日本三國

登録日:2023/11/27 Mon 08:07:29
更新日:2024/07/03 Wed 10:28:54
所要時間:約 4 分で読めます







◇概要

『日本三國』とはマンガワンにて2021年より連載されている松木いっかの漫画。裏サンデーでも遅れて連載している。
種類としては架空戦記物であり、文明社会が崩壊した近未来の日本を再統一するために戦う人々を描くストーリー。
といっても戦争シーン自体はあまり描写されず、戦が始まる前の準備や計略を仕掛けるシーン、
あるいは各国の各勢力の思惑が水面下でぶつかり合う内政シーンに本作の魅力が詰まっている。

特筆すべき点として、世界観の設定が非常に細かく作り込まれているのが特徴。
日本が三国に分かれた詳しい経緯や、出番が少ないサブキャラも含めた登場人物のバックボーンまで詳細に用意され、おまけとして公開されている。
読めば読むほどに深みを増していくような作品となっている。

また、スクリーントーンなどほぼ使われていない丁寧な手書きの作画も特徴で、これは作者がアシスタントを起用せず全て一人で仕上げている。

このような気合の入りようも相まってか執筆ペースは遅く、初期は隔週で連載されていたが、次第に休載や分割更新を挟むようになっていった。
その後、2023年1月に作者の健康上の問題を理由に連載形態の変更を発表。
2023年3月の「聖夷西征編」完結後、1年の準備期間を経て2024年3月より新章「平家追討編」が再開された。


◇あらすじ

令和末期。
データ×AIの第4次産業革命時代。
この時代において日本は、米国や中国、インドなどの諸外国に圧倒的な大敗を喫した。
そして、加速する少子高齢化。
教育レベルの大幅な低下により日本は衰退の一途を辿った。
そこに拍車をかけるように、世界では核大戦が勃発。
日本は戦地にこそならなかったものの、外国から多くの難民が溢れ、COVID-19を超越する感染症が蔓延。
さらに3・11規模の大震災が相次ぎ、社会不安は日本全土を覆い尽くした。
一方、政治・経済は腐敗堕落を極め、富は一部の政治家や資本家などの「上級国民」と揶揄される者たちに集中。
悪政、重税、天災飢饉に苦しみ、深く憤る民衆はついに蜂起する。
暴力大革命である。
民衆は暴虐の限りを尽くし、国家形態は崩壊。
人口は、わずか数年で10分の1以下まで減少し、あらゆる文化やインフラ、テクノロジーが失われた。
事実上の、日本滅亡である。
文化は明治初期レベルまで後退、軍閥が割拠する戦乱の世が始まる。これを期に関東を除いた都道府県が日本から独立。
そして、数十年後─
大和─
武凰─
聖夷─
三つの国が覇権を争う三国時代に突入することとなる─


◇世界観

あらすじにもある通り、近未来とはいえ様々な天災戦災により文明レベルが明治初期レベルまで激落ちしており、日本刀などの刀剣や突撃銃による白兵戦がメインとなる。
作中では日本内での覇権争いが描かれているが諸外国も核大戦により崩壊しており、特に核大戦で主な交戦勢力であったアメリカは中国の電子戦と核攻撃により殲滅され、中国も共産党内の権力争いや新疆ウイグル自治区を始めとする各自治区の独立により崩壊。日本と同じく軍閥による戦国時代へ突入している。

また、文明レベルが落ち自動車は使えずが主な交通手段になっていたり、電気通信等は壊滅しているがある登場人物が結婚といえばウェディングドレスと憧れていたり、漫画について語り合ったり、大阪通天閣が現存していたりと日本末期の文化はある程度残っている模様。

◇日本三國

大和(やまと)

