに殺されるが、“人付き”イペリットに取り込まれて蘇り、デルウハの前に現れる。
殺された際に左目を撃ち抜かれたため、イペリット化以後は左目の虹彩が真っ黒になっている。
「私は美坊子 美しい坊主の子と書き 美坊子と申します…」
国の入山規制にも背いて古より隠れ住み続けていた槍ヶ岳の隠れ里「犀の村」の僧侶。
彼らの死体の山の上を“人付き”イペリットが通りかかったことで“人付き”になって村ごと復活。
「犀の村」は悪人の一人もいない平和な村だったが、迫りくるイペリットの脅威を鎮めるために伝承にある人柱を実行。
だが効果がなく、そこで美坊子が思い出した「代々、人柱にされたのは悪人だった」という伝承をなぞるため、思いつく限りの悪徳を村人総出で実行し合い、平和を願って全員で人柱となって全滅した。ちなみに当然その時の記憶も持って復活しているため大変気まずい。
復活後は、人体実験に明け暮れていたという研究所を悪と定め、人柱にすべく村人総出で侵攻を開始。その最中にデルウハという本物の悪の存在を知り、最大の標的に見据える。
実はその内心の最大の動機は、最初の人柱となった妹の葉を、自分のせいで真偽が定かでないまま柿を盗み食いした悪人に仕立て上げてしまったことを悔やみ、「悪を埋めて奇跡が起こる」ことを証明する=「埋めても何も起こらない葉は無実だった」という論法を成り立たせるためだった。
「ここは腹ァ割って 本気で話し合わねぇかい?」
デルウハが「下」の探索に向かった際に出会った、
下水道に潜んで生き延びていたグループのリーダー。
帯刀した気風のいい美少年で、グループの2人組と遭遇したところ
攻撃されたため1人返り討ちにして1人拷問して案内させたデルウハに対して「先に仕掛けたならこちらに非がある」と受け入れる度量もある。
「弁士」というのはそういう名前ではなく親から受け継いだ役職名であり、地下に潜んでいるイペリットの死体から排出される猛毒の死臭ガスを、配管を管理して適正な位置に流すことで一時的に地上の探索を可能とし、そうして生き延びてきた。
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ネタバレ |
……しかし、そんなうまい話はそうそうなかった。
死臭ガスは土を汚染し人工物を溶かし尽くす超猛毒であり、一度地上に流してしまったらその範囲は完全に死んだ土地と成り果ててしまう。
生き延びるためとはいえ人類生存の可能性を食い潰す問題行動にデルウハが一言文句を漏らした途端、弁士グループの空気が凍りつく。
だが相手が悪かった。
もしかしたら研究所以外で唯一だった可能性すらある人類の生き残りは、愚かにも悪魔と事を構え、あっけなく全滅した。
探索を進め、彼らが今の拠点を他の生き残りグループから(同じように揉めて)皆殺しにして奪った確たる証拠を見つけるのであった。
そして、彼らがありがたがっていた地下のイペリットはおそらく「人類が自滅するように仕向ける」新種だったのだろうという推測を立て、何も見なかったことにして地下を後にした。
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研究所の職員。眼鏡でボサボサヘアーの女性。
回収されたなな・はちの情緒を養う面倒を見る立場となり、お笑い映像を見せていたせいで「おかん」と呼ばれるようになった。
なお、明言されていないがなな・はちのカプセルを破壊してしまった研究員こそが彼女だと思われる。
デルウハの記憶が無い期間の間に行方知れずとなっており、なな・はちには捜索を第一に望まれていた。
だが、明らかにデルウハがやったとしか思えない形で隠蔽された死体として発見され……
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その日の出来事は監視カメラの映像に捉えられていた。
日常の中、何の気なしに冗談を飛ばしたような様子の木手井。
それに反応したなな・はちの行動は、監視カメラゆえ音声はなかったが、(日本人なら)その言葉がハッキリと聞こえるものだった……
ハントレスの怪力でどつかれた木手井は、不運にも机の角で頭を強く打って死亡。
愛する「おかん」を自分たちが殺してしまった、その事実を本人から隠しておくために隠蔽していたのだった。(記憶は監視していたデルウハが即座に殺して消した)
悲劇なのは確かだが取り越し苦労なうえにしょうもない真相に、死ぬ気で隠した結果死にかけてたデルウハも卒倒寸前になっていた。
しかし木手井自身は、自分が死んだことより、自分の行動からなな・はちが傷ついてしまったことを悲しむような心優しい人物だった。
後に揃って「人付き」に取り込まれたことで対話の機会を得て、お互いに謝り合う形になるのであった。
なな・はちの「デルウハにおかんの代わりになってほしかった(一度言われた時に断ったのを後悔している)」という願いに応えるためにデルウハへ結婚を申し込むなどなかなか愉快な人物。
