ハイパーインフレーション(漫画)

登録日:2022/08/04 Thu 22:05:38
更新日:2025/04/17 Thu 22:52:58
所要時間:約 9 分で読めます







言い値で買おう、この世界




「ハイパーインフレーション」とは、住吉九による日本の漫画作品である。


■あらすじ

ヴィクトニア帝国の奴隷狩りによって両親を失った、ガブール人の少年ルーク
経済こそが平和に繋がると考えている彼は、帝国と商売することを目指す。

そんなある日、奴隷商グレシャムにより奴隷狩りが決行され、姉のハルが攫われてしまう。

絶望するルークの元にガブール神が現れ、彼にある力が授けられる。
それは精巧な贋札を体から生み出すという奇跡の力だった。

しかしその贋札には、番号が全て同じという致命的な欠点があった…。


■概要

2020年11月~2023年3月の間ジャンプ+にて連載していた漫画作品。全58話。

そも、「ハイパーインフレーション」とはこの項目この項目の説明にある通り、金銭の流通量が増えに増えすぎた結果、金銭それ自体の価値が暴落する現象を意味する単語である。
その名前を冠する本作は、無限にお金を生み出せる能力=「カネ」を無価値にする能力で奪われた故郷を買い戻し、奪い返すという大胆なテーマを据えており、
「番号が同じ贋札をいかに使うか」もしくは「贋札の流通をいかに阻止するか」を軸にした駆け引きは、他では見られない大きな特徴。
その高度な頭脳バトル、大胆なストーリー展開、魅力的なキャラクター達などにより、根強いファンを持つ作品である。

敵対する商人たちとの頭脳戦ももちろん読みどころなのだが、教科書に載せられそうなほど分かりやすい経済講義を行ったり、人種差別や奴隷といった現実に根差した題材をも取り上げたりする等、すぐれたクオリティを誇る学習教材としての側面もある。
読めば贋札の作り方に詳しくなれる少年漫画は、そうは無いだろう。

かと思いきや印象的すぎる台詞回しや、唐突にぶち込まれるどうかしてるギャグにより、読者のIQが乱高下させられることは必至。
おかげで公式の扱いは、こんな知的な内容なのに「ハイテンションギャグ」。

またショタの主人公がひたすら喘ぎまくるので、「すごい面白いのに友達に勧めづらい」などとよく言われてしまう。

更新のたびにトレンドに入るほど注目されていた。2023年03月17日無事完結。アニメ化未定

■用語


ガブール人

白い髪・赤い目・少し尖った耳が特徴の人種。ルーク達もこれに分類される。
ルーク等一部を除いてガブール神及び救世主を信仰している信心深い民族。
「ガブール神に選ばれたガブール人の子供は、生殖能力を失う代わりに超能力を得て、ガブールの救世主となる」という伝承があり、ルークはこれを身をもって証明することとなった。

ヴィクトニア帝国

島国でありながら世界中に植民地を持ち、「日の沈まない国」と呼ばれる大国。
名前、設定、ヴィクトニア帝国の人間ことヴィクト人の雰囲気からしてモデルはおそらくイギリス
少し前まで奴隷狩りを行なっていたがレジャットの尽力もあり現在は法で禁止している。

ベルク札

帝国の貨幣。
国同士での取引にはベルク札が使われるなど基軸通貨のような扱い。
帝国の平均月収は4万ベルクらしい。
帝国の中央銀行を通してベルク札と金を交換することができる。

ハイパーノート

ルークが能力により生み出すことができる贋のベルク札。
出来自体は完璧*1なのだが、「単一の紙幣」しか生み出すことができない性質上、番号が「4370953」で固定されており、これがバレてしまえばどれだけ生み出しても意味がなくなってしまう。また、繊維の並びなども完全に一致しているため、顕微鏡でも確認可能。

ゼニルストン自治領

帝国本土に属する土地。
ガブール人の救世主神話の存在を確信*2しており、帝国からの奴隷の禁止を無視して多くのガブール人を集めている。



■主要キャラクター


ルーク


カネが欲しいッ!!
世界を買えるカネを寄こせッ!!