首都:大阪都
最高統治者:大和帝
政体:君主制
農業:耕種,畜産
人口:約460万人(将36万・官6万)
三國最大の国家。
日本末期の日本国政府により天皇制が廃止され奈良へ転封された皇族の一人藤仁政が暴力大革命の折に挙兵した勢力が元となっており、その跡を継いだ長女仁美子が西日本を平定。国号を大和として自らは藤一世として帝位へ復帰した。
藤一世は国民を安んじた政事により名君と呼ばれていたが藤二世の時代に各地の反乱、武凰聖夷の侵攻、冷害災害の相次ぐ不幸や建國の功臣でもあった平家の勢力の拡大と藤二世の毒殺等により藤氏の権威は失墜。
現在は平家当主平殿器により牛耳られており、大和帝藤三世は平殿器の娘を皇后とされその後ろ盾として利用されるなど名ばかりの帝となっている。
主人公の三角青輝が所属している国でもある。
支配地域は愛知福井を含めた西日本。


聖夷(せいい)

首都は聖籠都(旧新潟)
最高統治者:大統領
政体:共和制
農業:牧畜,耕種,狩猟
人口:約194万人(将18万・官6千)
三國で最も勢力は小さいが兵は狩猟や寒冷な厳しい環境により精強。
かつて日本国の自衛官だった新発田空尊が結成していた下越軍閥を主体とした北陸〜東北北海道を支配する国。
大統領制をひいており三國内で最も民主的な国家であった。
しかし寒冷化による食料難への対応や大和との紛争問題から支持率は低下。
その折に大和から無条件降伏勧告を受け時の大統領は民の安定のため受諾しようとするがタカ派の輪島派によるクーデターによって政権首脳が壊滅し輪島派による新政権が成立する。
その後は圧倒的支持率を背景に大和への西征へ突き進むこととなる。
支配地域は北海道〜宮城以外の東北〜石川。

武凰(ぶおう)

首都:小田原都(旧神奈川)
最高統治者:武凰帝
政体:君主制
農業:耕種,畜産
人口:約317万人(将20万・官4万)
勢力は大和に次ぐ。
暴力大革命時に新日本国政府により廃止された天皇家嫡流でもあった大皇家が豪族和田家(後の北条→鳳条家)の協力を得て挙兵。
諸軍閥や新日本国政府の勢力を駆逐して関東圏を勢力に収め一旦日本国を復活させ天皇へと復帰した。
その後天皇自ら戦災者の見舞のため各地を巡幸している隙を着いて建国の功臣でもあった鳳条家、武蔵守家の反乱により再度天皇家は廃位となり、武凰帝に君臨した鳳条桃邦の臣下に収まる事となった。
大皇家君主大皇媛仁は日本国復古の野望を抱いておりそれは武凰帝にも見抜かれているが切らずに抱えて置くことで器が大きく見えるという理由で捨て置かれている。
支配地域は岐阜静岡〜宮城までの太平洋側。

◇主な登場人物

◆大和

  • 三角青輝(みすみあおてる)
大和歴41年、愛媛郡生まれ。後に鬼才軍師とも呼ばれる青年。
幼くして両親を喪ったが両親の知人である図書館館長・東町信人の庇護の元で育てられる。
幼いころより図書館の旧日本国の文書や地図に触れ文字と旧文明の知識に地図設計技能を身に付け、若くして愛媛郡の司農官となった。
また、育ての父である信人の娘小紀とも結婚しささやかであるが幸せな結婚生活を送る。
しかし内務卿・平殿器の巡幸の際に不法な徴税を課そうとした平家の税吏に対し妻の小紀が反発し処刑されてしまう。
その復讐を決意した青輝はまずは平殿器を理屈で説伏せ税吏を刑死へ追い込む。
その後はかつて小紀が残した日本統一の言葉に従い身一つで上阪。
辺境将軍龍門光英の募兵試験でもある「登龍門」に参加し、登用条件である龍門の膝を地に付けるに対して辺境の兵力を10万に引き上げる農政改革案を献上する。その中身を見た龍門自ら地に膝を付け(部下になってくれと言っているようなもの)無事登用される。