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デルウハの失敗を機にクーデターで所長の座を奪った研究員。
容姿は少年漫画の主人公のようなワイルドイケメンで情熱に燃える研究者という感じなのだが、時たま舌を出して別人のように下卑た態度を見せる場面が何度もあり、どっちが本性なのかよくわからない。
「イペリットを使ってイペリットと戦う」研究を推進していたが、所長はそれに反対しており、立場は悪かった。
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人工イペリットを生み出すには人を素材とする必要があるうえ、人工イペリットはイペリットと戦わせることができず、普通のイペリットと同じように人だけ攻撃してしまうという致命的な欠陥を抱えていた。
最初の1体を作った時点で研究の失敗を確信したのだが、周囲は「あなたが間違うはずがない」とトチ狂って自分の身で人体実験し始め、果てには自身の婚約者まで同様の行為に走ったという。
絶望した彼は服薬してイペリットに成り果てようとするが、対面していたデルウハが咄嗟に首を掻き切って殺し、阻止される。
が、現実逃避極まった替館により竜野の遺体はデルウハのナイフが刺さって会議所の椅子に座った死後そのままの状態で放置され、「音声のアーカイブを使って喋り、そこにいる体になっている竜野」として使われていた。
イペリット化した竜野派の殲滅後は、ちゃんと安置された様子。
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竜野派のキノコヘアー。
竜野に自分たちの理想を見てシンパとなった。
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竜野の死亡後、替え玉を立てて「竜野派」としての行動を成り立たせていた張本人。
自分で竜野に、もとい竜野の声で綺麗事を喋らせておいて自分で同意したり、当たり前のように竜野が生きてる体で行動したりするなど完全に狂ってしまっていた。
デルウハとの会敵によって現実を突きつけられ、思い詰めて自分もイペリット化するための薬を飲用。デルウハは記憶喪失前に竜野を殺したのと同じように首を落として阻止しようとしたが一瞬遅くイペリット化されてしまったが、すかさずなな・はちに始末された。
後に“人付き”に取り込まれ、意識が復活。
竜野の遺志を引き合いに出したデルウハに説得され、巨大“血濡れ”侵攻を自身の意志で抑える手助けをした。
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竜野派の女性。
映るのはネイルをした手だけで、台詞を発するシーンもない。
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ネタバレ |
登場した時点で完全にイペリット化しており、人間としての姿がきちんと確認できなかったのはそのせい。ただし、替館の指示に従える知性は残っていたようだ。
以降の描写から「竜野の婚約者」が彼女だったことがわかる。
通常の“尻尾付き”と異なり、全身を高熱化して攻撃することができる変異種。
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竜野派の金髪長髪
チャラ男。名前が不明。
竜野に心酔しているわけではなく状況を見て鞍替えしたクチで「別にハントレスもイペリットも両方使えばいい」と思っており、デルウハは竜野派の中では唯一前から見知っていた。
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竜野の研究失敗という事情を知らず、自らイペリット化することもなく、替館イペリット化の現場に居合わせたものの、その場にデルウハおよびなな・はちがいたため撃退され、巻き添えも食わず生存。最終盤まで登場する。
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ネタバレ |
筆ヵ谷と違って初登場時に人の形は保っていたが、既にイペリット化しており、替館と一緒に討伐された。
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研究所の職員。スキンヘッドでメガネの男性。
ハントレスに色々バレてしまって以降のデルウハが最後の手段として作らせた「長期的な記憶を消す薬」の開発に携わった。
職務に忠実にハントレスたちを平等に扱うため、にこに対しては赤の他人として振る舞い、スキンヘッドなのも髪色から父親と感づかれないようにするため。
しかし突如、にこに自分の素性を明かすことを選んだが、ハントレスの研究所への好感度がガタ落ちした直後の行動であるため、にこからはボロクソに拒絶される。
(それはにこからしたらただの自分に興味ないハゲだろうがよ! 脳内の美談を基準に現実と関わるなバカ!!)