本作の主人公。12歳。
神から与えられた「贋札を生み出す」能力を使って、奴隷狩りで攫われたハル姉を取り戻すことを目指す。
彼が『番号が同じなこと以外は本物と全く同じな贋札』をどう使っていくかは、本作の大きな見どころの一つ。
「商売なら奪い合いではなくwin-winに出来る」という理想を持っており、商談や取り引きといった駆け引きを好む。
しかし机上の空論に終始してしまうこともあり、裏をかかれてしまうこともしばしば。

帝国に渡った後は、ガブール人への差別がいまだ続いているという現状を目の当たりにする。
そして多くの仲間を得て、ガブール人の救世主として独立国家建設を目指すようになる。

はあッ これスゴいッ
見られて いつもよりッ

ルークの能力は、神から生殖能力の代わりに与えられたものである。つまり彼は子孫を残せず、命を散らしながら贋札を生み出しているのだ。
…というとカッコいいのだが、実際のところ、
  • 贋札を出す時には顔が高揚し、「あああぁぁ」などと官能的な声を上げる
  • たくさん出しすぎると体が衰弱する
  • たくさん出すことに慣れるとクセになって頻繁に出したくなる
  • 何日も出さずにいると、我慢できずに暴発してしまう
  • 出す時の効果音は「ドクッドクッ」
  • 出した後には頭がスッキリする
など、あの、これどう見ても例のやつなんですが…。
公式PVで、ルークがやたらハァハァしてるのはこれが理由。
しかも「暴発」のせいか服の布地の面積がかなり小さく*3、どうしてもアレとかを連想させられやすい。
ちなみに後述する過去の救世主らも揃ってやたらと際どい格好をしている。彼らも暴発しやすかったのだろうか。
「こんなに面白いのにアニメ化されないのは、ルークの射幣のせい」などと、まことしやかに言われたりする。


グレシャム


これが一番 儲かるぞォ!!

グレシャム商会を束ねる帝国の大商人。
齢60近い老齢に差し掛かった年齢に小太りの体型ながら非常にバイタリティの高い男。
自由奔放すぎる振る舞いからついたあだ名は「大きな赤ちゃん」
彼が奴隷狩りを決行することから、本作の物語は始まる。

人物像としては徹底した金の亡者
ただし守銭奴と言う訳ではなく、「金を稼ぐ」と言うその過程にこそ愉悦を感じ、「カネを稼ぐ為にカネを稼ぐ」タイプ。
そのため後の儲けに繋がるならば手持ちの財産をあっさり放出し、借金すらまったく厭わない*4
彼の目には周囲の人間を含むあらゆるものが金勘定で映っている。
何より行動理念が常に「己が儲かる方の味方」であるため、とにかく裏切る。すぐに裏切る。本当に裏切りまくる。
具体的に言うと「手を組めば金を稼げる(或いは利益になる)」と値踏みすれば自身が裏切った相手や自分の敵であろうとも即決で再び手を組んでしまう程。
当然正義感や倫理観なんて全くなく、文字通り金儲けのためなら何でもする男。
裏切りや騙しはもちろん、人も殺すし、奴隷貿易もするし、仲間だって平気で見捨てる。逆を言えばリターンが見合っているなら裏切らないし、自分の命も平気で賭けられる度胸も持つ。
「人間の命の尊さがわからんのかバカ者!!60万ベルク*5だ!!」という迷言の通り、人間ですらモノ扱いしている。
しかし逆に言えば60万ベルク相当の価値があると見ているので、ある意味では作中の人物の中でもトップレベルで人命を平等に重く見ているとも言える。
ただし自分の命には価値がないとも考えている。
頭の回転がとても早いうえ戦闘もそれなり以上にこなせる*6ので敵対者からすればかなり厄介。