  • 阿佐馬芳経(あさまよしつね)
大和歴39年、和歌山郡生まれ。通称ツネちゃんさん
大和皇室に連なり建国の功臣であり名門である阿佐馬家の嫡子であるが、平家との政争の末没落し和歌山の一豪族の扱いである。
自身の力で三国時代を終わらせ国民すべてから尊敬を受ける存在になるという夢を持ち、武技に秀でているが、上昇志向と承認欲求が強く他者を見下している点を青輝に指摘される。
またかなりのマザコンでもあり自分の母の伝記を残すことも夢にしており、母親のことをママと呼ぶ。
青輝と共に登龍門に登り、龍門の膝を地に付けさせるという課題に対して刀で足を切り落とすという方法でクリアを目論むも水筒で防がれる。
しかしそこから後ろから龍門を蹴り飛ばすという方法で膝を付けさせ無事登用される。

  • 龍門光英(りゅうもんみつひで)
大和歴5年、兵庫郡生まれ。大和辺境将軍。
武勇に優れた将軍として勇名を馳せており、17歳で賊300人を討伐。その際に左眼を射たれ失い、それ以降眼帯を着けている。(あとハゲてる)
武凰との長篠の戦いでは大和からの降伏兵含む武凰27000に対して大和8000で対峙。
武凰軍総大将島田は兵力差と新東名高速道路へ布陣する完璧な布陣から勝利を確信し前祝いとしてどんちゃん騒ぎを始めるが、龍門自ら20名を率いて新東名の45mを登りこれを強襲し大将島田含む軍隊長軍師ら武凰首脳陣を殲滅。
残った兵へ降伏勧告を行いその約8割を丸々降伏させ長篠の戦いを勝利へ導いた。
住居でもある通天閣にて通称「登龍門」と呼ばれる登用試験を開いているが毎回1000人以上の士官希望者が参加するも数ヶ月単位で合格者が出ないほどその門戸は狭い。
また大和で権勢を欲しいままにしている平殿器の最大の対抗馬でもある。

  • 平殿器(たいらでんき)
大和歴5年、大阪都生まれ。内務卿。
大和を支配する独裁者で自身に嫌な思いをさせたからという理由で関係者を処刑する傍若無人かつ残忍な性格だが自身の権力拡大のための権謀術数を巡らせる策士でもある。
平家は大和建国からの功臣であるが、先帝藤二世の側室に殿器の妹が入ると殿器自身は内務卿に就任し権力を握る。
その後さらなる権力拡大のために藤二世を毒殺。当時4歳であり自身の甥に当たる藤三世を対抗勢力を駆逐した後に擁立しそれを傀儡としてさらなる権力拡大をはかる。
現在は主要ポストをも平家の人間が埋め尽くしており絶対的な権力を保持。
大衆の面前で帝を辱める、聖夷への勝手な無条件降伏勧告等の僭越を越える暴挙に大和の有能かつ忠臣の面々が平殿器排斥を訴えるも平殿器の一言で全員惨殺される。
主人公青輝が日本三國統一を決意し「登龍門」を登ったのも彼が青輝の妻小紀を処刑したことがきっかけで、青輝は日本三國統一と共に平殿器への復讐も狙っており、平殿器も青輝を愚かだからこそ大きくなりうると警戒している。

  • 藤三世(ふじさんせい)
大和歴33年、大阪都生まれ。大和を統べる大和帝。
先帝藤二世の側室の子で三男と皇位を継承できる立場では無かったが母親が内務卿平殿器の妹だったことから父親の藤二世を毒殺、対抗勢力を殲滅した上で四歳で大和帝に据えられた経緯を持つ。
その後は平殿器が大事に育てたと言うように暗愚な君主として成長しその傀儡として権威を利用されるだけの存在となっていた。
しかし、聖夷の大和征西の折には戦争の早期終結を図る三角青輝と平殿器の対立に対して平殿器の意に反して「民の命を守るため」に「自らの意思」で青輝の意見を採用し為政者としての覚醒の兆しを見せた。

追記・修正は登竜門を登った後にお願いします。

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最終更新:2024年07月03日 10:28