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「明かさなければよかったッ やり直したい やり直したいッ……」 |
にこへ
この前のことは
忘れてほしい
ダメな父で申し訳ない
本当に 本当にごめん
ほんのお詫びです。
よりによって記憶を消す薬の担当がこんなことになってしまったのが運の尽き。
何を思ったか、お詫びのメッセージを添えて記憶を消す薬を盛った食事を置いておくという雑なトラップを設置。
……そしてそれが、たまたま考え事をしながら無意識にその場にあった食べ物に手を出してしまったデルウハに直撃。
デルウハの記憶が吹っ飛ぶのは急いで薬を抜く処置を施して回避できたものの
- “人付き”にされたが意思で堪えている最中のはちを置いて戻ってきたところであり、はちは「拾い食いしてお腹を壊した」という偽の理由を報告されて気が抜けてしまい暴走、戦闘開始
- それからデルウハが回復する3時間の間にハントレスは“血濡れ”へと戦いを挑んで全滅、しかも生殺し状態にされており手遅れ(実際は手遅れギリギリ寸前だった)。デルウハは凶悪極まる“血濡れ”に単身特攻してそれをなんとか解決するハメになる
デルウハの注意力のせいでないとは言い難いが自分がとんでもない事態を引き起こしたのを目の当たりにしたにこ父は、こともあろうに自責の独り言で薬のことをベラベラ喋ってしまい、それをいつかに聞かれていたせいで薬の存在がハントレスにバレたため、デルウハは全部バレてる前提でそれでも薬を盛るため大芝居を演じるハメになる
と、最終局面までの一連の問題の主な原因になった。
怒り心頭のデルウハは“血濡れ”特攻前にしっかり半殺しにしておいていたが、最後の大やらかしが判明した際には「殺しておけばよかった」と後悔するのであった(もしその時点で殺しておいても解決はしないが)。
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イペリット
地球に突如現れた謎の生命体。
動物というより植物的な生態を持ち知性は見せないが、人類を優先排除対象とみなしているようで、明確に狙って殺しにくるほか、
有毒ガスを排出して人類の生存圏を奪い続けるほか、
単純な行動だけでなく段差に対して他のイペリットを踏み台にして前進するなどのルーチンも持っていたり、
人類の習性を利用するような回りくどい方法を仕掛けてくる個体が出てきたりもする、極めて厄介な人類の敵。
一般的な個体は全長数十mほどで、デコボコして黒ずんだ外皮をした円筒状の体、先端は白くてモコモコした内部が露出し、その中心から舌が生え、申し訳程度に耳のような形の毛っぽい部位がある胴体。
そしてその胴体から胴体を細くしたような足を生やしている。
例えるなら足が生えた巻き寿司というかなんというか。
弱点と言える部位が存在しないため、多少の損傷はものともしないが、本来の体積の約半分になると死亡する。
そのため、ハントレスの怪力を前提とすれば切断攻撃はシンプルに有効打を与えやすい。
デルウハが扱う研究所の大砲は内部で爆発する仕組みの砲弾で有効打を与える。
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彼らは一体何者だったのか |
デルウハが“血濡れ”と対話したことで「イペリット自身からの聞き取り」が行えた結果、
「三次元ではない別の次元、宇宙の外側からやってきた『なにか』が、この次元に適応して生まれた存在」
であると結論付けられた。
異様な生態は三次元の存在ではないものが三次元に適応した結果生じたものであると考えられるが、侵略の意図や人殺しの本能がどのような形で生じているかは定かにされていない。
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命名の由来は不明だが、「イペリット」という言葉はいわゆるマスタードガスの別名として存在する。
細く尖ったパーツを生やしており、それを伸長させて攻撃するイペリット。
終端速度約150km/hで硬度もあるため当たれば即死級で、しかもトゲで支えられた胴体が10mほどの高さを保つため攻撃困難。
しかし、伸ばしてきたトゲを掴んでハントレスの筋力で引き倒せば無防備にすることも可能。
そのトゲを受ける練習のため、研究所になぜかあったピッチングマシンが持ち出された。