ありていに言って人間のクズ。だが、その一貫しすぎた潔い言動と活躍から読者からの人気は非常に高い
おまけに味方からも(読者からも)「どうせあいつは裏切る」という前提で見られているのでヘイトは溜まらず、むしろ本作の見所の一つになっている。
コイツが裏切ると話が俄然面白くなるとかコイツを無条件で信用するのは事実上の負けフラグなどと言われているほど。

名前の由来は「悪貨は良貨を駆逐する」ということわざの元となった法則を唱えた商人&財政家のトーマス・グレシャムで間違いないだろう。
この言葉はそのものズバリ「グレシャムの法則」とも呼ばれており、作中でもまさにそれに言及*7した場面もある。
ちなみに史実人のグレシャムも権力を元に金融市場を操って儲けを出し、国の借金返済資金を作るという作中のグレシャムとは別ベクトルの無茶苦茶をやった人である。

レジャット


世界を…… 世界を守りたいッ!!

ルークと共に奴隷狩りにあっていたガブール人。
彼の扇動により反乱は成功し、ハルを取り戻すためにルークと共に帝国に向かうが、その正体はガブール人の救世主伝説を調査しに来た帝国の諜報員
ルークの能力に気づいた後は、世界経済を守るためにルークと対立することになる。

頭脳、戦闘、人心掌握など全ての能力が高く、諜報員として最高の資質を持っており、まさしくルークの最大のライバル
「才能や環境に恵まれた人間は、その力を使って世界をより良くする義務を負っている」という価値観を持ち、転じて「優れた能力を持つ自分こそが世界を救う人であるべきだ」と心から信じている。
彼は私利私欲ではなく、世界平和のために動く、間違いなく正義の人間である。しかし同時に、“自分が”世界平和をもたらす事に強く執着する狂気の男でもある。

ルークはもっと可愛く!!
もっとキュートに!!

さてレジャットの目的は、ガブール人を研究するために、ルークを殺害ではなく保護することにある。
というのは分かるのだが……
  • 手配書を作るときに「もっと可愛く!」と熱弁する
  • ルークの格好を見て「ハレンチすぎてけしからん!」などと言う*8
  • 口説き文句は「二人だけの星座を作ろう」
など、どうもルークに対して愛が行き過ぎている疑惑がある。
本来はシリアスで恐ろしい男であるはずなのに、ルークが絡むと急激にIQが低下して、ゆかいなおじさんと化してしまう。
そんな彼は、ルークの最大の敵であると同時に、本作きってのギャグキャラでもあるのだ。

比較的序盤にてダウーとの戦闘中に口の端を喰い千切られる大怪我を負い、以降傷痕となり残ることになるが、彼が感情を高ぶらせるなどして口を大きく開けるたびに再び裂けがち。痛そう。

フラペコ


ンもォ~~
この船は私がいないと 回らないんですから~!!

グレシャムの側近。モミアゲが大きい以外はモブキャラっぽい見た目の刈り上げメガネ。
どんな命令だろうと忠実にこなし、執事のようにグレシャムに付き従う。
常に敬語口調で話し、年下であろうと敵であろうと他人には「さん」を付ける*9

常に一歩引いた位置にいてヘラヘラとしているいわゆる腰巾着キャラ……と見せかけて、実は内にしたたかに生き抜こうとする強さを持っている曲者。
モブっぽいビジュアルに反してグレシャムの側近なだけあり、頭脳・技量・話術・胆力など全てが高水準なルーク陣営の頼れる器用万能キャラ。
料理も掃除も洗濯もこなし、手旗信号を完璧に使いこなして敵陣に誤報を送る、銃の名手が引き金を引く前に一瞬で銃を分解する*10など地味ながら活躍の場が非常に多く、直接的な戦闘以外は何でもできてしまっている。

過去に故郷の国で起きた革命とハイパーインフレーションで一度全てを失った経験があり(モデルはフランスだろうか?)、国や金や正義といったものを信じていない。
そんな彼は、どんな時でも信じられる「揺るぎないもの」を探している。そして金に対してブレないグレシャムに出会い、彼に従うようになる。
グレシャムに対する絶対的な想いや忠誠心は本物だが、ある時期を境に異論・反論はハッキリ行う様になる。時には結果として完全な反抗になる場合もあるが「それはそれ、これはこれ」と完全に区別しており、本人の中では矛盾にはなっていない模様。*11

モブのように登場したくせに作中で屈指の成長を遂げたキャラであり、彼が本当の「揺るぎないもの」を見つけるシーンは、多くの読者に感動を与えた。
その活躍と献身っぷりから、「本作の真のヒロイン」と言われることもしばしば。

ダウー


ダウー!! ルーク!! 守る!!

巨大な体を持つ野生児。女性。
オークションで売られそうになっていた所を助けられ、ルークに同行する。

神から最強の生殖能力(=肉体)を与えられている。
単純な身体能力と戦闘能力はおそらく作中一で、暴れると、銃や麻酔が無ければ手を付けられないほど強い。
ルーク陣営の、いわゆる暴担当

最初は言葉も話せないほどだったが、ルークとの交わりの中で、徐々に人間らしくなっていく。
そして同時に、自身のことを守ろうとしてくれるルークに好意を寄せるようになる。

当初は(奴隷オークションで会った)ルークの姉であるハルに強い母性を感じており、ハル絡みの頼み(命令)や出来事であれば動いていた。しかし一連の流れの中で自分より圧倒的に脆弱な存在であるルークが自分を守ろうとしていた事、そして実際に守られていた事実を自覚した事で、ルークに対し強い性愛情愛を抱く。
しかし同時に獣同然である自分はルークに相応しくない、そもそも人を好きになる資格も無いという事を理解し「ダウーは『人間』になる!!」と涙ながらに決意している。
そのせいか戦闘能力(戦闘関連?)にマイナス補正がかかっていたが、人間らしい義憤など人間ならではの強さも身に付けていく。

なお、登場当初は野生児らしく全裸だったが、次第に服を着るようになった。
具体的には、全裸→首回りに布→辛うじて人前に出られるパツパツ外套→一般市民の女性と同じような洋服→厚さ6mmの鉄製プレートアーマー…と、話が進むにつれ明確に肌の露出が減っていっている。
絵柄ゆえぶっちゃけエロスは皆無。そういうのが見たい人は2.5次元の花嫁かあやトラを読もう。



■救世主陣営


クルツ


娘の未来のためならば
地獄に堕ちようと構わない!!

元奴隷のガブール人で、帝国で金貸しを営んでいる。
娘の誘拐を助けてもらったことをきっかけに、ルークの目的に協力するようになる。
しかしルークを救世主に祭り上げようとする、あやうい動きも見られる。
自ら「汚れ仕事は自分がやる」と言う通り、裏でルークの計画に支障をきたすであろう邪魔者を独断で抹殺するなど、黒い仕事にも手を染めている。
劇中では主に金銭面や物資面でルークをバックアップしていく。

登場する殆どの場面で厳格な表情ばかりしているが…


ビオラ

俺が欲しけりゃ 俺の心を動かしてみせろ!!