生物の死体を取り込み、それを再現することができるイペリット。
人間の死体を取り込むとその人間そのものの分体を誕生させられる。
それらは自我を保って元の人間と同様に振る舞うことができるが、イペリットとしての殺人衝動は湧き出してしまい、理性で強く抑える必要がある。
また、独自に動けるとはいえ、本体とは物理的に繋がった状態は保つ必要があるが、地中(雪中)に体を薄く伸ばして這わせて足元で繋ぐという工夫を行う。
取り込んだ分だけ体積が増え、イペリットの死体でも取り込めることから、凄まじいサイズになることが多い。
特殊なイペリットの死体を取り込めば当然、そのイペリットの能力を再現できてしまう。
一部分が切り離されるとドロドロに溶けた状態になり、再度取り込むことはできない。
人間の形をとった部分の首を落とすなどすれば、その人間としての部分は殺すことが可能。
東洋の龍のように螺旋状に伸びた胴体に、各部に羽虫の羽のような部位がついているイペリット。
胴体に対して羽が小さすぎるため物理的には納得し難いが、常時飛行している。
内側は白い部分が露わになっていてりんご剥きの如くスライスしたように見えるため、死体で初めて発見された段階では「そういうふうに斬られて死んだイペリット」だと勘違いされていた。
二本足で直立した超巨大なイペリット。
3体で大陸一つを滅ぼしたとされる反則的な強さを誇る。
その特性は粒子の集合体のような性質を持っていることで、長射程のビーム攻撃、瞬間移動などをこなす。
さらに“人付き”で取り込んで知性を持ってコントロールすることで、ビーム攻撃のバリエーションは単純な射出だけでなく格段に拡張できる。
挙げ句に実体を保持せずに粒子の状態に戻れば、攻撃を無効化することも可能。きちんと切断されれば通常通り致傷はできるため、対策として、血を操る能力で覆って固めてから攻撃するという方法をとった。
各種イペリットの中からランダムに発生する可能性がある、イペリットを共食いする巨大なイペリット。
両生類の一部に存在する「共食いモルフ」のような存在。
全身に均等に穴が空いた白い円筒状の外皮を持ち、細い多数の足が生えている巨大なイペリット。
大雑把に言えば精霊馬みたいな形。
「殻」と言うだけに頑強で、普通のイペリットなら吹き飛ばせる砲撃でも傷ひとつつけられない。
尻尾のような部位が増えた、人間よりは大きいがだいぶ小さめのイペリット。
戦闘力も劣るが、
殺しても、翌日には肉片のすべてが「元のサイズに戻って」復活する。
そのため普通に戦うと倍々
ゲームになってしまう。
作中で提示された抹殺方法は
「“人付き”に吸収させてその一部にしてから切り離し、“人付き”側の原理で原型を保たなくして殺す」
「“共食い”が発生し、かつ“共食い”による捕食なら再生されない可能性に賭けて耐える」
の2つ。
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実は、竜野の研究で生み出された人工イペリットこそがコレである。
イペリット化した時に脳が肉体にバラバラに取り込まれてしまうのに伴い、知能が正常に働かず、イペリットと戦えるようにコントロールできないという致命的欠陥があった。
脳の欠片を内部で増殖させることで脳としての機能を回復させるという仕組みを目指したのだが、不死身の再生能力はこれの「失敗」で生まれたものである模様。
しかし、バラバラになったまま増え続けてから“人付き”に取り込まれたことで、結果的に目指していた原理が成り立ち、イペリット化した者も(巨大“血濡れ”の一部として)完全な自我を取り戻すことに成功している。
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胴体しかなく、舌のあるところに血管の端のようなものが立ち並んで全身から血を吹き出して操り、それを足代わりにして移動するイペリット。
おびただしい量の血を吹き出して周囲を文字通りの「血の海」に変えることができる。
攻撃手段の一つは、血を使ったウォーターカッターのような攻撃。有効射程およそ300mで、当たれば人間は容易に切断できる。
ただ、“血濡れ”自ら作り出した「血の海」に飛び込んでしまえば水中なので殺傷力が激減する……はずだったが、“尻尾付き”の変異種の異常行動でそこに高熱化を付与するサポートが行われてしまい、水を突き破って有効打を与えられるようになってしまう。