元芸術家で、現在は引退して高級娼婦をやっている。なお、一人称は「俺」だが女性。
本人曰く「カメラの誕生により画家の価値は無くなったので辞めた」とのことだが…?
画家としての腕を見込まれ、ルークの贋札作成に手を貸す。
「贋札殺し」に対しては憧れが混じった複雑な感情を抱いている。
感極まると「粋ーッ」と叫ぶ、この漫画恒例となったちょっと変な人。
ルークに出会ってからは粋っぱなし。

今のところ脱いだり行為をしている描写が(比喩や前後のほのめかしですら)全く描かれていないという、娼婦設定としては珍しいキャラ。
ルークやダウーの方がよっぽどお色気を振り撒いてたり裸になってたりする。


紙職人たち


技術ってのは一つの宇宙なんだ
失われたら二度と戻らない

ルークの贋札作りを手伝うために集められた手漉き紙の職人たち。
職人の技術を大切にしており、機械化や金儲け主義に一矢報いたいと思っている。
借金をカタにクルツに連れてこられた。
言ってしまえば、名前もないただの脇役に過ぎない。
しかしそんな彼らにもしっかりと魅力と見せ場が備わっているのが、本作のすごい所。

仕事仲間のビオラに対しては女だからと甘く見たりましてや邪な目で見たりすることなどは無く、純粋に仲間として、良くも悪くもまるで同性に対するそれと変わりない態度で接している。

「うむ ビオラくんは天才だ……」
「「「「妄想のなァ!!」」」」


■帝国陣営


コレット


銃……。
やはり銃だけが 生まれの差を解消する!!

レジャットの部下で銃の名手
ヨゼンと組んで、ルークの居場所を突き止めるために奔走する。

外見的にはやや小柄な女子という程度だが、過去にいじめられていた経験があるらしく、恵まれた肉体を持つ人間を徹底して嫌う。
それと同時に「銃こそが肉体の差を埋めて人を平等にする」という信念を持っている。
普段は凛としていてクールなのだが、銃が絡むと態度や表情が崩れることがあり、その様は「銃に欲情する変態」とヨゼンに評されている。

彼女が4巻で語る「お金とは何か」「なぜ贋札は危険なのか」の話は、経済の本質をとても分かりやすく説明していると評判。
公式Twitterアカウント自ら 該当ページを掲載したツイートをしたこともある。


ヨゼン


人間が痛みに勝てるわけないだろ!!
暴力 舐めんなッ!!

同じくレジャットの部下で剣の達人
東の国の出身であり、頭にチョンマゲを結っている。ただし前側に出すぎてどっちかというとリーゼントヘアになっている
すぐに拷問だの暴力だの言い出す辺り、ちょっと荒っぽい性格。
しかし一見おバカキャラのように見えて、その場その場で的確な質問を投げるあたり、地頭の良さがうかがえる。
コレットとの喧嘩は耐えないが、実は互いに相棒として信頼し合っており良いコンビ。
武器は日本刀のような刀であり刀の腕前はピカ一。こと近接戦ではレジャット陣営でも最強の男。
普通の成人男性ならば致命傷になりかねないダウーの強烈な打撃を食らっても耐え、すぐ応戦できるほど体も頑丈。彼女をして「レジャットより強い」と言わしめた。
反面銃を使う事には個人的拘りから忌諱しており使わない。

コレットの項目で触れられている経済の解説の場面ではヨゼンが聞き手・質問者役で登場しているのだが、
髷の主張がやたらと激しいため、この漫画をよく知らない人からは「この男の頭はなんなんだよ」的なツッコミが入ることも。
(なお、こうなった原因は髪結床がヴィクトニアにないので手入れが満足にできないため)


贋札殺し


ボクは一つ 真理を知っています
醜い容姿と 醜い心を持った人間だけが
本当に美しい作品を生み出せる

今のベルク札を作った芸術家であり、造幣局の局長を務めている、
原作者&製造責任者としての見た目の鑑定に加えて食べることで贋札を判別するという変態的な特技を持つ。*12
より正確に言うと「味や舌触りから原材料を特定して正規紙幣と同じものか判断する」という方法なのであながちトンデモとも言い切れない。普通は紙を食べないって?
一見ただの陽気な小汚いおじさんだが内面には狂気をはらんでおり、自分より優れた芸術家に対して激しい憎悪を向ける。
特に贋札製造者は自分の作品(ベルク札)を汚す者として殺したいほど敵視しており、贋札を判別して313人もの贋札製造者達を処刑台に送ってきた。
これが彼の通り名の由来。313人もの贋札製造者を処刑台に送ったことを思い返しては悦に浸る中々の危険人物。
いい歳したおっさんが号泣しながら贋札をムシャムシャするのは、恐怖の一言。
ルークの作った贋札を見破るためにレジャットに協力する。

特務省


緊急の会議だ!!関連大臣を集めろ!!
男の子に詳しい有識者もだ!!

緊急事態への対応を目的とした省。首相を長とし、必要に応じて担当省の長や専門家を呼んで対応を協議するもの。
帝国秘密情報部からルークの能力と目的が議題として提出され、実際に調査を行ったレジャットもこの協議に参加する。

創作にありがちな無能な上層部
…というわけではなく、救世主伝説についてはレジャットを除いて否定的なものの話し合いの内容自体は極めて真っ当であり相当優秀な人材がそろっている。
そもそも伝説について慎重・否定的なのは「不確かなもののために予算や人員を割くべきではない」という公務に携わる人間としては真っ当な意識からくるものであり、
「かつて疫病を蔓延させたスペトという救世主の噂が『ガブール人が疫病を蔓延させている』という迷信につながり、差別を一層助長することになってしまった」
という歴史の反省でもあるのだ。

しかし…

レジャットさん これは可能性の問題です
特別な「力」が存在する可能性と、レジャットさんが勘違いした可能性……客観的にどちらが高いですか

客観性や合理性を重視するため、超常現象を起こす側であるルークには議論の動きを読まれて利用されてしまった
というのも上記の発言の時点でレジャットはルークの力の証明が全くできていない状態なので、現実的に考えると特務省の者達の方が正論でまともな考え方なのである。
「このままでは味方がまともすぎて国が滅ぶ!!」は本作を象徴する台詞の一つであろう。
またヴィクト二ア首脳部としては表向きガブール人への差別を批判するものの、人種として軽視する意識は残っており*13、このことがガブール人でヴィクト二ア人であるレジャットに大きく影響していく。


■その他のキャラクター


ハル

ルークの姉で、ルークからはハル姉と呼ばれている。姉弟仲は非常に良好。
ガブール人の巫女として村を治めていたが、グレシャムの奴隷狩りによってさらわれた。
そして帝国に売られた後に、ゼニルストン自治領に奴隷として囚われるようになる。
現在は巫女の身分を明かし、同じ奴隷の立場にあるガブール人達に、希望を捨てないように説いてる。

弟と同じくとても聡明で、巫女を勤めていただけあってかカリスマ性も凄い。
彼女を助け出すことがルークの最大の目的。出番は少ないが、本作のキーパーソンとなる人物。


ハル(人形)

オークションの景品として用意された、ハルそっくりの人形
ガブール人の少女だと騙して高く売るために、ハル姉の代わりに用意された。

さて、このハル人形。
ただのゼンマイ人形のハズなのだが、オーバーテクノロジーってレベルじゃねーぞといった動きをする。
手を振る、髪をかき上げる、微笑むなんてのは序の口で、
抱きつくと撫で返してくれたり、こちらを向いてウインクしてきたりと、やりたい放題。
その生きてるとしか思えないような動きに、「こんな人形いるわけねーだろ!」「いやいや、これは後の伏線なんだ」と様々な憶測を呼んだが、もちろん何の説明もなく物語から退場した。
登場人物からも何のツッコミも無いので、読者はただ困惑するしかない。
しかし残念ながら、この漫画ではよくあることである。

本作のカオスさを象徴するキャラクターの一人(?)。


首長

ルーク達とは違うガブール人集落の酋長。
親帝国派で帝国の知識や技術を吸収して自身の勢力を拡大させ自身を救世主と自称する。
他のガブール人勢力を一掃するためグレシャムと組んで奴隷オークションを開くも失敗。
牢からダウーを解放し復讐を企てるも返り討ちに合う。おそらくはそのまま死亡した。

イェルゴー

人間(・・)の命の尊さがわからんのかバカ者!!