もう一つは、損傷した自身から吹き出る体液で、命中した部分の肉体を管状に分解し、どういう原理か最低限の生命維持能力だけ残してほぐれた肉片に変えていくというハントレスメタすぎる技。
万が一喰らったままで1時間以上経過してしまった場合、ほぐれた肉片の状態で固定されてしまうわけである。
一応、研究所の技術なら時間をかけて全身造り直したり、最悪適当な肉体を継ぎ接ぎして応急処置するということもできるようだが……
現れた“共食い”に引っかかって一度死亡したものの、それが生き残りの“人付き”に取り込まれてしまい、大量の“尻尾付き”から得た質量と合わせて天を衝くようなサイズまで成長して再誕する。
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ネタバレ |
元の人間の自我が再構成された“尻尾付き”と同じ原理によって、このイペリットの中にも新たに自我が発生していた。
まさかの、たぶん世界初・自我を得たイペリットとのコミュニケーションの機会を得たデルウハは
「自我なきイペリットの中で永遠の孤独を感じるくらいなら、エサの人間も提供するから人間側に付くのはどうだ」と説得を試みるが
私はあなたの体を損壊し 最後にこの首を引きちぎることができたなら それを一生の思い出として 孤独な何百・何万という年を生きる光として大切にするでしょう
とご丁寧な愛の言葉の如き表現で拒否。
やむなく「ならば仕方ないが、その思い出をより良い戦いにするために仕切り直して明日また戦わないか」と提案をし、それをなんとか呑ませ、ハントレスの後始末ついでにイペリットと対話をして去った。
そして翌日、ハントレスを率いたデルウハは開戦の号砲とばかりに通じもしない砲の一発を撃ち込んだ……と見せかけ、それをカモフラージュにしてもう一発を超高角度で放っていた。
わざわざ対話をしてから帰ったのも、自我を知ったばかりで感情の何たるかなど知らぬ若者の自分への「執着」を誘い、決め手の存在に気づかぬよう、その視野を狭窄させるためのことだった。
かくして遥か空高くから寸分違わぬ正確さで落下した砲弾は、彼を彼たらしめた中枢部を叩き割って破壊。
巨大“血濡れ”自体を破壊するほどの威力はなく、イペリット本来の行動ルーチンに戻った巨大“血濡れ”は一時混乱する程度で健在だったものの、
直前の戦いで“血濡れ”攻略の糸口を掴んでいたうえに機先を制したハントレスにとってはさしたる脅威とはならなかった。
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追記・修正はパンとサラミを対価に、殺人事件は起こさずにお願いします。
- ついに立ったか。デルウハ殿が自身の畜生ムーヴが原因で起こったトラブルを更なるド畜生ムーヴで塗りつぶす終末疑似RTA漫画。 -- 名無しさん (2023-11-11 04:35:58)
- これ本当にアニメ化してほしいわ。デルウハ殿というおもしれー男を世界中の人に知ってほしい -- 名無しさん (2023-11-11 06:07:48)
- デカいイペリットが出た時はホント衝撃的だったわ。 -- 名無しさん (2023-11-11 07:48:11)
- 美坊子の妹は普通に幼い尼さんで女の子だと思うが…?屈託なくてかわいいよね -- 名無しさん (2023-11-12 04:11:22)
- 作品のノリは1話読めば完全に理解できると思われるので何らか試し読みしてみてほしい。 行けると思ったらまぁ何も言わず2巻まで買ってみてほしい。続きが気にならなかったら負けを認めるから -- 名無しさん (2023-11-12 20:41:19)
- なに!?アフタヌーンで連載されてた恋愛漫画の事ではないのか!!? -- 名無しさん (2023-11-12 20:56:46)
- タイトル的には多分disコミュニケーションとdeathコミュニケーションとでトリプルミーニングになってるんだよな -- 名無しさん (2023-11-12 23:20:52)
- 作者のTwitterで連載されてる番外編(最終版大暴れ~エンディング前までの間)がイカれてて面白い -- 名無しさん (2024-12-17 14:08:47)
- 好きだけど人を選びまくるよね。捻くれ者にしか響かない -- 名無しさん (2025-04-21 22:52:09)
最終更新:2025年04月21日 22:52