ゼニルストン自治領を管理する委員会の新入り。帝国の大学で医学などを修め頭脳明晰であり、すぐに委員会の実質的なリーダーとなったが、奴隷を躊躇なく拷問するなど残忍な性格。
本作の最終章に登場する人物で実質的なラスボス。ラスボスというにはグレシャム・レジャットと比較しても小物で狭量な人物だが、これには本作に通底するあるテーマと相反する彼の性格が関わっている。

ガブール神


地獄のフルコースには傷ついたよ……

ガブール人が信仰している神。ルークは存在に否定的だったが、そんなルークの前に自ら姿を現す。
奴隷狩りにより絶望したルークの脳内に現れ、ルークに生殖能力と引き換えに力を授けた。
ルークが行っていた“地獄のフルコース”と呼ばれる、自身の形をした金貨を使った硬貨の偽造に傷ついたことを吐露したり、生殖能力のことを自身が考えた最強の能力だと自慢したりと中々お茶目な性格をした神様。

ちなみに過去には
  • 3000年前に鉄による武器で古代世界を征服した戦王(いくさおう)イエフ*14
  • 1000年前にバッタの大軍で大陸に蝗害による大飢饉を起こした餓王(がおう)タッバ
  • 500年前に疫病を巻き起こしてヨーロピア大陸の人口の1/3を殺した病王(びょうおう)スペト
  • 200年前にアヘンを広めて敵国を堕落させ、痛みを感じない兵士を作り上げた麻王(まおう)へアン
といった超危険人物達先代救世主(能力者)がいたらしい。


■余談



  • 2024年9月3日からは同作者による新作『サンキューピッチ』が少年ジャンプ+にて連載開始。全く別の舞台設定ながらも頭脳バトル・印象的すぎる台詞回し・どうかしてるギャグかわいいショタの要素は受け継がれており、読者からの注目を集めている。



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最終更新:2025年04月17日 22:52

*1 元となった1枚のベルク札の「完全な」コピーであり、顕微鏡レベルの繊維の並びまで一致する。当然、手触りや色味、味に至るまでベルク札と完全に同一

*2 数百年前にガブール人の少年奴隷がライフルを複数丁生み出しており、それらが木目に至るまで完全に複製されたものだった。なおその奴隷は現場を見て混乱したヴィクト人によって殺されてしまった。

*3 暴発しやすくなっている時に袋詰めにされた事があるが、袋から「ルークが発射」されるほどだった。普通の服が着れないのもむべなるかな

*4 むしろ作中で莫大な借金を負った際には「マイナスから稼げる」と嬉々としていた

*5 奴隷貿易の相場

*6 真っ向勝負で勝てない相手に対しては頭脳や観察眼を駆使して上手いこと逃げきるという芸当も可能

*7 厳密には言い回しは少し変えてある

*8 この時のセリフが、かの有名な「ハレンチ警察出動だ!!」

*9 例外はまだ制御が利かなかった時期のダウーで、ほんの数回だけ呼び捨てにしていた。その後程なくして彼女のことも「ダウーさん」と呼ぶようになった

*10 しかもメガネの位置を直す余裕まであった

*11 なお、そんな彼を主人であるグレシャムは「成長したな。イエスマンは最後の最後で信頼できない。頼れる男になったじゃないか(意訳)」となかなかにご満悦だった。評価額アップだ、ヒヒヒ

*12 作者のあとがきによると、噛んで品質を確認する人は実在したらしい。さすがに食べはしないだろうが、世の中広いものだ

*13 レジャットへのフォローのつもりで放った「ガブール人は一般的に知能が低いとされるが個人差がある」という台詞が特に顕著か

*14 鉄の元素記号Feをもじったもの